社労士 国民年金法 問17:国民年金法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
老齢基礎年金の繰上げ受給に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア老齢基礎年金の繰上げ受給を請求した後、健康上の理由から取り消したいと申し出た場合であっても、繰上げ受給の請求を取り消すことは法律上できない。正答
- イ繰上げ受給した老齢基礎年金の受給権者が、その後に障害を負って障害基礎年金を請求した場合、障害基礎年金は繰上げ老齢基礎年金と同時に受給できる。
- ウ老齢基礎年金を繰上げ受給した場合、繰上げ受給の月数に0.5%を乗じた率(合計最大30%)が年金額から差し引かれ、この減額率は一生涯変わらない。
- エ繰上げ受給を選択した場合であっても、繰上げ受給開始後に死亡した配偶者(第1号被保険者)の遺族として受け取ることができる寡婦年金には影響がなく、寡婦年金を受給することができる。
- オ老齢基礎年金の繰上げ受給は60歳から請求できるが、厚生年金保険の被保険者である期間中は繰上げ請求を行うことができない。
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正答はアです。
老齢基礎年金の繰上げ受給は、一度請求すると取り消すことができません(国民年金法附則第9条の2第4項)。健康上の理由・経済的事情の変化・後悔等がいかなる理由であっても、繰上げ請求を撤回して通常の65歳支給に戻すことは法律上不可能です。アはこの点を正確に記述しており正しい記述です。
ウは誤りで、繰上げ減額率は昭和37年4月2日以後生まれの者については0.4%/月(改正後・最大24%)であり、0.5%/月(最大30%)は昭和37年4月1日以前生まれへの適用です。「0.5%」という数字は旧ルールです。
エは誤りで、繰上げ受給を選択した者は寡婦年金を受給できなくなります(寡婦年金の受給権が消滅)。
繰上げ受給の要件・効果・デメリット整理(必須):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 繰上げ請求可能時期 | 60歳〜65歳未満 |
| 減額率(S37.4.2以後生まれ) | 月0.4%×繰上げ月数(最大60か月×0.4%=24%減額) |
| 減額率(S37.4.1以前生まれ) | 月0.5%×繰上げ月数(最大60か月×0.5%=30%減額) |
| 取消し | 不可(一生涯この減額率が続く) |
| 障害基礎年金との関係 | 繰上げ後に障害を負っても障害基礎年金は請求できない(初診日が繰上げ後の場合・65歳未満の老齢受給権者は障害基礎年金不支給) |
| 寡婦年金との関係 | 繰上げ受給を選択すると寡婦年金の受給権が消滅(失権) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 繰上げ請求の取消し不可は国民年金法附則第9条の2第4項(趣旨)。「健康上の理由」であっても例外なし。
- イ(誤): 繰上げ後に障害を負った場合、障害基礎年金を新たに請求することはできません。65歳未満の老齢基礎年金受給権者は「被保険者でない者」として障害基礎年金の1号請求(第1号被保険者であった者としての請求)ができず、また老齢基礎年金と障害基礎年金の同時受給(65歳以降の併給とは別)も65歳到達前は認められません。
- ウ(誤): 昭和37年4月2日以後生まれの者の繰上げ減額率は0.4%/月(2022年4月改正)。「0.5%」は改正前・昭和37年4月1日以前生まれへの適用です。最大減額率は0.4%×60か月=24%です。
- エ(誤): 繰上げ受給を開始した者は、寡婦年金の受給権が消滅します(国民年金法第41条の2・第42条の趣旨)。繰上げ老齢基礎年金を受給した者が夫(第1号被保険者)の死亡後に寡婦年金を請求することはできません。
- オ(誤): 厚生年金保険の被保険者期間中であっても老齢基礎年金の繰上げ請求は可能です(ただし厚生年金の繰上げ老齢厚生年金と同時請求が原則)。「厚生年金被保険者中は請求不可」は誤りです。
【繰上げ受給が「取消し不可」とされている制度的理由】
繰上げ受給の取消し不可という制度設計には、保険数理上・行政実務上の合理性があります。
1. 保険数理的理由: 繰上げ受給の減額率は「60歳から65歳まで早く受け取る」という期間を加味して計算されており、受給開始後に「やっぱり65歳から受け取ればよかった」と取り消せるとすれば、制度の財政均衡が崩れます。繰上げ受給者は短命な場合に「損」をし、長命な場合に「得」をするという確率的設計が成立しているためです。
