問題
健康保険の滞納処分および延滞金に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はアです。
健康保険の滞納保険料に係る延滞金の割合は原則年14.6%(健保法第181条)です。ただし附則第9条の特例(租税特別措置法の延滞税特例基準割合に連動)が適用される場合には実際の率が引き下げられることがあります。アが正しい記述です。
ウは誤りです。健保の滞納処分は健保法に別段の規定があるものを除き国税徴収の例によることとされています(健保法第183条「徴収の通則」)。独自規定のみで完結するわけではありません。
イは誤りです。督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して10日以上を経過した日でなければなりません(健保法第180条第3項)。「30日以上」は誤りです。
エは誤りです。保険料等の賦課・徴収の処分や第180条による処分(督促・滞納処分)に不服がある者は、社会保険審査官ではなく社会保険審査会に対して審査請求をします(健保法第190条)。保険給付に関する処分(審査官→審査会の2段階)とは手続が異なります。
オは誤りです。保険料徴収権の消滅時効は2年(健保法第193条)であり、「3年」は誤りです。
健保の保険料滞納に係る強制徴収手続の体系:
| 手続の段階 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 督促 | 督促状を発送して納付を促す(期限は発する日から10日以上経過した日) | 第180条第1項〜第3項 |
| 延滞金 | 督促をしたときに原則年14.6%(納期限の翌日から3月までは年7.3%)の延滞金 | 第181条(特例あり) |
| 滞納処分 | 差押え・換価・充当の強制手続 | 第180条第4項(国税滞納処分の例)・第183条 |
| 消滅時効 | 保険料徴収権は2年で時効 | 第193条(納入の告知・督促で更新) |
国税徴収の例による徴収(第183条)の意義:
健保法第183条は「保険料等は、この法律に別段の規定があるものを除き、国税徴収の例により徴収する」と定めています。これにより、税の強制徴収と同じ仕組みで保険料の滞納処分が実施されます。準用される主な手続:
- 財産調査・財産の差押え
- 差押財産の公売・換価
- 充当・配当
独自の滞納処分手続は持たず、税の強制徴収と同じ仕組みを借用することで実効性を確保しています。
各選択肢の解説:
- ウ(誤): 健保法第183条で「国税徴収の例による」と明示しています。「独自規定のみ」は誤りです。
- イ(誤): 健保法第180条第3項は「督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して十日以上を経過した日でなければならない」と定めています(繰上徴収の事由に該当する場合を除く)。「30日以上」は誤りです。
- ア(正): 健保法第181条第1項は督促をしたときの延滞金につき原則「年14.6%」(保険料の督促は納期限の翌日から3月までは年7.3%)の割合を規定しています。附則第9条は、当分の間、延滞税特例基準割合が年7.3%に満たない年は延滞金の割合を調整すると定めており、実際の率が下がることがある点も正確です。
- エ(誤): 保険料等の賦課・徴収の処分や第180条の規定による処分に不服がある者は、社会保険審査会に審査請求をします(健保法第190条)。社会保険審査官への審査請求(第189条)は資格・標準報酬・保険給付に関する処分が対象です。
- オ(誤): 保険料徴収権の消滅時効は2年(健保法第193条第1項)。「3年」は誤りです。督促状の発送によって時効が中断(民法改正後は「更新」)される点は正しいですが、時効期間を誤っているためオ全体は誤りです。
【健保の滞納処分・延滞金の詳細・国税徴収法準用の実務・労働保険徴収法との比較・時効の更新】
延滞金14.6%の特例措置(詳細):
健保法第181条第1項の延滞金は原則年14.6%(保険料の督促に係るものは、納期限の翌日から3月を経過する日までは年7.3%)です。さらに附則第9条の特例(租税特別措置法第94条第1項の延滞税特例基準割合に連動)により、実際の率はこれより低くなります(具体的な率は年ごとに変わるため、各年の公表値で確認)。延滞金は、徴収金額が1,000円未満のとき・納期を繰り上げて徴収するとき・公示送達で督促したとき・滞納にやむを得ない事情があるときは徴収されず(第181条第1項ただし書)、督促状の指定期限までに完納したときや計算額が100円未満のときも徴収されません(同条第4項)。試験では「原則14.6%(3月までは7.3%)・特例で下がる場合がある」という原則把握が重要です。
督促から滞納処分までのフロー(実務上の手続):
```
保険料未納(納付期日超過)
