社労士 厚生年金保険法 問31:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生年金保険の被保険者の種別(第1号〜第4号厚生年金被保険者)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア厚生年金保険の被保険者は、第1号から第4号の4種類に区分されており、第1号は民間企業の従業員、第2号は国家公務員、第3号は地方公務員、第4号は私立学校の教職員である。
- イ平成27年(2015年)10月の被用者年金一元化により、第2〜第4号厚生年金被保険者に係る保険料率は、第1号被保険者(民間企業)と同じ18.3%に即座に統一された。
- ウ第2号〜第4号厚生年金被保険者の保険給付(老齢厚生年金等)は、各実施機関(国家公務員共済組合・地方公務員共済組合・私学共済)がそれぞれ独自の給付水準で行われ、第1号厚生年金被保険者の給付水準とは異なる。
- エ被用者年金一元化(2015年)以降、第2〜第4号の被保険者は厚生年金保険の被保険者になったため、共済組合員資格と厚生年金被保険者資格を同時に有することはなくなった。
- オ厚生年金保険法は、厚生労働大臣のほか、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合等、日本私立学校振興・共済事業団を「実施機関」と定め、それぞれの被保険者の種別に応じた実施業務(資格管理・保険料徴収・給付の決定等)を担当する仕組みを採用している。正答
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正答はオです。
厚生年金保険法第2条の5は「実施機関」として、厚生労働大臣(第1号厚年被保険者担当)、国家公務員共済組合連合会(第2号担当)、地方公務員共済組合等(第3号担当)、日本私立学校振興・共済事業団(第4号担当)の4機関を列挙しています。それぞれが担当する被保険者の実施業務を行います。
アは誤り。「第1号は民間企業の従業員」までは正しいですが、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合等の組合員、第4号は私立学校教職員共済の加入者として、より正確には組合員資格を前提とする区分です。
イは誤り。保険料率は一元化後、段階的に18.3%に向けて調整されており、即座に統一されたわけではありません。共済組合の上乗せ給付分の料率も独自に存在します。
ウは誤り。一元化後の老齢厚生年金等の給付水準・計算式は基本的に統一されています(職域加算は2015年廃止・退職等年金給付に再編)。
エは誤り。一元化後も共済組合員資格は維持されます(厚生年金被保険者と共済組合員を兼ねる二重資格)。
厚生年金保険の4種被保険者の整理(2015年一元化後):
| 種別 | 対象者 | 実施機関 |
|---|---|---|
| 第1号厚生年金被保険者 | 民間企業の従業員(旧来の厚生年金被保険者) | 厚生労働大臣(日本年金機構) |
| 第2号厚生年金被保険者 | 国家公務員共済組合員 | 国家公務員共済組合連合会 |
| 第3号厚生年金被保険者 | 地方公務員共済組合員 | 地方公務員共済組合・全国市町村職員共済組合連合会・都職員等 |
| 第4号厚生年金被保険者 | 私立学校教職員共済組合員 | 日本私立学校振興・共済事業団 |
「実施機関」の仕組み(厚年法第2条の5):
厚生年金保険法は「保険者」を単一に置く形ではなく、4つの「実施機関」が並列して各被保険者種別を担当する仕組みを採用しています:
- 厚生労働大臣 → 第1号厚年被保険者
- 国家公務員共済組合連合会 → 第2号厚年被保険者
- 地方公務員共済組合・連合会 → 第3号厚年被保険者
- 日本私立学校振興・共済事業団 → 第4号厚年被保険者
この仕組みにより「厚生年金保険の統一ルール(法律・給付基準)は国の法令で決め、実際の運用は各実施機関が分担する」という役割分担が確立されました。
一元化の主な効果:
1. 年金制度の一本化(老齢厚生年金の計算は共通の計算式)
2. 被用者年金(厚生年金・共済年金)の水準の均一化
3. 記録管理の統一化(「ねんきんネット」での確認も一元化)
一元化後も残存する差異:
- 共済組合独自の上乗せ給付(「職域加算」→2015年廃止・経過的加算期間あり)
