問題
健康保険の保険料の納付に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はオ(誤っている記述)です。
健康保険の保険料は、被保険者の給与から天引きされた被保険者負担分と事業主負担分を合わせて事業主が一括して納付します。この「事業主が被保険者の代わりに天引きして納付する」仕組みについて、オは「被保険者も連帯して保険者に納付義務を負う」と述べています。しかし健保法上、事業主が滞納した場合に被保険者(労働者)が連帯して保険料を納付する義務はありません。保険料の納付義務者は事業主であり、被保険者は給与天引きにより間接的に負担するだけです。
アは正しく、事業主が被保険者分も含めて一括納付し(第161条第2項)、被保険者負担分を報酬から控除できます(第167条第1項)。イは正しく、保険者等は期限を指定して督促しなければならず、督促は督促状の発送で行います(第180条)。ウは正しく、延滞金は原則年14.6%(3月までは7.3%・特例あり)です(第181条)。エは正しく、徴収権の消滅時効は2年で、督促は時効の更新の効力を有します(第193条)。
健康保険の保険料納付の仕組み(健保法第161条〜第181条):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険料の負担 | 被保険者(1/2)と事業主(1/2)が折半(健保法第161条第1項) |
| 納付主体 | 事業主(被保険者負担分も合わせて一括納付・第161条第2項) |
| 控除の権利 | 事業主は被保険者の給与から被保険者負担分を控除できる(第167条) |
| 督促 | 保険者等(協会管掌の一般被保険者分は厚生労働大臣、組合管掌は健保組合)が督促状を発送(第180条) |
| 延滞金 | 年14.6%(納期限の翌日から3月までは年7.3%・特例あり・第181条) |
| 時効 | 2年(第193条第1項)・納入の告知又は督促で更新(同条第2項) |
| 納付義務者 | 事業主(任意継続被保険者は自己の負担分を自ら納付・第161条第3項)。被保険者に連帯納付義務なし |
各選択肢の解説:
- ア(正): 事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負います(健保法第161条第2項)。事業主は被保険者負担分を報酬から控除することができる(第167条第1項)とされています。任意継続被保険者は自ら納付するため(第161条第3項)、選択肢では除いています。
- イ(正): 保険者等は、期限を指定して督促しなければならず、督促は納付義務者に督促状を発して行います(健保法第180条第1項・第2項)。「保険者等」は、協会管掌の一般の被保険者に係る保険料では厚生労働大臣(事務は日本年金機構)、組合管掌では当該健康保険組合、協会管掌の任意継続被保険者の保険料では協会です(第180条第1項括弧書き・第155条第2項)。
- ウ(正): 延滞金の割合は原則年14.6%で、保険料の督促に係るものは納期限の翌日から3月を経過する日までの期間は年7.3%です(健保法第181条第1項)。さらに附則の特例により実際の率が下がる場合があります。
- エ(正): 保険料の徴収権は2年の消滅時効(健保法第193条第1項)。保険料等の納入の告知又は督促は、時効の更新の効力を有します(同条第2項)。
- オ(誤・正答): 健保法上、被保険者は事業主の連帯債務者ではありません。事業主が被保険者の給与から控除した被保険者負担分を納付しなかった場合でも、被保険者が保険者に対して連帯して保険料を支払う義務はありません(健保法第161条・第167条の構造)。事業主が滞納した場合の責任は事業主にあり、督促・滞納処分(第180条)・延滞金(第181条)の対象になるのも納付義務者である事業主です。健保法には、被保険者を保険料の連帯債務者とする規定はありません。
【健保の保険料納付制度の詳細と徴収法との比較】
健康保険の保険料納付に関する規定は、労働保険徴収法(徴収法)と比較して学習すると理解が深まります。社労士試験では両者を混同させる問題が出題されます。
健保と労働保険の保険料納付方式の比較:
| 健康保険(協会けんぽ) | 労働保険(徴収法) | |
|---|---|---|
| 保険料の算定基礎 | 月次(標準報酬月額)・毎月 | 年度(賃金総額)・年度単位 |
| 納付方式 | 翌月末日まで(月払い・第164条第1項。任意継続被保険者はその月の10日まで)。口座振替による納付も可(第166条) | 概算・確定保険料(年度更新) |
| 延滞金率 | 年14.6%(保険料の督促は納期限の翌日から3月を経過する日までは年7.3%・健保法第181条第1項) | 年14.6%(納期限の翌日から2月を経過する日までは年7.3%・徴収法第28条第1項) |
