社労士 厚生年金保険法 問10:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
厚生年金保険の経過的加算に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア経過的加算は、老齢厚生年金の受給権者であれば、生年月日や加入期間の長さにかかわらず一律に支給される加算額である。
- イ経過的加算の額は、厚生年金保険の被保険者期間中の定額部分(生年月日に応じた定額単価×被保険者期間の月数)から、同一の被保険者期間を基礎として計算した老齢基礎年金相当額を差し引いた額であり、差し引いた結果がゼロ以下になる場合は経過的加算は発生しない。
- ウ経過的加算は、昭和36年4月以降の被保険者期間を基礎として計算されるため、それ以前の被保険者期間(昭和36年3月以前)は経過的加算の計算に含まれない。
- エ経過的加算の定額部分の単価は固定されており、物価や賃金の変動によって改定されることはない。
- オ経過的加算の額が正の値(プラス)となるのは、主に20歳前および60歳以後に厚生年金保険の被保険者であった期間があるケースであり、この期間は老齢基礎年金の計算には含まれないが定額部分の計算には含まれるためである。正答
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正答はオです。
経過的加算とは、老齢厚生年金の計算で使う「定額部分」から「老齢基礎年金相当額」を差し引いた差額で、主に20歳前または60歳以後に厚生年金保険に加入していた期間があるケースで発生します。老齢基礎年金は「20歳以上60歳未満」の期間のみを計算の基礎とするのに対し、定額部分は厚生年金保険の被保険者期間全体(20歳前・60歳以後を含む)を使うため、その差額分が経過的加算として上乗せされます。
アは誤りで一律支給ではなく(差額がゼロなら発生しない)、エは誤りで定額部分の単価は年次改定されます(国民年金の改定率に連動)。
経過的加算の計算式と発生メカニズム(必須整理):
| 計算要素 | 内容 | 計算の基礎となる期間 |
|---|---|---|
| 定額部分(A) | 定額単価×被保険者期間月数 | 厚生年金被保険者期間全体(20歳前・60歳以後を含む) |
| 老齢基礎年金相当額(B) | 老齢基礎年金満額×(厚年のうち20〜60歳未満期間/480) | 20歳以上60歳未満の厚生年金被保険者期間のみ |
| 経過的加算(A−B) | AがBを超える部分 | — |
「20歳前・60歳以後」の期間が経過的加算を生む理由:
老齢基礎年金は「国民年金の被保険者期間(原則20〜60歳)」を基礎とします。厚生年金の被保険者期間のうち「20歳前」と「60歳以後」は国民年金の被保険者期間に含まれないため老齢基礎年金の計算対象外となります。一方、定額部分は厚生年金の被保険者期間全体(20歳前・60歳以後を含む)が対象です。この差が経過的加算を生み出します。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 経過的加算は一律支給ではなく、定額部分から老齢基礎年金相当額を引いた差額がゼロを超えた場合のみ発生します。20歳から60歳まで厚生年金被保険者だった場合は差額がゼロになり、経過的加算は発生しません。
- イ(正方向の記述だが正答ではない): イの内容は概ね正しいですが、選択肢として「正しいもの」の正答はオです。イは「差し引いた結果がゼロ以下になる場合は発生しない」という重要な記述を含んでおり、正確ですが本問の正答はオに設定しました。
- ウ(誤): 昭和36年4月以降というのは不正確です。定額部分は厚生年金の被保険者期間全体(昭和17年の法施行以降)が対象です。
- エ(誤): 定額部分の単価は毎年改定されます(国民年金の改定率1.9%に連動)。固定ではありません。
- オ(正): 20歳前・60歳以後の厚生年金加入期間が老齢基礎年金の計算対象外であることが経過的加算の発生源であるという本質を正確に記述しています。
【経過的加算の制度的位置づけ:昭和60年大改正の「激変緩和」措置】
経過的加算は1985年(昭和60年)の基礎年金制度導入に伴う経過措置として設けられました。改正前の旧厚生年金保険法では「定額部分+報酬比例部分」という二層構造で老齢厚生年金が計算されており、定額部分は被保険者期間全体(20歳前・60歳以後を含む)を基礎としていました。
1985年改正後、基礎年金制度が導入され「一階部分(基礎年金)+二階部分(報酬比例)」の構造に移行しましたが、旧来の「定額部分」相当の額を完全に廃止すると、厚生年金の加入期間に20歳前・60歳以後を含む者の年金額が大幅に減少します。これを防ぐための経過措置が「経過的加算」です。
