問題
健康保険における訪問看護療養費に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はオ(誤っている記述)です。
オの誤りは「指定訪問看護事業者が直接保険者に請求することは認められていない」という部分です。実際には訪問看護療養費は現物給付的な仕組みが認められており、被保険者が費用の一部(基本利用料)のみを負担し、残りは保険者が被保険者に代わって指定訪問看護事業者に支払います(法第88条第6項・第7項・代理受領)。「全額を先払い後に請求する償還払い方式のみ」という記述は誤りです。
アは正しく、居宅での訪問看護が対象であり入院・入所中は対象外です。イは正しく、健康保険法第88条に基づく指定訪問看護事業者の指定権者は厚生労働大臣(地方厚生局長への権限委任)であり、主治医の指示書が必要です(介護保険法上の指定権者は都道府県知事だが、健保法上は厚労大臣であることに注意)。ウは正しく、基本利用料(3割等)を被保険者が負担します。エは正しく、介護保険優先の原則と末期がん等の例外を正確に述べています。
訪問看護療養費(健保法第88条)の仕組み:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 居宅にある被保険者が受ける指定訪問看護 |
| 指定主体 | 厚生労働大臣(実務上は地方厚生局長への権限委任)による指定訪問看護事業者(訪問看護ステーション等) ※健保法上の指定。介護保険法上は都道府県知事 |
| 前提条件 | 主治医が訪問看護指示書を交付 |
| 支給額 | 訪問看護費用 - 基本利用料(被保険者の自己負担部分) |
| 基本利用料 | 一般3割・70歳以上前期高齢者2割(現役並み3割)等(一部負担金と同率) |
| 支払方式 | 現物給付的(指定訪問看護事業者が保険者に請求・代理受領) |
| 介護保険との優先関係 | 介護保険で相当する給付を受けられるときは健保から支給しない(第55条第3項)。例外: 末期がん等の厚生労働大臣が定める疾病等 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 訪問看護療養費は「居宅において継続して療養を受ける状態にある者」に対し「その者の居宅において」行われる訪問看護が対象です(健保法第88条第1項)。病院・診療所に入院中や介護老人保健施設に入所中は居宅での療養ではないため対象になりません。
- イ(正): 健保法第88条第1項に基づく指定訪問看護事業者の指定権者は厚生労働大臣であり、実務上は地方厚生局長への権限委任により処理されます。介護保険法上の指定居宅サービス事業者の指定(都道府県知事)とは別の制度ですが、介護保険法の指定を受けた訪問看護事業者は、別段の申出をしない限り健保法の指定を受けたものとみなされます(第89条第2項)。対象者は主治の医師が治療の必要の程度につき省令の基準に適合すると認めた者に限られ(第88条第1項括弧書き)、実務上はこれを主治医の訪問看護指示書で示します。
- ウ(正): 訪問看護療養費の支給額は「費用の額から基本利用料を控除した額」(健保法第88条第4項)。基本利用料は療養の給付の一部負担金に相当(一般70歳未満は3割・70歳以上前期高齢者は2割等)。
- エ(正): 同一の疾病・負傷について介護保険法の規定により訪問看護療養費に相当する給付を受けることができる場合、訪問看護療養費は支給しません(健保法第55条第3項)。そのため要介護認定を受けた者の訪問看護は介護保険が優先します。ただし、末期の悪性腫瘍その他厚生労働大臣が定める疾病等(告示)の者は介護保険の訪問看護の対象外とされるため、健保の訪問看護療養費が支給されます(急性増悪時の特別の指示による訪問なども同様の扱いがある。細目は告示・通知で確認)。
- オ(誤・正答): 保険者は、被保険者が指定訪問看護事業者に支払うべき費用を、訪問看護療養費として支給すべき額の限度で、被保険者に代わって事業者に支払うことができ、その支払があったときは被保険者に支給があったものとみなされます(健保法第88条第6項・第7項=代理受領)。被保険者は第74条第1項の割合による額(基本利用料)を事業者に支払い、残りは事業者が保険者に請求します(第10項)。「償還払いのみ」という記述は誤りです。
【訪問看護療養費の制度構造と介護保険との詳細な優先関係】
