問題
賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への賃金支払)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点で施行されている制度を前提とする。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はア(誤っている記述)です。
デジタル払いを実施するために必要な労使協定は、36協定や時間外協定と異なり、労働基準監督署長への届出を求める規定はありません。デジタル払いの要件は労基法施行規則第7条の2に定められており、個々の労働者の同意が必要です。
イは正しく、使用できるのは厚生労働大臣の指定を受けた「指定資金移動業者」に限られます(施行規則第7条の2第1項第3号)。ウは正しく、個々の労働者の同意が必要です。エは正しく、口座残高が100万円を超えないようにする措置、または超えた場合に速やかに100万円以下とする措置が指定の要件です。オは正しく、破綻等の際に口座残高の全額を速やかに弁済することを保証する仕組みが指定の要件です。
賃金のデジタル払い 要件整理(2023年4月1日施行):
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 労基法第24条第1項(通貨払い原則の例外)・同施行規則第7条の2 |
| 業者の制限 | 厚生労働大臣が指定した「指定資金移動業者」のみ |
| 労使協定 | 事業場の過半数組合または過半数代表者との協定(対象労働者の範囲・取扱指定資金移動業者の範囲等)。締結は厚労省の通知(令和4年11月28日基発1128第4号ほか)で求められ、届出の定めはない |
| 労働者の同意 | 個々の労働者の同意が必要 |
| 残高上限 | 口座残高が100万円を超えないようにする措置、または超えた場合に速やかに100万円以下とする措置 |
| 保護制度 | 破産手続開始の申立て等で債務の履行が困難となったときに、口座残高の全額を速やかに弁済することを保証する仕組み(預金保険とは別の制度) |
| 現金化 | ATM等により1円単位で通貨で受け取れる措置と、少なくとも毎月1回は手数料等の負担なく受け取れる措置 |
賃金支払5原則(第24条)と通貨払い例外の全体像:
労基法第24条の通貨払い原則(①通貨 ②直接 ③全額 ④毎月1回以上 ⑤一定期日)の例外として認められる払い方法:
1. 銀行口座振込 (労基法施行規則第7条の2第1項第1号・労働者の同意が必要)
2. 証券総合口座への払込み (同項第2号・同様)
3. デジタル払い(指定資金移動業者) (同項第3号・2023年4月施行)
いずれも「労働者の同意」が必要であり、使用者が一方的に変更できないのは共通です。
各選択肢の解説:
- ア(誤・正答): デジタル払いの労使協定は届出不要。36協定(届出必要)・時間外協定等と混同させる誤りポイント。
- イ(正): 指定資金移動業者のみ使用可能。資金移動業者であっても、厚生労働大臣の審査を経て指定を受けていなければ使えない。
- ウ(正): 個々の労働者の同意が必要。全社員が対象の労使協定を締結しても、各労働者の個別同意なしに強制適用はできない。
- エ(正): 口座残高が100万円を超えないようにする措置、または超えた場合に速やかに100万円以下とする措置が指定の要件(施行規則第7条の2第1項第3号)。
- オ(正): 破産手続開始の申立て等で債務の履行が困難となったときに、口座残高の全額を速やかに弁済することを保証する仕組みが指定の要件(同号)。預金保険制度とは別の仕組み。
【デジタル払い制度の立法背景:キャッシュレス社会への対応と労働者保護の均衡】
賃金のデジタル払いは、労基法施行規則の改正(令和4年厚生労働省令第158号・2022年11月28日公布)により、2023年4月1日から施行されました。背景には、キャッシュレス決済の普及と、賃金の受取方法の多様化への要請があります。
ただし「通貨払い原則」(第24条第1項)の例外はあくまで限定的に許容されるものであり、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者を通じる場合に限られます。指定の要件(残高上限・破綻時の全額弁済の保証・現金化)は、資金移動業者が破綻した場合などに賃金が失われないよう労働者を保護するためのものです。
【通貨払い原則(第24条)の全体構造と各例外の比較】
| 払い方法 | 法的根拠 | 届出 | 労働者同意 | 普及状況 |
|---|---|---|---|---|
| 現金払い | 第24条第1項本則 | 不要 | 不要(原則) | 小規模事業所 |
| 銀行口座振込 | 施行規則第7条の2第1項第1号 | 不要 | 必要 | 主流 |
| 証券総合口座 | 同項第2号 | 不要 | 必要 | 少数 |
| デジタル払い | 同項第3号 | 不要 | 必要 | 拡大中 |
全ての例外払い方法で「届出不要」「労働者同意必要」が共通している点は重要な試験知識です。
【指定資金移動業者の指定要件(重要)】
厚生労働大臣の指定を受けるためには、施行規則第7条の2第1項第3号に定める要件を満たす必要があります。主なもの:
1. 残高上限: 口座残高が100万円を超えないようにする措置、または超えた場合に速やかに100万円以下とする措置
2. 破綻時の保証: 破産手続開始の申立て等で債務の履行が困難となったときに、口座残高の全額を速やかに弁済することを保証する仕組み
3. 現金化: ATM等により1円単位で通貨で受け取れる措置と、少なくとも毎月1回は手数料等の負担なく受け取れる措置
預金保険制度とは別の仕組みであることを正確に理解しておく必要があります。
【社労士実務への接続:デジタル払い導入時の手順とリスク】
社労士が顧問先企業でデジタル払いを導入する際の実務フロー:
1. 対象業者が厚労省の指定資金移動業者リストに掲載されているか確認
2. 過半数組合または過半数代表者との労使協定を締結(届出の定めはない)
3. 就業規則の賃金支払い条項を「指定資金移動業者を含む」表現に改定(第89条第2号)
4. 個々の労働者から書面または電磁的記録で同意取得
5. 毎月の振込処理で残高上限・自動振替の動作確認
特に注意点として、「デジタル払いを拒否する労働者には従来どおり銀行振込または現金払いで対応する」義務があり、デジタル払いへの一方的切替は賃金未払い(第24条違反)となる可能性があります。社労士はこの点での就業規則設計と同意書の書式作成を担当することが多い実務領域です。
根拠: 労働基準法第24条第1項、同法施行規則第7条の2(賃金のデジタル払い・2023年4月1日施行)、厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html(確認日2026-09-30)。
- 労働基準法施行規則第7条の2e-Govで原文を読む
- 労働基準法第24条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第24条第1項(通貨払いの原則・例外)、同法施行規則第7条の2第1項第3号(指定資金移動業者の要件。令和4年厚生労働省令第158号・2023年4月1日施行)、厚生労働省通知(令和4年11月28日基発1128第4号ほか。労使協定の締結) 数値根拠: 上限額(100万円)は施行規則第7条の2第1項第3号イの条件値。施行日は2023年4月1日(e-Gov の改正履歴で確認)。 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

