社労士 厚生年金保険法 問26:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
遺族厚生年金と他の年金との併給調整に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア65歳未満の遺族厚生年金の受給権者が、新たに老齢厚生年金の受給権を取得した場合(特別支給の老齢厚生年金等)、1人1年金の原則により遺族厚生年金か老齢厚生年金かのどちらか一方を選択しなければならない。
- イ65歳以上の者が遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方の受給権を有する場合、65歳以降は老齢厚生年金が優先的に全額支給され、遺族厚生年金は「遺族厚生年金額から老齢厚生年金額を控除した差額部分のみ」が支給される。
- ウ65歳以上の者が遺族厚生年金と老齢基礎年金の両方の受給権を有する場合、両方を同時に受給することはできず、いずれか一方を選択しなければならない。
- エ障害厚生年金と遺族厚生年金の両方の受給権を有する場合は、一方を選択することになるが、いずれも選択しなかった場合は遺族厚生年金が優先して支給される。
- オ65歳以上の妻が遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方の受給権を有する場合、「自分の老齢厚生年金を全額受給」したうえで「遺族厚生年金のうち差額部分のみを受給」という形での受給が可能である。正答
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正答はオです。
65歳以上の者が遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方の受給権を持つ場合、老齢厚生年金を全額受給した上で、遺族厚生年金がそれを上回る場合はその差額部分のみが遺族厚生年金として支給されます(イとオは同じ内容を指しています)。
ア・ウは誤り。65歳未満でも遺族厚生年金と老齢基礎年金は同時受給が可能であり(別系統の年金)、また65歳以降の老齢厚生年金と遺族厚生年金は「選択」ではなく「老齢優先+差額補完」という処理です。エは誤り。障害厚生年金と遺族厚生年金はいずれかを選択しますが、選択しない場合は遺族厚生年金が「自動的に優先」されるわけではなく、法律の規定に従います。
遺族厚生年金と他の年金との調整の整理:
65歳前の調整:
| 組み合わせ | 取扱い |
|---|---|
| 遺族厚生 + 特別支給の老齢厚生(65歳未満) | どちらか一方を選択 |
| 遺族厚生 + 障害厚生年金 | どちらか一方を選択 |
| 遺族厚生 + 老齢基礎年金(65歳未満) | 遺族厚生と老齢基礎は制度が異なるため原則として両立可 |
65歳以降の調整(最重要):
| 組み合わせ | 取扱い |
|---|---|
| 遺族厚生 + 老齢厚生(65歳以降) | 老齢厚生年金を全額支給+遺族厚生の差額部分を補完(イ・オの正しい内容) |
| 遺族厚生 + 老齢基礎年金(65歳以降) | 両方受給可能(ウの誤りの根拠) |
| 遺族厚生 + 障害基礎年金 | 両方受給可能(障害基礎は国民年金制度) |
65歳以降の「老齢厚生優先+差額補完」の具体例:
例:妻の老齢厚生年金:年60万円、遺族厚生年金:年100万円
→ 支給内容:老齢厚生年金 60万円(全額)+遺族厚生年金の差額 40万円(100-60万円)
→ 合計受給額:100万円(遺族厚生年金相当額を下回らない保証)
例2:妻の老齢厚生年金:年120万円、遺族厚生年金:年100万円
→ 支給内容:老齢厚生年金 120万円(全額)+遺族厚生年金 0円(老齢が遺族を上回るため差額なし)
→ 合計受給額:120万円(老齢厚生年金のみ)
ウの誤りの詳細(老齢基礎と遺族厚生の関係):
老齢基礎年金(国民年金制度)と遺族厚生年金(厚生年金制度)は異なる制度のため、65歳以降は両方同時に受給可能です。「いずれか一方を選択」というウの記述は誤りです。
【遺族厚生年金の調整制度の2007年改正の背景】
遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整の仕組みは、2007年(平成19年)4月1日施行の年金制度改正で大きく変更されました。
改正前(2007年3月以前):
65歳以上の者が遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方の受給権を持つ場合、どちらか一方を選択するしかありませんでした。妻自身が長年厚生年金に加入して老齢厚生年金の受給権を持っていても、夫の遺族厚生年金の方が大きければ遺族厚生年金を選択するしかなく、「自分が支払ってきた保険料が無駄になる」という問題がありました。
改正後(2007年4月以降):
「老齢厚生年金を優先受給+遺族厚生年金の差額分を補完」という仕組みに変更されました。これにより:
1. 妻自身の老齢厚生年金は全額受給できる(自分の保険料拠出が全て活かされる)
2. 遺族厚生年金が老齢厚生年金を上回る場合はその差額分が支給される
3. 老齢厚生年金が遺族厚生年金を上回る場合は遺族厚生年金は実質ゼロ(老齢厚生年金のみ)
この改正は「男女共同参画・女性の就労促進」という政策と整合的です。働いて厚生年金保険料を支払った女性が、夫の死亡後に「自分の老齢年金か夫の遺族年金のどちらかを選べ」という二択を迫られないようにする改正です。
【遺族厚生年金の「4分の3」ルールの理解】
遺族厚生年金の額は、原則として「死亡した被保険者の老齢厚生年金相当額の4分の3」です。
例:夫の老齢厚生年金相当:年200万円 → 遺族厚生年金:年150万円(200万×3/4)
この「4分の3」という設定は「夫婦2人での生活費に比べて1人になった後の生活費は4分の3程度」という統計的な概算に基づいています。
【調整のケース別シミュレーション(試験・実務対応):
ケース1:妻の老齢厚生年金20万円/年・遺族厚生年金150万円/年
→ 老齢厚生20万円全額支給+遺族厚生差額130万円支給=計150万円
ケース2:妻の老齢厚生年金100万円/年・遺族厚生年金150万円/年
→ 老齢厚生100万円全額支給+遺族厚生差額50万円支給=計150万円
ケース3:妻の老齢厚生年金200万円/年・遺族厚生年金150万円/年
→ 老齢厚生200万円全額支給(遺族厚生差額0)=計200万円
ケース3では遺族厚生年金は実質受給なし(老齢厚生年金が大きいため)。ただし老齢基礎年金は別途受給可能。
【「3/4カット」問題と独自性のある2007年改正の意義】
2007年改正前は「老齢厚生か遺族厚生か選択」だったため、老齢厚生年金の額が大きい妻は老齢厚生年金を選択し遺族厚生年金を捨てる選択を迫られました。改正後は「老齢厚生年金全額+差額」となったため、自分の保険料拠出が完全に活かされるようになりました。
社労士試験では「2007年改正後の65歳以上の調整のロジック」が繰り返し問われます。特に「老齢厚生年金全額支給+差額補完」という仕組みは選択式問題でも記述問題でも出題されやすいため、具体的な数値を使ったシミュレーション思考で理解を固めることが重要です。
【実務上の適用手続き(年金事務所での相談)】
65歳到達時に遺族厚生年金と老齢年金の両方の受給権を持つ者(配偶者を亡くして遺族厚生年金を受給していた者が65歳になる場合など)は、日本年金機構から「年金受給選択申出書」が送付されます。この申出書の記載内容を正確に理解し、最も有利な受給形態を選択するための説明・助言が社労士の重要業務です。
2007年改正後の仕組みでは「自分の老齢厚生年金+差額(遺族厚生)」が自動的に最適解ですが、高齢の受給者は制度を理解していないことも多く、的確な説明が必要です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第40条(1人1年金の原則)・附則第17条(65歳以上の遺族厚生・老齢厚生の調整)・国民年金法第20条(老齢基礎・遺族厚生の例外規定)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。