問題
国民年金の給付に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。 本問は「脱退一時金」(国年法附則)の現行制度および老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金の「1人1年金の原則と例外」を問うものである。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はオです。
「日本国籍を有する者が帰国した際に受け取ることができる」という記述が誤りです。国民年金の脱退一時金は日本国籍を有しない外国人が対象の制度です。日本国籍を有する者は日本の年金制度の受給権が維持されるため、脱退一時金の対象ではありません。
ア・イは1人1年金原則の説明として正しく、老齢基礎年金と障害基礎年金はどちらか一方を選択して受給します(第20条)。ウも正しく、老齢基礎年金と老齢厚生年金は同一の支給事由に基づく給付なので、65歳以降は同時に受給できます。エの死亡一時金は、36か月以上の納付要件と、遺族基礎年金を受けられる者がいないという前提が示されており正しいです(第52条の2)。
国民年金の1人1年金の原則と例外の整理:
| 組み合わせ | 65歳未満 | 65歳以上 |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金と障害基礎年金 | どちらか一方を選択(1人1年金原則) | どちらか一方を選択(同時受給不可・原則変わらず) |
| 老齢基礎年金と遺族基礎年金 | どちらか選択 | どちらか選択 |
| 老齢基礎年金と老齢厚生年金 | 老齢厚生年金は65歳未満では特別支給のみ | 同時受給可(1人1年金原則の例外・ウ正) |
ウ(正)の意味:老齢基礎年金と老齢厚生年金の同時受給は認められる:
第20条第1項は、老齢基礎年金の受給権者が他の年金給付や厚生年金保険法による年金たる保険給付を受けることができるときは老齢基礎年金の支給を停止するとしつつ、厚生年金保険法の給付からは「当該年金給付と同一の支給事由に基づいて支給されるもの」を除いています。老齢厚生年金は老齢基礎年金と同じ「老齢」を支給事由とするので、65歳以降は同時受給が認められます。試験では「老齢基礎年金と障害基礎年金の同時受給不可」と「老齢基礎年金と老齢厚生年金の同時受給可」の区別が頻出論点です。
オの誤り(脱退一時金の対象は外国人のみ):
国民年金法附則第9条の3の2の脱退一時金は:
- 対象:日本国籍を有しない者(被保険者でない者に限る)
- 保険料納付済期間等が6か月以上(この部分は正しい)
- 日本国内に住所を有するとき、障害基礎年金などの受給権を有したことがあるとき、最後に被保険者の資格を喪失した日から2年を経過しているときは請求できない
オの誤りは「日本国籍を有する者」という主体要件の部分であり、6か月以上という月数は正しいです。
エ(正)の死亡一時金の要件:
死亡一時金は保険料納付済期間等が36か月以上ある者が死亡し、遺族があるときに支給されます。老齢基礎年金・障害基礎年金の支給を受けたことがある者の死亡や、その死亡により遺族基礎年金を受けられる者がいる場合は支給されません(第52条の2)。
【国民年金の1人1年金原則の立法趣旨・例外規定の体系・脱退一時金制度の精緻な理解】
国民年金の給付は「老齢・障害・遺族」の3系統に分類され、それぞれ独立した受給権として設計されています。複数の受給権が競合する場合の処理ルールが「1人1年金の原則」(国年法第20条)です。
1人1年金原則の立法趣旨:
支給事由(老齢・障害・死亡)の異なる年金が競合する場合は選択受給とし、同一の支給事由に基づく基礎年金と厚生年金は一体として受給する、というのが第20条の組み立てです。支給を停止された年金の受給権者は、支給停止の解除を申請して受給する年金を選びます(第20条第2項)。
同時受給が認められる組み合わせと認められない組み合わせ(第20条の範囲):
| 組み合わせ | 同時受給 | 根拠 |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金 + 老齢厚生年金(65歳以上) | 可 | 同一の支給事由(第20条第1項括弧書き) |
| 障害基礎年金 + 障害厚生年金(同一の傷病) | 可 | 同一の支給事由(年齢を問わない) |
| 老齢基礎年金 + 障害基礎年金 | 不可(選択) | 第20条第1項 |
| 老齢基礎年金 + 遺族基礎年金 | 不可(選択) | 第20条第1項 |
| 障害基礎年金 + 遺族基礎年金 | 不可(選択) | 第20条第1項 |
このほか、65歳以上について支給事由の異なる基礎年金と厚生年金の組み合わせを認める特例(例:障害基礎年金と老齢厚生年金)が附則に設けられています。第20条の原則と、65歳以降の特例とを分けて整理すると混同を防げます。
脱退一時金(国年法附則)の精緻な理解:
| 項目 | 国民年金 脱退一時金 |
|---|---|
| 対象者 | 日本国籍を有しない者 |
| 要件 | 第1号被保険者として保険料納付済期間等が6か月以上 |
| 請求期限 | 最後に被保険者の資格を喪失した日から起算して2年を経過すると請求できない |
| 支給額 | 納付月数に応じた額(上限60か月分・令和3年4月改正で厚年と統一) |
| 老齢基礎年金との関係 | 脱退一時金を受給すると、その期間に係る被保険者期間は受給資格期間から除外 |
厚生年金の脱退一時金との比較(横断理解):
| 比較項目 | 国民年金 脱退一時金 | 厚生年金 脱退一時金 |
|---|---|---|
| 対象者 | 日本国籍なし・外国人 | 日本国籍なし・外国人 |
| 最大支給期間 | 60か月(5年) | 60か月(5年)・2021年4月改正 |
| 請求期限 | 資格喪失日から2年 | 2年 |
| 保険料納付要件 | 6か月以上 | 6か月以上 |
両者とも「6か月以上」と「2年以内の請求」という要件は共通です。オの「6か月以上」という月数部分は正しく、誤りは「日本国籍を有する者」という主体要件の部分のみです。
死亡一時金と脱退一時金の比較(混同防止):
| 比較項目 | 死亡一時金 | 脱退一時金 |
|---|---|---|
| 受給者 | 遺族(配偶者・子・父母等) | 被保険者本人(外国人) |
| 前提 | 被保険者が死亡 | 被保険者が出国 |
| 保険料要件 | 納付済等が36か月以上 | 納付済等が6か月以上 |
| 老齢年金との関係 | 老齢・障害年金を受給しないまま死亡が前提 | 老齢・障害・遺族年金受給権なしが前提 |
社労士実務との接続:
外国人労働者の増加に伴い、脱退一時金の案内は社労士実務でも重要性が増しています。特に帰国を検討している外国人労働者への年金相談では「脱退一時金を受けると受給資格期間から除外される→日本に再入国した場合に受給資格の再積算が必要」という重要事項の説明が求められます。また「老齢基礎年金と老齢厚生年金の同時受給可」という正確な知識は年金相談の基本中の基本であり、「同時受給できない組み合わせ(障害・遺族との併給)」との区別を明確に説明できることが実務の基礎です。
- 国民年金法第20条e-Govで原文を読む
- 厚生年金保険法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国民年金法第20条第1項(併給調整)・第52条の2(死亡一時金)・附則第9条の3の2(脱退一時金)(https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141) 確認日: 2026-09-30 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

