厚生年金保険法30厚生年金保険法

社労士 厚生年金保険法 問30:厚生年金保険法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision

厚生年金保険の脱退一時金に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 厚生年金保険の脱退一時金は、日本国籍を有する者が日本を離れる際にも請求することができる。
  • 脱退一時金を受けるためには、厚生年金保険の被保険者期間が通算して6か月以上なければならず、この6か月の要件は国民年金の脱退一時金(第1号被保険者期間)と合算して計算することができる。
  • 脱退一時金の請求は、日本国内に住所を有しなくなった後(日本を出国した後)2年以内に行わなければならない。正答
  • 脱退一時金の額は、被保険者期間(月数)にかかわらず一律の額が支給される。
  • 平成21年(2009年)改正により脱退一時金の支給上限が36か月(3年)から60か月(5年)に引き上げられ、厚生年金保険の脱退一時金の計算に算入される上限期間が60か月となった。
正答:脱退一時金の請求は、日本国内に住所を有しなくなった後(日本を出国した後)2年以内に行わなければならない。

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正答はウです。

脱退一時金の請求期限は、日本国内に住所を有しなくなった後(実質的に出国後)2年以内です(厚生年金保険法附則第29条第4項)。この2年という期限を過ぎると請求権が消滅するため注意が必要です。

アは誤り。脱退一時金は日本国籍を有しない者(外国人)を対象とする制度で、日本国籍を持つ者は受給できません。イは誤り。厚生年金と国民年金の脱退一時金の被保険者期間は合算できません(それぞれ独立して6か月以上の要件を判定)。エは誤り。支給額は被保険者期間(月数)に応じて計算される(月数が多いほど額が大きい)。オは誤り。36か月→60か月への引上げは令和3年(2021年)4月施行の改正であり、「平成21年(2009年)改正」という記述は誤りです。

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厚生年金保険の脱退一時金の完全整理:

支給要件(附則第29条):

| 要件 | 内容 |

|---|---|

| 国籍 | 日本国籍を有しないこと(外国人のみ対象) |

| 被保険者期間 | 通算して6か月以上 |

| 受給権なし | 老齢厚生年金等の年金受給権を有しないこと |

| 住所 | 日本国内に住所を有しないこと(出国後) |

| 請求期限 | 日本国内に住所を有しなくなった日から2年以内 |

支給額の計算:

平均標準報酬額に応じた月数ベースの計算。上限は60か月(5年)分まで算入(令和3年改正・ウの正しい根拠に関連)。

オの誤りの詳細(改正時期の訂正):

脱退一時金の支給上限が「36か月→60か月」に引き上げられた改正は:

  • 令和3年(2021年)4月1日施行(オが「平成21年(2009年)改正」としているのは誤り)
  • 改正の背景:長期在留外国人の増加。5年以上厚生年金に加入していても最大3年分しか一時金として返還されなかった不公平感の解消。

社会保障協定との関係:

社会保障協定を締結している国の国籍者は、脱退一時金を受け取る代わりに「日本の年金受給権を将来のために保持する」という選択が可能な場合があります。

イの誤りの詳細(国民年金との脱退一時金の独立性):

厚生年金の脱退一時金と国民年金の脱退一時金は独立した制度です。両方の受給要件を満たせば両方の脱退一時金を受け取ることができますが、期間の合算はできません(それぞれ独立に6か月以上の要件判定)。

上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【厚生年金の脱退一時金制度の存在意義と「不公平解消」の政策的課題】

脱退一時金制度は1994年(平成6年)に創設されました。創設の背景には「短期在留の外国人が帰国後に日本の年金受給権を得られないまま保険料を支払うだけ」という問題がありました。

制度の基本的な不公平の構造:

日本人の会社員なら定年まで厚生年金に加入し老齢厚生年金を受け取れますが、外国人の場合:

1. 出稼ぎ労働者として5〜10年間日本で働き厚生年金保険料を支払う

2. 帰国後は日本の年金を受け取る立場にならない(帰国後も受給権はあるが実質受け取れない)

3. 保険料を支払ったのに何もメリットがない「掛け捨て」状態になる

このため、出国時に「払い戻し(脱退一時金)」を請求できるようにしたのが同制度です。

【60か月上限への引上げ(令和3年改正)の意義と残る問題】

令和3年(2021年)改正で上限が36か月から60か月に引き上げられました。

改正の効果:

  • 5年間(60か月)加入した外国人は、5年分の保険料拠出に対してより適切な返還を受けられる
  • 改正前は5年間加入しても3年分の計算(36か月)しか返還されなかった

残る問題点:

  • 60か月超の長期在留(例:20年加入)者は引き続き最大60か月分しか返還されない
  • 20年以上加入した者は年金受給権(受給資格期間10年以上)を持つため脱退一時金を受け取れない場合があるが、帰国後に日本の年金を実際に受け取ることが難しい国の出身者は「受給権はあるが実質受け取れない」というジレンマに陥る
  • 社会保障協定を締結していない国の国籍者は選択肢が限られる

【社会保障協定の活用(制度の最前線)】

社会保障協定(二国間協定)は「二重加入の防止」と「年金通算」を目的としています:

二重加入防止:

日本企業が海外に社員を派遣した場合、派遣国でも社会保険加入義務が生じる「二重加入」問題を回避するため、一方の国でのみ加入することを認める。

年金通算:

協定締結国では、日本での加入期間と相手国での加入期間を合算して「受給資格期間(10年)を満たす」ことができます。これにより単独では10年に達しない期間しかなくても、合算で年金受給権を取得できる場合があります。

2026年時点での協定締結国は30か国以上(ドイツ・アメリカ・フランス・韓国・中国・インド等)。

社労士の外国人雇用における役割:

外国人労働者を雇用する企業の社労士は:

1. 社会保障協定の有無の確認と適用手続き

2. 脱退一時金の受給要件・請求手続きの説明

3. 長期在留者の年金受給権保全(帰国後も日本の年金を受け取るための手続き)

という専門的な業務を担います。近年は技能実習制度の廃止・育成就労制度への移行(令和7年施行)に伴い外国人労働者の長期在留が増加傾向にあり、年金制度への対応は社労士の重要業務として拡大しています。

【国民年金の脱退一時金との比較(kokunen_23との接続)】

| 項目 | 厚生年金の脱退一時金 | 国民年金の脱退一時金 |

|---|---|---|

| 対象者 | 外国人(日本国籍不可) | 外国人(日本国籍不可) |

| 被保険者期間要件 | 6か月以上 | 6か月以上 |

| 期間の算入上限 | 60か月 | 60か月 |

| 請求期限 | 出国後2年以内 | 出国後2年以内 |

| 根拠条文 | 厚年法附則29条 | 国年法附則9条の3の2 |

両制度とも要件・上限・期限が同一に整合しています(令和3年改正で統一された)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法附則第29条(脱退一時金)・令和3年改正(60か月上限化・2021年4月施行)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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