問題
労働者災害補償保険法における療養補償給付に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はイ(誤っている記述)です。
イは「業務上の負傷・疾病であることの認定を受けた後でなければ受診することができない」としていますが、これは誤りです。実際には、被災労働者は認定を受ける前であっても、労災指定医療機関に直接受診することができます。受診後に療養補償給付の請求書を提出し、業務上であることの認定を受ける手続きとなっています(療養の給付請求書を医療機関に提出して受診するのが原則)。
アは正しく、原則は現物給付(療養の給付・第13条第1項)で、療養の費用は例外です(同条第3項)。ウは正しく、第13条第2項の範囲(政府が必要と認めるもの)で必要な療養が継続する限り給付されます。エは正しく、一部負担金は通勤災害の療養給付を受ける労働者からのみ徴収されます(第31条第2項)。オは正しく、通勤災害の場合は「療養給付」と呼称し、一部負担金(原則200円)が徴収されることがあります(休業給付を受けない者などは対象外)。
療養補償給付の2種類と使い分け:
| 種類 | 内容 | 使用場面 |
|---|---|---|
| 療養の給付(現物給付) | 指定医療機関が直接治療を行う。費用は政府が医療機関に支払い、被災者の自己負担なし | 原則。指定医療機関が近くにある場合 |
| 療養の費用の支給(現金給付) | 被災者が一旦費用を負担し、後から政府に請求・償還 | 例外。指定医療機関がない地域・緊急時・海外療養など |
療養の給付の具体的範囲(法第13条第2項):
- 診察
- 薬剤または治療材料の支給
- 処置・手術その他の治療
- 居宅における療養上の管理および療養に伴う世話その他の看護
- 病院または診療所への入院および療養に伴う世話その他の看護
- 移送
誤肢イの解説:
労災指定医療機関での受診手順は「①指定医療機関に療養補償給付請求書(様式第5号)を提出→②受診→③医療機関が政府に費用請求」という流れです。業務上認定の判断は政府(監督署)が行いますが、被災者は認定前から受診できます。「認定を受けてから受診」では治療が大幅に遅れることになり、被災労働者保護の趣旨に反します。
通勤災害との対比(オ):
通勤災害は「療養給付」(補償の文字なし)。一部負担金(200円。日雇特例被保険者は100円。療養に要した費用がこれに満たない場合はその額)は通勤災害の療養給付のみ適用(第31条第2項・施行規則第44条の2第2項)で、業務災害は一部負担金なし(エ)。一部負担金は、最初に支給すべき事由の生じた日の休業給付の額から減じる方法で徴収され(第22条の2第3項・第31条第3項・施行規則第44条の2第3項)、第三者行為災害による者、休業給付を受けない者、同一の通勤災害で既に納付した者からは徴収されません(施行規則第44条の2第1項)。窓口で「初診時に」払うものではありません。
【療養補償給付の特徴:民事損害賠償との違い】
労災保険の療養補償給付は、民事損害賠償(過失割合・加害者の資力に左右される)とは仕組みが異なります。業務災害では、①一部負担金がなく(一部負担金は通勤災害の療養給付のみ・第31条第2項)、②使用者の過失の有無を問わず、③指定病院等を経由して請求書を提出する手続(施行規則第12条第1項)で療養の給付を受けられます。業務上かどうかの判断はこの請求を受けて労働基準監督署長が行うもので、「認定を受けてからでなければ受診できない」とする規定はありません。これがイが誤りである根拠です。
【指定医療機関制度の意義と「療養の費用の支給」の位置づけ】
労災指定医療機関制度は、政府と医療機関の間に直接の費用請求関係を構築することで、被災労働者が窓口で費用を立て替える負担を解消するものです。しかし指定病院等で療養の給付をすることが困難な場合や、療養の給付を受けないことについて労働者に相当の理由がある場合(施行規則第11条の2。例:近くに指定病院等がない・緊急搬送先が指定外)に備えて、「療養の費用の支給」(第13条第3項)が存在します。実務上、指定外で受診した場合は様式第7号(療養費請求書)で後払いを請求する仕組みです。
【療養補償給付の終了と「治ゆ(症状固定)」の概念】
療養補償給付は「傷病が治ゆ(症状固定)するまで」継続されます。「治ゆ」とは完全回復ではなく、医学上の症状固定(これ以上の医療効果が期待できない状態)を指します。症状固定後も障害が残存する場合は、障害補償給付の対象となります。療養と障害の「切り替え」タイミングの判定は社労士実務で頻繁に問題となり、特に労災保険と医療保険の適用切替え・傷病補償年金(労災)との関係は上級論点です。
【通勤災害の一部負担金200円の制度的背景】
通勤災害は使用者の支配下にある業務遂行中の災害ではないため、使用者の災害補償責任(労基法第8章)を前提とする業務災害と異なり、療養給付に一部負担金が設けられていると一般に説明されます。一部負担金は、最初の休業給付の額から減じる方法で徴収され(第22条の2第3項・第31条第3項)、休業給付を受けない者(療養開始後3日以内に死亡した者を含む)や第三者行為災害による者からは徴収されません(施行規則第44条の2第1項)。
【健康保険との関係と損害賠償との調整】
健康保険は業務災害以外の傷病を対象とし(健保法第1条)、労災保険で相当する給付を受けられるときは給付を行わない(同法第55条第1項)ため、業務上・通勤上の傷病には労災保険を使います。誤って健康保険を使った場合は、労災保険への切り替えの手続が必要です。また、第三者の行為による災害で、保険給付を受けるべき者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができます(法第12条の4第2項=控除)。
根拠: 労働者災害補償保険法第13条・第14条・第22条・第22条の2・第12条の4・第31条、同法施行規則第11条・第11条の2・第12条・第44条の2(一部負担金)、健康保険法第1条・第55条第1項。厚生労働省「労災保険給付の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/rousaihoken06/index.html(確認日2026-04-10)。
- 労働者災害補償保険法第13条e-Govで原文を読む
- 労働基準法e-Govで原文を読む
- 健康保険法第1条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第13条(療養補償給付・第3項 療養の費用)、第22条(療養給付)、第22条の2第3項(最初の休業給付の減額)、第31条第2項・第3項(一部負担金)、同法施行規則第11条(療養の給付を行う病院等)・第11条の2(療養の費用を支給する場合)・第12条(療養の給付の請求)・第44条の2(一部負担金を徴収しない者・額・控除) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

