社労士 国民年金法 問26:国民年金法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
国民年金の保険料の納付猶予制度(50歳未満の者に係る特例)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア保険料の納付猶予制度は、50歳未満の第1号被保険者が対象であり、本人および配偶者の前年の所得が一定額以下であることが要件となる。
- イ納付猶予を受けた期間は、受給資格期間の算定に算入されるが、老齢基礎年金の額の計算の基礎には算入されない。
- ウ納付猶予を受けた期間について追納を行う場合、承認月の翌月から起算して3年以内に限り追納することができ、3年を超えた月分は追納できない。正答
- エ保険料納付猶予の承認は申請によって行われ、世帯主の所得に関わらず、本人と配偶者の所得のみで審査される。
- オ納付猶予制度は、平成28年7月の施行で対象が「30歳未満」から「50歳未満」に拡大され、令和12年6月30日まで適用される時限措置とされている。
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正答はウです。
ウの誤りは「3年以内」「3年を超えた月分は追納できない」という部分です。納付猶予の追納可能期間は承認月の翌月から起算して10年以内です(国民年金法第94条)。3年は「加算額が付かない期間」の境界であり、3年を超えても10年以内であれば加算額付きで追納可能です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 納付猶予の追納期間は10年(法第94条第1項)・3年超分は加算額付き(同条第3項)。50歳未満納付猶予の現行期限は令和12年6月30日(法附則第19条・令和2年改正で延長)・令和17年6月までの追加延長は2024年部会で検討中だが2026-06時点未施行。所得審査対象は本人+配偶者のみ(世帯主除外)で学生特例と類似。e-Gov 国民年金法・厚労省年金部会資料と整合。-->
ア・イ・エ・オはいずれも正しい記述です。本人と配偶者の所得審査(ア)、受給資格期間算入・年金額不算入(イ)、世帯主所得は審査対象外(エ)、平成28年7月施行で30歳→50歳拡大・令和12年6月30日まで適用(オ)はいずれも正確です。
50歳未満納付猶予制度の完全整理:
制度概要:
収入が少ない若年世帯の保険料負担を軽減するため、50歳未満の第1号被保険者に対して保険料の納付猶予を認める特例制度です。
所得審査の対象(一般の保険料免除との違い):
| 制度 | 審査対象者 |
|---|---|
| 全額免除・一部免除 | 世帯主・配偶者・本人(3者) |
| 学生納付特例 | 本人のみ |
| 50歳未満納付猶予 | 本人+配偶者(世帯主は除く) |
年金への影響:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受給資格期間への算入 | ○(算入される) |
| 老齢基礎年金の額への算入 | ×(追納なしでは算入されない) |
| 追納可能期間 | 承認月の翌月から10年以内 |
| 加算額 | 3年超経過月分は加算額あり |
申請方法:
申請は本人が市区町村の窓口・日本年金機構・マイナポータル等に対して行います。年度申請(4月〜翌年3月)が基本ですが、複数年度分をまとめて申請することも可能です。収入が低い状態が継続している場合、毎年申請する手間を省くため「継続適用」の申出もできます。
30歳未満→50歳未満への拡大:
2016年(平成28年)7月から対象年齢が「30歳未満→50歳未満」に拡大されました。これは若年層に限らず、40代の転職・育休・介護による収入減少期にも保険料猶予を受けられるようにするための改正です。
適用期限(オの正しい根拠):
50歳未満の納付猶予は時限的な特例制度であり、現行の適用期限は令和12年6月30日(国民年金法附則第19条・令和2年改正で延長)です。さらなる5年延長(令和17年6月まで)が社会保障審議会年金部会で検討中ですが、令和8年度試験(2026-04-10基準日)時点では未施行のため出題対象外。
【納付猶予制度の政策的背景:若年無業者・非正規雇用者への対応】
国民年金の保険料を未納のまま放置すると、老齢基礎年金の受給資格期間が不足したり、年金額が大幅に減少するリスクがあります。特に1990年代後半から2000年代にかけての就職氷河期世代は、正規雇用の機会を逃して収入が不安定な状況が長期化し、保険料未納が社会問題化しました。
学生納付特例(1999年)に続いて2005年(平成17年)から「30歳未満の若年者(学生以外)」に対する納付猶予制度が設けられ、2016年(平成28年)に「50歳未満」に拡大されました。これにより40代の転職期・育児休業中・介護離職者なども制度の恩恵を受けられるようになりました。
【世帯主所得が審査対象外という設計の意味】
一般の保険料免除(全額・一部免除)では世帯主・配偶者・本人の3者全員の所得を合算して審査します。これは「家族全体で支え合える環境にある者は自助努力を求める」という設計思想に基づきます。
一方、学生特例と50歳未満猶予では世帯主の所得は審査しません。なぜか:
学生特例: 親(世帯主)が高収入であっても、学生本人には収入がなく保険料を支払えないのは明らか。親に支払義務はない(学生本人が第1号被保険者)。
50歳未満猶予: 若年者が親元に同居していても(世帯主が高収入の親でも)、本人には収入がなければ本人の保険料を親に払う法的義務はない。若年者の保険料未納問題を解決するには本人所得のみで判断する必要がある。
この「世帯主所得を除外する」設計は、実際には「親が金持ちで同居している無職の若者も特例を受けられる」という問題をはらんでいますが、保険料未納よりも制度的に猶予を受けさせる方が将来的な受給資格維持につながるという政策判断がなされています。
【追納の優先順位と実務アドバイス】
猶予期間が複数ある場合、追納は原則として古い期間から順番に行います(新しい期間だけ選択して追納はできない)。これが問題になるのは10年分の猶予期間があり経済的に一部しか追納できない場合です。
追納の費用対効果(試算例):
国民年金保険料(令和8年度)= 17,920円/月(月額17,920円)
20歳の4月〜21歳の3月(12か月分)を猶予後に追納する場合の概算(加算なし):
12か月×17,920円=215,040円
この12か月分の追納で老齢基礎年金が増加する額:
老齢基礎年金満額 70,608円/月(月額70,608円/年846,096円)÷480か月=1,762.7円/月→1か月追納で年21,153円/年の増加(近似)
回収期間:215,040円÷21,153円/年 ≒ 10.2年
65歳から75歳まで(最低10年)生きれば元が取れる計算です。長生きリスクを考えると追納は一般的に有利ですが、近年の高インフレ環境下では「同額を投資運用した方が有利」という見方もあり、個別状況に応じた助言が必要です。
【猶予・特例と「未納」の決定的な違い】
社労士の実務で最も重要なのは「猶予を受けている」と「ただ未納」は全く異なるという説明です:
| 状態 | 受給資格期間 | 障害基礎年金の受給権 | 老齢基礎年金の額 |
|---|---|---|---|
| 保険料未納(申請なし) | 算入されない | 未納期間は不利(直近1年特例も満たせないリスク) | 影響なし(元から算入なし) |
| 猶予・特例の承認あり | 算入される | 承認期間中の障害は保護される | 追納なしでは増えない |
この差を正確に説明できることが社労士の重要な能力です。特に若年被保険者への年金相談では「申請していれば保護される・申請しなければ保護されない」という明確なメッセージを伝える必要があります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国民年金法附則第19条(50歳未満納付猶予・特例)・第94条(追納)・平成28年法律第84号附則(対象年齢拡大・適用期限)(https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。