社労士 厚生年金保険法 問54:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生年金保険の保険料免除に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいものはいくつあるか**。 - ア. 産前産後休業期間中の厚生年金保険料の免除は、被保険者本人の保険料負担分のみが免除され、事業主の負担分については免除されない。 - イ. 育児休業等期間中の厚生年金保険料の免除は、被保険者本人の負担分と事業主の負担分がともに免除される。 - ウ. 産前産後休業期間中の保険料が免除された期間は、老齢厚生年金の計算において保険料を納付したものとして標準報酬月額がゼロ扱いとなる(免除期間は年金額の計算に含まれない)。 - エ. 月末以外(月の途中)から育児休業を開始した場合でも、その月の保険料は免除される(月末時点で育児休業中であれば翌月の保険料から免除)。 - オ. 厚生年金保険の育児休業期間中の保険料免除は、育児介護休業法に基づく育児休業に限られず、就業規則等に基づく育児目的の休業についても厚生労働省の認定があれば免除対象となる。
- ア1個
- イ2個正答
- ウ3個
- エ4個
- オ5個(全て正しい)
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正答はイ(2個・イとエ)です。
イは正しい。 育児休業等期間中の保険料免除は、被保険者の保険料負担分と事業主の負担分の両方が免除されます(厚年法第81条の2の2)。
エは正しい。 月の途中から育児休業を開始した場合でも、月末時点で育児休業中であればその月(翌月支払分)の保険料から免除が適用されます。月末時点の育児休業の有無が月単位の免除判定基準となります。
アは誤り。 産前産後休業中の保険料免除も、事業主の負担分も含めて両方が免除されます(アと逆の内容)。
ウは誤り。 免除期間は「保険料を納付したものとみなす」扱いであり、標準報酬月額もゼロ扱いではなく通常の標準報酬月額で計算されます(年金額に反映される)。
オは誤り。 育児休業の保険料免除は育児介護休業法に基づく育児休業に限られており、就業規則等に基づく独自の育児目的休業は対象外です。
産前産後休業・育児休業の保険料免除の比較整理:
| 項目 | 産前産後休業中 | 育児休業等期間中 |
|---|---|---|
| 根拠 | 厚年法第81条の2 | 厚年法第81条の2の2 |
| 被保険者の保険料 | 免除 | 免除 |
| 事業主の保険料 | 免除(アが誤りの理由) | 免除 |
| 年金額への影響 | 免除期間の標準報酬月額で通常通り計算(ウが誤りの理由) | 同左 |
| 月の途中開始の扱い | 月末時点で休業中 → その月分から免除 | 月末時点で育休中 → その月分免除(エが正の理由) |
アの誤り(産前産後も事業主分も免除):
産前産後休業中の保険料免除(平成26年4月施行)は、育児休業中と同様に事業主の保険料負担分も含めて全額免除です。アの「被保険者本人のみ・事業主は免除されない」は誤りです。
ウの誤り(免除期間も年金額に反映):
産前産後・育児休業中の保険料免除期間は、年金額の計算では「保険料を納付したものとみなす」扱いとなります(標準報酬月額は実際の月額で計算)。年金額が減らないことがこの制度の最大のメリットです。
エ(正)の月末判定基準の詳細:
例:4月15日から育児休業開始の場合
- 4月末日時点:育児休業中 → 4月分の保険料から免除(5月支払い分より免除開始)
例:4月30日(末日)から育児休業開始の場合
- 4月末日時点:育児休業中 → 4月分の保険料から免除
例:4月30日に育児休業終了の場合
- 4月末日時点:育児休業中 → 4月分は免除
オの誤り(就業規則独自の育休は対象外):
厚生年金保険法第81条の2の2では「育児休業等」の定義を「育児介護休業法第2条第1号に規定する育児休業」等に限定しています。会社独自の育休制度(育児介護休業法に基づかないもの)は保険料免除の対象外です。
