社労士 厚生年金保険法 問35:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
遺族厚生年金の額および加算に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア遺族厚生年金の基本額は、死亡した被保険者等の報酬比例部分の計算額の4分の3に相当する額である。正答
- イ中高齢寡婦加算は、夫の死亡当時40歳以上65歳未満の子のない妻または子が18歳到達年度末に達した妻に支給され、支給期間は40歳から65歳まで継続する。
- ウ経過的寡婦加算は、昭和31年4月2日以後生まれの妻にも適用され、65歳到達後に支給が開始される。
- エ中高齢寡婦加算の額は、老齢基礎年金満額の3/4に相当する額であり、令和8年4月現在は635,500円/年円(年額)である。
- オ遺族厚生年金の受給権者が再婚した場合は、受給権を失権するが、離婚した後に再び受給権を取得することができる。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正答はアです。
遺族厚生年金の基本額は「死亡した被保険者等の報酬比例部分の計算額の4分の3(3/4)」です(厚年法第60条第1項)。これは被保険者本人が受け取るはずだった老齢厚生年金(報酬比例部分)の75%を遺族に支給するという仕組みです。
ウは誤り。経過的寡婦加算は昭和31年4月1日以前生まれの者に適用される経過措置であり、昭和31年4月2日以後生まれの妻には適用されません。
オは誤り。再婚による失権後に再び受給権を取得することはできません(一度失権した受給権は消滅します)。
イは正しく、中高齢寡婦加算は40歳から65歳未満の期間に支給されます。
エは正しく、令和8年4月現在の中高齢寡婦加算額は635,500円/年円です。
遺族厚生年金の額の構造(令和8年4月現在):
基本額:
```
遺族厚生年金基本額 = 報酬比例部分 × 3/4
(報酬比例部分 = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 被保険者期間月数)
※被保険者期間が300か月未満の場合は300か月みなし
```
加算の種類(中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算):
| 加算名 | 対象者 | 支給期間 | 令和8年4月現在の額 |
|---|---|---|---|
| 中高齢寡婦加算 | 夫死亡当時40〜65歳未満の子のない妻(または子が年度末到達後の妻) | 40歳〜65歳未満 | 635,500円/年円/年 |
| 経過的寡婦加算 | 昭和31年4月1日以前生まれの妻 | 65歳以降 | 生年月日別の段階額(生年月日別に逓減(大正15年4月1日以前生まれ:58,200円/年〜昭和30年4月1日以前生まれ:12,500円/年)円/年(生年月日別)) |
ウの誤り(経過的寡婦加算の対象年齢):
経過的寡婦加算は、65歳以降に老齢基礎年金を受け取るようになる際に、中高齢寡婦加算との落差を埋めるための経過措置です。対象は昭和31年4月1日以前生まれ(現在では概ね70歳以上)に限られます。昭和31年4月2日以後生まれの妻は対象外です。
理由:昭和31年4月2日以後生まれの女性は、国民年金の適用を受けた期間が長く(制度発足の昭和36年以降に20歳に達している)、老齢基礎年金が相応に支給されるため経過的な手当は不要とされています。
オの誤り(再婚後の受給権不復活):
遺族厚生年金の受給権は再婚によって消滅(失権)します。その後離婚したとしても、一度失権した受給権は復活しません(失権事由の消滅により受給権が復活する制度はない)。
【遺族厚生年金の制度設計の深層:「3/4」という比率の意味と中高齢寡婦加算の政策的背景】
遺族厚生年金の基本額が「報酬比例部分の3/4」に設定されているのは、国際的な社会保険慣行(OECD基準では遺族年金は本人年金の50〜75%程度が一般的)と日本の給付水準のバランスを考慮した設計です。
「3/4」の経済的意味:
