社労士 健康保険法 問28:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
健康保険の保険料の納付に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア被保険者に係る保険料は、事業主が被保険者分(折半の被保険者負担分)も含めてまとめて納付する義務を負う。事業主が被保険者の給与から被保険者負担分を控除(天引き)して保険者に納付するのが原則である。
- イ保険料を滞納した事業主に対し、保険者(協会けんぽの場合は全国健康保険協会)は督促を行うことができる。督促は督促状の発送により行い、督促状には納付期限を定めなければならない。
- ウ保険料その他健康保険法の規定による徴収金を滞納した者が督促を受け、その納付期限までに納付しない場合には、延滞金が課される。延滞金の割合は年14.6%である(ただし法定の特例が適用される場合はこの限りではない)。
- エ保険料の徴収権の消滅時効は2年であり、事業主が保険料を納付期限から2年以上滞納した場合、時効により保険者は徴収することができなくなる。ただし、督促状が発送された場合には時効は中断(更新)する。
- オ事業主は、被保険者の給与から控除(天引き)した被保険者負担分の保険料について、被保険者に対して連帯して納付責任を負う。つまり、被保険者も事業主とともに保険者に対して保険料納付の連帯義務者となる。正答
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正答はオ(誤っている記述)です。
健康保険の保険料は、被保険者の給与から天引きされた被保険者負担分と事業主負担分を合わせて事業主が一括して納付します。この「事業主が被保険者の代わりに天引きして納付する」仕組みについて、オは「被保険者も連帯して保険者に納付義務を負う」と述べています。しかし健保法上、事業主が滞納した場合に被保険者(労働者)が連帯して保険料を納付する義務はありません。保険料の納付義務者は事業主であり、被保険者は給与天引きにより間接的に負担するだけです。
アは正しく、事業主が被保険者分も含めて一括納付します。イは正しく、督促は督促状の発送で行います。ウは正しく、延滞金は年14.6%(法定特例あり)です。エは正しく、徴収権の消滅時効は2年(督促で中断)です。
健康保険の保険料納付の仕組み(健保法第161条〜第165条):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険料の負担 | 被保険者(1/2)と事業主(1/2)が折半(健保法第161条第1項) |
| 納付主体 | 事業主(被保険者負担分も合わせて一括納付・第161条第2項) |
| 控除の権利 | 事業主は被保険者の給与から被保険者負担分を控除できる(第167条) |
| 督促 | 保険者(協会けんぽ等)が督促状を発送(第180条) |
| 延滞金 | 年14.6%(法定の特例あり・第165条) |
| 時効 | 2年(第193条)・督促で中断(更新) |
| 連帯責任の主体 | 事業主が主たる義務者。被保険者に連帯納付義務なし |
各選択肢の解説:
- ア(正): 事業主が被保険者負担分・事業主負担分を一括して保険者に納付(健保法第161条第2項・第167条)。被保険者の給与から天引き(控除)して納付するのが原則です。
- イ(正): 督促は督促状の発送により行い、督促状には指定の納付期限を記載しなければならない(健保法第180条第1項・第2項)。
- ウ(正): 延滞金の割合は原則年14.6%(健保法第165条第1項)。なお、特例として各年1月1日に「延滞税特例基準割合+7.3%」または「年14.6%」のいずれか低い方が適用される(租税特別措置法・厚生年金法附則等を準用した特例)。これにより実際の延滞金率が14.6%を下回ることがあります。
- エ(正): 保険料の徴収権は2年の消滅時効(健保法第193条第1項)。督促状の発送は時効の中断(民法改正後は「更新」)事由です(第193条第2項・第180条の督促による)。
- オ(誤・正答): 健保法上、被保険者は事業主の連帯債務者ではありません。事業主が被保険者の給与から控除した被保険者負担分を納付しなかった場合でも、被保険者が保険者に対して連帯して保険料を支払う義務はありません(健保法第161条・第167条の構造)。事業主が滞納した場合の責任は事業主にあり、被保険者(労働者)は保護される立場です。
なお、「事業主の連帯責任」という言葉が問題文に含まれますが、これは「複数の事業主が共同で雇用するケース」や「事業主が被保険者に成り代わって義務を負う」という事業主側の連帯責任であり、被保険者が事業主と連帯するという意味ではありません。
【健保の保険料納付制度の詳細と徴収法との比較】
健康保険の保険料納付に関する規定は、労働保険徴収法(徴収法)と比較して学習すると理解が深まります。社労士試験では両者を混同させる問題が出題されます。
