労働基準法10労働基準法

社労士 労働基準法 問10:労働基準法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08

賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への賃金支払)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点で施行されている制度を前提とする。

  • 資金移動業者の口座への賃金支払(デジタル払い)を実施するためには、事業場の過半数組合または過半数代表者との間で労使協定を締結することが必要であり、当該協定は労働基準監督署長への届出が必要である。正答
  • デジタル払いに使用できる資金移動業者は、厚生労働大臣が指定した「指定資金移動業者」に限られ、全ての資金移動業者(銀行に準じる送金業者)が利用できるわけではない。
  • デジタル払いを受ける労働者は、個々の労働者が同意した場合にのみ当該払い方法が適用され、労働者の同意なく使用者が一方的にデジタル払いに変更することはできない。
  • 指定資金移動業者の口座に残高として保有できる上限額は設定されており、その上限額を超える賃金については、銀行口座等への自動的な資金移動(チャージアウト)が行われる仕組みが整備されていなければならない。
  • デジタル払いの口座における残高については、指定資金移動業者が破綻した場合でも全額が保護される保証制度が整備されており、預金保険制度と同等の保護が受けられる。
正答:資金移動業者の口座への賃金支払(デジタル払い)を実施するためには、事業場の過半数組合または過半数代表者との間で労使協定を締結することが必要であり、当該協定は労働基準監督署長への届出が必要である。

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正答はア(誤っている記述)です。

デジタル払いを実施するために必要な労使協定は、36協定や時間外協定と異なり、労働基準監督署長への届出は不要です。労使協定を締結して個々の労働者の同意を得るだけで実施することができます(労基法施行規則第7条の2)。

イは正しく、使用できるのは厚生労働大臣が指定した「指定資金移動業者」に限定されます。ウは正しく、個々の労働者の同意が必要です(労使協定があっても全員に強制はできない)。エは正しく、指定資金移動業者の口座には残高上限が設定されており、超過分は自動で銀行口座等に移動される仕組みが義務付けられています。オは誤りに見えますが、厚労省の指定基準では「保証制度または同等の保護」が指定要件とされており、預金保険とは異なるが同等の保護が求められています。正答はアの「届出が必要」という誤りが最も明確です。

標準試験対策の基準レベル

賃金のデジタル払い 要件整理(2023年4月1日施行):

| 要件 | 内容 |

|---|---|

| 根拠 | 労基法第24条第1項(通貨払い原則の例外)・同施行規則第7条の2 |

| 業者の制限 | 厚生労働大臣が指定した「指定資金移動業者」のみ |

| 労使協定 | 事業場の過半数組合または過半数代表者との書面協定(届出不要) |

| 労働者の同意 | 個々の労働者の書面または電磁的記録による同意が必要 |

| 残高上限 | 指定資金移動業者の口座残高は100万円以下(超過分は労働者指定の銀行口座等へ自動振替=チャージアウト) |

| 保護制度 | 破綻時に6営業日以内に弁済する保証機構の整備が指定要件(預金保険とは別建て) |

賃金支払5原則(第24条)と通貨払い例外の全体像:

労基法第24条の通貨払い原則(①通貨 ②直接 ③全額 ④毎月1回以上 ⑤一定期日)の例外として認められる払い方法:

1. 銀行口座振込 (労基法施行規則第6条の2・労働者の同意が必要)

2. 証券総合口座への振込 (同施行規則第6条の2・同様)

3. デジタル払い(指定資金移動業者) (同施行規則第7条の2・2023年4月施行)

いずれも「労働者の同意」が必要であり、使用者が一方的に変更できないのは共通です。

各選択肢の解説:

  • ア(誤・正答): デジタル払いの労使協定は届出不要。36協定(届出必要)・時間外協定等と混同させる誤りポイント。
  • イ(正): 指定資金移動業者のみ使用可能。2023年4月時点での指定業者数は限定的(厚労省の審査・指定が必要)。
  • ウ(正): 個々の労働者の同意が必要。全社員が対象の労使協定を締結しても、各労働者の個別同意なしに強制適用はできない。
  • エ(正): 残高上限の設定と自動振替(チャージアウト)の仕組みの整備が指定資金移動業者の要件。上限超過分が滞留すると実質的な賃金の遅配になるため、自動振替が担保される。
  • オ(正・やや微妙): 厚労省の指定基準では「破綻時保証または同等の保護」が要件。預金保険制度そのものではないが、同等水準の保護が求められるため「同等の保護が受けられる」は実質的に正しい。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【デジタル払い制度の立法背景:キャッシュレス社会への対応と労働者保護の均衡】

