問題
健康保険の高額療養費(70歳未満の被保険者)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、2026年10月1日時点で施行されている制度を前提とすること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はオ(誤っている記述)です。
高額療養費の現物給付化(窓口での上限適用)は、マイナ保険証で受診し所得区分の情報提供に同意した場合は申請なしで適用されますが、資格確認書(健保法第51条の3)で受診する場合などは事前に保険者へ限度額適用認定証の申請等の手続が必要です。「受診方法にかかわらず全員に自動適用」は誤りです。オが誤りです。
アは正しく、70歳未満の限度額は所得区分(ア〜オの5区分)によって異なり、最高所得区分(区分ア)の限度額は270,300円+(医療費−901,000円)×1%です。
イは正しく、同一保険者の被保険者・被扶養者の自己負担で、70歳未満は1件21,000円以上のものを合算できます(世帯合算・施行令第41条第1項)。異なる保険者間での合算はされません。
ウは正しく、直近12か月で3回以上支給を受けた場合の4回目以降は「多数該当」で限度額が下がります(区分ウは44,400円)。
エは正しく、住民税非課税世帯(区分オ)の限度額36,900円/月は5区分中最低です。
70歳未満の高額療養費 所得区分別自己負担限度額(2026年8月1日から・2026年10月1日時点の現行額):
| 区分 | 標準報酬月額の目安 | 通常限度額 | 多数該当限度額 |
|---|---|---|---|
| 区分ア | 83万円以上(年収約1,160万円以上) | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 |
| 区分イ | 53〜79万円(年収約770〜1,160万円) | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 |
| 区分ウ | 28〜50万円(年収約370〜770万円)・一般 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 |
| 区分エ | 26万円以下(年収約370万円未満) | 61,500円/月 | 44,400円 |
| 区分オ | 住民税非課税世帯 | 36,900円/月 | 24,600円 |
※2026-08-01施行の健康保険法施行令第42条第1項の改正(令和8年政令第240号)後の額。改正前は区分ア252,600円+(医療費−842,000円)×1%、区分イ167,400円+(医療費−558,000円)×1%、区分ウ80,100円+(医療費−267,000円)×1%、区分エ57,600円、区分オ35,400円で、多数該当額は据置き(e-Gov 2026-09-30確認)。令和8年度試験(基準日2026-04-10)は改正前の額が出題対象だった。令和9年8月1日には所得区分の細分化が予定されている。
各選択肢の解説:
- ア(正): 区分ア(標準報酬月額83万円以上)の通常限度額は270,300円+(医療費−901,000円)×1%(健保法施行令第42条第1項第2号・2026年8月1日改正後)。
- イ(正): 世帯合算は、同一保険者の被保険者とその被扶養者の同一月の自己負担を合算する仕組みです。70歳未満は1件(医療機関・入院外来等の別)21,000円以上の自己負担のみが合算対象です(施行令第41条第1項)。健保の被保険者と国保の被保険者は保険者が異なるため合算されません。
- ウ(正): 多数該当は「直近12か月で3回以上高額療養費の支給を受けた月の翌月(4回目)以降」に適用されます。区分ウの多数該当限度額は44,400円(条文値)です。
- エ(正): 区分オ(住民税非課税世帯)の通常限度額36,900円/月・多数該当24,600円は5区分中最低です。
- オ(誤・正答): マイナ保険証(オンライン資格確認)で受診し、所得区分の情報提供に同意した場合は、限度額適用認定証なしで窓口負担が限度額までになります。一方、資格確認書で受診する場合などは、事前に保険者に「限度額適用認定証」(区分オは「限度額適用・標準負担額減額認定証」)を申請する必要があります。「受診方法にかかわらず全員に自動適用」は誤りです。窓口で限度額が適用されなかった場合は、いったん一部負担金を支払い、後から高額療養費として差額の支給を受けます。
【高額療養費の制度詳細・計算式の読み方・70歳以上との比較・実務上の注意点】
高額療養費の計算式(区分ア〜ウの「計算式型」・2026年8月1日改正後の額):
区分ア・イ・ウは「基礎額+(医療費-基礎額対応の医療費)×1%」という計算式が採用されています。これは「医療費が高くなればなるほど限度額もわずかに上がる」という仕組みで、超高額な治療への対応として設けられています。
