問題
国民年金の脱退一時金に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウです。
脱退一時金の支給月数上限は、2021年(令和3年)4月の改正により36か月(3年分)から60か月(5年分)に引き上げられました。ウはこの改正事実を正確に記述しており、正しい記述です。
アは誤りで、日本国内に住所を有するときは請求できません(附則第9条の3の2第1項ただし書第1号)。イは誤りで、6か月以上の判定に使う「保険料納付済期間等の月数」には全額免除期間は入りません(4分の1・半額・4分の3免除期間は所定の割合で算入)。
エは誤りで、脱退一時金の請求期限は「日本に住所を有しなくなった日から2年以内」が正しく、5年に延長された事実はありません(2021年4月に変わったのは「上限月数36→60か月」)。
オも誤りで、脱退一時金の支給を受けた期間は、合算対象期間(カラ期間)にも算入されません。その期間は受給資格期間の計算から完全に除外されます。
脱退一時金の全要件整理(2021年4月改正後の現行ルール):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 日本国籍を有しない者(被保険者でない者に限る)で、日本国内に住所を有しない者 |
| 最低加入期間 | 第1号被保険者としての保険料納付済期間等の月数が6か月以上(納付済期間+4分の1免除×3/4+半額免除×1/2+4分の3免除×1/4。全額免除は入らない) |
| 請求期限 | 日本に住所を有しなくなった日から2年以内 |
| 支給月数 | 納付月数に応じた支給月数(6か月単位)・上限60か月 |
| 上限改正 | 2021年4月以前は36か月(3年分)→ 改正後60か月(5年分) |
| 支給後の扱い | 支給を受けた期間は受給資格期間に算入されない(カラ期間にもならない) |
| 老齢基礎年金との関係 | 受給権(10年以上・老齢基礎年金)がある者は支給対象外 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 附則第9条の3の2第1項ただし書第1号は、「日本国内に住所を有するとき」は請求できないと定めています。外国籍であっても、日本国内に住所がある間は請求できません。
- イ(誤): 6か月以上の判定に使う「保険料納付済期間等の月数」は、保険料納付済期間の月数に、4分の1免除期間の月数×3/4・半額免除期間の月数×1/2・4分の3免除期間の月数×1/4を合算した月数です(同項本文)。全額免除期間は列挙されておらず算入されません。
- ウ(正): 2021年4月改正で上限が36か月→60か月に引き上げられました。これは正確な記述です。
- エ(誤): 請求期限は「日本に住所を有しなくなった日から2年以内」が正しく(附則第9条の3の2第1項ただし書第3号は「最後に被保険者の資格を喪失した日(同日に国内に住所があった者は、その後初めて国内に住所を有しなくなった日)から起算して二年を経過しているとき」を除外)、2021年4月に変わったのは「上限月数36→60か月」で請求期限は延長されていません。「5年に延長」は事実無根です。
- オ(誤): 脱退一時金の支給を受けたときは、その額の計算の基礎となった第1号被保険者期間は「被保険者でなかつたものとみなす」(附則第9条の3の2第4項)ため、受給資格期間(合算対象期間を含む)の計算から完全に除外されます。再入国後に被保険者となっても当該期間は算入されません。
【脱退一時金制度の立法趣旨と外国人労働者政策との連動】
脱退一時金は1994年(平成6年)の国際化対応として導入されました。日本の公的年金は「加入期間10年(受給資格期間)以上」で老齢基礎年金が発生しますが、短期滞在で帰国する外国人は受給資格を満たせず「保険料を払っただけ」という状態になりがちでした。脱退一時金はこの「掛け捨て感」を緩和するための制度です。
【2021年4月改正の背景:技能実習生・特定技能制度の拡大】
2021年4月の変更(上限36か月→60か月・請求期限は2年のまま据え置き)の背景は、技能実習制度・特定技能制度の拡大により、日本で長期に就労する外国人が増加したことです。なお、e-Gov の現行の附則第9条の3の2(2026-09-30確認)の除外事由は、国内に住所を有するとき・障害基礎年金等の受給権を有したことがあるとき・2年を経過しているときの3つです。なお、令和7年の年金制度改正法(令和7年法律第74号)により、除外事由を「日本国内に滞在するとき」「再入国の許可を受けているとき」などに改め、2年の起算点もそれに合わせる改正が、e-Gov の改正後版(2029-06-19施行分)に入っています。2026-09-30時点では未施行で、令和8年度試験の出題対象は現行の3つの除外事由です。
