社労士 労働基準法 問8:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
年次有給休暇の計画的付与(労使協定による付与時季の計画指定)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア計画的付与を行うためには、事業場の過半数組合または過半数代表者との書面による労使協定を締結する必要があるが、この労使協定は労働基準監督署長に届け出なければ効力が生じない。
- イ計画的付与の対象とすることができる年次有給休暇は、当該労働者に付与した年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分に限られ、5日以下の部分は必ず労働者が自由に時季を選択できる日数として残しておかなければならない。正答
- ウ計画的付与は、事業場全体の一斉付与または班別交替制付与の方法によることが認められるが、個々の労働者の希望に応じた個人別付与の方法は認められていない。
- エ計画的付与が実施される日に年次有給休暇の残日数がない労働者(付与日数が5日以下の者等)に対しては、使用者が特別休暇を付与することで足り、年次有給休暇を追加で付与する義務は生じない。
- オ計画的付与による付与は、労働者が時季変更権(別の時季への変更)を行使することができないため、労働者は計画的付与で指定された日に年次有給休暇を取得することを拒否できない。
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正答はイ(正しい記述)です。
計画的付与では、労働者が自由に使える年次有給休暇として少なくとも5日分は本人の自由裁量に残しておかなければなりません(労基法第39条第6項)。つまり計画的付与で指定できるのは「付与日数から5日を引いた超過分」のみです。例えば10日付与された労働者については最大5日まで計画的付与が可能ですが、5日付与された労働者については5日超える部分がゼロなので計画的付与の対象にできません。
アは誤りで、計画的付与の労使協定は届出不要です(就業規則への明記は必要)。ウは誤りで、個人別付与も認められています(一斉・班別・個人別の3方式が厚労省指針で示されています)。エは誤りで、計画的付与の日に残日数がない労働者にも年次有給休暇を付与する等の措置が必要です。オは誤りで、計画的付与の日に使用者の時季変更権は行使できませんが、計画変更の合意は可能です。
計画的付与の仕組みと要件(労基法第39条第6項):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 労基法第39条第6項 |
| 要件 | 事業場の過半数組合または過半数代表者との書面による労使協定 |
| 届出 | 不要(就業規則への記載は必要) |
| 対象日数 | 付与日数から5日を控除した残日数(5日超の部分のみ) |
| 付与方式 | 一斉付与・班別交替制付与・個人別付与(3方式とも可) |
| 時季変更権 | 計画的付与の日には使用者の時季変更権は行使できない |
| 残日数ゼロの場合 | 何らかの措置(有休付与・特別休暇付与等)が必要(指針) |
使用者に義務付けられている年5日の年次有給休暇取得(第39条第7項)との関係:
2019年4月施行の改正で、使用者は年10日以上の年休を付与される労働者について年5日の取得を確実に実施させる義務(第39条第7項)が課されました。計画的付与を実施する場合、その分は年5日取得義務の履行に充てることができます(行政解釈)。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 計画的付与の労使協定は届出不要(行政通達確認)。36協定・時間外協定等と異なり、届出義務がないことが頻出の誤りポイント。就業規則への記載(第89条)は必要。
- イ(正): 5日は常に労働者の自由選択に残す必要がある(第39条第6項)。5日を超える部分のみが計画的付与の対象。
- ウ(誤): 個人別付与も認められる(厚労省「年次有給休暇の計画的付与制度」指針)。一斉・班別・個人別の3方式が示されており、個人別は前年度の繰越分も含む個人の年休管理シートを使う方式。
- エ(誤): 残日数がない労働者に対しては、年次有給休暇の前倒し付与・特別有給休暇の付与等の措置が必要(指針・行政解釈)。「義務は生じない」は誤り。
- オ(誤): 計画的付与の日には使用者の時季変更権は行使できない(第39条第6項の趣旨)。ただし「拒否できない」という表現の前段は正しいが、設問全体として労使合意で変更自体は可能であるため正確でない。
