社労士 厚生年金保険法 問36:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生年金保険の老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア平成15年(2003年)4月以後の被保険者期間に係る報酬比例部分は、「平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間月数」で計算する。
- イ平成15年3月以前の被保険者期間に係る報酬比例部分は、「平均標準報酬月額×7.125/1000×被保険者期間月数」で計算し、平成15年4月以後の計算方式と異なる乗率を用いる。
- ウ「平均標準報酬額」とは、被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総計を被保険者期間月数で除した額であり、平成15年4月以後の期間に用いる。
- エ標準賞与額の上限は1か月(支給月)あたり150万円とされており、これを超える賞与については保険料徴収・年金計算の対象外となる。
- オ報酬比例部分の計算における過去の標準報酬月額・標準賞与額は、過去の名目額のままで年金額が計算され、賃金・物価変動に応じた再評価は行われない。正答
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正答はオです。
報酬比例部分の計算では、過去の標準報酬月額・標準賞与額に対して年度ごとに改定される「再評価率」を乗じて、賃金・物価変動による現在価値への調整が行われます(厚年法第43条第1項・別表)。「過去の名目額のままで再評価は行われない」という記述は誤りです。
アは正しく、平成15年4月以後は「平均標準報酬額×5.481/1000×月数」です。
イは正しく、平成15年3月以前は「平均標準報酬月額×7.125/1000×月数」の別計算で、乗率も異なります。
ウは正しく、「平均標準報酬額」は標準報酬月額と標準賞与額の総計を被保険者期間月数で除した額です。
エは正しく、標準賞与額の上限は1か月(支給月)あたり150万円です(厚年法第24条の4第1項)。
報酬比例部分の計算式の体系:
```
老齢厚生年金の報酬比例部分
= [①平成15年3月以前の期間] + [②平成15年4月以後の期間]
① 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × H15.3以前の月数
② 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × H15.4以後の月数
```
②への変更の理由(2003年改正):
2003年(平成15年)4月から「賞与込みの総報酬制」に移行しました。それまでは月給(標準報酬月額)のみが年金の計算基礎でしたが、賞与(標準賞与額)も含めることになりました(同時に乗率も7.125→5.481に引き下げ)。
用語の定義:
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| 標準報酬月額 | 月給を区分した等級別の額(32等級・上限65万円) |
| 標準賞与額 | 実際の賞与額を1,000円未満切捨て(上限150万円/支給月) |
| 平均標準報酬月額 | H15.3以前の月の標準報酬月額の平均(H15.3月以前用) |
| 平均標準報酬額 | H15.4以後の月の標準報酬月額と標準賞与額1/12の合算平均(H15.4以後用) |
エ(標準賞与額の上限150万円)の正確な理解:
標準賞与額の上限は1か月(支給月)あたり150万円です(厚年法第24条の4)。年間では最大複数回の賞与合計で400〜500万円以上になる場合もありますが、各支給月ごとに150万円の上限が適用されます。
オの誤りの詳細(再評価率による現在価値調整):
報酬比例部分の計算では、過去の標準報酬月額・標準賞与額に「再評価率」を乗じて、賃金・物価変動による現在価値への調整が行われます(厚年法第43条第1項)。この再評価率は毎年度政令で改定されます。
例:30年前の標準報酬月額20万円を現在価値「概ね30万円相当」にスライドさせる場合、再評価率=1.5を乗じます(実際の数値は政令で複雑に算定)。
「過去の名目額のままで再評価は行われない」という記述は、この再評価制度を否定するため誤りです。なお、給付乗率(5.481/1000等)自体は法律上の固定数値であり、再評価率とは別の係数として扱われます。
【報酬比例部分の計算の歴史的変遷と「総報酬制移行」の意義】
厚生年金の報酬比例部分の計算方式は、1954年(昭和29年)の法制化以来、数度の大きな改正を経てきました。現在の計算式(平均標準報酬額×5.481/1000×月数)の背景には、「年収ベースでの年金設計」への転換という政策意図があります。
総報酬制導入前(〜2003年3月)の問題:
月給(標準報酬月額)のみで年金を計算する従来の方式では、賞与が多いほど実際の年収と年金計算の基礎に乖離が生じていました。例:年収800万円(月給40万+賞与480万)の場合、年金計算は月給の40万円のみが対象(賞与は無視)。
一方で賞与からも健康保険料・雇用保険料は徴収されていたため、「賞与から保険料を取っているのに年金計算に含めない不公平」という問題がありました。
2003年総報酬制への移行:
2003年(平成15年)4月から、標準賞与額(支給月の賞与を1,000円未満切捨てした額・上限150万円)も年金計算の基礎に加わりました。
移行時の乗率引下げ(7.125→5.481)の理由:
```
7.125/1000 × 月給のみ ≈ 5.481/1000 × (月給+賞与/12)
(同水準の年収を持つ者の年金額が移行前後で概ね変わらないよう調整)
```
再評価率(再評価係数)の仕組み:
報酬比例部分の計算では、過去の標準報酬月額・報酬額に年度ごとの「再評価率」を乗じます。再評価率は「現在の賃金水準に対する過去の賃金水準の比率」であり、賃金変動を補正します。
例:30年前の月給20万円を「今の30万円相当」にスライドさせる場合、再評価率=30/20=1.5を乗じます(実際の係数は複雑な計算式で決定)。
この再評価率が毎年度改定されるため、過去の標準報酬額は「当時の名目額」ではなく「再評価後の現在価値額」で計算されます。
賞与の取扱いと150万円上限の意義:
標準賞与額の上限が1支給月あたり150万円(厚年法第24条の4)に設定されている理由:
- 高額賞与受給者(役員・高給取り)の保険料・年金計算の上限を設ける
- 上限を超えた部分は保険料徴収・年金計算の対象外(上限超の賞与は「見えない収入」となる)
健康保険の場合は年間の賞与上限573万円という別の上限設定があり、厚生年金(毎支給月150万円)と健康保険(年間573万円)では賞与の取扱い上限が異なります。
5.481/1000という数値の精度(試験的な理解):
5.481/1000は、正確には「1000分の5.481」という法律上の数値です。実際の計算では、このベース乗率に再評価率・スライド率を重ねて最終的な年金額が算出されます。試験では「平成15年4月以後の期間は5.481/1000」という数値を覚えることが求められます。
FP1級・年金アドバイザーとの接続:
FP1級では「40代サラリーマンの平均標準報酬額と被保険者期間から老齢厚生年金の報酬比例部分を実際に計算する」問題が定番です。年金アドバイザー2級では「2003年前後の被保険者期間が混在する場合の計算」(旧乗率7.125と新乗率5.481の合算)が頻出です。社労士試験では計算式の暗記と「なぜ2式に分かれているか(総報酬制移行の理由)」の理解が求められます。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 厚年法第43条(報酬比例部分・平均標準報酬額×5.481/1000・H15.4以後)・第24条の4(標準賞与額上限150万円/支給月)に基づく。改訂前のオは「給付乗率は年度ごとに改定されない」を誤りとしていたが、給付乗率(5.481/1000)自体は法律で固定であり、改定されるのは再評価率(別の係数)であるため、ロジックが混乱していた。設問オを「過去の標準報酬月額・標準賞与額は名目額のままで再評価されない」(明確な誤り)に書き換え、再評価率の存在を論点として明確化。一次ソース:e-Gov・日本年金機構公式確認済。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第43条(報酬比例部分の計算)・第46条(在職老齢年金調整)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。