訪問看護療養費は、療養の給付(第63条)とは別建ての保険給付です。指定訪問看護は第63条第1項各号の療養に含まれないと明記されており(第88条第12項)、保険医療機関が行う訪問看護とは区別されます。また、介護保険制度の導入により、高齢者の訪問看護については「どちらの保険から給付されるか」という優先関係(第55条第3項)が生じています。
訪問看護療養費の請求・支払いのフロー(代理受領方式):
```
被保険者(在宅患者)
│ 第74条第1項の割合による額(基本利用料・3割等)を支払い(第88条第9項で領収証を交付)
↓
指定訪問看護事業者(訪問看護ステーション等)
│ 訪問看護療養費として残り(7割等)を保険者に請求(第88条第10項)
↓
保険者(協会けんぽ・健保組合)が審査のうえ支払い
│ 審査・支払の事務は社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に委託できる(第88条第11項)
```
この流れは療養の給付(医療機関での診療)と同様の現物給付的な仕組みです。保険者が事業者に支払ったときは、被保険者に訪問看護療養費の支給があったものとみなされます(第88条第7項)。
条文で押さえる支給の枠組み(第88条):
1. 対象者の限定: 居宅で継続して療養を受ける状態にある者のうち、主治の医師が治療の必要の程度につき厚生労働省令の基準に適合すると認めたものに限られる(第1項括弧書き)。実務上は主治医の訪問看護指示書でこれを示す(指示書の期間などの細目は診療報酬上の定め)
2. 保険者の判断: 訪問看護療養費は、省令の定めにより保険者が必要と認める場合に限り支給する(第2項)
3. 受け方: 自己の選定する指定訪問看護事業者から、電子資格確認等で被保険者であることの確認を受けて受ける(第3項)
4. 費用の額: 厚生労働大臣が定める(第4項)。定めようとするときは中央社会保険医療協議会に諮問する(第5項)
5. 除外: 保険医療機関等・介護老人保健施設・介護医療院が行うものは「訪問看護」から除かれる(第1項括弧書き)
健保と介護保険の優先関係(エの正しい記述の深掘り):
第55条第3項により、介護保険から相当する給付を受けられる場合は健保の訪問看護療養費は支給されません。例外として、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、厚生労働大臣が定める疾病等(告示)の者は介護保険の訪問看護の対象外とされ、要介護認定を受けていても健保の訪問看護療養費が支給されます(疾病の一覧は告示の原本で確認。本問では一覧の細部は問われていません)。
「居宅」の解釈(アの正しい記述の深掘り):
訪問看護療養費は「その者の居宅において」行われる訪問看護が対象です(第88条第1項)。病院・診療所への入院中や介護老人保健施設への入所中は、居宅で療養している状態ではないため対象になりません。施設・住まいの種類ごとの取扱い(有料老人ホーム・グループホーム等)は告示・通知で定められており、個別に確認が必要です。
社労士試験での訪問看護療養費論点のポイント(まとめ):
1. 訪問看護療養費は現物給付的・代理受領方式(償還払いが原則ではない)
2. 健保法第88条上の指定は厚生労働大臣(地方厚生局長への権限委任)。介護保険法上の指定は都道府県知事で別制度のため混同注意
3. 主治医の訪問看護指示書が必要
4. 介護保険で相当する給付を受けられる要介護者等は介護保険優先(第55条第3項。末期がん等は健保から支給)
5. 被保険者は基本利用料(3割等)のみ支払い
- 健康保険法第88条・第55条e-Govで原文を読む
- 介護保険法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第88条(第1項 支給、第4項 支給額=費用の額から第74条第1項各号の割合による額を控除、第6項・第7項 保険者から事業者への支払〔代理受領〕、第11項 審査・支払事務の委託)・第89条(指定の申請・介護保険法の指定によるみなし指定)・第55条第3項(介護保険との調整) 確認日: 2026-06-08(条文は 2026-09-30 e-Gov で再確認) 出典: e-Gov 健康保険法第55条・第88条・第89条 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

