厚生年金保険法32厚生年金保険法

社労士 厚生年金保険法 問32:厚生年金保険法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision

老齢厚生年金の繰上げ支給に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 老齢厚生年金の繰上げ支給を請求できる者は、厚生年金保険の被保険者期間を1か月以上有することが必要である。正答
  • 老齢厚生年金の繰上げ支給の減額率は、繰り上げた月数1か月につき0.4%であり、令和4年(2022年)4月施行の改正で0.5%から引き下げられた。
  • 老齢厚生年金を繰上げ支給した場合、老齢基礎年金(国民年金)も同時に繰上げ申出が必要であり、老齢厚生年金だけを繰上げて老齢基礎年金を65歳から受け取ることはできない。
  • 老齢厚生年金の繰上げ支給を受けた後は、繰上げ申出を取り消して65歳からの通常支給に戻すことはできない。
  • 老齢厚生年金を繰上げ支給した場合の受給額は、「本来の老齢厚生年金額×(1−0.4%×繰上げ月数)」で計算され、減額は生涯続く。
正答:老齢厚生年金の繰上げ支給を請求できる者は、厚生年金保険の被保険者期間を1か月以上有することが必要である。

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正答はアです。

老齢厚生年金の繰上げ支給の要件として「厚生年金保険の被保険者期間を1か月以上有すること」という規定はありません。繰上げの要件は「老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を有していること」が核心であり、厚生年金の被保険者期間の最低月数(1か月以上)は繰上げの固有要件ではありません。

イは正しく、2022年(令和4年)4月施行改正で減額率が0.5%/月から0.4%/月に引き下げられました。

ウは正しく、老齢厚生年金と老齢基礎年金は同時に繰上げ申出が必要です(同時繰上げの原則)。

エは正しく、繰上げ申出は一度行うと取消し不可(不可逆)です。

オは正しく、減額は生涯継続します。

標準試験対策の基準レベル

老齢厚生年金の繰上げ支給の全体像(令和4年改正後):

| 項目 | 内容 |

|---|---|

| 繰上げ可能年齢 | 60歳〜65歳未満 |

| 減額率 | 0.4%×繰上げ月数(令和4年4月改正・改正前0.5%) |

| 最大減額 | 60歳0か月繰上げ(60か月繰上げ)→0.4%×60=24%減額 |

| 同時繰上げ | 老齢厚生年金と老齢基礎年金を同時に繰上げ申出(片方のみ不可) |

| 取消し | 不可(一度繰上げ申出をしたら65歳からの通常支給に戻せない) |

令和4年改正(0.5%→0.4%)の詳細:

  • 改正前(〜2022年3月): 0.5%/月(60か月繰上げ最大30%減額)
  • 改正後(2022年4月〜): 0.4%/月(60か月繰上げ最大24%減額)
  • 適用対象: 昭和37年4月2日以後生まれの者(改正前は昭和37年4月1日以前生まれに旧0.5%を適用)

繰上げ受給の損益分岐点(参考):

繰上げを選択した場合と65歳から受給した場合の累積受給額が一致する年齢(損益分岐年齢)は概ね76〜78歳とされています。それ以前に死亡すれば繰上げが得、長生きすれば通常受給が得です。

繰上げ受給の副作用(試験頻出):

1. 寡婦年金の受給権を喪失(国民年金の寡婦年金と競合)

2. 国民年金の任意加入ができなくなる(kokunen_47参照)

3. 障害基礎年金の受給に影響(一定の要件下)

上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【繰上げ制度の政策的意義と「0.4%引下げ」改正の背景・繰下げとの非対称性】

繰上げ・繰下げの減額率・増額率は、公的年金の財政中立原則(「繰上げで受け取ろうと繰下げで受け取ろうと、期待総受給額は同じになるように設定する」という考え方)に基づいて設定されています。

財政中立原則と減額率の計算根拠:

理論的には、繰上げの減額率は「1か月分の受給を早めることによる資本の時間価値」を反映します。平均余命・割引率を考慮した場合、0.4%/月は概ね「平均的な受給期間と割引率」から導かれる水準です(正確には低金利時代における割引率の見直しで0.5%から引き下げられました)。

繰下げ(0.7%増額/月)との非対称性:

| | 繰上げ | 繰下げ |

|---|---|---|

| 変更方向 | 65歳より早く受給開始 | 65歳より遅く受給開始 |

| 月単位の率 | 0.4%減額 | 0.7%増額 |

| 理由 | 財政中立(早期受給)の代わりに減額 | 財政中立超の恩恵(繰下げ促進政策) |

繰上げの0.4%と繰下げの0.7%が非対称なのは、長寿社会において「受給開始を遅らせる」インセンティブを与えるための政策的設計です。繰下げを促進することで「将来の財政負担軽減」(支払期間短縮)と「高齢者の就業継続促進」の二つの効果を狙っています。

令和4年改正(0.5%→0.4%)の具体的な影響:

改正前(0.5%)で60歳から繰上げした場合: 受給額が30%減額

改正後(0.4%)で60歳から繰上げした場合: 受給額が24%減額

損益分岐年齢の変化(60歳繰上げの場合):

  • 改正前: 概ね76歳前後
  • 改正後: 概ね77〜78歳(損益分岐がやや遅くなる→繰上げがやや有利になる)

改正の意図:0.4%に引き下げることで繰上げ受給のペナルティを緩和し、早期受給者の受給額を改善(特に低年金者・健康上の理由で繰上げせざるを得ない層への配慮)。

特別支給の老齢厚生年金(特老厚)との関係:

昭和36年4月1日以前(女性は昭和41年4月1日以前)生まれの者には、60〜65歳の間に「特別支給の老齢厚生年金」(特老厚)が支給されます。特老厚は繰上げ制度の対象ではなく(既に60歳から受給できるため)、特老厚の受給権者が一般の繰上げを請求することは通常想定されません。

繰上げ制度が本格的に意味を持つのは、特老厚の支給対象外となる昭和36年4月2日以後(女性は昭和41年4月2日以後)生まれの者(受給開始が原則65歳)に対してです。

社労士実務での繰上げに関するアドバイス:

社労士が年金相談で繰上げを検討するクライアントに対して確認すべき事項:

1. 健康状態・予想余命: 損益分岐年齢(77〜78歳)前に死亡するリスクの評価

2. 配偶者の状況: 繰上げすると寡婦年金受給権が消滅(配偶者への影響)

3. 在職老齢年金との関係: 65歳前から働いて収入がある場合、在老による停止と繰上げの損得計算

4. 取消不可: 一度繰上げを選択すると後戻りできない(慎重な検討が必要)

上位資格との接続:

FP1級では「繰上げ受給の損益分岐年齢の計算(年金額・平均余命・割引率を用いた現在価値比較)」が出題されます。年金アドバイザー2級では「繰上げ受給した場合の加給年金・振替加算への影響」が頻出です。社労士試験では「令和4年改正の0.5%→0.4%」が2022〜2026年度試験の頻出改正論点です。

<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 厚年法附則第13条の4〜第13条の6(繰上げ)・令和4年改正(0.4%減額率)に基づく。繰上げ要件は「受給資格期間10年以上」であり「厚年1か月以上」は繰上げ固有要件ではない(ア誤り)。老齢厚生年金と老齢基礎年金は同時繰上げ必須。一次ソース:e-Gov・厚労省・日本年金機構公式確認済。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法附則第13条の4〜第13条の6(繰上げ支給)・令和4年改正(0.5%→0.4%・https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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