健保と労働保険の保険料納付方式の比較:
| | 健康保険(協会けんぽ) | 労働保険(徴収法) |
|---|---|---|
| 保険料の算定基礎 | 月次(標準報酬月額)・毎月 | 年度(賃金総額)・年度単位 |
| 納付方式 | 翌月末日(月払い)または口座振替 | 概算・確定保険料(年度更新) |
| 延滞金率 | 年14.6%(特例あり) | 年14.6%(特例あり・徴収法第27条)※ほぼ同率 |
| 時効 | 2年(健保法第193条) | 2年(徴収法第41条) |
| 督促 | 督促状(健保法第180条) | 督促(徴収法第26条) |
延滞金率は健保・労働保険ともに原則年14.6%と同率です。ただし特例措置(租税特別措置法準用)により、実際の率が引き下げられる場合があります。これを「健保は〇%・労働保険は△%で違う」と思い込むのは誤りです。
事業主の保険料控除権と被保険者保護(第167条の詳細):
健保法第167条第1項: 「被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(以下この項において「当月分保険料」という。)を報酬から控除することができる。」
この規定のポイント:
1. 「控除できる」であって「控除しなければならない」ではない(控除は事業主の権利)
2. 前月分の保険料を当月の給与から控除(月遅れ控除)
3. 被保険者の同意は不要(法律上の根拠に基づく控除)
4. 控除した額は明細書等で被保険者に通知することが実務上求められる
事業主が天引きした被保険者負担分を横領・着服した場合:
事業主が天引きした被保険者負担分の保険料を保険者に納付しなかった場合:
- 保険者は事業主に督促(第180条)・延滞金請求・滞納処分(第183条)
- 被保険者の給付権は維持される(被保険者が事業主の滞納を知らなかった場合・保険事故発生時は給付を受けられる)
- 被保険者は給与明細で控除が行われていたことを確認できる
この「事業主の滞納が被保険者の給付に影響しない」という原則は労働者保護の観点から重要です。
延滞金14.6%の特例措置の詳細:
原則年14.6%に対し、特例措置(各年の延滞特例基準割合等)が適用される場合:
- 督促状に指定された期限の翌日から3か月以内: 「延滞税特例基準割合+1%」の特例率(2.5〜3%台)
- 3か月を超えた部分: 「延滞税特例基準割合+7.3%」の特例率(約9%台)
これらの特例により、実際の延滞金率は14.6%より大幅に低くなることが通常です。ただし試験では「原則年14.6%」を問うことが多いです。
徴収法の延滞金との相違点(2年時効・督促):
健保と徴収法の保険料時効は同じ2年ですが、計算の起点が異なります:
- 健保: 各月の保険料の納付期限(原則翌月末日)から2年
- 徴収法: 年度末の確定保険料申告期限から2年(概算・確定の構造)
社労士試験では「2年」という数字は共通ですが、「何を起点とするか」が問われることがあります。
社労士試験での頻出パターン(まとめ):
| よくある誤答パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 「被保険者も連帯して納付義務を負う」 | 納付義務者は事業主のみ(被保険者は連帯しない) |
| 「延滞金は年10%」「年8%」 | 原則年14.6%(特例適用で下がることある) |
| 「時効は3年」「時効は5年」 | 2年(健保法第193条) |
| 「督促は訴訟(裁判)でのみ可能」 | 督促状の発送で足りる(行政手続き) |
| 「事業主が指定の医療機関でのみ使える」 | 保険医療機関(全国共通)で使用可能 |
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 健保法第161条(保険料の負担・労使折半)・第162条/第163条(事業主の納付義務)・第164条(口座振替)・第165条(延滞金14.6%)・第167条(事業主の控除権)・第180条(督促)・第193条(時効2年・督促による更新)一次ソース突合済。被保険者は連帯納付義務を負わない(事業主のみが納付義務者)・延滞金の特例措置で実質率は引下げあり・時効は2年で督促により更新を確認。基準日2026-04-10内で改正混入なし。正答オ維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第161条(保険料の負担)・第162条・第165条(延滞金)・第193条(時効)・第180条(督促) 確認日: 2026-06-08 出典: 全国健康保険協会 保険料の納付について https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3100/ e-Gov 健康保険法第161条・第165条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。