社労士 厚生年金保険法 問50:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生年金保険の在職定時改定に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア在職定時改定は、65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給権者が厚生年金の被保険者である場合に適用され、毎年9月1日を基準日として、10月分の老齢厚生年金から改定が反映される。
- イ在職定時改定では、前年9月1日から当年8月31日までの1年間に加入した被保険者期間分の標準報酬月額が老齢厚生年金の額に反映される。
- ウ在職定時改定の基準日は毎年10月1日であり、10月1日時点の被保険者期間をもとに老齢厚生年金の額が改定される。正答
- エ在職定時改定によって老齢厚生年金の額が増加した場合でも、基本月額+総報酬月額相当額が650,000円/月円を超えていれば、在職老齢年金の調整(支給停止)が引き続き適用される。
- オ在職定時改定の対象は65歳以上の厚生年金被保険者に限られており、70歳以降に任意加入した被保険者(70歳以上の任意単独被保険者)は在職定時改定の対象外となる。
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正答はウです。
「在職定時改定の基準日は毎年10月1日」という記述が誤りです。正しくは毎年9月1日が基準日です。基準日は9月1日であり、改定された年金額は10月分から反映されます。基準日(9月1日)と改定適用月(10月分)は別の概念であり、両者を混同しないことが重要です。
ア・イ・エ・オはすべて正しい内容です。アは「9月1日基準・10月分から改定」と正確に記述しており、ウとの対比で正答を確認できます。イは1年間の対象期間(前年9月1日〜当年8月31日)が正確です。エは在職老齢年金の調整が引き続き適用される点を正確に記述しています。オは70歳以上任意単独被保険者が対象外である点が正確です。
在職定時改定の仕組み(令和4年4月新設):
| 項目 | 正しい内容 |
|---|---|
| 対象者 | 65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給権者で厚年被保険者 |
| 基準日 | 毎年9月1日(ウが「10月1日」と誤記)|
| 改定反映 | 10月分の老齢厚生年金から新額が適用 |
| 対象期間 | 前年9月1日〜当年8月31日の被保険者期間 |
| 強制適用 | 選択不可(令和4年4月施行・任意ではない) |
ウの誤りの詳細(基準日の混同):
在職定時改定では「9月1日」と「10月」が対になって登場するため、両者の役割を正確に区別する必要があります。
- 9月1日:基準日(この日時点の被保険者期間を集計する日)
- 10月分:改定後の年金額が初めて支払われる月
ウは「基準日が10月1日」と誤って記述しており、「10月分から反映」という正しい情報と「10月1日基準」という誤情報を混同させようとした典型的な誤り選択肢です。
エ(正)の在職老齢年金との関係:
在職定時改定で老齢厚生年金が増額された場合でも、基本月額(老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額の合計が650,000円/月円を超えれば、在職老齢年金の調整(支給停止)が適用されます。在職定時改定で増えた年金額の一部が在職老齢年金で相殺されるケースがあります。
オ(正)の70歳以上任意単独被保険者:
70歳以上の者は原則として厚生年金の強制被保険者ではなくなります。在職定時改定の対象は厚年法第43条の2で「65歳以上70歳未満」に明示されており、70歳以上の任意単独被保険者は対象外です。
【在職定時改定の政策的意義・導入経緯・基準日と改定月の体系的理解・在職老齢年金との複合効果】
在職定時改定は令和4年(2022年)4月1日から施行された比較的新しい制度です。従来は「退職するまで在職中に増えた年金額が反映されない」という問題がありました。
導入前の問題点(在職定時改定がなかった時代):
令和4年改正前:65歳以降も在職して保険料を支払い続けても、退職するまで老齢厚生年金の額が増えない(退職時一括改定のみ)。
これにより:
- 「早く退職して年金額を増やしたい」というインセンティブが生じる
- 在職継続のモチベーションが下がる
- 高齢者の就労意欲の阻害
在職定時改定の導入で「在職中でも毎年年金額が増加」することで就労継続意欲を維持します。
基準日(9月1日)と改定適用月(10月分)の法的構造:
厚年法第43条の2は「毎年9月1日(以下「基準日」という)」と明示しています。
| 時点 | 法的意味 |
|---|---|
| 9月1日(基準日) | その日における被保険者期間(前年9月1日〜当年8月31日)を集計する基準点 |
| 9月中(処理期間) | 日本年金機構が計算・改定額を確定する期間 |
| 10月分から | 改定後の額を初めて支払う月(翌月払いのため12月支払い分) |
ウの「基準日は10月1日」は、改定が反映される月(10月)から逆算して基準日を誤認させる典型的な引っかけです。「9月1日基準→10月分から」という対を正確に記憶することが試験対策の要点です。
在職定時改定と退職時一括改定の関係(重複なし):
在職定時改定で反映された期間は、退職時一括改定では再計算しません(重複なし):
- 66歳9月改定:65〜66歳(9月〜8月)の期間が在職定時改定で反映
- 68歳9月改定:67〜68歳の期間が反映
- 68歳12月に退職:68年9月〜68年12月(退職月まで)が退職時一括改定で反映
このように在職定時改定で「1年ずつ」、退職時一括改定で「退職年度の端数分」という組合せで機能します。両制度は選択ではなく順次自動適用されます。
在職定時改定の計算例(具体的イメージ):
65歳で老齢厚生年金受給開始・その後も在職(月給40万円・標準報酬月額41万円)の場合:
第1年(66歳・9月1日基準・10月分から改定):前年9月〜当年8月の12か月分の保険料が年金額に反映
反映額≒報酬比例計算(標準報酬月額41万円×12か月分÷1000×5.481(平均的な計数)≒約27,000円/年増加)
毎年約2〜3万円程度の増加が見込まれます(報酬水準による)。
在職老齢年金との複合効果(エの詳細):
在職定時改定で老齢厚生年金が増額→基本月額(老齢厚生年金/12)が増加→在職老齢年金の停止判定額が増加→停止額が増える可能性
例:
- 改定前:基本月額10万円+総報酬月額相当額60万円=70万円 > 650,000円/月円(65万円)→ 2.5万円停止
- 改定後:基本月額10.2万円+総報酬月額相当額60万円=70.2万円 > 65万円 → 2.6万円停止
増額分の一部が在職老齢年金で相殺されるケースがあります。調整額650,000円/月円(令和8年度)は令和7年度以前の50万円から大幅引上げされており、令和8年度からは多くの在職受給者が停止を受けなくなっています。
社労士実務での在職定時改定の活用:
在職中の高齢者への年金相談で:
1. 在職定時改定による毎年の増額試算を提示(「毎年9月1日基準・10月分から反映」を正確に説明)
2. 在職老齢年金の停止額を合わせて試算(純増額の確認)
3. 退職時期(65〜75歳のどこで退職するか)の最適化提案
特に「在職定時改定で増える年金額」と「退職した場合の在職老齢年金停止がなくなった後の年金額」を比較することで、退職時期の最適化が可能です。
<!-- 監修確定 2026-06-08 差し戻し修正版(legal-reviser): 選択肢ウを「退職時一括改定との選択はできない(強制適用)」(正しい内容のため正答の根拠が成立しない)から「在職定時改定の基準日は毎年10月1日」(誤・正しくは9月1日)に差し替え。これにより正答ウの誤り根拠が明確に確定。厚年法第43条の2に基づく。基準日9月1日・10月分から改定・70歳以上任意単独被保険者は対象外。一次ソース:e-Gov厚年法・日本年金機構公式確認済。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第43条の2(在職定時改定)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。