夫婦二人の生活費を1とすると、配偶者一人の生活費は概ね0.7〜0.8とされます(生活費の規模の経済)。死亡した被保険者の報酬比例年金の75%は「一人暮らしの生活費に相当する水準」という考え方があります。
中高齢寡婦加算(635,500円/年円)の創設経緯:
中高齢寡婦加算は1985年(昭和60年)改正で設けられました。背景として:
1. 「40〜65歳の子のいない寡婦(妻)」は遺族基礎年金を受け取れない(遺族基礎年金は子のある者のみ)
2. 一方で65歳から老齢基礎年金を受け取れる(65歳になれば収入が回復する)
3. しかし40〜65歳の間は収入の空白期間が生じる
この空白を埋めるため、老齢基礎年金満額の3/4(635,500円/年円)が暫定的に支給されます。老齢基礎年金の受給が始まる65歳で終了します。
中高齢寡婦加算の額が「老齢基礎年金満額の3/4」である理由:
65歳に達した時点で「老齢基礎年金(満額)を受け取れる者は遺族厚生年金の遺族基礎年金相当部分をもらっていないため、その代替として老齢基礎年金の3/4を支給する」という発想です。寡婦年金(国民年金)と同じ「3/4」比率は、設計時に統一的に決定されたと考えられます。
経過的寡婦加算の設計思想:
経過的寡婦加算は65歳以降に支給される加算であり、老齢基礎年金と遺族厚生年金の合計額が「中高齢寡婦加算を受け続けた場合」を下回らないようにする調整措置です。
昭和31年4月1日以前生まれの女性は、国民年金の加入義務が免除されていた期間(国民年金制度発足前の期間・任意加入期間)があるため、老齢基礎年金が満額より少なくなる傾向があります。そのため65歳以降の所得補填として、生年月日に応じた逓減する額(生年月日別に逓減(大正15年4月1日以前生まれ:58,200円/年〜昭和30年4月1日以前生まれ:12,500円/年)円/年(生年月日別))が付加されます。
新しい世代(昭和31年4月2日以後)は国民年金制度が整備された後から成人しているため、十分な老齢基礎年金が期待でき、経過的手当は不要とされています。
遺族厚生年金の失権事由の整理(オの詳細):
遺族厚生年金の失権事由(厚年法第63条):
| 失権事由 | 復活の可否 |
|---|---|
| 再婚 | 不可(一度消滅した受給権は復活しない) |
| 死亡 | —(当然終了) |
| 配偶者の場合:離縁・縁組解消(養子縁組していた場合) | 不可 |
| 受給権者が子・孫・兄弟姉妹の場合:18歳年度末到達 | 不可(年齢要件消滅) |
再婚後の離婚でも受給権は復活しません。これは「再婚によって新たな婚姻関係(保護を受ける相手)を選択した」という事実に基づく制度設計です。
実務上の注意点:
社労士が遺族厚生年金の相談を受ける際、特に「内縁関係(事実婚)の解消」と「再婚」の違いに注意が必要です。法律婚を解消した場合(離婚)は失権しますが、内縁関係を解消しただけでは失権しない場合もあります(ただし内縁関係の立証が必要)。
上位資格との接続:
FP1級では「遺族厚生年金+中高齢寡婦加算の合計額の計算と、65歳到達後の経過的寡婦加算への切替・老齢基礎年金との合計額変化」が出題されます。年金アドバイザー2級では「夫死亡時・妻の年齢別の遺族厚生年金の組み合わせ(中高齢寡婦・遺族基礎・老齢基礎との組み合わせ)」が頻出です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 厚年法第60条(3/4報酬比例)・第62条(中高齢寡婦加算・635,500円/年円/年・40〜65歳)・附則第73条の2(経過的寡婦加算・昭和31.4.1以前生まれのみ)に基づく。経過的寡婦加算は昭和31.4.2以後生まれに適用なし(ウ誤)。再婚後の受給権不復活(オ誤)。一次ソース:e-Gov・日本年金機構公式確認済。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第60条(遺族厚生年金の額)・第62条(中高齢寡婦加算)・附則第73条の2(経過的寡婦加算)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。