問題
老齢基礎年金の支給停止に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウです。
労災の休業補償給付と公的年金(障害厚生年金等)との間には調整規定がありますが、老齢基礎年金が労働基準法上の休業補償を理由に支給停止されることはありません(国年法に該当する停止規定なし)。
アは正しい記述です(繰下げ待機中は支給されないが受給権の放棄ではない)。
イは正しい記述です。国民年金法では拘禁による支給停止規定は20歳前傷病による障害基礎年金(第36条の2第1項第2号)にのみ存在し、老齢基礎年金(および通常の障害基礎年金)には拘禁による支給停止規定はありません。
エは正しく、老齢基礎年金と障害基礎年金は併給調整の対象で、支給停止の解除を申請した一方を受け取ります(国年法第20条第1項・第2項)。
オは正しく、70歳に達した日後に繰下げの申出をせずに請求すると、80歳以後の請求などを除き、請求日の5年前の日に繰下げの申出があったものとみなされます(国年法第28条第5項)。
老齢基礎年金の支給停止事由の整理:
| 支給停止事由 | 停止の内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 繰下げ申出中の待機 | 待機中は支給されない(繰下げ増額分を留保) | 国年法第28条 |
| 老齢基礎年金と他の年金給付の併給調整 | 支給停止。解除を申請した一方を受ける | 国年法第20条第1項・第2項 |
| 調査の命令に正当な理由なく従わない等 | 全部または一部の支給停止ができる | 国年法第72条第1号 |
| 届出・書類の提出を正当な理由なくしない | 支払の一時差止めができる | 国年法第73条 |
「拘禁停止」が老齢基礎年金にはない点(イの正しい根拠):
国民年金法上、拘禁による支給停止規定は「20歳前傷病による障害基礎年金(第30条の4)」についての第36条の2第1項第2号(厚生労働省令で定める場合に限る)だけです。老齢基礎年金・通常の障害基礎年金・遺族基礎年金には拘禁による支給停止規定は存在しません(保険料の対価としての性格を重視)。
これは厚生年金保険にも拘禁による老齢厚生年金の支給停止規定がない点(kounen_41参照・本問改訂と整合)と共通の趣旨です。
ウの誤りの詳細(労基法休業補償との関係):
労災保険給付と年金との間には個別の調整規定がありますが、老齢基礎年金が労働基準法の休業補償(労基法第76条)を理由に支給停止されるという規定は国年法上ありません。
繰下げ制度(オの正しい根拠):
繰下げの上限は75歳(75歳到達後に繰下げの申出をしたときは75歳に達した日に申出があったものとみなす・国年法第28条第2項)。70歳に達した日後に繰下げの申出をせずに請求した場合は、請求日の5年前の日に申出があったものとみなす(同条第5項。80歳に達した日以後の請求と、65歳から請求日の5年前の日までに他の年金の受給権者となった者は除く)。
【老齢基礎年金の支給停止制度の体系的理解と「拘禁停止規定がない」点の意義】
老齢基礎年金の支給停止制度は、他の社会保障給付(生活保護・遺族基礎年金等)と比較して、停止事由が限定的なのが特徴です。
国民年金法における拘禁停止規定の限定性:
刑事施設への拘禁による支給停止規定は、国民年金法では「20歳前傷病による障害基礎年金」(第36条の2第1項第2号・厚生労働省令で定める場合に限る)にのみ規定されています。これは20歳前傷病が「保険料の納付を要件としない無拠出制の給付」で、国庫負担が通常より厚い(国年法第85条第1項第3号で費用の100分の20を別枠で国庫負担)ため、公費による生活保障給付として拘禁中の停止が合理化されるためです。
一方、老齢基礎年金は「保険料を払った見返り」の性質(拠出制給付)が強く、拘禁中であっても受給権を維持するのが基本です。これは「保険料という対価を支払って得た権利は容易には剥奪されない」という財産権的な性格を反映しています。
併給調整(第20条)の仕組み:
