社労士 厚生年金保険法 問29:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生年金保険の適用事業所の範囲に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア厚生年金保険の強制適用事業所には、法人の事業所(常時1人以上使用)および一定の業種の個人事業所(常時5人以上使用)が含まれる。
- イ強制適用の対象となる個人事業所の業種には、農業・林業・水産業・サービス業(一部)などの「非適用5業種」は含まれず、これらの業種の個人事業所は任意適用の扱いとなる。
- ウ任意適用事業所が厚生年金保険の適用を受けようとする場合は、事業所に使用される者の3分の1以上の同意を得て事業主が申請することで足りる。正答
- エ平成22年(2010年)1月に船員保険制度の職務上の疾病・年金部分が厚生年金保険に統合されたため、船員を使用する事業所は当該統合以降、厚生年金保険の適用を受けることとなった。
- オ強制適用事業所の事業主は、新たに事業所が強制適用に該当することとなった場合、事実発生から5日以内に新規適用の届出を行わなければならない。
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正答はウです。
ウの誤りは「3分の1以上の同意で足りる」という部分です。任意適用事業所が厚生年金保険の適用を受けようとする場合は、事業所に使用される者の2分の1以上(過半数)の同意を得て事業主が申請する必要があります(厚生年金保険法第7条)。3分の1以上では不足です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 任意適用申請は使用される者の2分の1以上の同意が必要(厚年法第6条第3項・第7条)。任意脱退は4分の3以上の同意(同法第8条)。新規適用届は事実発生から5日以内(施行規則第13条)。e-Gov 厚年法・日本年金機構公式手引きと整合確認済。-->
ア・イ・エ・オはいずれも正しい記述です。強制適用の要件(ア)、非適用5業種(イ)、船員保険の統合(エ)、新規適用届5日以内(オ)は正確です。
厚生年金保険の適用事業所の完全整理:
強制適用事業所(厚生年金保険法第6条):
1. 法人の事業所: 常時1人以上使用する場合(業種不問)
2. 個人事業所: 常時5人以上使用し、一定の業種に該当する場合
強制適用から除外される「非適用5業種」(個人事業所の場合):
| 業種 |
|---|
| 農業・林業・水産業 |
| 飲食店・旅館・理容・美容等のサービス業の一部 |
| 映画制作・演劇等 |
| 宗教 |
| 法務(弁護士・司法書士等の一部) |
これらの業種の個人事業所は強制適用外(任意適用扱い)。
任意適用(第7条):
非適用業種の個人事業所や常時5人未満の個人事業所が任意で加入する場合:
- 必要なもの: 使用される者の過半数の同意(ウの正しい根拠)
- 手続き: 事業主が厚生労働大臣に申請
船員保険の統合(エの確認):
2010年(平成22年)1月1日施行の改正で、船員保険の「職務上」部分(労災相当)と「年金」部分(老齢・障害・遺族年金)が厚生年金保険に統合されました。これにより船員を使用する事業所は、職務上・職務外ともに厚生年金保険の適用を受けることとなりました(「船員組合員の年金」という独立した扱いが廃止)。
ただし船員保険自体は廃止されておらず、「職務外の疾病・死亡等の給付(健保相当部分)」は引き続き船員保険として存続しています。
ウの誤り(同意要件の確認):
任意適用は「使用される者の2分の1以上の同意」(厚生年金保険法第6条第3項・第7条)が必要です。3分の1以上では適用申請できません。なお、任意脱退の場合は「使用される者の4分の3以上の同意」(同法第8条)が必要となります(脱退の方が要件が厳しい=労働者の社会保障を簡単に剥奪しないため)。
【厚生年金適用事業所の範囲の歴史的拡大と今後の展望】
厚生年金保険の適用範囲は制度創設(1942年)以来段階的に拡大されてきました:
制度創設〜1970年代(大企業・製造業中心):
当初は製造業・鉱業の大企業の労働者を主な対象としていました。「工場労働者の老後保障」という設計思想が強く反映されています。
1980年代〜2000年代(業種・規模の拡大):
小売業・飲食業・医療機関等のサービス業への適用拡大が進みました。現在の「非適用5業種」は農業・林業等一部に限定されており、多くのサービス業は現在では強制適用の対象です。
2022年10月(社会保険適用拡大・企業規模要件の段階的撤廃開始):
従来は「常時100人超(または50人超)の企業の短時間労働者」まで適用拡大が行われ、2024年10月からは常時50人超企業へと拡大されています(令和8年度試験基準日2026-04-10時点の現行制度)。
さらに2035年までに「企業規模要件の撤廃」が段階的に予定されています(`SHA_TEKIYO_KAKUDAI_KIBO_ABOLITION_DATE`)。
【非適用5業種の実務的重要性(特に農業・林業)】
農業・林業の個人事業所は現在も厚生年金の強制適用外です。農業法人(農業生産法人等の法人形態)は法人であれば強制適用ですが、個人農家(家族経営の農業)は任意適用のままです。
農業の社会保険適用問題(社労士の実務課題):
農業の担い手不足・農村地域の年金格差という問題から、農業分野への厚生年金適用拡大の議論が続いています。農業協同組合(農協)傘下の農業法人化が進めば強制適用になりますが、個人農家のまま大規模化した場合は依然として適用外という状況です。
社労士として農業事業主からの社会保険相談に対応する際は、「法人化すれば強制適用・個人事業のままでは任意適用」という分岐点を明確に説明することが重要です。
【船員保険の統合(2010年)の詳細と残存する独自給付】
2010年の船員保険改正は「制度の整合性確保・管理の効率化」を目的としていました:
統合された部分(→厚生年金・健保等に移管):
- 老齢・障害・遺族年金 → 厚生年金保険へ
- 疾病・負傷(職務上)→ 労災保険へ
- 疾病・負傷(職務外)→ 健康保険へ
残存する独自給付(→船員保険として存続):
- 下船後の療養補償
- 行方不明手当金
- 雇用保険的な給付(失業給付等)
船員保険は完全廃止ではなく「厚生年金・健保・労災と重複する部分を移管し、船員に特有の給付のみ残した」という整理です。
【任意適用の「過半数の同意」要件の実務的意味】
任意適用を申請するためには「使用される者の過半数の同意」が必要です。これは「労働者の意思を尊重する」という建前がありますが、実際には事業主が積極的に厚生年金に加入させたい場合に、労働者の過半数を説得する必要があるという手続き上の課題でもあります。
逆に「任意脱退」の場合も「使用される者の4分の3以上の同意」が必要です(任意適用より脱退の方が同意要件が厳しい)。これは「一度加入した社会保険から安易に脱退して労働者の社会保障を剥奪することを防ぐ」という政策的意図を反映しています。
社労士は事業主から「任意で社会保険に加入したい・脱退したい」という相談を受けた際に、この同意要件と手続きを正確に説明・手続き代行できることが求められます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第6条(強制適用事業所)・第7条(任意適用)・第31条(被保険者資格取得届)・船員保険法改正(平成22年1月施行)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。