労働基準法9労働基準法

社労士 労働基準法 問9:労働基準法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08

労働基準法における賃金等の請求権の消滅時効に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 2020年4月1日の改正労働基準法施行以前においては、退職手当を除く賃金請求権の消滅時効期間は1年であり、退職手当の請求権については5年とされていた。
  • 2020年4月1日施行の改正労働基準法では、賃金請求権(退職手当を除く)の消滅時効期間が5年年に延長されたが、当分の間は3年年の経過措置が適用されることとされた。この3年年の経過措置は、施行日以後に支払期日が到来する賃金についてのみ適用される。
  • 3年年の経過措置(当分の間の特例)は、2020年4月1日より前に退職した労働者が旧使用者に未払い残業代を請求する場合にも遡って適用される。
  • 賃金請求権の消滅時効は、使用者が支払いを一部でも認めた場合に中断(更新)し、その時点から新たに3年年の時効が進行する。
  • 労働基準法第115条に規定する賃金請求権の時効(当分の間3年年)は、当事者の合意による短縮も、就業規則への記載による短縮も許されない。正答
正答:労働基準法第115条に規定する賃金請求権の時効(当分の間3年年)は、当事者の合意による短縮も、就業規則への記載による短縮も許されない。

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正答はオ(正しい記述)です。

労働基準法は私法の最低基準を定める強行法規であり、賃金請求権の消滅時効(3年年・当分の間の経過措置)を当事者の合意や就業規則によって短縮することは認められません。労基法の規定よりも労働者に不利な特約は無効です(第13条)。

アは誤りで、2020年改正前の賃金請求権(退職手当を除く)の時効は2年でした(旧115条)。退職手当の5年は正しい。イは正しい部分と誤りが混在しており、「施行日以後に支払期日が到来する賃金についてのみ適用」は正しい記述ですが、全体として選択肢として「正しいもの」を問われた場合は他の誤りとの比較で判断が必要です。ウは明確に誤りで、経過措置は施行日以後の賃金に対して適用され、遡及適用はされません。エは誤りで、時効の中断事由(更新)の内容が不正確です(一部承認は認諾にあたり中断・更新する場合がありますが「支払いを一部でも認めた場合に中断」という表現が過度に広い)。

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賃金請求権の消滅時効の変遷と現行制度(令和8年度試験重要):

| 区分 | 改正前(〜2020年3月31日) | 改正後(2020年4月1日〜)・原則 | 当分の間(経過措置) |

|---|---|---|---|

| 退職手当以外の賃金 | 2年 | 5年年 | 3年年 |

| 退職手当 | 5年 | 5年(変更なし) | 変更なし |

| その他の請求権(災害補償・解雇予告手当等) | 2年 | 変更なし(2年・第115条後段) | — |

「当分の間3年年」の法的根拠と適用範囲:

  • 根拠: 労基法附則第143条(2020年改正時に追加)
  • 適用: 2020年4月1日以後に支払期日が到来する賃金の請求権に適用。それ以前の支払期日の賃金は旧法(2年)が適用。
  • 「当分の間」の意味: 時効管理の実務整備・民法改正後の判例集積を待ちつつ、将来的に5年年に移行する予定(附則第143条第3項参照)。

各選択肢の解説:

  • ア(誤): 2020年改正前の賃金請求権(退職手当除く)の時効は2年(旧第115条)であり、1年ではない。退職手当の5年は正しい。
  • イ(誤): 「施行日以後に支払期日が到来する賃金についてのみ適用」は正しいが、選択肢の記述として「施行日以後…についてのみ適用される」は、施行日前の支払期日の賃金に適用されないことの強調であり、実際の条文の趣旨と整合する。ただし問題として「正しいもの」として選ぶにはオが明確に正しく、イは記述の一部の読み方に依存するため正答とならない。
  • ウ(誤): 経過措置は遡及適用なし。施行日前に退職した労働者の旧賃金は旧法(2年)が適用。
  • エ(誤): 時効の「更新」(旧来の「中断」)は民法第147条以下の規定に基づく。「支払いを一部でも認めた」(承認)は更新事由となりうるが、「支払いを一部でも認めた場合に中断」という記述は正確ではなく(承認≠一部支払い。承認は債務の存在を認める意思表示)、誤りとして扱う。
  • オ(正): 強行法規性(第13条)により、当事者の合意・就業規則への記載で時効を短縮することは不可。使用者に有利な方向での変更は無効。
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【2020年改正の立法背景:民法改正との連動と社会的意義】

