社労士 健康保険法 問49:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
健康保険における高額長期疾病(特定疾病)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア特定疾病(高額長期疾病)の対象疾病は、難病医療法に定める指定難病(現在約340疾患)に該当するものであれば、医師の診断に基づき幅広く認定されるものである。指定難病全般が自動的に特定疾病の対象となる。
- イ特定疾病に該当する被保険者または被扶養者が人工透析を要する慢性腎臓病(透析患者)である場合、その者の標準報酬月額が70歳未満で53万円以上であれば、自己負担限度額は1万円ではなく2万円が適用される。正答
- ウ特定疾病の対象となる後天性免疫不全症候群(HIV感染)は、血液製剤や輸血等の医療行為を原因とする感染者に限定して適用される制度であり、その他の経路による感染者(性感染・母子感染等)は対象とならない。
- エ特定疾病に該当する被保険者が、同一の特定疾病について複数の保険医療機関を受診した場合、各医療機関での自己負担を合算して月額1万円を超えた部分について高額長期疾病の高額療養費が支給される。
- オ特定疾病(高額長期疾病)の3種類の対象疾病のうち、人工透析を要する慢性腎臓病のみに月額2万円の特例が設けられているのは、透析患者の中に高所得者が含まれる場合に応能負担の観点から高い自己負担を求めるという政策的理由による。
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正答はイです。
高額長期疾病(特定疾病)は、血友病・人工透析を要する慢性腎臓病・HIV感染(後天性免疫不全症候群)の3種類が対象疾病です。
自己負担限度額は原則月額1万円ですが、70歳未満で標準報酬月額53万円以上の人工透析患者(上位所得者)は2万円が適用されます(健保法施行令第41条)。イが正しい記述です。
アは誤りです。特定疾病は難病全般ではなく3疾患に限定されます。
ウは誤りです。HIV感染は感染経路を問わず対象となります。
エは誤りです。特定疾病の自己負担限度額は各医療機関ごとに独立して適用されます(合算はしません)。
オの説明は正しい方向性ですが、「応能負担の観点」という表現が制度趣旨を部分的にしか説明しておらず不完全です。イが最も正確な記述です。
高額長期疾病(特定疾病)の体系(健保法施行令第41条):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象疾病 | 1. 血友病(先天性血液凝固因子障害) 2. 人工透析を要する慢性腎臓病 3. 後天性免疫不全症候群(HIV感染) |
| 自己負担限度額(原則) | 月額1万円 |
| 2万円特例 | 70歳未満・標準報酬月額53万円以上の人工透析患者のみ |
| 2万円特例の対象外 | 血友病・HIV感染患者(一律1万円)/ 70歳以上の人工透析患者(1万円) |
| 複数医療機関受診 | 各医療機関ごとに1万円(2万円)が独立適用(合算なし) |
| 申請手続き | 特定疾病療養受療証を保険者から取得・医療機関に提示 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 特定疾病は難病医療法の指定難病(約340疾患)とは全く別の制度です。指定難病全般が特定疾病になるわけではなく、健保の特定疾病は3疾患のみに限定されています。
- イ(正): 70歳未満かつ標準報酬月額53万円以上の人工透析患者には2万円特例が適用されるという要件を正確に述べています。これが本問の正答です。
- ウ(誤): HIV感染は感染経路を問わず対象となります。輸血・血液製剤・性感染・母子感染等、経路にかかわらず全HIV感染者が特定疾病の対象です。
- エ(誤): 特定疾病の自己負担限度額は各医療機関ごとに独立して適用されます。複数の医療機関での自己負担を「合算して1万円超の部分を支給」という仕組みはありません。
- オ(不正確): 2万円特例が人工透析のみに設けられている理由の説明として「応能負担」は一面的に正しいですが、「血友病やHIV感染には収入が高くても2万円の特例が適用されない」という制度の全体像を正確に説明していません。オよりイが正確です。
【特定疾病制度の立法経緯・3疾患の特性・2万円特例の政策的背景・特定疾病療養受療証の手続詳細・通常高額療養費との比較・難病医療法との区別】
特定疾病制度の立法経緯:
高額長期疾病(特定疾病)の制度は昭和51年(1976年)に健保法施行令で創設されました。創設時の対象は血友病と人工透析の2疾患のみで、後天性免疫不全症候群(HIV感染)は平成8年(1996年)に追加されました(ウが誤りである背景)。
HIV感染の追加指定の経緯: 平成8年当時、血液製剤(フィブリノゲン製剤等)によるHIV感染(薬害エイズ)が社会問題となり、感染者の医療費負担軽減を目的として特定疾病に追加されました。しかし制度は「感染経路を問わず全HIV感染者」を対象としており、輸血・性感染・母子感染等を区別しません。
