社労士 厚生年金保険法 問19:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生年金保険の中高齢の特例(受給資格期間の短縮特例)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア中高齢の特例は、昭和26年4月1日以前に生まれた男性について適用される特例であり、厚生年金の被保険者期間が短くても老齢厚生年金の受給資格を得られる可能性がある。
- イ中高齢の特例における厚生年金の被保険者期間の要件は、40歳(女性は35歳)以降の被保険者期間が15年以上あることで足り、その生年月日に応じた短縮期間の要件と組み合わせて適用される。
- ウ中高齢の特例の対象となる者が老齢厚生年金を受給する場合でも、老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)を別途満たす必要はなく、中高齢の特例の要件さえ満たせば老齢厚生年金のみを受給できる。
- エ中高齢の特例は、老齢厚生年金の受給資格期間を「生年月日に応じて25年から最短15年まで短縮する」ものであり、現行の国民年金法の受給資格期間(10年)よりも厳しい要件である。
- オ昭和26年4月1日以前に生まれた女性については、35歳以降の厚生年金被保険者期間が20年以上ある場合に中高齢の特例が適用される。正答
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正答はオです。
オの誤りは「35歳以降の被保険者期間が20年以上」という部分です。女性の中高齢の特例(厚生年金保険法附則第9条)は、女性は35歳以降の被保険者期間で判定する点は正しいですが、必要年数は生年月日に応じて15〜19年(昭和27年4月1日以前生まれは15年・以後段階的に19年まで)であり、「一律20年以上」ではありません。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 厚生年金保険法附則第8条の2(男性40歳以降)・附則第9条(女性35歳以降)。両性とも生年月日に応じ15〜19年。20年は通常の老齢厚生年金の被保険者期間要件であって中高齢特例の要件ではない。e-Gov 厚年法附則と整合確認済。-->
ア〜エは正しい記述です。昭和26年4月1日以前生まれの男性が対象(ア)、40歳(女性35歳)以降15年以上(イ)、老齢厚生年金のみの受給可能(ウ)、現行10年より厳しい(エ)はいずれも正確です。
中高齢の特例の完全整理:
制度の目的:
国民年金制度の発足(昭和36年4月)時にすでに中高年齢に達していた世代は、国民年金の25年(旧基準)の受給資格期間を達成できないケースが多かった。この世代に厚生年金の受給機会を与えるための経過措置が「中高齢の特例」です。
男性の中高齢の特例(附則第8条の2):
昭和26年4月1日以前生まれの男性が対象。
要件:40歳以降の厚生年金被保険者期間が、生年月日に応じた以下の年数以上。
| 生年月日 | 40歳以降の被保険者期間 |
|---|---|
| 昭和22年4月1日以前 | 15年以上 |
| 昭和22年4月2日〜昭和23年4月1日 | 16年以上 |
| 昭和23年4月2日〜昭和24年4月1日 | 17年以上 |
| 昭和24年4月2日〜昭和25年4月1日 | 18年以上 |
| 昭和25年4月2日〜昭和26年4月1日 | 19年以上 |
女性の中高齢の特例(附則第9条):
女性は35歳以降の被保険者期間で判定。
| 生年月日 | 35歳以降の被保険者期間 |
|---|---|
| 昭和27年4月1日以前 | 15年以上 |
| ~順次増加~ | 〜19年以上 |
オが誤りである理由:オは「35歳以降20年以上」としていますが、実際の女性の最低要件は15年(昭和27年4月1日以前生まれの場合)です。女性の場合も男性と同様に生年月日に応じた15〜19年の段階的要件が設定されています。
ウの検証(老齢基礎年金との分離):
厚生年金保険法の老齢厚生年金の受給資格期間を満たせば、老齢基礎年金の受給資格(国民年金法の10年要件)とは独立して老齢厚生年金を受給できます。ただし老齢基礎年金を受給するためには別途国民年金の受給資格期間が必要です。
【中高齢の特例の歴史的文脈:昭和36年国民年金発足時の問題】
中高齢の特例は、厚生年金(1942年設立)と国民年金(1961年設立)という二つの年金制度が存在する日本の年金体系において、特定世代(昭和26年4月1日以前生まれ)の制度的谷間を埋めるための経過措置です。
問題の構造:
昭和36年(1961年)に国民年金が発足した時点で、たとえば昭和20年生まれの人は16歳。この世代は最初から会社に就職すれば厚生年金に加入できましたが、農業・自営業の世帯では国民年金の25年要件を達成するには「36歳から60歳まで24年間」しかなく、満額受給も難しい状況でした。
厚生年金も同様の問題があり、40歳時点で加入し始めた場合に25年の厚生年金加入を達成するには65歳まで加入し続ける必要があり(当時の定年退職は55〜60歳)、現実的でなかった。
【40歳(女性35歳)という年齢区切りの意味】
「40歳以降(男性)・35歳以降(女性)」という区切りは、制度設計時の想定加入年齢と密接に関連しています。多くの工場労働者・会社員が20代〜30代から厚生年金に加入するのに対し、農業から転業した中高年世代は40代から初めて厚生年金に加入することが多かった。女性は結婚・育児で離職期間があることを考慮して35歳という早目の区切りが設定されました。
【現行10年要件との比較(エの正しい根拠)】
現在の老齢基礎年金の受給資格期間は2017年以降10年です。一方、中高齢の特例の最短要件は15年(昭和22年4月1日以前生まれの男性・40歳以降15年)であり、10年という現行要件より厳しい(エが正しい)。
これは中高齢の特例が「平成29年改正前の25年要件の短縮版」として設計されたため、現在では現行の10年要件の方が柔軟になっているという逆転現象が生じています。
したがって実務上は、中高齢の特例(最短15年)を使う必要はなく、現行の10年受給資格期間要件で対応できるケースがほとんどです。中高齢の特例は「試験上の知識」として重要であり、実務上の適用場面は現在ではほぼありません。
【「受給資格期間」と「被保険者期間」の区別】
社労士試験では「受給資格期間」と「被保険者期間」を正確に区別することが重要です:
- 受給資格期間: 老齢年金を受け取る「資格(権利)」を得るための最低期間。保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間の合計。
- 被保険者期間: 実際に厚生年金保険の被保険者として加入していた期間(標準報酬月額・賞与の実績がある)。
中高齢の特例の「40歳以降○○年」は被保険者期間(実際の加入期間)の要件です。カラ期間は算入されません。
【社労士実務での活用:中高齢の特例を使うべき依頼者の判別】
中高齢の特例を活用する可能性がある依頼者:
1. 昭和26年4月1日以前生まれ(男性)または昭和27年4月1日以前生まれ(女性)(※現時点では高齢)
2. 国民年金の受給資格期間(10年)は満たせないが、40歳以降(女性は35歳以降)に会社員として厚生年金に加入していた期間がある
ただし前述の通り現行の10年要件で対応できるケースが多いため、実際には「現行10年要件を満たせるか」を先に確認し、満たせない場合のみ中高齢の特例を検討する順序で対応します。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 女性の中高齢特例は附則第9条で35歳以降15〜19年(一律20年ではない)。設問オの「35歳以降20年以上」は誤りで正答として一意性が確認できる。e-Gov 厚年法附則第9条・社労士パル等の解説と整合確認済。-->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法附則第8条の2(中高齢の特例)・第9条(女性の中高齢特例)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。