社労士 労働基準法 問7:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
労働基準法第12条に規定する平均賃金の算定に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア平均賃金は、原則として、算定事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額である。
- イ日給制・時給制等の場合(賃金が日・時間・出来高払制等で定められている場合)は、賃金総額をその期間の労働日数で除した金額の60/100に相当する額と、暦日数で除した原則額のいずれか高い方が平均賃金となる。
- ウ算定事由の発生した日以前3か月の期間中に業務上の傷病による休業期間がある場合は、その休業期間とその期間中に支払われた賃金を、算定の基礎となる期間及び賃金の総額から控除する。
- エ出来高払制その他の請負制によって定められた賃金(出来高払部分)が含まれる場合、その部分については、賃金総額を当該期間の暦日数で除した額のみを平均賃金として使用し、最低保障額(労働日数で除した額の60/100)は適用されない。正答
- オ雇入れ後3か月に満たない者については、雇入れ後の期間とその期間中の賃金の総額をもって平均賃金を算定する。
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正答はエ(誤っている記述)です。
エは「出来高払部分には最低保障額が適用されない」と述べていますが、これは誤りです。出来高払制・請負制の賃金(全部または一部)が含まれる場合も、平均賃金の最低保障額(賃金総額÷労働日数×60/100)は適用されます(労基法第12条第1項但書・第4項)。最低保障の趣旨は、労働日数が少なかった期間に賃金総額を暦日数で割ると極端に低い額になることを防ぐためのものであり、出来高払であっても例外なく保護されます。
アは正しく、原則額は「賃金総額÷暦日数」です。イは正しく、日給・時給制等では原則額と最低保障額(賃金総額÷労働日数×60/100)の高い方が採用されます。ウは正しく、業務上傷病による休業期間は算定から除外されます。オは正しく、雇入れ3か月未満の者は雇入れ後の期間で算定します。
平均賃金の算定構造(労基法第12条):
| 区分 | 算定方法 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 原則額 | 賃金総額 ÷ 算定期間の暦日数 | 月給・日給・時給(原則) |
| 最低保障額 | 賃金総額 ÷ 算定期間の労働日数 × 60/100 | 日給・時給・出来高払等で原則額が低くなる場合 |
| 適用基準 | 原則額と最低保障額の高い方 | 日給制・時給制・出来高払制(全部または一部) |
算定期間から除外される事由(労基法第12条第3項各号):
- 業務上の傷病による療養のための休業期間
- 使用者の責めに帰すべき事由による休業期間(労基法第26条の休業手当対象)
- 育児・介護休業法による育児休業・介護休業期間
- 試用期間
- 天災事変等でやむを得ない事由による休業期間
これらの期間とその期間中の賃金は、3か月の算定期間および賃金総額の両方から除外します。
各選択肢の解説:
- ア(正): 「賃金総額÷暦日数」が原則。暦日数は就業・休日・欠勤を問わずカレンダーの実日数。
- イ(正): 日給・時給・出来高払の場合は原則額と最低保障額(労働日数÷3か月間÷60/100)の高い方を採用(第1項但書)。出来高払が賃金の一部のみでも最低保障が適用される(第4項)。
- ウ(正): 業務上傷病休業は算定期間・賃金総額の両方から除外。算定期間の中に業務上傷病休業が挟まっても「3か月に足りない場合は使用期間」で別途対応。
- エ(誤・正答): 出来高払部分が含まれる場合でも最低保障額(労働日数×60/100)は適用される(第4項)。「適用されない」が誤り。
- オ(正): 雇入れ後3か月未満の者は第12条第2項の特例で対応。ただし雇入れの当日が算定事由発生日の場合の扱いは行政通達で別途規定。
【平均賃金の立法趣旨と「暦日数割り」の理由】
平均賃金(労基法第12条)は、解雇予告手当(第20条)・休業手当(第26条)・年次有給休暇の賃金(第39条第9項)・災害補償(第76条等)・制裁減給の限度額(第91条)など、条文各所で参照される基準額です。「暦日数で割る」方式の理由は、労働者が通常どおり稼いでいたとすれば得られたはずの日当たりの稼得能力を、就業日数ではなく生活日数(暦日数)の概念で捉えるためです。社労士試験では「暦日数か労働日数か」という選択肢が頻出であり、原則は暦日数・最低保障額の分母が労働日数という二項対立を正確に覚えることが合格への近道です。
