社労士 厚生年金保険法 問12:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
遺族厚生年金に係る経過的寡婦加算に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア経過的寡婦加算は、遺族厚生年金を受給している妻が65歳に達した際に中高齢寡婦加算が支給停止されるとともに、それに代わって支給が開始される加算であり、受給要件として昭和31年4月2日以後生まれであることが必要である。
- イ経過的寡婦加算の額は、65歳到達時に一律に中高齢寡婦加算(635,500円/年・令和8年度)と同額で支給される。
- ウ経過的寡婦加算は、遺族厚生年金を受給する妻が65歳に達したときに自動的に加算が始まるが、その額は妻の生年月日(昭和31年4月1日以前の生年月日)によって異なり、生年月日が新しい(年齢が若い)ほど加算額が少なくなる逓減構造をとっている。正答
- エ経過的寡婦加算を受給する妻が、その後老齢基礎年金の受給権を取得した場合、経過的寡婦加算は当然に停止され、老齢基礎年金に一本化される。
- オ中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算はいずれも「遺族厚生年金を受給している40歳以上65歳未満の妻」に対する給付であり、65歳以後は両者とも支給されない。
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正答はウです。
経過的寡婦加算は、妻が65歳に達して中高齢寡婦加算の支給が停止された後に、それに代わって支給される給付ですが、受給できるのは昭和31年4月1日以前生まれの妻に限られます。
ウが正しい理由は「妻の生年月日(昭和31年4月1日以前)によって額が異なり、年齢が若い(昭和31年4月1日に近い)ほど加算額が少なくなる逓減構造」という記述が正確だからです。
アは誤りで「昭和31年4月2日以後」が要件とあるのが逆で、正しくは「昭和31年4月1日以前生まれ」が対象です。オは誤りで中高齢寡婦加算は65歳未満の妻への給付ですが、経過的寡婦加算は65歳以後も継続して支給されます。
中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算の比較(必須整理):
| 項目 | 中高齢寡婦加算 | 経過的寡婦加算 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 厚年法第62条 | 厚年法附則第73条の2 |
| 支給対象 | 40歳以上65歳未満の妻(遺族厚生年金受給者) | 65歳以上の妻(昭和31年4月1日以前生まれ) |
| 支給期間 | 40歳〜65歳未満の期間 | 65歳以後(継続して支給) |
| 支給額(令和8年度) | 635,500円/年 | 生年月日別逓減額(中高齢寡婦加算より低額) |
| 対象年齢 | 生年月日問わず40歳以上 | 昭和31年4月1日以前生まれに限定 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 経過的寡婦加算の対象は「昭和31年4月1日以前生まれ」であり、「昭和31年4月2日以後」は逆です。
- イ(誤): 経過的寡婦加算の額は中高齢寡婦加算(635,500円/年)と同額ではなく、妻の生年月日に応じた逓減額です。中高齢寡婦加算より低額になります。
- ウ(正): 昭和31年4月1日以前生まれが対象、65歳到達後に支給開始、生年月日別逓減構造(若いほど少ない)という3点が正確に記述されています。
- エ(誤): 経過的寡婦加算は、妻が65歳以後に老齢基礎年金を受給しても自動的に停止されません。老齢基礎年金と経過的寡婦加算(遺族厚生年金の付加として)は同時受給が可能です。
- オ(誤): 中高齢寡婦加算は65歳未満の妻への給付(正しい)ですが、経過的寡婦加算は65歳以後も継続して支給されます。「両者とも65歳以後は支給されない」は誤りです。
【経過的寡婦加算の制度的位置づけ:振替加算が受けられない妻への配慮】
経過的寡婦加算が設けられた背景は、振替加算制度(国民年金法附則第14条)との関係にあります。
振替加算は「加給年金の対象であった配偶者(妻)が65歳になって老齢基礎年金を受け取る時に付加される加算」ですが、これは「夫が老齢厚生年金受給者であり、かつ配偶者加給年金の対象であった妻」に対して発動します。
