社労士 健康保険法 問30:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
健康保険の高額療養費(70歳未満の被保険者)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア70歳未満の被保険者に係る高額療養費の自己負担限度額は、被保険者の標準報酬月額等に応じた所得区分(区分ア〜オの5区分)によって異なる。最も高い所得区分(区分ア:標準報酬月額83万円以上)の通常限度額は、252600+(医療費-842000)×1%円/月である。
- イ同一月内に複数の医療機関でかかった費用は、原則として合算して高額療養費の対象となる(合算高額療養費)。ただし、合算の対象となるのは同一の保険者(同一の健保組合・協会けんぽ等)への支払いに限られ、異なる保険者への支払いは合算されない。
- ウ直近12か月以内に3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降の自己負担限度額は「多数該当」として通常より低い限度額が適用される。区分ウ(標準報酬月額28万円以上50万円未満)の多数該当限度額は44,400円である(44,400円/月)。
- エ住民税非課税世帯に属する被保険者(区分オ)の自己負担限度額は、通常月35,400円/月(多数該当24,600円)であり、他の所得区分と比べて最も低い。
- オ高額療養費の現物給付化(窓口での限度額適用)は、70歳未満の被保険者であれば全員が自動的に適用される。よって、被保険者は事前に「限度額適用認定証」を申請しなくても、医療機関窓口での支払いが自動的に自己負担限度額にとどめられる。正答
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正答はオ(誤っている記述)です。
高額療養費の現物給付化(窓口での上限適用)を受けるには、被保険者が事前に「限度額適用認定証」を保険者(協会けんぽ等)に申請し、医療機関に提示する必要があります。自動的には適用されません。オが誤りです。
アは正しく、70歳未満の限度額は所得区分(ア〜オの5区分)によって異なり、最高所得区分(区分ア)の限度額は252600+(医療費-842000)×1%円/月です。
イは正しく、同一保険者内であれば複数医療機関の費用を合算できます(合算高額療養費)。ただし異なる保険者間での合算はされません。
ウは正しく、直近12か月で3回以上支給を受けた場合の4回目以降は「多数該当」で限度額が下がります(区分ウは44,400円)。
エは正しく、住民税非課税世帯(区分オ)の限度額35,400円/月は5区分中最低です。
70歳未満の高額療養費 所得区分別自己負担限度額(現行制度・2026-08見直し前):
| 区分 | 標準報酬月額の目安 | 通常限度額 | 多数該当限度額 |
|---|---|---|---|
| 区分ア | 83万円以上(年収約1,160万円以上) | 252600+(医療費-842000)×1%円/月 | 140,100円 |
| 区分イ | 53〜79万円(年収約770〜1,160万円) | 167400+(医療費-558000)×1%円/月 | 93,000円 |
| 区分ウ | 28〜50万円(年収約370〜770万円)・一般 | 80100+(医療費-267000)×1%円/月 | 44,400円 |
| 区分エ | 26万円以下(年収約370万円未満) | 57,600円 | 44,400円 |
| 区分オ | 住民税非課税世帯 | 35,400円/月 | 24,600円 |
※試験基準日2026-04-10時点の現行値。2026-08-01施行の見直しは試験対象外。
各選択肢の解説:
- ア(正): 区分ア(標準報酬月額83万円以上)の通常限度額は252600+(医療費-842000)×1%円/月(健保法施行令第41条第1項第1号)。「252,600円+(医療費−842,000円)×1%」という計算式が条文に規定されています。
- イ(正): 合算高額療養費は同一保険者内・同一月内の複数医療機関の費用を合算する制度です。ただし健保の被保険者の給付と国保被保険者の給付は保険者が異なるため合算されません。なお21,000円以上の自己負担分のみが合算対象となる点も重要です(個人の2万1千円ルール)。
- ウ(正): 多数該当は「直近12か月で3回以上高額療養費の支給を受けた月の翌月(4回目)以降」に適用されます。区分ウの多数該当限度額は44,400円(条文値)です。
- エ(正): 区分オ(住民税非課税世帯)の通常限度額35,400円/月・多数該当24,600円は5区分中最低です。
- オ(誤・正答): 70歳未満の被保険者が高額療養費の現物給付(窓口払いの上限適用)を受けるには、事前に保険者に「限度額適用認定証」(区分オは「限度額適用・標準負担額減額認定証」)を申請して発行を受け、医療機関窓口に提示する必要があります。自動適用ではありません。限度額適用認定証を提示しない場合は、いったん3割(または2割・1割)の一部負担金を全額支払い、後から高額療養費として差額の支給申請をすることになります。
【高額療養費の制度詳細・計算式の読み方・70歳以上との比較・実務上の注意点】