| 時効 | 2年(健保法第193条) | 2年(徴収法第41条) |
| 督促 | 督促状・指定期限は発する日から10日以上経過した日(健保法第180条) | 督促状・同じく10日以上(徴収法第27条) |
延滞金率の本則は健保・労働保険ともに年14.6%ですが、年7.3%とされる期間は健保が「3月」、徴収法が「2月」で異なります。また健保は附則第9条の特例(延滞税特例基準割合に連動)により、実際の率が引き下げられる場合があります。
事業主の保険料控除権と被保険者保護(第167条の詳細):
健保法第167条第1項: 「事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。」
この規定のポイント:
1. 「控除できる」であって「控除しなければならない」ではない(控除は事業主の権利)
2. 前月分の保険料を当月の給与から控除(月遅れ控除)
3. 被保険者の同意は不要(法律上の根拠に基づく控除)
4. 控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、控除額を被保険者に通知しなければならない(第167条第3項・法律上の義務)
5. 賞与からも、標準賞与額に係る被保険者負担分を控除できる(第167条第2項)
事業主が天引きした被保険者負担分を納付しなかった場合:
- 保険者等は事業主に督促・滞納処分(第180条)・延滞金(第181条)を行う
- 督促状に指定する期限までに納付しない事業主は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になる(第208条第3号)
- 健保法には、事業主の保険料滞納を理由に被保険者(任意継続被保険者を除く)への保険給付を制限する規定は置かれていない(任意継続被保険者は自ら納付し、未納は資格喪失事由=第38条第3号)
延滞金14.6%の特例措置の詳細:
本則は年14.6%(納期限の翌日から3月までは年7.3%・第181条第1項)ですが、附則第9条の特例(延滞税特例基準割合に連動)が適用されると、実際の率はこれより低くなります(具体的な率は年ごとに変わるため、年度の公表値で確認)。なお、督促状に指定した期限までに完納したときや、計算した額が100円未満のときは延滞金を徴収しません(第181条第4項)。試験では「原則年14.6%」を問うことが多いです。
時効の条文(健保と徴収法):
健保・徴収法とも、保険料等を徴収する権利は「これらを行使することができる時から2年」で時効により消滅します(健保法第193条第1項・徴収法第41条第1項)。健保では保険料等の納入の告知又は督促が時効の更新の効力を有します(健保法第193条第2項)。
社労士試験での頻出パターン(まとめ):
| よくある誤答パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 「被保険者も連帯して納付義務を負う」 | 納付義務者は事業主のみ(被保険者は連帯しない) |
| 「延滞金は年10%」「年8%」 | 原則年14.6%(特例適用で下がることある) |
| 「時効は3年」「時効は5年」 | 2年(健保法第193条) |
| 「督促は訴訟(裁判)でのみ可能」 | 督促状の発送で足りる(第180条第2項) |
- 健康保険法第161条・第180条・第181条・第193条・第167条e-Govで原文を読む
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第28条・第41条・第27条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第155条(保険料の徴収)・第161条(保険料の負担及び納付義務)・第164条(保険料の納付=翌月末日)・第167条(保険料の源泉控除)・第180条(督促及び滞納処分)・第181条(延滞金)・附則第9条(延滞金の割合の特例)・第193条(時効) 確認日: 2026-06-08(条文は 2026-09-30 e-Gov で再確認) 出典: e-Gov 健康保険法第161条・第167条・第180条・第181条・第193条 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 e-Gov 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第27条・第28条・第41条 https://laws.e-gov.go.jp/law/344AC0000000084 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

