問題
厚生年金保険の遺族厚生年金の額の計算に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はウ(誤っている記述)です。
300月みなしの特則(第60条第1項第1号ただし書)は、「第58条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金」(短期要件)に限って適用されます。保険料納付済期間等が25年以上であることによる遺族厚生年金(同項第4号・長期要件)には、この特則は及ばず、実際の被保険者期間の月数で計算します。ウの「長期要件についても300とみなす」は条文の限定を無視した誤りです。
ア(4分の3相当額の原則)・イ(短期要件のみ300月みなし)・エ(老齢厚生年金受給権配偶者の特例計算)・オ(複数受給権者の按分)はいずれも条文どおりです。
遺族厚生年金の額の計算(第60条)の全体像:
| 区分 | 計算方法 |
|---|---|
| 原則(第1項第1号) | 死亡した者の被保険者期間を基礎に、第43条第1項(報酬比例部分)の例により計算した額の4分の3 |
| 300月みなし(同号ただし書) | 短期要件(第58条第1項第1〜3号)のみ、被保険者期間が300月未満なら300とみなす |
| 長期要件(同項第4号) | 300月みなしは適用されず、実際の被保険者期間の月数で計算 |
| 老齢厚生年金受給権を有する配偶者(第1項第2号) | 原則額(4分の3)と「原則額×2/3」+「老齢厚生年金額(加給年金除く)×1/2」のいずれか多い額(同一事由の遺族基礎年金の支給を受けるときは原則額) |
| 複数受給権者(第2項) | 配偶者以外で受給権者が2人以上のとき、各人の額=原則の算定額を受給権者数で除した額 |
ウの誤りの核心(300月みなしの適用範囲の限定):
第60条第1項第1号ただし書は「第五十八条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金については」と、対象を短期要件(被保険者の死亡・資格喪失後の初診日から5年以内の死亡・障害等級1級2級の障害厚生年金受給権者の死亡)に限定しています。第4号(保険料納付済期間と保険料免除期間の合算が25年以上の者の死亡=長期要件)は列挙されていないため、実際の被保険者期間の月数で計算します。なお、第1号〜第3号のいずれかと第4号の両方に該当するときは、別段の申出がない限り第1号〜第3号のみに該当するものとみなされます(第58条第2項)。
【300月みなしは条文上、短期要件だけに適用される】
遺族厚生年金の基本額は、死亡した被保険者等の報酬比例部分の計算額の4分の3です。報酬比例部分は「平均標準報酬額×給付乗率×被保険者期間の月数」で計算されるため、被保険者期間が短いほど遺族厚生年金の額も小さくなります。
短期要件(第58条第1項第1号〜第3号:被保険者の死亡・資格喪失後に被保険者であった間に初診日がある傷病により初診日から5年を経過する日前に死亡・障害等級1級2級の障害厚生年金受給権者の死亡)には、被保険者期間がまだ短い段階で死亡した者が含まれます。第60条第1項第1号ただし書は、これらについて被保険者期間の月数が300に満たないときは300として計算すると定めています。
一方、長期要件(第58条第1項第4号)は「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者」の死亡です。この25年は国民年金の保険料納付済期間・保険料免除期間で判定するもので、厚生年金保険の被保険者期間が25年あることを意味しません。厚生年金保険の被保険者期間が300月未満でも長期要件に該当することはありますが、その場合も第60条第1項第1号ただし書は適用されず、実際の被保険者期間の月数で計算されます。
短期要件と長期要件の両方に該当する場合(第58条第2項):
死亡した者が第1号〜第3号のいずれかと第4号の両方に該当するときは、遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出をした場合を除き、第1号〜第3号のみに該当し第4号には該当しないものとみなされます。申出がなければ短期要件として300月みなしが適用される、という関係になります。
老齢厚生年金の受給権を有する配偶者の特例計算(第2号)の意味:
老齢厚生年金の受給権を有する配偶者が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、次の2つの額のうちいずれか多い額が遺族厚生年金の額となります(第60条第1項第2号)。
1. 通常の算定額(第1号:4分の3相当額)
2. 「通常の算定額×3分の2」+「その配偶者自身の老齢厚生年金の額(第44条第1項の加給年金額を加算しない額)×2分の1」の合算額
ただし、第60条第1項本文ただし書により、遺族厚生年金の受給権者が同一の支給事由に基づく遺族基礎年金の支給を受けるときは、第1号の額とされます。エはこの除外を含めて書かれているため、条文どおりです。生存配偶者自身の老齢厚生年金の額が大きいほど、2の額が1を上回りやすくなります。
複数受給権者の按分(第2項):
配偶者以外の遺族(子・父母・孫・祖父母)が遺族厚生年金を受ける場合で、受給権者が2人以上いるときは、受給権者ごとに第1項第1号により算定した額を、受給権者の数で除して得た額がそれぞれの額になります。第2項は「配偶者以外の者に遺族厚生年金を支給する場合」の規定であり、配偶者の遺族厚生年金はこの按分の対象ではありません。受給権者の数に増減を生じたときは、増減を生じた月の翌月から額が改定されます(第61条第1項)。
社労士試験での位置づけ:
「300月みなし」を遺族厚生年金全体に一律に適用されるものと誤解しやすい分野です。第60条第1項第1号ただし書の文言(「第58条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金については」)を正確に押さえ、長期要件には及ばない点を区別することが得点の分かれ目になります。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第60条第1項第1号・第2号、第2項(年金額)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115#Mp-At_60) 確認日: 2026-09-30 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