【計画的付与制度の立法経緯と「5日」の意味】
計画的付与制度(労基法第39条第6項)は1987年の労基法改正で導入されました。当時日本の年次有給休暇取得率は低く、年休の取得促進策として「労使合意で計画的に指定することで取得を促進する」制度が設けられました。「5日は労働者の自由裁量に残す」という設計は、突発的な傷病・私用・慶弔等に備えた最低限の自由裁量を保障するためです。社労士試験ではこの「5日超の部分のみ」が最頻出の論点であり、例外的に5日以下しか付与されていない労働者には計画的付与の対象部分がゼロになることに注意が必要です。
【2019年改正との複合論点:年5日取得義務(第39条第7項)との調整】
2019年4月(平成31年4月1日・中小企業含む同日施行)に追加された「使用者による年5日取得義務」(第39条第7項)は、年10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者を対象とします。この義務と計画的付与を組み合わせる場合の実務ポイント:
1. 計画的付与で取得させた日数は年5日取得義務の充当分として計上できる。
2. 計画的付与の日数が年5日に達しない場合は、残りを個別指定・個別調整で取得させる義務が残る。
3. 年10日未満の付与者(例:勤続0.5年の比例付与・週3日以下の短時間労働者の一部)は年5日義務の対象外だが、計画的付与も5日超部分がなければ対象外であることが多い。
この複合論点は令和6〜8年度の社労士試験で高頻度で出題されている難関論点であり、「計画的付与の5日超部分」と「年5日強制取得義務」の両制度の運用を場面別に整理することが合格水準の学習目標となります。
【3方式の実務比較:一斉・班別・個人別の違いとコスト】
| 方式 | 概要 | 事務コスト | 適した業種 |
|---|---|---|---|
| 一斉付与 | 事業場全体で同一日に一斉取得(例:夏期・年末年始一斉閉鎖) | 低(画一的) | 製造業・店舗業 |
| 班別交替制 | 部門・班ごとに異なる日を指定(交替で工場を稼働しながら付与) | 中 | 交替制勤務のある製造業・輸送業 |
| 個人別付与 | 個々の希望を踏まえた年休計画表を労使合意で作成 | 高(個別管理) | オフィス系・サービス業(希望制) |
実務上は一斉付与が最も簡便ですが、顧客対応が必要な業種では全員同時休業が困難なため班別・個人別が選択されます。社労士はクライアントの業種・体制に合わせた方式の選択を助言する実務スキルが求められます。
【就業規則との関係と不利益変更の問題】
計画的付与を新たに導入する際は、就業規則に記載することが必要です(第89条第1号)。既存の就業規則に計画的付与の定めがない場合に新たに導入するときは、労働条件の不利益変更(第9条・合理性・説明義務)の問題が生じる場合があります。具体的には「以前は自由に休めた日を指定日にされた」という労働者の不満に対して、「年休取得促進という合理的目的がある」として合理性を説明することが使用者側の実務対応です。特定社労士はこの説明のサポートや就業規則の起案が主な業務領域となります。
根拠: 労働基準法第39条第6項(計画的付与)・第7項(年5日強制取得)・第89条(就業規則)、厚生労働省「年次有給休暇の計画的付与」Q&A・指針(平成11年3月31日基発168号)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第39条第6項(計画的付与)、同条第5項(使用者の時季変更権) 数値根拠: 5日は条文値(労基法第39条第6項)のため直書き可。 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 結果=正答イ維持・修正なし。労基法第39条第6項本文「年5日を超える部分について…協定で…時季に関する定めをしたときは」が条文どおり。労使協定は労基署届出不要(36協定との対比で頻出)。アの「届出が必要」は誤り、ウの「個人別付与不可」は厚労省指針(平成11年基発168号)で個人別付与も認められ誤り、エの「義務は生じない」は指針上必要措置義務があり誤り、オの「拒否できない」表現も労使合意による変更可能性で完全には正確でないが、イが明確に正しいため正答イで決着。参照: 労基法第39条第6項・第7項、厚労省「年休の計画的付与」指針。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。