健保の特定疾病と難病医療法(指定難病)の違い(アが誤りである理由):
| 比較項目 | 健保の特定疾病(高額長期疾病) | 難病医療法の指定難病 |
|---|---|---|
| 対象疾患数 | 3疾患(血友病・透析・HIV) | 約340疾患 |
| 自己負担軽減 | 月額1万円(または2万円) | 自己負担上限月額は所得区分別(最大3万円) |
| 申請先 | 健康保険の保険者 | 都道府県・指定都市 |
| 根拠法 | 健康保険法施行令第41条 | 難病の患者に対する医療等に関する法律 |
2つの制度は全く別の制度です。指定難病であっても健保の特定疾病(3疾患)でなければ月額1万円の自己負担軽減は受けられません。
2万円特例の政策的背景(詳細):
人工透析患者に2万円特例が設けられた理由は、「透析は医学的に必要な処置であるが、透析自体によって就労能力が低下し必ずしも低所得者に限られない」という実態があり、高所得者については「応能負担(収入に応じた負担)」の観点から1万円より高い自己負担を求めることが合理的と判断されたためです。
2万円特例が人工透析のみで血友病・HIV感染には適用されない理由: 血友病・HIV感染患者の所得分布・治療実態を踏まえ、一律1万円の適用が政策判断として維持されています。
特定疾病療養受療証の手続詳細:
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 申請 | 被保険者が保険者(協会けんぽ・健保組合)に特定疾病療養受療証の交付を申請 |
| 添付書類 | 医師の診断書または意見書 |
| 交付 | 保険者が審査の上「特定疾病療養受療証」を交付 |
| 医療機関での提示 | 保険証と受療証を提示 → 窓口での自己負担が自動的に1万円(2万円)上限に |
| 注意点 | 受療証の提示がなければ通常の一部負担金が発生(事後的な還付が必要) |
複数医療機関受診時の取扱い(エが誤りである理由の詳細):
特定疾病の自己負担限度額は医療機関ごとに独立して適用されます。
例: 透析クリニック(月8,000円の自己負担)と内科病院(月5,000円の自己負担)を受診している場合:
- 透析クリニック: 8,000円(1万円上限未達)→ 8,000円を自己負担
- 内科病院: 5,000円(1万円上限未達)→ 5,000円を自己負担
- 合算: 13,000円だが、合算した高額療養費の支給はなし
通常の高額療養費の世帯合算(70歳未満の場合21,000円以上を合算)とは異なる仕組みです。
通常の高額療養費と特定疾病の比較:
| 比較項目 | 通常高額療養費(区分ウ一般) | 特定疾病(高額長期疾病) |
|---|---|---|
| 対象疾病 | 全疾病 | 3疾患のみ |
| 自己負担限度額(月) | 80100+(医療費-267000)×1%円/月 | 1万円(一部2万円) |
| 世帯合算 | 21,000円以上分を合算可 | 医療機関ごとに独立(合算なし) |
| 手続き | 事後的に申請 | 受療証提示で窓口自動適用 |
| 多数該当 | あり(直近12か月3回で4回目から引下げ) | 別途適用(特定疾病の1万円が更に引下げになることはない) |
社労士試験での頻出パターン(まとめ):
| よくある誤答パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 「指定難病(約340疾患)が全て特定疾病」 | 特定疾病は3疾患のみ(血友病・透析・HIV) |
| 「HIV感染は輸血・血液製剤による感染のみ対象」 | 感染経路問わず全HIV感染者が対象 |
| 「2万円特例は全特定疾病患者に適用」 | 2万円は70歳未満・標準報酬53万円以上の人工透析患者のみ |
| 「複数医療機関の自己負担を合算して1万円」 | 各医療機関ごとに独立して1万円上限 |
| 「特定疾病療養受療証がなくても窓口で1万円に」 | 受療証の提示が必要(なければ通常負担) |
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 健保法施行令第41条第9項(特定疾病3疾患・1万円/2万円・70歳未満標準報酬53万円以上の人工透析患者のみ2万円・各医療機関ごと独立適用)・HIV感染は感染経路問わず対象(平成8年追加指定)・特定疾病は難病医療法の指定難病とは別制度を一次ソース突合済。基準日2026-04-10内で改正混入なし。正答イ維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第115条(高額療養費)・健康保険法施行令第41条第9項(特定疾病・自己負担限度額1万円・70歳未満53万円以上の人工透析患者は2万円) 確認日: 2026-06-08 出典: e-Gov 健康保険法施行令第41条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211CO0000000362 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。