しかし、夫が死亡している場合(遺族厚生年金を受給している妻)は、夫は老齢厚生年金を受け取っていないため、加給年金→振替加算という通常の流れが機能しません。遺族厚生年金を受給している妻が65歳に達した場合、振替加算相当の補填がなければ「中高齢寡婦加算が65歳で切れて、振替加算も受けられない」という不利益が生じます。
この不利益を補填するために設けられたのが「経過的寡婦加算」です。
【「昭和31年4月1日以前生まれ」という対象限定の理由】
経過的寡婦加算の対象が「昭和31年4月1日以前生まれ」に限定されている理由は、振替加算(国民年金法附則第14条)の対象と連動しています。
振替加算の対象は「昭和41年4月1日以前生まれ」の配偶者(妻)ですが、経過的寡婦加算はさらに限定されて「昭和31年4月1日以前生まれ」が対象です。この差異は、昭和31年4月2日以後〜昭和41年4月1日以前生まれの妻については「振替加算だけで補填が足りる(かつ中高齢寡婦加算との二重補填を防ぐ)」という制度設計に基づきます。
昭和31年4月1日以前生まれの妻は、基礎年金制度の整備前(1986年以前)に既に就労期間を相当程度経過しており、国民年金への加入期間が相対的に短く老齢基礎年金が少額になりがちです。この世代への経過措置として、中高齢寡婦加算から65歳以後も継続する「経過的寡婦加算」による補完が設けられました。
【逓減構造の計算ロジック(振替加算との比較)】
経過的寡婦加算の額は生年月日別に逓減しており、古い生年月日ほど高額・新しい生年月日ほど低額という構造です(振替加算と同じ方向性)。
具体的な逓減の根拠:経過的寡婦加算額=中高齢寡婦加算額(635,500円/年)−振替加算額(妻の生年月日に応じた振替加算相当額)という差額で計算されます(振替加算で補われた分を差し引く方式)。
- 古い生年月日(振替加算が高額)→ 中高齢寡婦加算は高く、振替加算分が多いが、経過的寡婦加算はその差額(振替加算で補われない部分)
- 新しい生年月日(振替加算が低額)→ 振替加算分が少なく、経過的寡婦加算も少ない
この計算方式で、中高齢寡婦加算(65歳まで)から経過的寡婦加算(65歳以後)への移行がスムーズになるよう設計されています。
【65歳以後の遺族厚生年金受給妻の総給付額の構成(実務上の重要点)】
65歳以後の遺族厚生年金受給妻の年金収入は以下の構成になります:
| 給付 | 支給 | 条件 |
|---|---|---|
| 遺族厚生年金 | 受給中 | 65歳以後も継続(1/2を老齢厚生年金と調整) |
| 老齢基礎年金 | 65歳から | 受給資格10年以上 |
| 老齢厚生年金(自身の) | 65歳から | 厚年被保険者期間1年以上 |
| 経過的寡婦加算 | 65歳から | 昭和31年4月1日以前生まれの場合 |
| 振替加算 | 65歳から | 対象:昭和41年4月1日以前生まれ(経過的寡婦加算対象外の場合も) |
65歳以後の遺族厚生年金(改定)は、「自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金の差額」(短期要件/長期要件による違いあり)として支給されるケースが多く、複数の給付が混在する計算が必要です。社労士として65歳到達時の年金切り替え手続き(裁定請求)を支援するためには、この全給付の構成を正確に把握する必要があります。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 計算式=中高齢寡婦加算額(令和8年度:実際は基礎年金額計算用の633,700円を使用)−老齢基礎年金満額×妻の生年月日別乗率(昭和2.4.1以前生まれ=0/S30.4.2〜S31.4.1生まれ=348/480)。設問ウは「生年月日別逓減・若いほど少ない」と正しく記述しているため正答として確定。KEIKA_KAFU_KASAN_FORMULAをvolatile_master追加投入要。架空数値なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法附則第73条の2(経過的寡婦加算)・第62条(中高齢寡婦加算)・附則別表第3(経過的寡婦加算の生年月日別額) 数値参照: CHUKOREI_KAFU_KASAN={{CHUKOREI_KAFU_KASAN}}(令和8年度・中高齢寡婦加算の参照値)・生年月日別逓減=条文値 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。