問題
厚生年金保険の被保険者期間の計算に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はオです。
オの誤りは「受給権を有する場合であっても」という部分です。適用事業所に使用される70歳以上の者は、老齢厚生年金・老齢基礎年金などの受給権を有しない場合に限り、実施機関に申し出て被保険者(高齢任意加入被保険者)になれます(附則第4条の3第1項)。受給資格期間を満たすための制度で、事業主の同意は保険料を事業主が半額負担するかどうかに関わるものです。
ア〜エは正しい記述です。被保険者期間は取得月から喪失月の前月まで(ア・第19条第1項)、喪失日は原則として退職日の翌日で、月末退職なら退職月まで算入(イ・第14条第2号)、同月得喪は原則1か月算入(ウ・第19条第2項)、6か月以上は脱退一時金の要件の一つ(エ・附則第29条)です。
厚生年金保険の被保険者期間の計算ルールの整理:
基本ルール(厚生年金保険法第19条):
| 状況 | 算入月 |
|---|---|
| 通常(取得月と喪失月が異なる) | 取得月〜喪失月の前月(例:4月取得・10月喪失 → 4〜9月の6か月) |
| 同月得喪(取得月=喪失月) | 原則として、その月を1か月として算入(ウの正しい根拠。例外は同項ただし書) |
資格喪失日の確認(イの根拠):
退職日(例:9月30日退職)の翌日(10月1日)が資格喪失日です(第14条第2号)。被保険者期間は「喪失月(10月)の前月」=9月まで算入され、月末退職なら退職した月も算入されます。月の途中(例:9月15日)に退職すると喪失日は9月16日で、算入は8月までです。イはこの仕組みを正しく述べています。
同月得喪の例外(第19条第2項ただし書):
同月に取得・喪失した場合は原則として1か月算入されますが、その月にさらに厚生年金保険の被保険者または国民年金の被保険者(第2号被保険者を除く)の資格を取得したときは、この限りでありません。ア・ウが「原則として」と書いているのはこの例外があるためです。
脱退一時金の受給要件(エの根拠):
日本を離れる外国人等が受給できる脱退一時金の要件:
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 国籍要件 | 日本国籍を有しないこと(附則第29条第1項本文) |
| 被保険者期間 | 厚生年金保険の被保険者期間が6か月以上 |
| 受給資格期間 | 老齢厚生年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと(同項本文:第42条第2号に該当しない)/障害厚生年金等の受給権を有したことがないこと(同項第2号) |
| 国内居住 | 日本国内に住所を有しないこと(同項第1号) |
| 請求期限 | 最後に国民年金の被保険者の資格を喪失した日(その日に国内に住所があった者は、その後初めて国内に住所を有しなくなった日)から2年以内(同項第3号) |
※支給額の計算に用いる月数の上限は60か月(5年分)です(施行令第12条の2。令和3年4月1日施行の改正後)。
オの詳細(70歳以上の扱い):
厚生年金保険は70歳に達したときは、その翌日ではなくその日に資格を喪失します(第14条第5号)。70歳以上で就労していても原則は被保険者ではありませんが、老齢厚生年金・老齢基礎年金などの受給権を有しない者は、実施機関に申し出て高齢任意加入被保険者になれます(附則第4条の3)。保険料は原則として本人が全額負担し、事業主が同意すれば半額ずつの負担になります(同条第7項)。健康保険は75歳で後期高齢者医療制度に移るまで、就労先の健康保険に加入します。
【被保険者期間の計算:1か月単位制の精緻な理解】
厚生年金の被保険者期間が「月単位」で計算される意味を深掘りします。
日単位でない理由:
国民年金・厚生年金の年金額計算は「何か月加入したか」に基づきます(標準報酬月額×加入月数を基礎にした計算)。1日でも加入した月を1か月とカウントするため、「3月15日から6月14日まで」のような加入は4か月(3・4・5・6月)ではなく、喪失月(6月の前月)=5月まで算入で3か月(3・4・5月)となります。
