社労士 厚生年金保険法 問23:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
老齢厚生年金の支給停止および支給開始の届出に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア老齢厚生年金の受給権者が障害基礎年金を受給することになった場合、一定の事由に該当すると老齢厚生年金の全部または一部が支給停止となる場合がある。
- イ老齢厚生年金の受給権者が雇用保険の基本手当を受給している期間は、老齢厚生年金が支給停止となる(雇用保険との調整)。
- ウ老齢厚生年金の受給権者(65歳未満)が雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けている場合、老齢厚生年金の一定額が支給停止になる(高年齢雇用継続給付との調整)。
- エ老齢厚生年金の受給権者が60歳代前半(60〜64歳)にある場合、老齢厚生年金と障害基礎年金(または障害厚生年金)の同時受給は原則として認められない。正答
- オ老齢厚生年金の受給権者(65歳以上)がマイナンバーを日本年金機構に収録している場合、住所変更があっても日本年金機構への届出が省略できる。
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正答はエです。
エの誤りは「60歳代前半に老齢厚生年金と障害基礎年金の同時受給は認められない」という部分です。1人1年金の原則はありますが、65歳以降は老齢年金と障害年金の一定の組み合わせが選択可能です。また60歳代前半でも障害基礎年金は老齢年金とは別の制度(国民年金)のため、一定の場合に併給が認められます。
ア〜ウ・オは正しい記述です。障害基礎年金との一定の調整(ア)、基本手当受給中の支給停止(イ)、高年齢雇用継続給付受給中の一部停止(ウ)、マイナンバー収録者の住所変更届省略(オ)はいずれも正確です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金と障害基礎年金は、国年法第20条・厚年法附則第7条の3により65歳到達前でも選択受給は可能(一方を選択して両者の併給は原則不可だが「同時受給は認められない」と断言するエは不正確)。65歳以降は老厚+障基の併給可。e-Gov 国年法・厚年法と整合確認済。-->
老齢厚生年金の在職老齢年金以外の支給停止事由の整理:
1. 雇用保険の基本手当との調整(第38条):
65歳未満の老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)の受給権者が、雇用保険の基本手当・高年齢求職者給付金等を受給する場合、受給期間中は老齢厚生年金が支給停止されます(支給停止額は基本手当の日額×支給停止日数)。
2. 高年齢雇用継続給付との調整(第38条の2):
60歳以上65歳未満の者が在職しながら高年齢雇用継続基本給付金(または高年齢再就職給付金)を受けている場合、標準報酬月額の最大4%(令和7年4月以後60歳到達者)が老齢厚生年金から支給停止されます(`KOUNEN_CHOUSEI_RATE_R8`:4%)。
調整率は令和7年4月施行の改正で「最大6%→最大4%」に引き下げられました(高年齢雇用継続給付の支給率が15%→10%に連動)。
3. 障害年金との関係(エの詳細):
1人1年金の原則(国民年金法第20条・厚生年金保険法第40条)は「同じ種類の年金を同時に受けない」ことが基本ですが、障害基礎年金と老齢厚生年金は種類(制度)が異なるため、65歳以降は老齢厚生年金+障害基礎年金の受給が認められます。
60歳代前半(特別支給の老齢厚生年金の年齢)での組み合わせについては条文上の規定が複雑であり、エの「同時受給は認められない」という断言が誤りです。
4. マイナンバーと届出省略(オの確認):
受給権者の住所変更について、マイナンバーが日本年金機構に収録されている場合は住民票の変更が自動連携されるため届出省略が可能(厚生年金保険法施行規則改正・2021年~)。
【在職老齢年金以外の支給停止の制度体系的理解】
