社労士 健康保険法 問26:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
健康保険における訪問看護療養費に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア訪問看護療養費は、被保険者が居宅において受けた指定訪問看護(指定訪問看護事業者が行う訪問看護)について支給されるが、被保険者が病院・診療所・介護老人保健施設に入院・入所中は支給対象とならない。
- イ指定訪問看護事業者の指定は、厚生労働大臣(実務上は地方厚生局長への権限委任)が行い、指定を受けた事業者が訪問看護ステーションとして活動する。被保険者の主治医が指定訪問看護事業者に対し訪問看護指示書を交付することが、訪問看護療養費支給の前提条件の一つとなる。
- ウ訪問看護療養費の支給額は、訪問看護に要した費用の額から、被保険者が負担すべき「基本利用料」(一部負担金に相当する額)を控除した額である。被保険者は訪問看護療養費の基本利用料として費用の3割(70歳未満一般の場合)を負担する。
- エ65歳以上の介護保険の第1号被保険者が訪問看護を受ける場合、原則として介護保険からの訪問看護が優先されるが、末期がん・難病等(厚生労働大臣が定める疾病)の場合は健康保険の訪問看護療養費が優先適用される。
- オ訪問看護療養費は、被保険者が指定訪問看護事業者に直接費用を支払い、後日保険者に請求して支給を受ける(償還払い)のが原則であり、指定訪問看護事業者が直接保険者に請求して現物給付的に運営することは認められていない。正答
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正答はオ(誤っている記述)です。
オの誤りは「指定訪問看護事業者が直接保険者に請求することは認められていない」という部分です。実際には訪問看護療養費は現物給付的な仕組みが認められており、被保険者が費用の一部(基本利用料)のみを負担し、残りは指定訪問看護事業者が保険者に直接請求します(法第88条の2・代理受領)。「全額を先払い後に請求する償還払い方式のみ」という記述は誤りです。
アは正しく、居宅での訪問看護が対象であり入院・入所中は対象外です。イは正しく、健康保険法第88条に基づく指定訪問看護事業者の指定権者は厚生労働大臣(地方厚生局長への権限委任)であり、主治医の指示書が必要です(介護保険法上の指定権者は都道府県知事だが、健保法上は厚労大臣であることに注意)。ウは正しく、基本利用料(3割等)を被保険者が負担します。エは正しく、介護保険優先の原則と末期がん等の例外を正確に述べています。
訪問看護療養費(健保法第88条)の仕組み:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 居宅にある被保険者が受ける指定訪問看護 |
| 指定主体 | 厚生労働大臣(実務上は地方厚生局長への権限委任)による指定訪問看護事業者(訪問看護ステーション等) ※健保法上の指定。介護保険法上は都道府県知事 |
| 前提条件 | 主治医が訪問看護指示書を交付 |
| 支給額 | 訪問看護費用 - 基本利用料(被保険者の自己負担部分) |
| 基本利用料 | 一般3割・70歳以上前期高齢者2割(現役並み3割)等(一部負担金と同率) |
| 支払方式 | 現物給付的(指定訪問看護事業者が保険者に請求・代理受領) |
| 介護保険との優先関係 | 65歳以上要介護者は介護保険優先(例外: 末期がん・難病等) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 訪問看護療養費は居宅での訪問看護が対象(健保法第88条第1項)。病院・診療所・介護老人保健施設・特定施設(有料老人ホーム等の一部)入院・入所中は原則として訪問看護療養費は支給されません。
- イ(正): 健保法第88条第1項に基づく指定訪問看護事業者の指定権者は厚生労働大臣であり、実務上は地方厚生局長への権限委任により処理されます。介護保険法上の指定訪問看護事業者の指定権者(都道府県知事)とは法律が異なる別の制度のため混同注意。主治医からの訪問看護指示書(指示期間6か月以内・更新可)が必要です。
- ウ(正): 訪問看護療養費の支給額は「費用の額から基本利用料を控除した額」(健保法第88条第2項)。基本利用料は療養の給付の一部負担金に相当(一般70歳未満は3割・70歳以上前期高齢者は2割等)。
- エ(正): 65歳以上の介護保険第1号被保険者が訪問看護を受ける場合、介護保険が優先(健保法第55条の2)。ただし以下の場合は健保訪問看護療養費が優先:
- 厚生労働大臣が定める疾病(末期がん・多発性硬化症・重症筋無力症・ALS等の特定疾病)
- 急性増悪・退院直後等で週4日以上の頻回訪問が必要と医師が認めた場合
