社労士 労働基準法 問32:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働基準法の罰則に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいものはいくつあるか**。 ア. 強制労働の禁止(第5条)に違反した使用者は、**5年以下の懲役または100万円以下の罰金**に処せられる。 イ. 使用者が未成年者に対して、親権者や後見人の同意なく労働契約を結んだ場合(第58条第1項違反)は、30万円以下の罰金に処せられる。 ウ. 使用者が、法で定める法定休憩時間を労働者に与えなかった場合(第34条違反)は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。 エ. 使用者が労働者名簿・賃金台帳を作成せず、または虚偽の記載をした場合(第107条・第108条違反)は、30万円以下の罰金に処せられる。 オ. 使用者が、労働者を解雇するにあたり解雇予告または解雇予告手当の支払いをしなかった場合(第20条違反)は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。
- ア一つ
- イ二つ
- ウ三つ
- エ四つ正答
- オ五つ
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正しいものはイ・ウ・エ・オの4つ(選択肢エ「四つ」)です。アのみ誤り。
アが誤りの理由:設問の「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」という罰則区分は労基法に存在しません。強制労働の禁止(第5条)違反の正しい罰則は「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」(第117条)です。労基法の罰則の中で最も重い罰則(懲役に下限あり)が設けられています。
労基法の罰則の主な体系を覚えましょう:
- 最重罰(第117条): 第5条(強制労働禁止)・第6条(中間搾取禁止)→1年以上10年以下の懲役等
- 重罰(第119条): 第20条(解雇予告)・第34条(休憩)等→6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 軽罰(第120条): 帳簿・名簿・証明書等の義務→30万円以下の罰金のみ
労働基準法の罰則体系(主要条文の整理):
| 罰則区分 | 条文 | 対象条文の例 | 具体的行為例 |
|---|---|---|---|
| 最重罰 1年以上10年以下の懲役OR20万〜300万の罰金 | 第117条 | 第5条(強制労働禁止)・第6条(中間搾取禁止) | 暴行・脅迫による強制労働・中間搾取 |
| 重罰 6か月以下の懲役OR30万以下の罰金 | 第119条 | 第20条(解雇予告)・第32条(労働時間)・第34条(休憩)・第35条(休日)・第37条(割増賃金)・第56条(最低年齢)・第61条(深夜業制限)等 | 解雇予告なし・休憩不付与・時間外割増未払い |
| 軽罰 30万以下の罰金のみ | 第120条 | 第14条(契約期間)・第58条(未成年者契約)・第107条(労働者名簿)・第108条(賃金台帳)等 | 帳簿不作成・虚偽記載・未成年者の無断契約 |
| 過料 30万以下 | 第121条 | 第106条(法令周知義務)等 | 法令・就業規則の周知義務違反 |
各選択肢の整理:
- ア(誤): 「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」は存在しない罰則区分。第5条(強制労働禁止)の正しい罰則は「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」(第117条)。
- イ(正): 第58条第1項(未成年者の無断契約)違反→第120条の30万円以下の罰金(重労働・危険業務への未成年者使用ではなく、書面要件・内容の問題)。
- ウ(正): 第34条(休憩付与義務)違反→第119条の6か月以下の懲役または30万円以下の罰金。
- エ(正): 第107条・第108条(労働者名簿・賃金台帳の作成義務)違反→第120条の30万円以下の罰金のみ(懲役なし)。
- オ(正): 第20条(解雇予告義務)違反→第119条の6か月以下の懲役または30万円以下の罰金。
覚え方のポイント:
- 「懲役あり」の重大違反→第119条(6か月以下の懲役)
- 「懲役なし・罰金のみ」の軽微違反→第120条(30万円以下の罰金)
- 「最も重い」→第117条(強制労働・中間搾取)の1年以上10年以下の懲役