高額療養費の計算式(区分ア〜ウの「計算式型」):
区分ア・イ・ウは「基礎額+(医療費-基礎額対応の医療費)×1%」という計算式が採用されています。これは「医療費が高くなればなるほど限度額もわずかに上がる」という仕組みで、超高額な治療への対応として設けられています。
| 区分 | 計算式(条文) | 基礎額 | 対応医療費 |
|---|---|---|---|
| ア | 252600+(医療費-842000)×1%円/月 | 252,600円 | 842,000円 |
| イ | 167400+(医療費-558000)×1%円/月 | 167,400円 | 558,000円 |
| ウ | 80100+(医療費-267000)×1%円/月 | 80,100円 | 267,000円 |
区分エ・オは「定額型」(計算式なし)で、医療費がいくら高くなっても限度額は変わりません。
計算例(区分ウ・一般所得者の場合):
医療費総額が100万円(3割負担なら自己負担30万円)の場合:
- 区分ウの限度額: 80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1% = 80,100円+7,330円 = 87,430円
- 高額療養費の支給額: 300,000円(自己負担)-87,430円(限度額)= 212,570円
70歳以上の高額療養費との比較(社労士試験でも出題):
70歳以上(後期高齢者医療制度の被保険者は75歳以上で後期高齢者医療の対象)の一般所得者は所得区分が異なり、外来の個人単位の上限と世帯合算後の上限が別設定になっています(健保法施行令第43条)。70歳未満との主な違い:
| 比較項目 | 70歳未満 | 70歳以上(一般)|
|---|---|---|
| 一般所得の外来単位上限 | なし(全て合算) | 月18,000円(年間上限144,000円) |
| 一般所得の世帯合算後上限 | 80,100円+1%(区分ウ) | 57,600円 |
| 住民税非課税 | 35,400円(区分オ) | 8,000円(外来)・24,600円(入院含む) |
限度額適用認定証の申請手続と電子化(2023年以降の変化):
2023年12月以降、マイナ保険証(マイナンバーカードを健康保険証として利用)を利用する場合は、保険者が所得区分情報を医療機関に直接提供するため、別途の限度額適用認定証の提示が不要になりました。ただし従来の健康保険証(紙)のみ利用の場合は引き続き認定証の申請・提示が必要です。社労士試験では「限度額適用認定証の申請が原則必要」という制度の基本を問うことが多く、マイナ保険証による省略は令和8年度試験では最新の改正として把握しておく必要があります。
合算高額療養費の「21,000円ルール」(重要):
同一月内の複数の医療機関等での費用を合算する場合、1つの医療機関での自己負担額が21,000円未満のものは合算の対象外です(健保法施行令第41条第6項・いわゆる「2万1千円ルール」)。この足切りがないと少額の複数受診も全て合算されてしまい制度趣旨を超える支給になるためです。
高額療養費の支給申請と時効(実務):
高額療養費の支給申請は、発生した日(受診月の翌月1日)から2年以内に行わなければなりません(健保法第193条の時効)。保険者によっては自動計算・自動振込みを行うケースもありますが、協会けんぽでは自動支給はなく申請が必要です(健保組合によっては自動計算するものも存在)。
試験頻出の計算式を確実にマスターする学習法(上位資格への接続):
高額療養費の限度額計算は社労士試験本試験でも計算問題として出題されます。FP試験でも出題範囲であり、社労士合格後のFP1級・CFP試験にそのまま接続できる実務知識です。「区分ア〜ウは計算式型・エ・オは定額型」「多数該当は直近12か月で3回支給後の4回目から」「21,000円ルールで合算の足切りあり」の3点が骨格です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 健保法第115条・施行令第41条(70歳未満区分ア〜オの自己負担限度額・多数該当・合算の21,000円ルール)一次ソース突合済。2026-08-01見直し(KOUGAKU_RYOYOUHI_REVISION_DATE)は試験基準日2026-04-10後の施行=出題対象外。現行制度値(区分ア: 252,600+(医療費-842,000)×1%・区分オ: 35,400円)で作問。マイナ保険証による認定証省略(2023-12)も記載。正答オ維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第115条(高額療養費)・健康保険法施行令第41条(自己負担限度額・5区分) 確認日: 2026-06-08 出典: 厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf e-Gov 健康保険法施行令第41条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=402CO0000000362 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。