社労士 健康保険法 問43:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
健康保険の適用事業所に使用される者が2つ以上の事業所で勤務する場合(複数事業所勤務)の取扱いに関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア同時に2以上の適用事業所に使用される被保険者は、いずれか1つの事業所の保険者を選択する旨の届出を行う必要はなく、すべての事業所においてそれぞれの保険者の被保険者となる。
- イ同時に2以上の適用事業所に使用される被保険者は、その者が主として生計を維持する事業所(主たる事業所)の保険者が被保険者として管轄する。この場合、被保険者は「主たる事業所」を選択する届出を行う必要はなく、保険者が職権で主たる事業所を認定する。
- ウ同時に2以上の適用事業所に使用される被保険者は、被保険者となるべき事業所(選択事業所)を選択して届出を行う。各事業所の報酬は合算した額を標準報酬月額の算定基礎とし、選択した保険者のもとで一元管理される。正答
- エ同時に2以上の適用事業所に使用される被保険者は、それぞれの事業所の使用関係に基づき各事業所でそれぞれ被保険者となるが、標準報酬月額の算定にあたっては、それぞれの事業所の報酬を別々に算定して保険料を各事業所ごとに独立して負担する仕組みとなっており、合算の手続きは行われない。
- オ同時に2以上の適用事業所に使用される者は、そのいずれもが強制適用事業所である場合、すべての事業所においていったん被保険者となったうえで、保険者が合議によっていずれかの事業所の保険者を選択し、それ以外の事業所での被保険者資格を消滅させる手続きをとる。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正答はウです。
同時に2以上の適用事業所に使用される被保険者は、被保険者になるべき事業所を1つ選択して届出を行います(健保法第55条)。このとき、すべての事業所の報酬を合算した額を標準報酬月額の算定基礎とし、選択した保険者が一元的に管理します。ウが正しい記述です。
アは誤りです。複数の保険者にそれぞれ加入し続けることはできません。選択届出が必要です。
イは誤りです。「保険者が職権で認定する」のではなく、被保険者が自ら選択届出を行います。
エは誤りです。各事業所ごとに独立して算定・負担するのではなく、報酬は合算して1つの標準報酬月額を算定します。
オは誤りです。保険者の合議で決めるのではなく、被保険者本人が選択届出を行います。
2以上の事業所に使用される場合の手続(健保法第55条)の体系:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 健康保険法第55条 |
| 手続の主体 | 被保険者本人が選択届出を行う |
| 届出先 | 選択した事業所の所在地を管轄する年金事務所(または健保組合) |
| 標準報酬の算定 | すべての事業所の報酬を合算した額を基礎に算定 |
| 保険料の按分 | 合算した標準報酬月額を各事業所の報酬額で按分し、各事業所が分担して納付 |
| 保険給付の管轄 | 選択した保険者が一元的に管理 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 2以上の事業所に使用される場合、複数の保険者の被保険者となり続けることはできません。被保険者が選択届出を行い、1つの保険者のもとで管理される仕組みです。
- イ(誤): 「主たる事業所を保険者が職権で認定する」という規定はありません。選択は被保険者本人が行い、届出によって選択事業所の保険者が確定します。
- ウ(正): 健保法第55条の仕組みを正確に述べています。選択届出を行い、各事業所の報酬を合算した額を標準報酬月額の算定基礎とします。これが本問の正答です。
- エ(誤): 各事業所ごとに独立して算定・納付するわけではありません。合算した標準報酬月額を各事業所の報酬額で按分(比例配分)した保険料を各事業主が納付します。合算・按分の手続きが必須です。
- オ(誤): 「保険者が合議」するのではなく、被保険者本人が選択します。保険者が自律的に決定する手続きではありません。
【2以上の事業所に使用される被保険者の制度詳細・報酬合算の具体的計算・厚生年金との比較・選択変更の手続】
健保法第55条(2以上の事業所使用)の制度背景:
