社労士 厚生年金保険法 問39:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
在職定時改定に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア在職定時改定は、令和4年(2022年)4月1日から施行された制度であり、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者の年金額が毎年改定される。
- イ在職定時改定では、毎年9月1日を基準日として、前年10月から当年9月までの被保険者期間に係る報酬比例部分が計算され、当年10月分の年金から反映される。
- ウ在職定時改定の適用を受けるのは、65歳以上の厚生年金保険の被保険者(在職者)のうち、老齢厚生年金の受給権者のみである。
- エ在職定時改定は、65歳以上の在職中に受け取る老齢厚生年金の増額だけでなく、退職後の老齢厚生年金にも遡って影響する。正答
- オ在職定時改定により増額された老齢厚生年金は、10月に支払われる年金(12月の支払い・10月・11月分)から実際に受け取ることができる。
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正答はエです。
在職定時改定によって改定された老齢厚生年金は「在職中に毎年改定される」制度であり、「退職後に遡って影響する」という記述は誤りです。退職後に行われる退職時改定(退職・70歳到達等による資格喪失後に一括して年金額が改定される従来の制度)とは別の仕組みです。在職定時改定は「在職中に現在進行形で年金額が増額される」制度であり、退職後に遡及するものではありません。
アは正しく、2022年4月1日施行の制度です。
イは正しく、9月1日が基準日・10月分から改定されます。
ウは正しく、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者のみが対象です。
オは正しく、12月支払い(10月・11月分)から実際に増額が反映されます。
在職定時改定の仕組みの全体像:
改定のスケジュール(毎年の流れ):
```
前年10月〜当年9月:この12か月間の在職期間(報酬比例部分)を計算
↓
当年9月1日:基準日(この時点での標準報酬月額等で計算)
↓
当年10月分から:改定後の老齢厚生年金を受給
↓
実際の受給:12月15日(10月・11月分の偶数月払い)
```
在職定時改定が導入された理由:
改定前(〜2022年3月)の仕組みでは、65歳以降に在職中の老齢厚生年金受給者は「退職または70歳到達まで年金額が改定されない」(在職中の保険料納付が退職時に一括して反映される)という設計でした。
2022年改正で在職定時改定が導入され、「65歳以上の在職者は毎年9月に年金額が改定される」ようになりました。これにより「定年後も働き続けるほど年金が増える」インセンティブが実感できるようになりました。
エの誤りの詳細(退職後への遡及なし):
在職定時改定は「在職中の毎年改定」であり、退職後に遡って計算し直すものではありません。退職時には従来の退職時改定(退職・70歳到達時点での一括計算)が行われます。在職定時改定と退職時改定は別々のタイミングで年金額に反映されます。
在職老齢年金(在老)との関係:
在職定時改定で年金額が増額されると、在職老齢年金の支給停止調整額(650,000円/月円/月)との比較も更新されます。年金額が増えることで在老による支給停止額が変わる場合があります。
【在職定時改定の制度的意義と「定年後も働く」高齢者への政策的インセンティブ】
在職定時改定(厚年法第43条の2)は2022年(令和4年)4月施行の制度ですが、その政策的背景には「人生100年時代における高齢者の就労継続促進」という国の方針があります。
制度導入前の問題:
2022年以前の制度では、65歳以降に在職していても老齢厚生年金の額は「退職または70歳到達まで固定」でした。つまり65歳で定年後もパートで厚生年金に加入して保険料を払い続けても、70歳到達または退職まで年金額が増えない状態でした。
「保険料を払っているのに年金が増えない」という「見えにくい不公平感」が高齢者の就労意欲を下げる一因とされていました。
在職定時改定の導入効果:
2022年4月以降は、65歳以上の在職者は毎年9月に年金額が自動的に増額されます。
計算例(概算):
- 65歳時の老齢厚生年金:月10万円
- 66歳定時改定(65〜66歳の1年分の報酬比例追加):月1,000円増額 → 月10,100円
- 67歳定時改定:さらに月1,000円増額 → 月10,200円
- 70歳退職時:さらに退職時改定で追加増額
このように、働き続けることが毎年の年金増額として「見える化」されることで、高齢者の就労継続意欲の向上が期待されています。
在職定時改定と在職老齢年金(在老)の組み合わせ(制度の複雑性):
在職定時改定で年金額が増えても、同時に在職老齢年金(在老)の支給停止が拡大する可能性があります:
在老の支給停止の仕組み:
- 基本月額(受給する老齢厚生年金の月額)+総報酬月額相当額(月給+賞与1/12)が650,000円/月円を超えると、超過分の1/2が支給停止
在職定時改定で「基本月額」が増えると、在老の計算に使う「基本月額」が上昇します。これにより支給停止額が増加するケースも生じます(増えた年金が在老でまた停止される)。
社労士はこの複合的な影響を計算してクライアントに最適な就労継続を提案する必要があります。
高年齢雇用継続給付との連動(4%%調整):
65歳未満の在職者には高年齢雇用継続給付(60歳到達後に賃金が一定割合低下した場合に支給)との調整が老齢厚生年金に適用されます(4%%・最大4%の停止)。ただし在職定時改定の対象は65歳以上のため、この調整との重複は65歳到達後は終了します。
制度の認知度向上が課題:
2022年4月施行ながら、一般の企業従業員・人事担当者の間での認知度はまだ高くありません。「65歳以降も在職して保険料を払い続けると、退職まで待たなくても毎年年金が増える」という事実を、社労士が積極的に周知することが重要です。
特に「在職定時改定を知らずに早期退職した方が得」と誤認するクライアントへの適切なアドバイスが実務的な重要業務となります。
上位資格との接続:
FP1級では「在職定時改定・退職時改定・繰下げ受給の組み合わせ最適化」が2022年以降の新頻出テーマとして登場しています。年金アドバイザー2級では「在職定時改定の計算スケジュール(9月1日基準・10月分から・12月受取)」が頻出です。社労士試験では令和4年改正の「在職定時改定」は2022〜2026年度試験の最重要改正論点の一つです。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 厚年法第43条の2(在職定時改定・2022年4月施行)に基づく。基準日9月1日・改定は10月分から・実受給は12月払い(10・11月分)。退職後に遡及しない(エ誤)。在職定時改定は65歳以上の在職老齢厚生年金受給者が対象。hot_topic論点。一次ソース:e-Gov・厚労省・日本年金機構公式確認済。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第43条の2(在職定時改定・令和4年4月施行)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。