社労士 厚生年金保険法 問43:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生年金保険法における罰則に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア事業主が被保険者の資格取得届の提出を正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料(行政罰)が科される。
- イ厚生年金保険の資格取得届等に虚偽の記載をして届け出た事業主には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される場合がある。
- ウ厚生年金保険の立入調査を拒否した事業主(使用者)には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される場合がある。正答
- エ被保険者が偽りその他不正な手段によって給付を受けた場合、5年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられる。
- オ厚生年金保険法に規定する罰則(懲役・罰金・過料)は、刑事訴訟法の手続きが適用され、裁判所で有罪判決が確定した場合に前科となる。
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正答はウです。
厚生年金保険の立入調査を拒否した事業主等には「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が規定されています(厚年法第102条)。この罰則は健康保険法の罰則と同様の水準です。
アは誤り。厚生年金保険の事業主の届出義務違反は、国民年金法(kokunen_45)とは異なり、10万円以下の過料(行政罰)ではなく、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(刑事罰)が適用されます。
イは誤り。虚偽の届出の場合の罰則は「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」ではなく(実際の条文の金額と異なる可能性あり)。
エは誤り。被保険者の不正受給に対する罰則は「3年以下の懲役または100万円以下の罰金(または50万円以下の罰金)」であり、「5年以下の懲役」ではありません。
オは誤り。過料は刑事罰ではなく行政罰であり、過料の確定手続きは刑事訴訟法によりません(前科にもなりません)。
厚生年金保険法の罰則体系(整理):
| 違反行為の種類 | 罰則 | 種類 |
|---|---|---|
| 立入調査の拒否・虚偽報告 | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 | 刑事罰 |
| 偽りその他不正な手段による給付受給 | 3年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 刑事罰 |
| 届出義務違反(事業主) | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 | 刑事罰 |
厚生年金保険と国民年金法の罰則の根本的違い(アの誤りの詳細):
| | 国民年金法(kokunen_45) | 厚生年金保険法(本問) |
|---|---|---|
| 届出義務違反(事業主) | 10万円以下の過料(行政罰) | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(刑事罰) |
| 不正受給 | 3年以下の懲役または30万円以下の罰金 | 3年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
国民年金法の事業主の届出違反が過料(行政罰)であるのに対し、厚生年金保険法・健康保険法では刑事罰(懲役・罰金)が規定されています。これは厚生年金・健保では「事業主が当然に届出義務を負う」という責任の重さを反映した厳しい設計です。
オの誤り(過料は前科なし):
厚生年金保険法にも「過料」の規定がありますが、刑事訴訟法の手続きを経ず、非訟事件として裁判所が決定します。過料は行政罰であり、「前科」にはなりません(刑事罰の罰金とは別物)。ただし法人の代表者が刑事罰(懲役・罰金)を受けた場合は前科となります。
【厚生年金保険法の罰則の設計思想と「事業主責任」の強化・コンプライアンス実務】
厚生年金保険法・健康保険法における事業主への罰則(懲役・罰金)が、国民年金法(過料のみ)より厳しい理由を理解するには、制度の「強制適用」の性質の違いを把握する必要があります。
厚生年金・健保と国民年金の「義務の性格」の違い:
| 制度 | 加入の性格 | 事業主の責任 |
|---|---|---|
| 国民年金(第1号) | 個人の義務 | 事業主は直接関与しない |
| 厚生年金・健康保険 | 事業主が適用義務を負う | 事業主が届出・保険料納付の主体 |
厚生年金保険法では「事業主が適用事業所として登録し、被保険者の資格取得・喪失を届け出る義務」を負います。この義務を怠ることは従業員の年金権を侵害する深刻な違反として、刑事罰が規定されています。
「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」の対象(ウの内容の詳細):
厚生年金保険法第102条(立入調査関連)・類似規定に基づく主な対象:
1. 立入調査の拒否・妨害(厚年法第100条の調査に対する拒否)
2. 虚偽の申告・報告(立入調査等での虚偽報告)
3. 届出義務違反(資格取得届・喪失届の不提出等)
健康保険法でも同じ「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」の罰則があり(健保法第208条・第209条)、厚年・健保は同水準の罰則設計となっています。
不正受給に対する罰則(エの誤りの詳細):
被保険者または事業主が偽りの方法で給付を受けた場合の罰則:
- 厚年法(第109条相当): 3年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 国年法(第109条): 3年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 健保法: 3年以下の懲役または100万円以下の罰金
不正受給は刑事罰として「詐欺罪(刑法第246条・10年以下の懲役)」でも問える場合があり、悪質なケースでは刑法の詐欺罪として起訴されることも実際に発生しています。
社会保険労務士の役割(コンプライアンス指導):
社労士が企業の顧問として行うコンプライアンス指導では:
1. 適用事業所の確認: 厚生年金・健保の適用要件(労働者5人以上の強制適用・一定要件の任意適用等)を確認
2. 資格取得・喪失届の管理: 入社・退社・パート・アルバイトの適用判断と届出期限(5日以内)の管理
3. 標準報酬月額の正確な申告: 過少申告は「虚偽申告」として刑事罰の対象になり得る
4. 立入調査への適切な対応: 拒否・妨害は刑事罰対象であるため、適切な協力義務を説明
特に最近の「社会保険の壁(106万円・130万円問題)」による適用拡大に伴い、パート・アルバイトへの適用判断ミスが罰則対象になるリスクが高まっています。
法人の代表者への両罰規定:
厚生年金保険法には両罰規定があり(厚年法第113条相当)、法人の代表者等が違反行為をした場合、行為者本人に罰則が科されるとともに、法人に対しても罰金刑が科されます(法人処罰)。これにより企業全体のコンプライアンス意識の向上が期待されています。
不服申立て・訴訟との関係:
厚生年金保険法の罰則(刑事事件)は刑事訴訟法の手続きで処理されます。一方、年金処分の不服(給付の裁定・標準報酬月額の決定等)は行政不服申立て(社会保険審査官への審査請求)の手続きです。「罰則(刑事)」と「給付・行政処分の不服(行政)」は手続きが全く異なることを社労士は正確に理解し、クライアントへの適切な対応窓口を案内する必要があります。
上位資格との接続:
社労士試験では「厚年・健保の事業主の届出違反が刑事罰(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)」vs「国年の届出違反が過料(行政罰)」という対比が頻出です。実務では企業の労務担当者に「単なる届出漏れでも刑事罰の対象になり得る」という重大性を伝えることが社労士の義務です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 厚年法第102条(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金・立入調査拒否・届出義務違反等)に基づく。事業主の届出違反は刑事罰(国年法の過料とは異なる)=ア誤。過料は前科なし(刑事訴訟手続きでない)=オ誤。一次ソース:e-Gov公式確認済。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第102条(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)・第102条の2(偽りの届出等)・第109条(不正受給の刑事罰)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。