2. 行政実務的理由: 繰上げ受給を取り消せる制度設計では、「体調が悪い時に取消して障害年金を請求する」「寡婦年金が発生した時だけ繰上げを取り消す」という制度の抜け穴として利用されるリスクがあります。取消し不可は、こうした制度の乱用防止機能を果たしています。
【繰上げ請求による不利益の全リスト(社労士実務上の重要説明義務)】
社労士として顧客に繰上げ受給を説明する際には、以下の不利益を必ず説明する義務があります:
| 不利益 | 内容 |
|---|---|
| 年金額の永続的な減額 | 0.4%/月(S37.4.2以後)の減額が一生続く。65歳からもとに戻らない |
| 障害基礎年金の新規請求不可 | 繰上げ後に障害を負っても障害基礎年金を請求できない |
| 寡婦年金の受給権消滅 | 繰上げ請求時点で寡婦年金の受給権(将来の権利)が消滅 |
| 国民年金への任意加入不可 | 繰上げ後は国民年金の任意加入ができなくなる |
| 付加年金の受給も連動 | 付加保険料を納付していた場合、付加年金も同率で減額 |
特に「寡婦年金との関係」は重要です。夫が第1号被保険者として10年以上保険料を納めていた場合、妻は夫の死亡後に寡婦年金(夫の老齢基礎年金の3/4相当・60歳〜65歳)を受給できます。しかし妻自身が老齢基礎年金を繰上げ受給していると、寡婦年金の受給権が消滅します。若い妻が60歳直後に繰上げ受給を選択し、後から夫に先立たれた場合に「寡婦年金を受け取れない」という実害が生じます。
【0.4%への改正(2022年4月)と生年月日区分の明確な把握】
昭和37年4月2日以後生まれの者に対する繰上げ減額率の0.5%→0.4%への引き下げは、2022年(令和4年)4月施行の年金制度改正(令和2年改正法)の一部です。この改正のポイント:
- 引き下げの目的: 60代前半就労を促進するため(減額が大きいと60歳直後に繰上げするインセンティブが強くなる)
- 適用対象: 昭和37年4月2日以後生まれ(令和8年度試験の主な受験者世代が含まれる)
- 旧ルール(0.5%)の適用者: 昭和37年4月1日以前生まれ(令和8年度時点で65歳以上の世代)
令和8年度試験では「0.4%か0.5%か」という数字の確認が典型的な出題パターンです。受験者本人や身近な人が「60代前半」の世代(昭和37年4月2日以後生まれ)であれば0.4%が適用されます。選択肢ウで「0.5%・最大30%」を誤りとして出題した本問の設計は、この改正後の正しい数字(0.4%・最大24%)を確認させる問題です。
【繰上げ vs 繰下げの比較:社労士実務での損益分岐点計算】
社労士が顧客への年金相談で行う「繰上げ・繰下げの損益分岐点計算」の考え方:
- 繰上げ(0.4%/月・最大24%減): 65歳から受け取る場合と比較して「長く生きるほど損」
- 繰下げ(0.7%/月・最大84%増): 65歳から受け取る場合と比較して「長く生きるほど得」
- 損益分岐点(繰上げ): 約81〜82歳(0.4%減額の場合)
- 損益分岐点(繰下げ・75歳まで): 約86〜87歳
日本人女性の平均寿命(約88歳・令和5年)を考えると、平均的な女性にとっては繰下げ(70歳or75歳まで)が有利なケースが多い計算になりますが、健康状態・就労状況・家族状況によって最適な選択は変わります。「何歳まで生きるか」という確率的な問いに対して、顧客の事情に応じた個別シミュレーションが社労士の付加価値となります。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 繰上げ減額率(S37.4.2以後=0.4%/月・S37.4.1以前=0.5%/月)、繰下げ増額率0.7%/月、最大75歳までの繰下げ(最大84%増)、寡婦年金との関係(41条の2・42条)を国民年金法・附則で確認。設問正答ア(正しい:取消し不可)確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国民年金法附則第9条の2(繰上げ受給)・附則第9条の2の2(繰上げと寡婦年金の関係)・第41条の2(寡婦年金の失権) 数値参照: 繰上げ減額率0.4%/月(昭和37年4月2日以後生まれ・改正後)・0.5%/月(以前生まれ)・寡婦年金との関係=条文値 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。