副業・兼業が一般化した現代において、複数の事業所に同時に使用される労働者が増加しています。健保法は、1人の被保険者が複数の保険者に重複加入することで保険料負担の二重計上や給付の重複が生じないよう、選択届出制度を設けています。
この制度の核心は2点です:
1. 被保険者自身が選択する: 保険者や事業主が決めるのではなく、被保険者が選択届出書を提出
2. 報酬は全事業所分を合算: 各事業所からの報酬をすべて合算した額で標準報酬月額を決定
報酬合算と保険料按分の具体的計算:
例として、被保険者Aが事業所X(報酬20万円)と事業所Y(報酬10万円)の両方に勤務している場合:
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 合算報酬月額 | 20万円 + 10万円 = 30万円 |
| 標準報酬月額(算定基礎) | 30万円(当該等級の標準報酬月額) |
| 保険料(協会けんぽ・料率9.9%%仮定) | 30万円 × 料率 = 月額保険料合計 |
| 事業所Xの按分保険料 | 月額保険料合計 × 20万/30万 = 2/3相当 |
| 事業所Yの按分保険料 | 月額保険料合計 × 10万/30万 = 1/3相当 |
各事業主はこの按分額(労使折半後の事業主負担分)をそれぞれ納付します。被保険者負担分も同様に按分されます。
選択届出の手続詳細:
1. 届出書: 「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出
2. 届出期限: 2以上の事業所に使用されるに至った日から10日以内
3. 届出先: 選択した事業所の所在地を管轄する年金事務所(または健保組合)
4. 変更: 選択変更は可能(「選択事業所変更届」を提出)
選択の変更が生じるケース:
- 選択していた事業所を退職した場合 → 残った事業所が自動的に選択事業所となる
- 選択事業所が廃止された場合 → 他の事業所に変更
- 任意変更 → 届出により変更可能
厚生年金保険との比較(同一の仕組み):
2以上の事業所に使用される場合の選択届出制度は、厚生年金保険法でも全く同様の仕組みが設けられています(厚年法第13条の2・第14条)。健保と厚年の選択事業所は同一でなければならないため、実務上は「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」として一体的に処理されます。
| 比較項目 | 健康保険(健保法第55条) | 厚生年金保険(厚年法第13条の2) |
|---|---|---|
| 選択届出の仕組み | 同一 | 同一 |
| 報酬の合算 | 全事業所報酬の合算 | 全事業所報酬の合算 |
| 按分方法 | 各事業所報酬額で按分 | 各事業所報酬額で按分 |
| 届出書 | 共通の「二以上事業所勤務届」 | 共通(健保と一体処理) |
国民健康保険との関係(複数加入禁止の原則):
健保の被保険者となった後は、同一事由では国民健康保険に重複加入することはできません。2以上の事業所に使用される場合でも、健保の選択届出により健保被保険者として一元管理されるため、国保との重複加入にはなりません。
社労士試験での頻出パターン(まとめ):
| よくある誤答パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 「複数の保険者にそれぞれ加入」 | 選択届出により1つの保険者のみで管理 |
| 「保険者が職権で事業所を認定」 | 被保険者本人が選択届出を行う |
| 「各事業所ごとに独立して算定・納付」 | 全事業所の報酬を合算し、按分して各事業主が納付 |
| 「選択変更は不可」 | 届出により変更可能 |
| 「健保のみ選択届出・厚年は別」 | 健保と厚年は共通の届出書で一体処理 |
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 健保法第55条(2以上の事業所使用・被保険者が選択届出・10日以内・全報酬合算・各事業所報酬で按分)一次ソース突合済。「保険者が職権認定」「各事業所独立算定」「保険者合議」はいずれも誤り。厚生年金との共通処理・選択変更可を確認。基準日2026-04-10内で改正混入なし。正答ウ確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第55条(2以上の事業所に使用される場合の取扱い) 確認日: 2026-06-08 出典: e-Gov 健康保険法第55条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。