問題
健康保険法の罰則に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウです。
健保法には両罰規定(法人両罰規定)が設けられており、事業主が法人の場合に、違反行為を行った従業員・役員だけでなく、法人そのものにも罰金刑が科される仕組みがあります(健保法第214条)。ウが正しい記述です。
アは誤りです。届出義務違反の罰金上限は100万円以下ではなく50万円以下(健保法第208条・「6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」)です。
イは誤りです。健保法上に「診療報酬不正請求に5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」という規定はありません。診療報酬不正請求は保険医療機関の指定取消し(健保法第80条)や詐欺罪(刑法)の問題になりますが、健保法の罰則条文には当該内容の規定はありません。
エは誤りです。健保法自体にも、被保険者が報告命令に従わず又は虚偽の答弁をしたときの30万円以下の罰金(第210条)があり、不正受給は刑法の詐欺罪(第246条)の対象にもなり得ます。「刑事罰の対象にはならない」とは言えません。
オは誤りです。健保法に「10年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」という罰則はありません。事業主が督促状に指定する期限までに保険料を納付しないときは、第208条第3号により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
健康保険法の主要罰則規定(一覧):
| 違反行為 | 罰則 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 事業主の届出義務違反(虚偽・無届け等)・督促期限までの保険料不納付等 | 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 第208条 |
| 事業主以外の者の質問への不答弁・検査拒否等 | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 第209条 |
| 被保険者等の報告命令違反・虚偽答弁 | 30万円以下の罰金 | 第210条 |
| 両罰規定(法人・人) | 第207条の3〜第208条・第213条の2・第213条の3の違反に各本条の罰金刑 | 第214条 |
| 過料 | 10万円以下・20万円以下など | 第215条〜第222条 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 届出義務違反(無届け・虚偽届出)の罰金上限は50万円以下(健保法第208条)。「100万円以下」は誤りです。拘禁刑は6か月以下が正しいです。
- イ(誤): 健保法に「診療報酬不正請求に対する5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」という条文はありません。保険医療機関の不正請求に対する健保法上の制裁は「保険医療機関の指定取消し・保険医の登録取消し」(第80条・第81条)と不正に受けた額の返還・加算金(第58条第3項)が主たる手段です。なお刑法上の詐欺罪(第246条)による刑事訴追は別途可能です。
- ウ(正): 健保法第214条第1項は「法人…の代表者…又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第207条の3から第208条まで、第213条の2又は第213条の3の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する」と規定しています。第208条(事業主の届出義務違反等)は対象に含まれます。
- エ(誤): 健保法第210条は、被保険者又は被保険者であった者が第60条第2項の報告命令に正当な理由なく従わず、又は質問に虚偽の答弁をしたときに30万円以下の罰金(刑事罰)を定めています。さらに偽りによる不正受給は刑法の詐欺罪(第246条・10年以下の拘禁刑)の対象となり得ます。健保法上は不正利得の徴収(第58条)・傷病手当金等の不支給決定(第120条)もあります。「刑事罰の対象にはならない」は誤りです(被保険者の届出義務違反等の過料は第217条)。
- オ(誤): 保険料の不納付について「10年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」という健保法上の規定はありません。事業主が督促状に指定する期限までに保険料を納付しないときの罰則は、第208条第3号の6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
【健保法罰則規定の体系・両罰規定の法的性格・他社会保険法との比較・不正給付の制裁ルート】
健保法の罰則の体系(第11章・第207条の2〜第222条):
健保法の罰則は大きく「刑事罰」と「過料」に分かれます:
刑事罰:
- 第207条の2〜第207条の4: 秘密の漏示・匿名診療等関連情報の不正利用等 → 1年以下の拘禁刑等
- 第208条: 事業主の届出義務違反・督促期限までの保険料不納付・帳簿不備付け・文書提出拒否等(第1号〜第5号) → 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
- 第209条: 事業主以外の者の質問への不答弁・検査拒否等 → 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
- 第210条: 被保険者等の報告命令違反・虚偽答弁 → 30万円以下の罰金
- 第211条〜第213条の3: 条ごとに異なる(罰金30万円以下・50万円以下等)
- 第214条: 両罰規定
過料(刑事罰ではない):
- 第215条〜第222条: 10万円以下・20万円以下など(例: 被保険者の申出・届出義務違反=第217条・10万円以下)
両罰規定(第214条)の条文構造:
1. 主体: 法人(人格のない社団等を含む)の代表者・管理人、法人又は人の代理人・使用人その他の従業者
2. 要件: 「その法人又は人の業務又は財産に関して」違反行為をしたこと
3. 対象となる違反行為: 第207条の3から第208条まで、第213条の2、第213条の3(すべての罰則ではない)
4. 効果: 行為者を罰するほか、法人又は人に「各本条の罰金刑」を科する
5. 手続: 人格のない社団等は代表者・管理人が訴訟行為を代表する(第2項)
社労士試験では「違反した使用人だけでなく法人にも罰金が科される」という原則を問います。
他の社会保険法にも事業主の届出義務違反の罰則と両罰規定がありますが、罰金の上限は法律ごとに異なるため、各法の条文で確認してください。
不正給付受領(詐欺)への制裁ルートの比較:
被保険者・医療機関等が不正に保険給付を受け取った場合の制裁ルートは複数あります:
1. 健保法上の給付制限(第120条): 6か月以内の期間を定め、傷病手当金・出産手当金の全部または一部を支給しない旨の決定(行政的制裁)
2. 健保法上の不正利得の徴収(第58条): 給付の価額の全部または一部を徴収(事業主等が虚偽の報告・証明をした場合は連帯納付命令)
3. 刑法上の詐欺罪(第246条): 人を欺いて財物を交付させた罪 → 10年以下の拘禁刑
4. 健保法の罰金(第210条): 報告命令違反・虚偽答弁 → 30万円以下の罰金
詐欺罪の法定刑は健保法の罰則より重く設定されています。社労士試験では健保法の条文上の罰則(拘禁刑・罰金・過料の区別)を問うことが多いです。
診療報酬不正請求に対する健保法上の制裁(重要):
イの選択肢で取り上げた診療報酬不正請求ですが、健保法上は刑事罰ではなく「保険医療機関の指定取消し・保険医の登録取消し」(健保法第80条・第81条)が主たる制裁手段です。取消し処分を受けると保険診療を行えなくなります。さらに不正請求で支払を受けた額は、返還に加えてその額に100分の40を乗じた額の支払を求められます(健保法第58条第3項)。刑事訴追は刑法の詐欺罪・詐欺未遂罪による(健保法の刑事罰条文は診療報酬不正請求を直接対象とするものではない)。
社労士試験での頻出パターン(まとめ):
| よくある誤答パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 「届出義務違反の罰金は100万円以下」 | 50万円以下(第208条) |
| 「法人には罰則が及ばない」 | 両罰規定(第214条)で法人にも罰金 |
| 「不正給付受領は刑事罰の対象外」 | 健保法第210条の罰金・刑法の詐欺罪の対象となり得る |
| 「保険料の不納付は罰則なし」 | 督促期限までに納付しない事業主は第208条第3号 |
| 「診療報酬不正請求は健保法で拘禁刑5年」 | 健保法は指定取消し・返還+加算金、詐欺罪は刑法問題 |
- 健康保険法第214条・第208条・第80条・第210条・第58条e-Govで原文を読む
- 刑法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第208条(事業主の届出義務違反等・6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)・第214条(両罰規定)・第215条以下(過料) 確認日: 2026-06-08 出典: e-Gov 健康保険法第208条〜第213条の3 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

