問題
特別支給の老齢厚生年金の繰上げ請求に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。 本問は特別支給の老齢厚生年金の繰上げ請求の要件・効果・制限について問うものである。繰上げ請求の取消し不可・老齢基礎年金の同時繰上げ・事後重症による障害給付への影響など、繰上げの不利益効果を正確に理解しているかを問う。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はイです。
日本年金機構は、繰上げ受給の注意点として「老齢年金を繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取消しすることはできません」と説明しています。支払いが始まる前でも取り消せないため、イは誤りです。
アは正しく、生年月日に応じた支給開始年齢(61〜64歳)に達する前に請求するものです(附則第13条の4第1項)。
ウは正しく、政令で定める額を減じた額になり(同条第4項)、減額は生涯続きます。
エは正しく、老齢基礎年金の繰上げ(全部又は一部)ができる者は同時に請求します(同条第2項)。
オは正しく、日本年金機構は「繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求することができません」と説明しています。
特別支給の老齢厚生年金の繰上げ(附則第13条の4):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 附則第8条の2各項に規定する者で附則第8条各号に該当するもの(国民年金の任意加入被保険者でない者) |
| 請求の時期 | 附則第8条の2の表に掲げる支給開始年齢に達する前 |
| 老齢基礎年金との関係 | 国民年金法附則第9条の2第1項(全部繰上げ)又は第9条の2の2第1項(一部繰上げ)の請求ができる者は、これらと同時に請求(第2項) |
| 年金額 | 政令で定める額を減じた額(第4項) |
男性の生年月日と特別支給の支給開始年齢:
| 生年月日 | 支給開始年齢 |
|---|---|
| 昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日 | 61歳 |
| 昭和30年4月2日〜昭和32年4月1日 | 62歳 |
| 昭和32年4月2日〜昭和34年4月1日 | 63歳 |
| 昭和34年4月2日〜昭和36年4月1日 | 64歳 |
| 昭和36年4月2日以後 | 特別支給なし(65歳からの老齢厚生年金の繰上げは附則第7条の3) |
イの誤りの詳細(取消し不可):
繰上げ請求の取消しを認める規定はなく、日本年金機構も「繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取消しすることはできません」と明示しています。支払い開始前でも取り消せず、減額された年金額が続きます。
エ(正)の同時請求:
附則第13条の4第2項により、老齢基礎年金の繰上げ(全部又は一部)ができる者は同時に請求しなければなりません。日本年金機構も「原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求をする必要があります」とし、特別支給の老齢厚生年金の受給資格者は一部繰上げもできると説明しています。
オ(正)の障害給付:
繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金を請求できません(日本年金機構)。
【特別支給の老齢厚生年金の繰上げ請求の不可逆性と実務的リスク】
特別支給の老齢厚生年金は、昭和60年改正で老齢厚生年金の支給開始年齢を65歳とした際に、60歳台前半の給付として経過的に設けられた制度です。生年月日に応じて支給開始年齢が引き上げられており、その年齢に達する前に受け取りたい場合の手続が、附則第13条の4の繰上げです。
条文の構造:
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 附則第8条の2に規定する者で附則第8条各号に該当するものは、支給開始年齢に達する前に、繰上げの請求をすることができる |
| 第2項 | 老齢基礎年金の全部又は一部の繰上げ請求ができる者は、これと同時に行わなければならない |
| 第4項 | 年金額は、政令で定める額を減じた額とする |
繰上げ請求の不可逆性(イの誤りの詳細):
条文には請求の撤回・取消しを認める定めがなく、日本年金機構は取消しができないことを明示しています。「支払い開始前なら取り消せる」という感覚は、一般の申込みの撤回から生じる誤解です。繰上げの判断は、減額が生涯続くことを前提に行う必要があります。
繰上げ請求の主なリスク(日本年金機構の注意事項):
1. 減額が生涯続く(ウ):繰上げ月数に応じて年金額が減額され、減額は生涯続きます。減額率は月0.4%(最大24%)とされていますが、これは昭和37年4月2日以降生まれの方の率です。特別支給の老齢厚生年金の対象となる世代(男性は昭和36年4月1日以前生まれ)は、この0.4%の対象ではありません。
2. 老齢基礎年金の同時繰上げ(エ):原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求します。特別支給の老齢厚生年金の受給資格者は一部繰上げも可能です。
3. 障害給付への影響(オ):繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求できません。
4. 寡婦年金:繰上げ請求した日以後は、国民年金の寡婦年金は支給されません。
女性の特別支給:
女性(第1号厚生年金被保険者期間のある者)の生年月日ごとの支給開始年齢は、男性とは別の表で定められています(附則第8条の2。生年月日ごとの年齢は本問では扱いません)。
繰上げを慎重に検討すべき典型的なケース(社労士相談の実務):
- 健康状態が良好で長寿が見込まれる場合(減額が長く続く)
- 近い将来に障害の状態になるおそれがある場合(事後重症による障害年金を請求できなくなる)
- 寡婦年金を受けられる可能性がある場合
- 在職中で在職老齢年金による停止が大きい場合
特に「取消し不可」は相談の最初に説明すべき事項です。社労士は、減額・障害給付・寡婦年金への影響を説明したうえで、本人が納得して判断できるようにします。
令和4年改正との関係:
令和2年の年金制度改正法により、令和4年4月から繰下げの上限年齢が75歳に引き上げられました(昭和27年4月2日以降生まれの方)。繰上げの減額率の見直し(月0.4%)は昭和37年4月2日以降生まれの方が対象で、繰上げ請求を取り消せないという点は変わっていません。
- 国民年金法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法附則第13条の4(特例による老齢厚生年金の支給の繰上げ)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115)/日本年金機構「年金の繰上げ受給」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-01.html) 確認日: 2026-09-30 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

