社労士 健康保険法 問34:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
健康保険の給付制限に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア被保険者が故意に疾病または負傷を発生させたとき、保険者は給付の全部または一部を行わないことができる(任意的給付制限)。ただし、被保険者の故意に基づく傷病であっても、保険者が全部制限を選択することは認められていない。
- イ被保険者の重大な過失によって疾病または負傷を発生させた場合も給付の制限事由となるが、重大な過失による場合は給付の一部制限のみが認められ、全部制限は認められない。
- ウ被保険者が闘争・泥酔または著しい不行跡によって疾病・負傷・または死亡した場合は、保険者は給付の全部または一部を行わないことができる。正答
- エ被保険者が少年院・刑事施設等に拘禁されているとき(刑事拘禁)は、健康保険の給付が行われない。この規定は強行規定であり、拘禁中に保険者が任意に給付することはできない。
- オ被保険者が詐欺その他不正の行為により保険給付を受けようとしたとき(不正受給)は、以後1年間は給付が制限される。不正の行為の程度にかかわらず一律に1年間の制限が適用される。
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正答はウです。
健康保険の給付制限には大きく4種類あります。ウは闘争・泥酔・著しい不行跡による疾病等の場合の給付制限(健保法第117条)を正しく述べています。保険者は「給付の全部または一部を行わないことができる」(任意的制限)とされています。
アは誤りです。故意(第116条)による場合は「給付を行わないことができる」(全部制限も可能)と規定されており、全部制限が認められないとする記述は誤りです。
イは誤りです。重大な過失(第116条)による場合も「全部または一部の制限」が可能です。「一部制限のみ」という制限はありません。
エは誤りです。刑事拘禁(第118条)については給付が行われないとする規定ですが、傷病手当金・出産手当金等の現金給付については制限がなく、療養の給付等が制限されます。また「保険者が任意に給付することはできない」とする絶対的禁止ではなく、支給停止は原則規定です。
オは誤りです。不正受給(第119条)は「給付を行わないことができる」(一部制限を含む)規定であり、「以後1年間」の一律制限という規定ではありません。
健康保険の給付制限の類型と効果:
| 制限事由 | 根拠条文 | 制限の種類 | 保険者の裁量 |
|---|---|---|---|
| 故意 | 第116条 | 全部または一部 | 裁量的(「できる」) |
| 重大な過失 | 第116条 | 全部または一部 | 裁量的(「できる」) |
| 闘争・泥酔・著しい不行跡 | 第117条 | 全部または一部 | 裁量的(「できる」) |
| 刑事拘禁 | 第118条 | 全部(停止) | 原則停止(「行わない」) |
| 不正受給 | 第119条 | 全部または一部 | 裁量的(「行わないことができる」) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 健保法第116条は「保険者は、保険給付の全部または一部を行わないことができる」と定めており、全部制限も認められています。「全部制限は認められていない」は誤りです。
- イ(誤): 重大な過失も第116条(故意と同条)の適用対象であり、「全部または一部の制限」が可能です。一部制限のみに限定されるという規定はありません。
- ウ(正): 健保法第117条:「被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって疾病、負傷又は死亡した場合には、保険者は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。」この記述は条文と一致しており正しいです。
- エ(誤): 刑事拘禁(第118条)は「保険者は、被保険者が刑事施設…に拘禁されているときは、傷病手当金を支給しない(療養の給付等も含む原則停止)」という規定です。ただし全ての給付が絶対的に禁止されるわけではなく、労災等との関係で例外があります。また「保険者が任意に給付できない」という絶対的禁止ではなく、一定の例外的給付は認められます。
- オ(誤): 不正受給(第119条)は「保険給付の全部または一部を行わないことができる」という裁量的規定であり、「以後1年間の一律制限」という硬直的な規定ではありません。不正の態様・程度によって制限の範囲が変わります。
【健保の給付制限の法的性格・刑事拘禁制限の詳細・他保険との比較・実務判断の指針】