賃金のデジタル払いは、2022年の労基法施行規則改正を受け、2023年4月1日から施行されました。背景には、スマートフォン決済の普及(PayPay・楽天Pay等)や、外国人労働者の送金ニーズ(銀行口座を持ちにくい层への対応)、フリーランス・ギグワーカーへの新たな支払い手段の提供という社会的要請があります。

ただし「通貨払い原則」(第24条第1項)はあくまで例外的に許容されるものであり、指定資金移動業者を通じる場合に限り許容されます。これは、送金業者が破綻した場合の労働者保護を確実に担保するための要件です。一般的なQR決済業者が無条件に使用できない理由も、この「破綻時保護」の確認に時間がかかることに起因します。

【通貨払い原則(第24条)の全体構造と各例外の比較】

| 払い方法 | 法的根拠 | 届出 | 労働者同意 | 普及状況 |

|---|---|---|---|---|

| 現金払い | 第24条第1項本則 | 不要 | 不要(原則) | 小規模事業所 |

| 銀行口座振込 | 施行規則第6条の2 | 不要 | 必要 | 主流 |

| 証券総合口座 | 施行規則第6条の2 | 不要 | 必要 | 少数 |

| デジタル払い | 施行規則第7条の2 | 不要 | 必要 | 拡大中 |

全ての例外払い方法で「届出不要」「労働者同意必要」が共通している点は重要な試験知識です。

【指定資金移動業者の指定要件(重要)】

厚生労働大臣の指定を受けるためには次の要件を満たす必要があります(労基法施行規則第7条の2・関連告示):

1. 残高保証制度: 業者が破綻した場合でも、労働者の口座残高が保護される仕組み(供託・保証会社・信託等)

2. 自動振替機能(チャージアウト): 一定残高を超えた場合の銀行口座等への自動移動

3. 残高上限の設定: 労働者1口座当たりの残高上限(上限を設けることで過大なリスク集中を防止)

4. 不正利用防止措置: 不正アクセス・フィッシング等への対策

5. 情報提供義務: 労働者への残高・明細の明示

この要件は預金保険制度と「同等の保護」を意図した設計であり、預金保険とは制度が異なることを試験では正確に理解する必要があります。

【社労士実務への接続:デジタル払い導入時の手順とリスク】

社労士が顧問先企業でデジタル払いを導入する際の実務フロー:

1. 対象業者が厚労省の指定資金移動業者リストに掲載されているか確認

2. 過半数組合または過半数代表者との労使協定を書面で締結(届出は不要だが保管義務あり)

3. 就業規則の賃金支払い条項を「指定資金移動業者を含む」表現に改定(第89条第2号)

4. 個々の労働者から書面または電磁的記録で同意取得

5. 毎月の振込処理で残高上限・自動振替の動作確認

特に注意点として、「デジタル払いを拒否する労働者には従来どおり銀行振込または現金払いで対応する」義務があり、デジタル払いへの一方的切替は賃金未払い(第24条違反)となる可能性があります。社労士はこの点での就業規則設計と同意書の書式作成を担当することが多い実務領域です。

根拠: 労働基準法第24条第1項、同法施行規則第7条の2(賃金のデジタル払い・2023年4月1日施行)、厚生労働省「賃金のデジタル払い」解説ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/chinginbarai-digital.html(確認日2026-04-10)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第24条第1項(通貨払いの原則・例外)、同法施行規則第7条の2(デジタル払いの要件)、厚生労働省告示(指定資金移動業者の指定要件・2023年4月1日施行) 数値根拠: 上限額等は条文・告示の条件値。施行日は2023年4月1日(条文施行日のため直書き可)。 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 結果=正答ア維持。(1)アの誤り根拠=デジタル払いの労使協定は「労使協定の締結」は通達(令和4年基発1128第4号)で必要だが、労基署への「届出」は不要。36協定(労基法第36条第1項・届出必要)との対比で頻出の誤りパターン。(2)エの口座残高上限は「100万円以下」が指定資金移動業者の指定要件(厚労省)。100万円を超えた部分は労働者が指定する銀行口座等へ自動振替(チャージアウト)が必要。(3)オの「保証制度」は預金保険そのものではないが、6営業日以内に弁済する仕組み等の保証機構が指定要件として課されており、実質的に「同等の保護」と言える。参照: 厚労省「資金移動業者の口座への賃金支払」ページ、JILPT解説、令和4年基発1128第4号。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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賃金支払のデジタル払い(指定資金移動業者・労使協定頻出度B

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