【労基法の罰則体系の設計思想:罰則の重さと被保護法益の対応関係】
労基法の罰則は、保護法益(何を守るための規制か)の重要度に応じた階層設計になっています。
第117条(最重罰・下限あり)の意義:人身の自由の保護
強制労働禁止(第5条)と中間搾取禁止(第6条)への最重罰は、憲法第18条(奴隷的拘束・苦役の禁止)を具体化する規定です。「1年以上10年以下の懲役」という「下限付き罰則」は労基法の中で唯一であり、悪質な事案に対して「執行猶予を付けて実刑を免れさせない」という立法者の意図が込められています(5年以下は執行猶予が認められる懲役刑の上限)。
第119条(6か月以下の懲役)の対象条文の重要性
第119条が対象とする条文は「労働者の労働条件の根幹」に関わる事項です:
- 第32条〜第35条(労働時間・休憩・休日)→ 過労死・健康障害防止
- 第37条(時間外割増賃金)→ 賃金の確保
- 第20条(解雇予告)→ 雇用の安定
- 第56条(最低年齢:15歳未満の使用禁止)→ 年少者の保護
- 第64条の3(危険・有害業務への妊産婦使用禁止)→ 母性保護
これらは「懲役刑(自由刑)も含む」重い罰則が設けられており、単なる経済的罰則(罰金)だけでは抑止効果が不十分と判断されています。
第120条(罰金のみ)の対象条文:手続き義務・書面要件の違反
第120条(30万円以下の罰金のみ)が対象とする違反は、手続き義務・書面・帳簿に関する違反です。これらは直接的に労働者の身体・財産を侵害するものではないため、「懲役はないが罰金による制裁は設ける」という設計です。
代表的な対象条文:
- 第14条(契約期間の書面明示義務)
- 第15条(労働条件の明示義務)← 2024年改正で強化
- 第58条(未成年者の契約・親権者同意)
- 第107条(労働者名簿)
- 第108条(賃金台帳)
- 第89条(就業規則の作成義務)
【両罰規定(第121条):法人への責任追及】
労基法第121条は「使用者(個人)だけでなく、法人も罰則の対象とする」両罰規定を定めています。法人(会社)は直接行為できませんが、違法行為をした代表者・従業員等が違反を犯した場合、法人も同じ罰金刑を科されます(ただし「その業務に関して」犯した場合に限る)。
この両罰規定の意義は、「個人への罰則だけでは法人が組織的に法違反を継続する場合に抑止効果が弱い」という問題への対応です。会社が組織的に残業代を未払いにしていた場合、担当役員だけでなく会社法人も同時に罰金刑を科されます。
【社労士の実務:罰則の知識と労基署対応】
社労士が顧問先事業主に対して「是正勧告→是正報告」の支援をする際、罰則の正確な理解は不可欠です。特に:
1. 労働時間管理違反(第32条・第37条): 残業代未払い・タイムカード不備は第119条対象(6か月以下の懲役)の重大違反。是正勧告段階で速やかに改善しなければ送検リスクがある。
2. 帳簿義務違反(第107・108条): 第120条対象で罰金のみだが、調査時に帳簿が存在しないことは「残業代計算の基礎がない=未払い残業代の額が不明」という二次的な問題につながる。
3. 解雇予告違反(第20条): 第119条対象で懲役刑もあるが、民事上は「予告手当(30日分以上の平均賃金)の支払請求権」が生じる点も重要。刑事と民事の両面で問題になる。
根拠: 労働基準法第117条・第119条・第120条・第121条(罰則規定一覧)、第5条・第6条・第20条・第32条・第34条・第37条・第56条・第107条・第108条。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第117条〜第121条(罰則規定) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): アのみ誤り→正しいもの4つ→いくつあるか型「四つ」=選択肢エが正答。ア誤り=第5条(強制労働禁止)違反の正しい罰則は「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」(第117条)。設問アの「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」は存在しない区分で誤り。イ正=第58条第1項違反は第120条の30万以下の罰金。ウ正=第34条(休憩)違反は第119条の6か月以下の懲役または30万以下の罰金。エ正=第107条・108条違反は第120条の30万以下の罰金。オ正=第20条(解雇予告)違反は第119条の6か月以下の懲役または30万以下の罰金。正答=エ(プラン正答位置通り)。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。