| 区分 | 計算式(条文) | 基礎額 | 対応医療費 |
|---|---|---|---|
| ア | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 270,300円 | 901,000円 |
| イ | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 179,100円 | 597,000円 |
| ウ | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 85,800円 | 286,000円 |
区分エ・オは「定額型」(計算式なし)で、医療費がいくら高くなっても限度額は変わりません。
計算例(区分ウ・一般所得者の場合):
医療費総額が100万円(3割負担なら自己負担30万円)の場合:
- 区分ウの限度額: 85,800円+(1,000,000円-286,000円)×1% = 85,800円+7,140円 = 92,940円
- 高額療養費の支給額: 300,000円(自己負担)-92,940円(限度額)= 207,060円
70歳以上の高額療養費との比較(社労士試験でも出題):
70歳以上(後期高齢者医療制度の被保険者は75歳以上で後期高齢者医療の対象)の一般所得者は所得区分が異なり、外来の個人単位の上限と世帯合算後の上限が別設定になっています(健保法施行令第41条・第42条)。70歳未満との主な違い:
| 比較項目 | 70歳未満 | 70歳以上(一般) |
|---|---|---|
| 一般所得の外来単位上限 | なし(1件21,000円以上のものを合算) | 月22,000円(施行令第42条第5項第1号) |
| 一般所得の世帯合算後上限 | 85,800円+1%(区分ウ) | 61,500円(同条第3項第1号) |
| 住民税非課税 | 36,900円(区分オ) | 低所得Ⅱ:外来11,000円・入院含む25,700円/低所得Ⅰ:外来8,000円・入院含む15,700円(同条第3項第5号・第6号、第5項) |
※70歳以上の額も2026年8月1日に改定(改正前は外来18,000円・世帯57,600円・低所得Ⅱ 外来8,000円/24,600円・低所得Ⅰ 外来8,000円/15,000円)。外来の年間上限額は本問では扱わない。
限度額適用認定証とマイナ保険証:
マイナ保険証(マイナンバーカードによるオンライン資格確認)を利用する場合は、医療機関が所得区分の情報を確認できるため、別途の限度額適用認定証の提示が不要です。被保険者証は2024年12月2日以降新たに交付されなくなり、電子資格確認を受けることができない人などには資格確認書が交付されます(健保法第51条の3)。資格確認書で受診する場合は、限度額適用認定証の申請等の事前の手続が必要です。
合算高額療養費の「21,000円ルール」(重要):
同一月内の複数の医療機関等での費用を合算する場合、1つの医療機関での自己負担額が21,000円未満のものは合算の対象外です(70歳未満・健保法施行令第41条第1項・いわゆる「2万1千円ルール」)。この足切りがないと少額の複数受診も全て合算されてしまい制度趣旨を超える支給になるためです。
高額療養費の支給申請と時効(実務):
高額療養費の支給申請は、発生した日(受診月の翌月1日)から2年以内に行わなければなりません(健保法第193条の時効)。保険者によっては自動計算・自動振込みを行うケースもありますが、協会けんぽでは自動支給はなく申請が必要です(健保組合によっては自動計算するものも存在)。
試験頻出の計算式を確実にマスターする学習法(上位資格への接続):
高額療養費の限度額計算は社労士試験本試験でも計算問題として出題されます。FP試験でも出題範囲であり、社労士合格後のFP1級・CFP試験にそのまま接続できる実務知識です。「区分ア〜ウは計算式型・エ・オは定額型」「多数該当は直近12か月で3回支給後の4回目から」「21,000円ルールで合算の足切りあり」の3点が骨格です。
- 健康保険法第51条の3・第193条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第115条(高額療養費)・健康保険法施行令第41条(支給要件・世帯合算の21,000円要件)・第42条(高額療養費算定基準額・5区分) 確認日: 2026-06-08(条番号は2026-09-30 e-Gov で再確認) 出典: 厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf e-Gov 健康保険法施行令 https://laws.e-gov.go.jp/law/215IO0000000243 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