| 就労制度 | 標準滞在期間 | 改正前の影響 | 改正後 |
|---|---|---|---|
| 技能実習1号〜3号 | 最大5年(60か月) | 上限36か月で5年分が払い戻されない | 60か月で全期間対応 |
| 特定技能1号 | 最大5年(更新可) | 同上 | 同上 |
| 特定技能2号 | 無期限(帰国の場合) | 長期者が不利 | 最大60か月で改善 |
改正前は「5年就労して保険料を5年分払った者が帰国しても、最大3年分しか返ってこない」という不公平がありました。改正後は5年分まで払い戻しが可能となりました(請求期限は2年のまま変更なし)。
【脱退一時金の計算式と支給月数表(6か月単位)】
脱退一時金の額は以下の計算式で算出されます:
```
脱退一時金額 = 保険料月額 × 支給月数 × 1/2
```
支給月数は納付期間に応じて6か月単位のテーブルで決まります:
| 保険料納付済期間(計算基礎月数) | 支給月数 |
|---|---|
| 6か月以上12か月未満 | 6か月 |
| 12か月以上18か月未満 | 12か月 |
| 18か月以上24か月未満 | 18か月 |
| 24か月以上30か月未満 | 24か月 |
| 30か月以上36か月未満 | 30か月 |
| 36か月以上42か月未満 | 36か月 |
| 42か月以上48か月未満 | 42か月 |
| 48か月以上54か月未満 | 48か月 |
| 54か月以上60か月未満 | 54か月 |
| 60か月以上 | 60か月(上限・改正後) |
社労士試験では「支給月数は6か月単位」「上限60か月」の2点が頻出です。
【脱退一時金受給後の影響:受給資格期間の計算から除外】
選択肢オに関連して、脱退一時金を受給した後に日本に再入国して再び被保険者となった場合、脱退一時金の対象となった期間は「ゼロ」として扱われます(受給資格期間にも、合算対象期間にも算入されません)。これは「一時金で精算済みの期間」という考え方によるものです。
社労士実務での注意点として、長期滞在を予定しながら「とりあえず帰国時に脱退一時金を受け取っておく」という外国人クライアントへのアドバイスは慎重を要します。将来の再入国・再加入を見込む場合、脱退一時金受給は「将来の年金額の減少」につながるためです。特に、将来的に10年の受給資格期間を達成できる見込みがあるケースでは、脱退一時金を受け取らずに「老齢基礎年金の受給を待つ」という選択が有利な場合があります。
【社会保障協定との関係】
日本は20か国以上と社会保障協定を締結しており、協定国の国民は一定条件のもとで「二重加入の防止」と「加入期間の通算」が可能です。協定がある国の国民は、脱退一時金を受け取らずに本国との加入期間通算で年金受給権を確保できる場合があるため、実務では協定国かどうかの確認が先決です。令和8年度試験では「社会保障協定締結国の国民が脱退一時金を請求できるか」という形での出題も想定されます。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国民年金法附則第9条の3の2(日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給。第1項=保険料納付済期間等の月数6月以上・ただし書第1号=日本国内に住所を有するときは請求不可・第3号=2年経過・第3項=額の計算は政令で定める数・第4項=支給を受けた期間は被保険者でなかったものとみなす)(https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141・2026-09-30確認)、日本年金機構「短期在留外国人の脱退一時金」(上限は2021年4月から60月・改正前36月) 参照した数値: 最大支給月数60か月(2021年4月から・改正前は36か月)・請求期限は日本に住所を有しなくなった日から2年以内 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