【最低保障額の設計ロジックと60/100の意味】
最低保障額(60%)の式は「賃金総額 ÷ 労働日数 × 60/100」です。60/100(60%)という率は、労基法第76条の業務災害休業補償(平均賃金の60%)と同じ水準であり、立法趣旨上「最低でも休業補償と同水準の保護」を保障する設計です。最低保障が発動するのは、対象期間の労働日数が少なく(欠勤・短期雇用等)、暦日数で割った原則額が実態賃金より大幅に低くなるケースです。
【算定期間の除外事由の詳細と実務上の落とし穴】
除外事由(第12条第3項)は単に期間を除くだけでなく、その期間に対応する賃金も同時に総額から除外します。試験上の注意点は次のとおりです。
1. 「使用者の責めに帰すべき事由による休業」: 労基法第26条の休業手当(平均賃金の60%)の支払いが発生する状況(工場設備の故障・事業縮小等)。この休業期間とその間に支払われた休業手当は平均賃金算定から除外されます(実際の休業手当が「60%」なので、その期間を含めて平均賃金を算定すると平均賃金が低く計算されてしまうため除外)。
2. 育児・介護休業期間の除外: 育介法に基づく育休・介護休業期間中の賃金(育休給付金は「賃金」ではなく保険給付であるため算定に不影響)を除外する。給付金を受け取った事実は平均賃金算定に関係しない。
3. 試用期間: 雇入れ後のトライアル期間も除外対象。ただし、試用期間が算定基礎の3か月より長い場合の扱いは実務で問題になりやすい。
【「出来高払制が一部含まれる場合」(第4項)の実務適用】
月給制の労働者に出来高払の歩合給が加算される「混合制」の場合、第4項が適用されます。具体的には「月給部分は暦日数割り(原則)で算出し、出来高払部分は労働日数割り×60/100(最低保障)で算出して、両者を合算する」のが実務的な理解です。試験では「出来高払部分にも最低保障が適用されるか」という論点が頻出であり、適用される(第4項明文)が正解です。
【上位資格・実務への接続:平均賃金と各種手当計算の連鎖】
特定社労士の実務では、解雇予告手当の算定(第20条)・年次有給休暇の賃金(第39条第9項による「平均賃金」か「通常の賃金」か「標準報酬日額」かの選択)・割増賃金の算定基礎との違い(割増賃金の基礎は「通常の賃金」)の区別が重要です。特に解雇紛争では解雇予告手当額の正確な計算が求められ、誤算定は労基法違反(第119条で6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)となります。社労士試験合格後の実務では「平均賃金の算定を誰が・いつ・どの資料で計算するか」を就業規則に明記しておくことが労務コンプライアンスの基本とされています。
根拠: 労働基準法第12条(平均賃金)第1項・第1項但書・第2〜4項、同法第20条・第26条・第39条第9項・第76条・第91条。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第12条(平均賃金) 数値根拠: 60/100(最低保障率)は労基法第12条第1項但書・第4項の条文値のため {{HEIKIN_CHINGIN_HOSHO_RATE}} として参照(60%)。3か月・暦日数・労働日数はいずれも条文値。 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 結果=正答エ維持。労基法第12条第1項本則の括弧書きで「賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合」が最低保障60/100の対象に含まれる。さらに第4項は「賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合」には固定部分は原則額、変動部分は最低保障額で計算した合算額とすると規定(出来高払部分にも最低保障が適用)。エの「最低保障額(労働日数で除した額の60/100)は適用されない」は明確な誤り=正答エで維持。修正なし。参照: 労基法第12条第1項本則・但書・第4項(e-Gov/Wikibooks条文)、千葉労働局「平均賃金」解説。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
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