社労士 労働者災害補償保険法 問11:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働者災害補償保険法における療養補償給付に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア療養補償給付は「療養の給付」と「療養の費用の支給」の2種類があり、原則は「療養の給付」(現物給付)であり、「療養の費用の支給」(現金給付)は、被災労働者の住所地や傷病の状態から指定医療機関での受診が困難な場合等の例外的な場合に支給される。
- イ「療養の給付」は、政府が指定した「指定医療機関・指定薬局」(労災指定医療機関等)において行われるが、業務上の負傷・疾病であることの認定を受けた後でなければ受診することができない。正答
- ウ療養補償給付の対象となる療養の範囲は、診察・薬剤または治療材料の支給・処置・手術その他の治療・居宅における療養上の管理・移送等が含まれ、必要な療養が終わるまで給付が継続される。
- エ業務上の傷病について使用者の責任で費用負担(例: 民間健康保険や自費診療)した場合でも、労災保険の療養補償給付は別途請求することができ、二重取りとならないよう費用控除の調整が行われる。
- オ通勤災害に係る療養は「療養給付」と呼ばれ(「療養補償給付」ではない)、支給内容・指定医療機関の利用方法等は業務災害の場合と基本的に同様であるが、初診時に一部負担金200円を徴収されることがある点で異なる。
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正答はイ(誤っている記述)です。
イは「業務上の負傷・疾病であることの認定を受けた後でなければ受診することができない」としていますが、これは誤りです。実際には、被災労働者は認定を受ける前であっても、労災指定医療機関に直接受診することができます。受診後に療養補償給付の請求書を提出し、業務上であることの認定を受ける手続きとなっています(療養の給付請求書を医療機関に提出して受診するのが原則)。
アは正しく、原則は現物給付(療養の給付)です。ウは正しく、必要な療養が継続する限り給付されます。エは正しく、二重取りにならないよう費用調整が行われます。オは正しく、通勤災害の場合は「療養給付」と呼称し、初診時に一部負担金200円が生じることがあります。
療養補償給付の2種類と使い分け:
| 種類 | 内容 | 使用場面 |
|---|---|---|
| 療養の給付(現物給付) | 指定医療機関が直接治療を行う。費用は政府が医療機関に支払い、被災者の自己負担なし | 原則。指定医療機関が近くにある場合 |
| 療養の費用の支給(現金給付) | 被災者が一旦費用を負担し、後から政府に請求・償還 | 例外。指定医療機関がない地域・緊急時・海外療養など |
療養の給付の具体的範囲(法第13条第2項):
- 診察
- 薬剤または治療材料の支給
- 処置・手術その他の治療
- 居宅における療養上の管理および療養に伴う世話その他の看護
- 病院または診療所への入院および療養に伴う世話その他の看護
- 移送
誤肢イの解説:
労災指定医療機関での受診手順は「①指定医療機関に療養補償給付請求書(様式第5号)を提出→②受診→③医療機関が政府に費用請求」という流れです。業務上認定の判断は政府(監督署)が行いますが、被災者は認定前から受診できます。「認定を受けてから受診」では治療が大幅に遅れることになり、被災労働者保護の趣旨に反します。
通勤災害との対比(オ):
通勤災害は「療養給付」(補償の文字なし)。一部負担金200円は通勤災害のみ適用(業務災害は一部負担金なし)。ただし、同一の傷病に関して健康保険を使った場合の調整規定もあり、実務では混同しやすい点です。
【療養補償給付の立法趣旨:「全額・迅速・無過失」の3原則】
労災保険の療養補償給付の設計思想は、民事損害賠償(過失割合・資力依存)とは根本的に異なります。業務上・通勤上の傷病に対し、①労働者の自己負担ゼロ(全額給付)、②過失割合によらない(無過失責任)、③認定前から受診可能(迅速保護)という3原則を貫いています。イが誤りである根拠はまさにこの「迅速保護の原則」です。
【指定医療機関制度の意義と「療養の費用の支給」の位置づけ】
労災指定医療機関制度は、政府と医療機関の間に直接の費用請求関係を構築することで、被災労働者が窓口で費用を立て替える負担を解消するものです。しかし日本全土をカバーするには限界があり、離島・僻地・緊急搬送先・海外出張中の業務上災害など、指定外医療機関しか利用できない場合に備えて「療養の費用の支給」が存在します。実務上、指定外で受診した場合は様式第7号(療養費請求書)で後払いを請求する仕組みです。
【療養補償給付の終了と「治ゆ(症状固定)」の概念】
療養補償給付は「傷病が治ゆ(症状固定)するまで」継続されます。「治ゆ」とは完全回復ではなく、医学上の症状固定(これ以上の医療効果が期待できない状態)を指します。症状固定後も障害が残存する場合は、障害補償給付の対象となります。療養と障害の「切り替え」タイミングの判定は社労士実務で頻繁に問題となり、特に労災保険と医療保険の適用切替え・傷病補償年金(労災)との関係は上級論点です。
【通勤災害の一部負担金200円の制度的背景】
通勤災害に一部負担金200円が設けられた理由は、「通勤は使用者の支配下にある業務遂行中とは異なり、私生活の延長としての性格も持つ」という政策的判断によります(昭和48年の通勤災害制度導入時から)。ただし実務上は、ほとんどの被災者が200円を一時負担した後に医療機関に申し出る形で処理されており、現在は事実上の負担軽減措置が講じられているケースも多い。
【二重給付禁止と費用調整の実務(エ)】
使用者が民間保険・自費で費用を負担した場合、労災保険への費用請求権は使用者に移転(代位)することがあります。また、健康保険・共済制度との競合(同一傷病について複数の制度から給付が出ようとする場合)については、最初に労災保険を使うことが原則であり、誤って健康保険を使った場合は「労災保険への切り替え手続き」が必要となります。二重給付は禁止ですが、「同一傷病について労災保険と損害賠償が競合する場合」は、受領済の損害賠償額を限度として保険給付を行わないという「控除」の仕組みがあり(法第12条の4)、社労士として過失相殺・損益相殺の判断が求められる複雑な領域です。
根拠: 労働者災害補償保険法第13条・第14条・第22条・第12条の3・第12条の4、同法施行規則第11条(一部負担金)。厚生労働省「労災保険給付の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/rousaihoken06/index.html(確認日2026-04-10)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第13条(療養補償給付)、第22条(療養給付)、第12条の3(指定医療機関)、同法施行規則第11条(一部負担金) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): イ「業務上認定を受けた後でなければ受診できない」は誤りで確定。労災則第11条・第12条により、被災労働者は様式第5号を労災指定医療機関へ提出することで認定前から現物給付を受診可能(厚労省「労災保険給付の概要」確認日2026-06-08)。正答イで一意性確保。一部負担金200円(オ)は則第44条の2に基づく現行制度(基準日2026-04-10で施行済)として正確。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。