- オ(誤・正答): 訪問看護療養費は原則として現物給付的な代理受領方式が認められています(健保法第88条の2)。被保険者は基本利用料のみを指定訪問看護事業者に支払い、残りの費用(7割等)は事業者が保険者に直接請求します。「償還払いのみ」という記述は誤りです。
【訪問看護療養費の制度構造と介護保険との詳細な優先関係】
訪問看護は、1994年(平成6年)の健保法改正で保険給付の対象として明文化された比較的新しい給付です。介護保険制度(2000年施行)の導入により、高齢者の訪問看護については「どちらの保険から給付されるか」という優先関係が生じています。
訪問看護療養費の請求・支払いのフロー(代理受領方式):
```
被保険者(在宅患者)
│ 基本利用料(3割等)を支払い
↓
指定訪問看護事業者(訪問看護ステーション等)
│ 訪問看護療養費として残り(7割等)を請求
↓
審査支払機関(国保中央会・社会保険診療報酬支払基金)
│ 審査・支払い
↓
保険者(協会けんぽ・健保組合)が費用を最終負担
```
この流れは療養の給付(医療機関での診療)と同様の現物給付的な仕組みです。被保険者は基本利用料(3割等)のみを支払い、残りは事業者が直接保険者に請求します。
訪問看護指示書の種類と役割:
主治医が発行する訪問看護指示書には以下の種類があります:
1. 訪問看護指示書(通常): 有効期間6か月以内。疾患名・病状・指示内容を記載。
2. 特別訪問看護指示書(急性増悪時): 有効期間14日以内。月2回まで発行可(厚生労働大臣が定める状態等の場合は月2回まで14日ずつ)。
3. 在宅患者訪問点滴注射指示書: 週3日以上の点滴が必要な場合。
指示書なしの訪問看護は保険請求の対象とならないため、「主治医の指示書が必要」(イの正しい記述)は実務上も試験上も重要な要件です。
健保と介護保険の優先関係(エの正しい記述の深掘り):
健保訪問看護療養費が優先される場合の詳細(厚生労働大臣が定める疾病等・告示規定):
- 末期の悪性腫瘍(末期がん)
- 多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上かつ生活機能障害度がII度またはIII度のものに限る))、多系統萎縮症(線条体黒質変性症・オリーブ橋小脳萎縮症・シャイ・ドレーガー症候群)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷 など(厚生労働大臣が定める疾病の告示)
これらの疾病をもつ在宅患者は、介護保険の要介護認定を受けていても健保の訪問看護療養費が優先適用されます(週4日以上の頻回訪問も可能)。
「居宅」の解釈(アの正しい記述の深掘り):
「居宅」の範囲:
- 自宅(一戸建て・マンション等): 訪問看護の対象
- 軽費老人ホーム(ケアハウス): 対象
- グループホーム(認知症対応型共同生活介護): 対象
- 有料老人ホーム(特定施設の指定なし): 対象
- 病院・診療所: 対象外(入院中)
- 介護老人保健施設: 対象外(施設サービス費に含まれる)
- 介護老人福祉施設(特養): 対象外(施設サービス費に含まれる)
社労士試験での訪問看護療養費論点のポイント(まとめ):
1. 訪問看護療養費は現物給付的・代理受領方式(償還払いが原則ではない)
2. 健保法第88条上の指定は厚生労働大臣(地方厚生局長への権限委任)。介護保険法上の指定は都道府県知事で別制度のため混同注意
3. 主治医の訪問看護指示書が必要
4. 65歳以上要介護者は介護保険優先(末期がん等は健保優先)
5. 被保険者は基本利用料(3割等)のみ支払い
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 健保法第88条(訪問看護療養費)・第88条の2(代理受領)・保発0305第14号(指定訪問看護事業者の指定取扱い)一次ソース突合済。【重大修正】イの原文「都道府県知事が指定」は介護保険法上の指定と混同した誤記で、健保法第88条上は厚生労働大臣(地方厚生局長への権限委任)の指定が正解。修正により二重正答リスクを解消。基準日2026-04-10内で改正混入なし。正答オ維持(修正後選択肢で)。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第88条(訪問看護療養費)・第88条の2(代理受領) 確認日: 2026-06-08 出典: 厚生労働省 訪問看護療養費について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000051843.html e-Gov 健康保険法第88条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。