【産前産後・育児休業の保険料免除制度の精緻な理解と令和4年改正の影響】
産前産後休業中(平成26年4月〜)および育児休業等期間中(平成4年〜、令和4年改正)の保険料免除制度は、少子化対策の一環として拡充されてきた制度です。
産前産後休業中の保険料免除(アの誤りの立法背景):
産前産後休業中の保険料免除は平成26年(2014年)4月1日施行です。それ以前は産前産後休業中(最長14週間:産前6週間・産後8週間)は保険料の免除対象ではなく、育児休業から開始した場合のみ免除でした。
平成26年改正で産前産後休業中も事業主・被保険者双方の保険料が全額免除となり、年金額への影響もゼロになりました。
令和4年改正による育児休業の月単位免除ルールの変更(エの詳細):
令和4年(2022年)10月1日施行の改正で、育児休業の保険料免除の月単位の判定ルールが改正されました:
改正前: 育児休業開始日(その月の1日〜月末まで)で月ごとに判定
改正後(令和4年10月〜):
- 月末時点で育児休業中 → その月分の保険料が免除(月末判定)
- 月の途中で14日以上の育児休業 → その月の賞与保険料も免除
月末判定により「月末1日だけ育児休業を取れば1か月分免除」という節税的利用を防ぎつつ、「月の途中開始でも月末まで休業していれば免除」という公平な設計に改正されました。
賞与に係る保険料の特則(令和4年改正):
令和4年10月施行の改正では、賞与の保険料免除ルールも変更されました:
改正前: 育児休業等期間が1か月を超える場合のみ、その期間内の賞与に係る保険料が免除
改正後: 育児休業等の期間が「その月の初日から月末まで(連続して1か月超)」または「その月内に14日以上」の場合に賞与保険料も免除
この改正により「賞与支給月に短期育休を取得して賞与保険料を免除する」という利用を抑制しました。
免除期間の年金額計算(ウの誤りの詳細):
産前産後休業・育児休業中の保険料免除期間は:
- 被保険者期間に算入(受給資格期間にカウント)
- 標準報酬月額は実際の月額を使用(ゼロ扱いではない)
- 老齢厚生年金の計算式に通常通り算入(保険料を納付したものとみなす)
具体的計算例(老齢厚生年金の報酬比例部分):
- 育休中(12か月):標準報酬月額40万円(休業前の報酬)× 12か月分が通常通り年金計算に算入
- 育休前後と同等の年金額増加
保険料免除と在職老齢年金の関係:
育児休業中は厚生年金の被保険者であり続けるため、在職老齢年金の対象となり得ますが、育休中は報酬がゼロ(育児休業給付金は報酬ではない)であるため、総報酬月額相当額はゼロとなります。したがって在職老齢年金の停止は発生しません(ただし被保険者期間は継続)。
社労士実務での適用判断(法定育休 vs 会社独自育休・オの誤りの実務的意義):
「育児介護休業法に基づく育児休業」か「会社独自の育児目的休業」かは、保険料免除の可否を左右する重大な差異です。
社労士が企業の就業規則を整備する際、「育介法の育休を取得したうえで、育介法以上の独自制度を追加する」設計(法定育休の延長・拡張)にすれば、法定育休部分の保険料免除を受けられます。一方、法定育休を経ずに会社独自制度のみの場合は免除対象外となります。就業規則の設計段階での確認が社労士の実務的役割です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 厚年法第81条の2・第81条の2の2に基づく。正しいのはイ・エの2個。産前産後も事業主分を含め全額免除(ア誤)。免除期間は年金額に通常通り算入(ウ誤)。月末判定で月の途中開始も免除(エ正)。法定育休のみ対象(オ誤)。一次ソース:e-Gov厚年法・日本年金機構公式確認済。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第81条の2(産前産後休業中の免除)・第81条の2の2(育休中の免除)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。