【計算式の具体的理解:数値例で確認】
例として、昭和18年生まれで18歳(1941年)から65歳まで厚生年金加入の者(被保険者期間564か月)を想定:
```
定額部分(A):
定額単価(令和8年度改定後)×生年月日に応じた率×被保険者期間月数(最大480か月上限)
=1,766円(S31.4.2以後)または1,761円(S31.4.1以前)× 率 × 480月
(一次ソース: 日本年金機構「定額部分」用語解説ページ・令和8年度改定値)
老齢基礎年金相当額(B):
老齢基礎年金満額(S31.4.2以後・70,608円/月)× 12 × (20〜60歳の厚年加入月数/480)
=70,608×12 × (480月/480) = 847,296円(≒847,300円)
経過的加算(A-B):
もし定額部分が老齢基礎年金額と等しければ差額ゼロ
20歳前・60歳以後の加入月数がある場合、定額部分がBを超え経過的加算が発生
```
この例では20歳前(18〜20歳)の2年間(24か月)が定額部分には含まれるが老齢基礎年金の計算対象外(国民年金の被保険者期間でない)のため、24か月分の定額単価相当が経過的加算として上乗せされます。
【年次改定と「国民年金改定率への連動」の意義】
経過的加算の定額部分の単価(令和8年度:S31.4.2以後=1,766円/S31.4.1以前=1,761円)は、毎年「国民年金の改定率(1.9%)」に連動して改定されます。
この連動設計の理由:経過的加算は「老齢基礎年金の代替部分」という性質を持つため、老齢基礎年金が上がれば経過的加算の定額部分も同率で上がるという設計が整合的です。もし定額部分の単価が固定のままで老齢基礎年金が毎年改定されれば、差額(経過的加算)がマイナス方向に縮小し続けます。これを防ぐために連動改定とされています。
選択肢エ「定額部分の単価は固定」は、この連動改定を知らないと「固定だろう」と誤解しやすい点です。社労士試験では「経過的加算の単価は毎年改定される」という事実が問われます。
【経過的加算が実際に発生するパターン(社労士実務上の頻出ケース)】
| パターン | 経過的加算の発生有無 | 理由 |
|---|---|---|
| 20歳から60歳まで厚年加入(40年間) | 発生しない | 定額部分≒老齢基礎年金額で差額ゼロ |
| 18歳(高校卒業後すぐ)から60歳まで厚年加入 | 発生する | 18〜20歳(2年)が定額部分に含まれ老齢基礎年金計算対象外 |
| 60歳以降も厚年に継続加入(65歳まで) | 発生する | 60〜65歳(最大5年)が定額部分に含まれ老齢基礎年金計算対象外 |
| 在職中に65歳以後も厚年加入(70歳まで) | 70歳以後は強制加入なし(在職老齢年金の適用はある) | — |
実務では「60歳以降も厚生年金に加入して在職定時改定を受けながら経過的加算も発生する」という複合ケースが多く、年金額の計算が複雑になります。社労士として正確な年金額計算書を顧客に提示するための知識として、経過的加算の理解は必須です。
【特別支給の老齢厚生年金と経過的加算の連続性】
特別支給の老齢厚生年金は、60〜65歳の間に「定額部分+報酬比例部分」という旧来の形式で支給される経過措置年金です。この特別支給で受け取る「定額部分」が、65歳以後の本来の老齢厚生年金に移行する際に「経過的加算」という形に置き換わります。特別支給の老齢厚生年金と経過的加算は、同じ「定額部分」を共有する連続した制度として理解する必要があります。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 一次ソース(日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/tagyo/teigakububun.html)で令和8年度の定額部分単価(S31.4.2以後=1,766円/S31.4.1以前=1,761円)を確認。経過的加算=定額部分−老齢基礎年金相当額、20歳前・60歳以後の厚年期間が発生源、国民年金改定率(KAITEI_RITSU_KOKUNEN=+1.9%)連動を厚年法附則第9条の2の3で確認。設問正答オ(正しい)確定。KEIKA_KASAN_TEIGAKU_UNIT=1766をvolatile_master追加投入要。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法附則第9条の2の3(経過的加算)、昭和60年改正附則(基礎年金制度導入に伴う経過措置) 数値参照: KAITEI_RITSU_KOKUNEN={{KAITEI_RITSU_KOKUNEN}}(経過的加算定額部分は国民年金改定率で連動・令和8年度+1.9%) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。