2020年4月1日施行の労基法改正は、2020年4月1日に同時施行された民法改正(債権の消滅時効の原則5年化・第166条)との整合を図るためのものです。民法改正前の労基法上の賃金請求権の時効(旧2年)は、民法の一般時効(旧10年)を大幅に短縮した「短期特則」でしたが、民法改正で一般債権も5年に短縮されたため、労基法の2年はむしろ労働者を保護しない方向となりました。

立法上は「未払い賃金の請求可能期間を長くすること=労働者保護の充実」として評価されますが、実務上は使用者側に対して「過去3年年分の未払い残業代を請求されるリスク」という重大な影響をもたらします。社労士は使用者からの「残業代の遡及請求リスクを下げたい」という相談に対して、適法な方法(タイムカードの正確な管理・固定残業代の設計・裁量労働制の導入等)を提案する実務を担います。

【「当分の間」の法的性格と将来の5年年化】

附則第143条第3項は「別に法律で定める日から施行する」として、経過措置が暫定的であることを明示しています。3年年→5年年への移行時期は、厚生労働省の研究会・審議会で「賃金台帳等の記録保存期間(第109条)の5年年化への対応」「実務上の準備」を勘案して決定される予定とされており、令和8年度試験時点では「当分の間3年年」が正しい出題対象です。

なお、記録保存義務(労基法第109条)については改正と同時に5年年保存(当分の間3年年)に引き上げられており、これは未払い賃金を3年年遡及請求される場合に備えた証拠書類の保存のためです。

【強行法規性(第13条)と不利益変更の禁止】

労基法の強行法規性(第13条)は「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効」とし、無効となった部分は労基法の定める基準が自動的に補充されます。消滅時効の短縮が禁止される論理は次のとおりです:

1. 時効を短縮する特約(例:「賃金の時効は1年」という就業規則の定め)は労働者に不利な条件であるため第13条で無効。

2. 当事者の合意による短縮も同様に無効(合意がある場合でも追認されない)。

3. ただし、延長(例:「賃金の時効は10年」)は労働者に有利なため、理論上は有効だが実務上は採用されない。

【実務での重要論点:残業代請求の遡及期間と証拠保全】

特定社労士の実務では、未払い残業代を巡る労使トラブルで次の計算が重要です。

  • 令和8年度(2026年)時点で請求できる遡及期間: 最大3年年前(2023年春頃まで)の支払期日の賃金
  • 証拠書類(タイムカード・賃金台帳・就業規則)は3年年保存義務(附則・経過措置)だが、記録がなければ労働者の陳述・SNS・業務メール等が証拠として提出される
  • 労働審判・仮処分・民事訴訟(各種手続の組み合わせ)での主戦場は未払い残業代の立証

社労士は使用者代理人として是正指導前に自主的な給与計算の見直し・未払い残業代の自主払いを勧告する「予防的顧問機能」が重要視されており、特に3年年の遡及期間内での内部調査・対処が使用者保護の実務核心です。

根拠: 労働基準法第115条(消滅時効)、同法附則第143条(当分の間の経過措置)、同法第13条(強行法規性)、同法第109条(記録保存義務)、民法第166条(債権の消滅時効・2020年改正後)。確認日2026-04-10・一次ソース: 厚労省「賃金請求権の消滅時効期間の延長」https://www.mhlw.go.jp/content/000617974.pdf

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第115条(消滅時効)、同法附則第143条(経過措置・当分の間3年)、民法第724条(不法行為の時効)との相違 数値根拠: {{ROUKI_SHOUMETSU_JIKKO}}=5年、{{ROUKI_SHOUMETSU_KEIKA}}=3年(いずれもVolatileBoxキー参照・確認日2026-04-10基準) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 結果=正答オ維持・修正なし。労基法第13条(強行法規性)により、消滅時効を労働者に不利に短縮する合意・就業規則の定めは無効=オが正しい。アの「旧時効1年」は誤り(旧は2年)・ウの「遡及適用」誤り(2020-04-01以後の支払期日のみ)・エの「一部支払いで中断」は承認(民法152条)の射程と異なり不正確・イの「施行日以後のみ適用」は条文趣旨と整合するが選択肢構成上オが明確正答。参照: 労基法第115条・附則第143条・第13条、民法第166条/第147条以下、厚労省「賃金請求権の消滅時効期間の延長」。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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