↓
督促状の発送(健保法第180条)
↓ 督促状記載の期限
納付がない場合
↓
延滞金の発生(年14.6%・特例適用あり・第181条)
↓
滞納処分(国税徴収の例による・第183条)
→ 財産調査
→ 差押え(給与・預金・不動産等)
→ 公売・換価(差押え財産を金銭化)
→ 充当・配当(保険料債権への充当)
```
「国税徴収の例による」徴収の実務上の意味(重要な詳細):
健保法第180条第4項・第183条により、保険者等(協会管掌の一般の被保険者に係る保険料は厚生労働大臣=日本年金機構が実務担当、組合管掌は健保組合)は国税滞納処分の例による強制徴収権限を持ちます。主な準用内容:
1. 財産調査権: 事業主の財産状況を調査する権限(銀行照会・不動産登記照会等)
2. 差押え: 給与・預金・不動産・売掛債権等の差押え
3. 公売: 差押え財産を競売にかけて換価
4. 充当: 換価代金を保険料債権に充当
この強制徴収権は保険料の確保(保険財政の健全性維持)と被保険者の給付権の保全に不可欠です。
健保と労働保険徴収法の滞納処分の比較:
| 比較項目 | 健康保険(健保法) | 労働保険(徴収法) |
|---|---|---|
| 延滞金率 | 年14.6%(納期限の翌日から3月までは7.3%・特例適用あり・第181条) | 年14.6%(納期限の翌日から2月までは7.3%・徴収法第28条第1項) |
| 督促 | 督促状(第180条)・期限は発する日から10日以上経過した日 | 督促状・同じく10日以上経過した日(徴収法第27条第2項) |
| 滞納処分 | 国税滞納処分の例(第180条第4項) | 国税滞納処分の例(徴収法第27条第3項) |
| 不服申立て | 保険料の賦課・徴収、督促・滞納処分は社会保険審査会へ(第190条)/給付決定は審査官→審査会(第189条) | (本問の範囲外) |
時効の更新(旧:中断)の条文:
現行の健保法第193条は、第1項で「保険料等を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する」、第2項で「保険料等の納入の告知又は督促は、時効の更新の効力を有する」と定めています(かつての「中断」は、民法の改正にあわせて「更新」という用語になっています)。更新されると、その時から新たに時効が進行します。
また、審査請求・再審査請求(第189条第1項)は、時効の完成猶予及び更新に関しては裁判上の請求とみなされます(同条第3項)。保険料の徴収権と保険給付を受ける権利が同じ2年である点も、第193条第1項の文言で確認できます。
社労士試験での頻出パターン(まとめ):
| よくある誤答パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 「健保の滞納処分は独自規定のみ」 | 国税滞納処分の例による(第180条第4項)・国税徴収の例により徴収(第183条) |
| 「督促状の期限は30日以上」 | 発する日から10日以上経過した日(第180条第3項) |
| 「延滞金は常に14.6%」 | 原則14.6%(3月までは7.3%)・特例措置で引下げあり |
| 「保険料時効は3年」 | 2年(健保法第193条) |
| 「滞納処分への不服は社会保険審査官へ」 | 社会保険審査会へ審査請求(第190条) |
- 健康保険法第181条・第183条・第180条・第190条・第193条e-Govで原文を読む
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第28条・第27条e-Govで原文を読む
- 民法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第180条(督促・第3項 期限は10日以上経過した日・第4項 国税滞納処分の例による処分)・第181条(延滞金)・附則第9条(延滞金の割合の特例)・第183条(徴収に関する通則・国税徴収の例)・第190条(保険料等の賦課・徴収の処分、第180条の処分への不服は社会保険審査会へ審査請求)・第193条(時効2年) 確認日: 2026-06-08(条文は 2026-09-30 e-Gov で再確認) 出典: e-Gov 健康保険法第180条・第181条・第183条・第190条・第193条・附則第9条 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 e-Gov 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第27条・第28条 https://laws.e-gov.go.jp/law/344AC0000000084 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

