社労士 厚生年金保険法 問28:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生年金保険における国庫負担および基礎年金拠出金に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア国庫は、厚生年金保険の給付費用の一部を直接負担しており、老齢厚生年金の給付費用の3分の1を国庫が負担する。
- イ基礎年金拠出金は、厚生年金保険の各実施機関が国民年金勘定に拠出する資金であり、第1号・第2号・第3号被保険者の比率をもとに計算された額を拠出する。
- ウ国庫は、基礎年金給付費の2分の1を国庫負担として拠出しており、この国庫負担の財源には消費税収が充てられている。
- エ厚生年金保険の保険料率は18.3%(令和8年度)であり、事業主と被保険者がそれぞれ9.15%(合計18.3%)を折半して負担する。
- オ子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)は事業主のみが負担し、被保険者は負担しない。この拠出金は厚生年金保険料と合わせて徴収される。正答
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正答はオです。
子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)は事業主のみが負担する特別な拠出金で、被保険者(労働者)は負担しません。厚生年金保険料の標準報酬月額・標準賞与額を基に計算され、厚生年金保険料と合わせて徴収されます。
アは誤り。国庫は老齢厚生年金の給付費用を「直接」負担しているわけではなく、基礎年金拠出金を通じた間接的な国庫負担が主です(老齢厚生年金本体への直接の1/3国庫負担という規定はない)。ウは半分正しいですが、基礎年金給付費の1/2が国庫負担という数字は正確です。ただし財源として消費税を充てるという説明は簡略化しすぎです。エの18.3%と折半(各9.15%)は正確ですが、令和8年度も同じ料率(変更なし)です。
厚生年金の国庫負担・基礎年金拠出金の仕組みの整理:
基礎年金給付費の国庫負担(ウの確認):
国民年金法第84条により、基礎年金給付費の1/2(2分の1)を国庫が負担します。これは2004年(平成16年)改正で「1/3→1/2」に引き上げられ、2009年(平成21年)度に恒久化されました(それ以前は3分の1)。
基礎年金拠出金の仕組み(イの確認):
各年金制度(厚生年金・共済組合等)は、自制度の第2号被保険者の加入者数(または標準報酬総額)に応じた基礎年金拠出金を国民年金特別会計に納付します。この拠出金が老齢・障害・遺族の基礎年金(第1〜3号全員分)の給付財源になります。
「第1号・第2号・第3号被保険者の比率をもとに計算」というイの記述は不正確です。正確には「各制度の第2号被保険者数(加入者数)の比例案分」ではなく、標準報酬総額等を基礎にした拠出金計算が行われます。
子ども・子育て拠出金(オの確認・正答):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 負担者 | 事業主のみ(被保険者は負担しない) |
| 料率 | 標準報酬月額・標準賞与額の0.36%(令和8年度・`KODOMO_SHIEN_RATE`の子育て支援金0.23%とは別物)|
| 徴収方法 | 厚生年金保険料と合わせて徴収 |
| 使途 | 児童手当・子育て支援事業の財源 |
注意:健保の「子ども・子育て支援金」(協会けんぽ0.23%・`KODOMO_SHIEN_RATE`・労使折半)とは別の制度です。
アの誤りの詳細(国庫の老齢厚生年金への直接負担):
老齢厚生年金(報酬比例部分・加給年金等)は被保険者が拠出した保険料と事業主拠出が財源であり、国庫が給付費の1/3を直接負担するという規定はありません(基礎年金部分の1/2国庫負担と混同しないように)。
【基礎年金拠出金制度の設計思想と2004年改正の意義】
基礎年金拠出金制度は1986年(昭和61年)の基礎年金制度創設と同時に整備されました。第1号・第2号・第3号すべての被保険者に対して同一の基礎年金(老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金)を保証するために、各制度が共同で財源を拠出する仕組みです。
「1/3から1/2への引上げ」の政策的意義:
基礎年金の国庫負担は制度創設当初は1/3でした。これは「公費(税)と保険料の役割分担」という観点から、保険料拠出を優先した設計でした。しかし少子高齢化の進展で「保険料のみで持続可能な財政を維持することは困難」という判断が高まり、2004年(平成16年)改正で2009年までに1/2に引き上げることが決定・実施されました。
国庫負担の引上げには安定した財源が必要で、消費税収の一部が基礎年金国庫負担の財源として充てられています(ウの「消費税収が充てられている」という説明は概ね正確ですが、すべての国庫負担が消費税のみというわけではない)。
【厚生年金保険料率の固定化(18.3%)と保険料固定方式】
厚生年金保険料率は2004年(平成16年)改正による「保険料水準固定方式」により、2017年(平成29年)9月分以降18.3%で固定されています。
| 年 | 厚生年金保険料率(労使合計) |
|---|---|
| 2004年(平成16年) | 13.58% |
| 段階的引上げ | 毎年0.354%ずつ引上げ |
| 2017年(平成29年)9月〜 | 18.3%(固定・以後変更なし) |
18.3%固定は「これ以上保険料率を上げない」という社会契約的な約束であり、財政的に不足する場合は給付の抑制(マクロ経済スライド等)で対応するという方針の表れです。
【子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)の変遷と現行制度】
子ども・子育て拠出金は1972年(昭和47年)の児童手当制度創設と同時に「事業主拠出金(被用者保険の事業主負担)」として設けられました。その後、2015年(平成27年)の「子ども・子育て支援法」施行に伴い「子ども・子育て拠出金」に名称変更されました。
令和8年度の料率0.36%の意味:
標準報酬月額(650,000円/月=65万円上限)×0.36%を事業主が全額負担。被保険者負担はゼロ。これが社労士試験での頻出ポイント「事業主のみが負担する」という特徴です。
健保の「子ども・子育て支援金」との混同注意:
2026年4月から協会けんぽに「子ども・子育て支援金(`KODOMO_SHIEN_RATE`:合計0.23%・労使折半各0.115%)」が新設されました。これは健康保険料に上乗せされる新制度で、子ども・子育て拠出金(厚生年金)とは全く別物です。
| 項目 | 子ども・子育て拠出金(厚年) | 子ども・子育て支援金(健保) |
|---|---|---|
| 施行時期 | 1972年(旧:児童手当拠出金) | 2026年4月 |
| 負担者 | 事業主のみ | 労使折半 |
| 料率 | 0.36% | 0.23%(合計) |
| 法的根拠 | 厚生年金保険法第84条の3 | 子ども・子育て支援法 |
【年金財政の持続可能性と社労士の役割】
社労士試験でも「年金財政の仕組み」は出題対象ですが、実務においてより重要なのは「クライアント(事業主・被保険者)が正確に理解できていない拠出金・国庫負担の仕組みを説明する能力」です。特に子ども・子育て拠出金の「事業主のみ負担」という特徴は、給与計算システムの設定でも誤りが起きやすいポイントであり、社労士として正確な知識が必要です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第82条(保険料の負担・折半)・第84条の3(子ども・子育て拠出金)・国民年金法第84条(基礎年金拠出金の国庫負担1/2)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。