問題
老齢基礎年金の繰上げ受給に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はアです。
老齢基礎年金の繰上げ受給は、一度請求すると取り消すことができません。繰上げ請求があった日から受給権が発生して支給が始まり(国民年金法附則第9条の2第3項)、請求を取り消す規定はありません。日本年金機構も「老齢年金を繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取消しすることはできません」と案内しています。健康上の理由・経済的事情の変化・後悔等がいかなる理由であっても、通常の65歳支給に戻すことはできません。アはこの点を正確に記述しており正しい記述です。
ウは誤りで、繰上げ減額率は昭和37年4月2日以後生まれの者については0.4%/月(改正後・最大24%)であり、0.5%/月(最大30%)は昭和37年4月1日以前生まれへの適用です。「0.5%」という数字は旧ルールです。
エは誤りで、繰上げ受給を選択した者は寡婦年金を受給できなくなります(繰上げ受給権者には寡婦年金の支給要件である第49条が適用されない=附則第9条の2の3。寡婦年金の受給権者が繰上げると受給権が消滅=附則第9条の2第5項)。
繰上げ受給の要件・効果・デメリット整理(必須):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 繰上げ請求可能時期 | 60歳〜65歳未満 |
| 減額率(S37.4.2以後生まれ) | 月0.4%×繰上げ月数(最大60か月×0.4%=24%減額) |
| 減額率(S37.4.1以前生まれ) | 月0.5%×繰上げ月数(最大60か月×0.5%=30%減額) |
| 取消し | 不可(一生涯この減額率が続く) |
| 障害基礎年金との関係 | 繰上げ受給権者には第30条第1項第2号(初診日に60歳以上65歳未満の元被保険者)・第30条の2(事後重症)・第30条の3(基準障害)等が適用されない(附則第9条の2の3)。日本年金機構も「繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求することができません」と案内 |
| 寡婦年金との関係 | 繰上げ受給権者には第49条(寡婦年金の支給要件)が適用されず、寡婦年金の受給権者が繰上げると寡婦年金の受給権が消滅(附則第9条の2第5項) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 繰上げ請求があった日から支給が始まり(附則第9条の2第3項)、請求を取り消す規定はありません(日本年金機構「繰上げ請求を取消しすることはできません」)。「健康上の理由」であっても例外なし。
- イ(誤): 繰上げ後は、事後重症・基準障害や、初診日に60歳以上65歳未満の元被保険者としての障害基礎年金の規定が適用されません(附則第9条の2の3)。仮に障害基礎年金の受給権が生じる場面があっても、老齢基礎年金と障害基礎年金は1人1年金の原則により同時には受給できず、どちらかを選択します(第20条)。「同時に受給できる」は誤りです。
- ウ(誤): 昭和37年4月2日以後生まれの者の繰上げ減額率は0.4%/月(2022年4月改正)。「0.5%」は改正前・昭和37年4月1日以前生まれへの適用です。最大減額率は0.4%×60か月=24%です。
- エ(誤): 繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権者には寡婦年金の支給要件(第49条)が適用されないため(附則第9条の2の3)、繰上げ後に夫(第1号被保険者)が死亡しても寡婦年金は支給されません。寡婦年金の受給権者が繰上げ請求をした場合も、寡婦年金の受給権は消滅します(附則第9条の2第5項)。
- オ(誤): 附則第9条の2第1項が繰上げ請求できる者から除いているのは任意加入被保険者(附則第5条第1項の被保険者)で、厚生年金保険の被保険者は除かれていません。厚生年金保険の被保険者期間中であっても繰上げ請求は可能です(老齢厚生年金の繰上げ請求ができる者は、その請求と同時に行う=同条第2項)。「厚生年金被保険者中は請求不可」は誤りです。
【繰上げ受給が「取消し不可」とされている制度的理由】
繰上げ受給の取消し不可という制度設計には、保険数理上・行政実務上の合理性があります。
1. 保険数理的理由: 繰上げ受給の減額率は「60歳から65歳まで早く受け取る」という期間を加味して計算されており、受給開始後に「やっぱり65歳から受け取ればよかった」と取り消せるとすれば、制度の財政均衡が崩れます。繰上げ受給者は短命な場合に「損」をし、長命な場合に「得」をするという確率的設計が成立しているためです。