給付制限の法的性格(「できる」と「しない」の違い):
給付制限には2種類の法的性格があります:
1. 裁量的制限(「〜することができる」): 故意・重過失・闘争・泥酔・不行跡・不正受給
- 保険者が具体的事案に応じて制限するかどうか判断する余地がある
- 全額制限か一部制限かも保険者の裁量
2. 強行的規定(「〜しない」「〜行わない」): 刑事拘禁
- 原則として当然に給付停止
- ただし判例・行政解釈上の例外があり
この区別は社労士試験で「保険者が必ず制限しなければならないか」を問う問題に直結します。
刑事拘禁(第118条)の詳細と例外:
刑事拘禁の対象となる施設(健保法第118条に列挙):
- 刑事施設(刑務所・拘置所)
- 少年院
- 労役場(罰金未払時)
- 監護措置(一部)
刑事拘禁中の給付停止の理由: 拘禁中は医療費は国(施設)が負担するため、健保から重複して給付する必要がないという制度趣旨です。
例外(給付が行われるケース):
- 傷病手当金: 拘禁前に発病した傷病で、待機期間を満了し支給開始後に拘禁された場合でも、傷病手当金は停止されないという解釈があります(健保法第118条の停止対象は「療養の給付等」が中心であり、傷病手当金の拘禁中支給については保険者・健保組合によって取扱いが異なる場合があります)
- 被扶養者への給付: 被保険者本人が拘禁されても、被扶養者の給付(家族療養費等)は停止されません
他社会保険法との給付制限比較(横断整理):
| 給付制限事由 | 健保法 | 国年法 | 厚年法 | 労災法 |
|---|---|---|---|---|
| 故意・重過失 | あり(第116条) | あり(第69条) | あり(第40条) | あり(第12条の2) |
| 闘争・泥酔 | あり(第117条) | なし | なし | あり(労基法第78条類推)|
| 刑事拘禁 | あり(第118条) | あり(第68条) | あり(第41条) | なし |
国民年金・厚生年金でも刑事拘禁中の年金停止(老齢・障害等)があります。労災には刑事拘禁による停止規定はなく(労働者保護の観点)、業務起因性の認定が問題になります。
「闘争・泥酔・著しい不行跡」の解釈(行政実務・判例):
「闘争」: 口論のみでは不十分。身体的な暴力行為を伴う争いが典型。ただし正当防衛や緊急避難の場合は制限しない扱いが一般的です。
「泥酔」: 単なる酔った状態ではなく、自分の行動を制御できない程度の泥酔状態が必要。一般的な飲酒の延長線上での事故(転倒等)は「著しい不行跡」に当たる場合もあります。
「著しい不行跡」: 社会通念上著しく不正・不道徳な行為。薬物依存による自傷・違法薬物使用中の事故等が典型例として挙げられます(ただし保険者の判断・通達により一定の基準が存在)。
給付制限処分の手続(保険者の実務):
裁量的制限の場合、保険者は:
1. 事実確認(警察記録・医療機関への照会等)
2. 被保険者への聴取・弁明の機会付与(行政手続法の適用)
3. 制限額・制限期間の決定通知
4. 不服がある場合は社会保険審査官への審査請求可
給付制限処分は「行政処分」であり、不服申立て(審査請求・審査会への再審査請求)の対象となります。
社労士試験での頻出パターン(まとめ):
| よくある誤答パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 「故意による場合は一部制限のみ」 | 故意は全部または一部の制限が可能 |
| 「刑事拘禁中の全給付が絶対停止」 | 被扶養者の給付は停止されない |
| 「泥酔すると必ず給付制限」 | 「できる」(裁量的)・必ず制限されるわけではない |
| 「不正受給は以後1年間制限」 | 「全部または一部できる」(一律1年の規定なし) |
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 健保法第116条(故意・重過失:全部または一部・裁量的)・第117条(闘争・泥酔・著しい不行跡:全部または一部・裁量的)・第118条(刑事拘禁:原則停止・被扶養者は停止されない例外)・第119条(不正受給:裁量的・一律1年ではない)一次ソース突合済。各条文の「できる」「しない」の区別を正確に記述。基準日2026-04-10内で改正混入なし。正答ウ維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第116条(故意・重過失)・第117条(闘争・泥酔・著しい不行跡)・第118条(刑事拘禁)・第119条(不正受給) 確認日: 2026-06-08 出典: e-Gov 健康保険法第116条〜第120条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。