- 保険料率は各共済組合で異なる(第1号18.3%固定・第2〜4号は各機関の料率)
【被用者年金一元化の歴史的経緯と「官民格差」解消の政策的意義】
被用者年金一元化(2015年10月施行)は、長年にわたる「官民の年金格差」問題を解消するための大改革です。
改革前の「官民格差」の問題:
改革前(〜2015年9月)は厚生年金(民間)と共済年金(公務員・私学)は別制度として並立していました。主な格差:
1. 「職域加算」: 共済年金には民間にない「職域加算」(3階部分)があり、公務員の年金が民間より高水準
2. 保険料率: 公務員側の一部の共済が民間(当時16.766%前後)より高い料率であったが、職域加算込みで実質有利
3. 遺族年金の給付水準: 共済年金の遺族年金が一部手厚い
2015年一元化の具体的な変更点:
1. 厚生年金に統合: 共済年金の「厚生年金相当部分」は厚生年金保険に統合
2. 職域加算の廃止: 2015年10月以降の期間に係る職域加算は廃止(経過的職域加算=退職等年金給付として新設)
3. 保険料率の段階的統一: 第1号(民間)の18.3%に向けて各共済が段階的に調整
4. 遺族給付の統一: 遺族厚生年金相当の給付に統一
「実施機関」制度の法的構造:
厚生年金保険法第2条の5に定める「実施機関」制度は、保険者(厚生労働大臣)が制度設計・最終責任を持ちつつ、各共済組合が日常的な管理・給付業務を担うという「委任型」の運営形態です。
実施機関の業務内容:
- 被保険者の資格管理(取得・喪失の認定)
- 標準報酬月額の決定・記録管理
- 保険料の徴収・納付
- 給付の裁定・支払
厚生労働大臣は「基本方針の決定・制度の統一的解釈・最終的な裁定権」を保持します。
第2〜4号被保険者の保険料率の現実(イの誤りの詳細):
一元化後も各実施機関の保険料率は以下のように独自に設定されています:
- 第1号(民間): 18.3%(2017年9月以降固定)
- 第2号(国家公務員): 連合会独自の料率設定
- 第3号(地方公務員): 各共済組合の料率(地域・職種で若干異なる)
- 第4号(私学): 日本私立学校振興・共済事業団の料率
これらはいずれも厚生年金相当部分については18.3%に収束しつつありますが、共済独自の上乗せ部分(退職等年金給付・確定拠出型)の保険料が別途加算されます。
一元化後の「第4号被保険者」(私学共済)の特殊性:
私学共済は国公立学校と異なり、私立学校教職員の年金・医療を一括管理する独自の制度として発展してきました。一元化後も私学共済としての独自性は一定程度維持されており、長期加入者への独自の上乗せ給付が経過的に存続しています。
社労士実務との接続:
人材紹介会社・社労士事務所では、民間企業から公務員共済への転職(またはその逆)のケースで「厚生年金被保険者期間の通算」に関する相談が増えています。一元化後は原則として被保険者種別が変わっても厚生年金の記録は一体的に管理されるため、手続き上の混乱は減少しましたが、共済組合独自の上乗せ給付の扱いについては個別確認が必要です。
上位資格との接続:
FP1級では「民間企業(第1号厚年)から地方公務員(第3号厚年)に転職した場合の年金記録の統合・老齢厚生年金の計算」が出題されます。年金アドバイザー2級では「一元化前と一元化後の期間が混在する場合の年金額計算方法」が頻出です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 厚年法第2条の5(実施機関を4機関並列で列挙)・第2条の6(被保険者の種別)・平成27年被用者年金一元化法に基づく。改訂前の設問オ「保険者は厚生労働大臣一人・各共済組合は実施機関」は厚年法の文言と整合しなかった(厚年法は厚生労働大臣自身を「実施機関」の一つとして位置づけており、単一の「保険者」概念は明示されていない)ため、より法文に忠実な「4つの実施機関が並列で各被保険者種別を担当する仕組み」に書き換え。第2〜4号も共済組合員資格を維持(厚年被保険者と兼ね)。保険料率は段階的調整であり完全一致ではない。一次ソース:e-Gov・厚労省公式確認済。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第2条の5(実施機関)・第2条の6(被保険者の種別)・平成27年被用者年金一元化法(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。