2. 行政実務的理由: 繰上げ受給を取り消せる制度設計では、「体調が悪い時に取消して障害年金を請求する」「寡婦年金が発生した時だけ繰上げを取り消す」という制度の抜け穴として利用されるリスクがあります。取消し不可は、こうした制度の乱用防止機能を果たしています。
【繰上げ請求による不利益の全リスト(社労士実務上の重要説明義務)】
社労士として顧客に繰上げ受給を説明する際には、以下の不利益を必ず説明する義務があります:
| 不利益 | 内容 |
|---|---|
| 年金額の永続的な減額 | 0.4%/月(S37.4.2以後)の減額が一生続く。65歳からもとに戻らない |
| 障害基礎年金の請求制限 | 事後重症・基準障害などによる障害基礎年金を請求できない(附則第9条の2の3) |
| 寡婦年金 | 繰上げ後に夫が死亡しても寡婦年金は支給されない(第49条の不適用)。既に寡婦年金の受給権者であれば消滅(附則第9条の2第5項) |
| 国民年金への任意加入・追納不可 | 繰上げ後は任意加入ができず(附則第5条の不適用)、保険料の追納もできなくなる(第94条第1項は老齢基礎年金の受給権者を除く) |
| 付加年金の受給も連動 | 付加保険料を納付していた場合、付加年金も同率で減額 |
特に「寡婦年金との関係」は重要です。夫が第1号被保険者として10年以上保険料を納めていた場合、妻は夫の死亡後に寡婦年金(夫の老齢基礎年金の3/4相当・60歳〜65歳)を受給できます。しかし妻自身が老齢基礎年金を繰上げ受給していると、寡婦年金は支給されません(受給中なら消滅します)。若い妻が60歳直後に繰上げ受給を選択し、後から夫に先立たれた場合に「寡婦年金を受け取れない」という実害が生じます。
【0.4%への改正(2022年4月)と生年月日区分の明確な把握】
昭和37年4月2日以後生まれの者に対する繰上げ減額率の0.5%→0.4%への引き下げは、2022年(令和4年)4月施行の年金制度改正(令和2年改正法)の一部です。この改正のポイント:
- 適用対象: 昭和37年4月2日以後生まれ(令和8年度試験の主な受験者世代が含まれる)
- 旧ルール(0.5%)の適用者: 昭和37年4月1日以前生まれ(令和8年度時点で65歳以上の世代)
令和8年度試験では「0.4%か0.5%か」という数字の確認が典型的な出題パターンです。受験者本人や身近な人が「60代前半」の世代(昭和37年4月2日以後生まれ)であれば0.4%が適用されます。選択肢ウで「0.5%・最大30%」を誤りとして出題した本問の設計は、この改正後の正しい数字(0.4%・最大24%)を確認させる問題です。
【繰上げ vs 繰下げの比較:社労士実務での損益分岐点計算】
社労士が顧客への年金相談で行う「繰上げ・繰下げの損益分岐点計算」の考え方:
- 繰上げ(0.4%/月・最大24%減): 65歳から受け取る場合と比較して「長く生きるほど損」
- 繰下げ(0.7%/月・最大84%増): 65歳から受け取る場合と比較して「長く生きるほど得」
- 損益分岐点(繰上げ): 60歳から24%減額で受け始めた場合、約81歳(0.76×(年齢−60)=年齢−65 を解くと約80.8歳)
- 損益分岐点(繰下げ・75歳まで): 約86〜87歳
日本人女性の平均寿命(厚生労働省「簡易生命表」で最新の値を確認)を考えると、平均的な女性にとっては繰下げ(70歳or75歳まで)が有利なケースが多い計算になりますが、健康状態・就労状況・家族状況によって最適な選択は変わります。「何歳まで生きるか」という確率的な問いに対して、顧客の事情に応じた個別シミュレーションが社労士の付加価値となります。
- 国民年金法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国民年金法附則第9条の2(老齢基礎年金の支給の繰上げ。第1項=60歳以上65歳未満・任意加入被保険者でない者・第3項=請求があった日から支給・第5項=寡婦年金の受給権の消滅)・附則第9条の2の3(障害基礎年金等の特例=繰上げ受給権者には第30条第1項第2号・第30条の2・第49条・附則第5条等を適用しない)・第20条(併給の調整)・第51条(寡婦年金の失権)(https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141・2026-09-30確認)、日本年金機構「年金の繰上げ受給」(「老齢年金を繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取消しすることはできません」・2026-09-30確認) 参照した数値: 繰上げ減額率0.4%/月(昭和37年4月2日以後生まれ・改正後)・0.5%/月(以前生まれ)・寡婦年金との関係=条文値 確認日: 2026-09-30 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