日割り計算がないため、資格取得・喪失のタイミングが月の前半か後半かで被保険者期間が変わります。これが「月末退職か月途中退職か」という退職日の選択において重要な意味を持ちます。
【同月得喪の特殊処理(第19条第2項ただし書)】
同月得喪(同じ月に資格取得と資格喪失が生じる)は、転職・短期就労・試用期間のみの就労などで発生します。
原則:
その月を1か月として被保険者期間に算入します(第19条第2項本文)。「1日しか在籍しなかったのに1か月」と数えるのはこのためです。
例外:
その月のうちに、さらに厚生年金保険の被保険者の資格を取得した場合や、国民年金の被保険者(第2号被保険者を除く。例:退職後に第1号被保険者になった場合)の資格を取得した場合は、同月得喪をした月はその被保険者期間に算入しません(同項ただし書)。同じ月を二重に数えないための規定で、先の事業所での保険料の扱いも変わってきます。
退職日・入社日の置き方で結論が変わるため、社労士として正確に説明できることが重要です。
【脱退一時金の60か月上限(令和3年4月施行)と実務的意義】
脱退一時金の額の計算に用いる月数の上限は、令和3年4月1日施行の施行令改正後、60か月(5年分)です(施行令第12条の2)。長期在留の外国人労働者は、以前より多くの月数分を受け取れるようになりました。
脱退一時金の計算式(概要):
脱退一時金額=被保険者であった期間の平均標準報酬額×支給率(附則第29条第3項。支給率は被保険者期間の月数に応じた数を使って計算し、その数の上限が60)
60か月上限の意味:60か月を超えて保険料を納めていても、一時金の計算に使われるのは60か月分までです。ただし、脱退一時金を受けると、その計算の基礎となった期間は被保険者でなかったものとみなされます(附則第29条第5項)。受給資格期間(10年)を満たした後は、そもそも脱退一時金を請求できません(同条第1項本文)。
社会保障協定との関係:
日本は複数の国と社会保障協定を結んでいますが、協定の内容は国ごとに異なり、年金加入期間の通算を含む協定もあれば、保険料の二重負担の防止だけの協定もあります。通算を含む協定の相手国の方は、脱退一時金を受けるとその期間を通算に使えなくなる点を踏まえて判断する必要があります。社労士は外国人労働者への年金相談で、協定の有無と内容、脱退一時金を受けた場合の影響を説明することが重要な業務となっています。
【70歳以上就労者の社会保険の実務的処理】
70歳以上の就労者は:
- 厚生年金:原則として被保険者ではない(70歳に達した日に資格喪失・第14条第5号)。ただし老齢・退職の年金の受給権を有しない者は、申出により高齢任意加入被保険者になれる(附則第4条の3)
- 健康保険:75歳未満であれば就労先の健保(または協会けんぽ)に加入
- 後期高齢者医療:75歳以降は強制移行(健保・国保から離脱)
高齢任意加入をしない70歳以上75歳未満の就労者は「厚生年金非加入・健保加入」という状態になります。健保の保険料は事業主と労働者(本人)が折半で負担しますが、厚生年金保険料は発生しません。高齢任意加入をした場合の保険料は原則本人の全額負担で、事業主が同意すれば折半になります(附則第4条の3第7項)。
この実務知識は企業の人事担当者や経営者への助言において頻繁に活用されます。70歳到達前に「70歳以降の社会保険上の変化」と、受給資格期間が足りない場合の高齢任意加入の選択肢を説明しておくことが実務上重要です。
- 厚生年金保険法第19条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第19条(被保険者期間の計算。同月得喪は第2項)・第14条(資格喪失日。退職は第2号=その翌日、70歳到達は第5号=その日)・附則第4条の3(高齢任意加入被保険者)・附則第29条(脱退一時金・6か月要件)、同法施行令第12条の2(脱退一時金の支給率に用いる数・上限60)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-09-30 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