老齢基礎年金と障害基礎年金(または遺族基礎年金)の両方の受給権を有する場合、第20条第1項によりいずれも支給停止の対象となり、受給権者が同条第2項により支給停止の解除を申請した一方を受給します。条文上は「支給停止+解除の申請」という仕組みで、実務上「選択」と呼ばれます(エの内容)。
選択の典型例:
- 老齢基礎年金(70,608円/月・令和8年4月)vs 障害基礎年金2級(同額)→ 額は同じなので、課税の扱いや厚生年金との組合せなどで判断
- 障害基礎年金1級(88,260円/月・令和8年4月)vs 老齢基礎年金 → 障害基礎の方が高額なため障害基礎を選択
繰下げの上限と5年前みなし繰下げ(オの詳細・国年法第28条):
1. 繰下げ上限: 75歳(75歳到達後に申出をしたときは75歳に達した日に申出があったものとみなす・第2項)。増額率は0.7%×月数で最大84%(昭和27年4月2日以後生まれ等。日本年金機構「年金の繰下げ受給」)
2. 5年前みなし繰下げ(第5項):
- 70歳に達した日後に、繰下げの申出をせずに「さかのぼって受給を請求する場合」
- 請求日の5年前の日に繰下げ申出があったとみなす
- 5年前の時点で増額された額で、5年分を一括受給
- 75歳到達後の請求でも同じ。ただし80歳に達した日以後の請求と、65歳から請求日の5年前の日までに他の年金の受給権者となった者には適用されない
老齢基礎年金にも適用される支給停止・差止め(第72条・第73条):
受給権者が正当な理由なく調査の命令に従わない・質問に応じないときは、年金給付の全部または一部の支給を停止できます(第72条第1号)。正当な理由なく届出や書類の提出をしないときは、支払を一時差し止めることができます(第73条)。いずれも「制裁的」な停止というより、受給権の確認という「行政管理上」の仕組みです。なお国民年金法には、老齢基礎年金を受給権者の所在不明を理由に停止する規定はありません(所在不明による停止は遺族基礎年金の第41条の2・第42条)。
労災・労基法の休業補償と年金の関係(ウの誤りの詳細):
労災保険給付と一部の公的年金(障害・遺族の年金など)との間には調整の仕組みがありますが、老齢基礎年金を労基法第76条の休業補償(使用者からの直接補償)や労災保険の休業補償給付を理由に停止する規定は、国民年金法にありません。(なお労災保険法第14条の2は、刑事施設に拘禁されている場合などに休業補償給付を行わないとする規定で、年金との調整規定ではありません。)
社労士実務での老齢基礎年金管理:
クライアントの状況変化(家族の拘禁・所在不明・障害認定等)が年金にどう影響するかの判断は、社労士の専門領域です:
1. 拘禁の事実があっても老齢基礎・老齢厚生は支給継続(厚年も同様)
2. 65歳到達時の併給選択は損益計算で判定
3. 届出・書類の提出漏れで支払が差し止められた場合(第73条)は、届出を済ませて差止めの解消を案内
上位資格・実務との接続:
FP1級・年金アドバイザー2級では「繰下げ75歳・5年前みなし請求の損益分岐計算」が頻出です。社労士実務では「拘禁中の年金は基本的に止まらない」という事実誤認を正すクライアント説明が重要となります(一般には「年金が止まる」と誤解される)。
- 労働基準法第76条e-Govで原文を読む
- 国民年金法第20条・第28条・第72条・第73条・第85条e-Govで原文を読む
- 労働者災害補償保険法第14条の2e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国民年金法第20条第1項・第2項(併給の調整・支給停止の解除の申請)・第28条第1項・第2項・第5項(繰下げ・5年前のみなし繰下げ)・第36条の2第1項第2号(拘禁による支給停止は第30条の4の障害基礎年金のみ)・第72条・第73条(老齢基礎年金にも適用される支給停止・支払の一時差止め)(https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141) 確認日: 2026-09-30 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