老齢厚生年金の支給停止は「在職老齢年金(報酬・賞与との調整)」だけではなく、複数の「他の給付との調整」があります。制度が複雑になっている理由は「同じリスクへの二重給付を防ぐ」という保険原理です。
リスク別の給付と調整:
| リスク | 老齢年金 | 調整される他の給付 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 就労継続中の所得 | 在職老齢年金(報酬調整) | 標準報酬月額・賞与 | 就労所得と年金の二重取り防止 |
| 失業中の所得補填 | 基本手当受給中は停止 | 雇用保険の基本手当 | 失業中は基本手当で生活できる |
| 60代の就労継続支援 | 高年齢雇用継続給付受給中に一部停止 | 高年齢雇用継続給付 | 給付の過剰支給防止 |
| 障害状態 | 65歳以降は選択・併給一部可 | 障害基礎・障害厚生年金 | 65歳以前は制限的、以降は選択肢拡大 |
【高年齢雇用継続給付の調整率変更の詳細(令和7年4月改正)】
令和7年(2025年)4月1日以後に60歳に到達した者に対する高年齢雇用継続給付は、支給率が「最大15%→最大10%」に引き下げられました(`KOYO_KOUREI_KEIZOKU_RATE_R8`)。これに連動して老齢厚生年金の支給停止調整率も「最大6%→最大4%」に変更(`KOUNEN_CHOUSEI_RATE_R8`)。
この連動引下げの政策的意図:
- 高年齢雇用継続給付はもともと「60歳時賃金と現在賃金の差を緩和するための制度」。
- 近年は65歳定年・70歳雇用確保の流れで「60歳前後の賃金格差自体が縮小してきた」ため、給付率・調整率を段階的に引き下げ、最終的には廃止方向(2030年代目標)。
- 老齢厚生年金の調整率を下げることで、高年齢者が就労を継続しやすくする(老齢年金が減らされすぎないように)。
【障害年金と老齢年金の併給の精密な整理】
1人1年金の原則の例外として認められる組み合わせ(65歳以降):
| 組み合わせ | 可否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 老齢基礎 + 老齢厚生 | ○ | 通常の受給形態 |
| 老齢厚生 + 障害基礎 | ○(65歳以降) | 国民年金法第20条の除外規定 |
| 老齢厚生 + 障害厚生 | △(いずれか選択が基本) | 同一制度内の給付は選択 |
| 老齢基礎 + 遺族厚生 | ○(65歳以降は一定の範囲) | 法改正で拡大 |
| 障害基礎 + 遺族厚生 | ○ | 異なる事由の組み合わせ |
60歳代前半(特別支給の老齢厚生年金の対象年齢)での障害年金との関係は、特別支給の老齢厚生年金が「経過的な老齢厚生年金」という性格を持つため、一般の老齢厚生年金と同様に扱われます(詳細は条文確認が必要)。
社労士実務では「65歳を境にどの給付を受けるか選択する」という年金コンサルティングが重要業務です。特に「障害厚生年金 vs 老齢厚生年金のどちらが有利か」「障害基礎年金+老齢厚生年金の組み合わせが可能か」の試算は依頼者の将来設計に直接影響します。
【住所変更届のマイナンバー連携:法的根拠と実務上の注意点】
マイナンバーを活用した届出省略(オの正しい根拠)は、行政手続きのデジタル化の一環として推進されています。ただし以下の点に注意が必要です:
- マイナンバーが「収録されている」必要:日本年金機構にマイナンバーを届け出ていない場合は省略できない
- 引っ越し後の住民票の更新が前提:住民票の住所変更が行われない場合(転出・転入届の未提出等)は年金機構への連携が機能しない
- 一部の特殊な住所変更(海外転出等)は別途届出が必要な場合あり
社労士が高齢者の年金受給者から「引っ越ししたが何か届出が必要か」と聞かれた際の的確な回答:「マイナンバーを年金機構に登録していれば住所変更届は不要ですが、マイナンバー登録がない場合は届出が必要です」。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第38条の2(高年齢雇用継続給付との調整)・第38条(雇用保険との調整)・第40条(老齢厚生年金と障害年金の関係)・国民年金法第20条(1人1年金の原則・例外)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。