社労士 労働者災害補償保険法 問13:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働者災害補償保険法における二次健康診断等給付に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア二次健康診断等給付は、一次健康診断において血圧検査・血液検査・腹囲の検査・BMIの測定の4項目すべてに異常の所見があると診断された労働者が請求できる。
- イ二次健康診断等給付は、一次健康診断を受けた日から6か月以内に請求しなければならず、この期間を過ぎると給付を受けられない。正答
- ウ二次健康診断等給付には「二次健康診断」と「特定保健指導」の2種類があり、二次健康診断の受診後に特定保健指導を受けることができる。
- エ二次健康診断等給付を受けることができる回数は、同一年度内において1回に限られる。
- オ一次健康診断の結果において、既に脳血管疾患または心臓疾患の症状を有すると診断された場合は、二次健康診断等給付は支給されない。
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正答はイ(誤っている記述)です。
イは「一次健康診断を受けた日から6か月以内に請求しなければならない」としていますが、正確には「一次健康診断を受けた日から3か月以内」に請求する必要があります(労災則第18条の16・厚労省通達H13.3.30基発233号)。「6か月以内」ではなく「3か月以内」が正しい数値であり、ここがイの誤りです。やむを得ない事由(天災・医療機関都合による結果通知の著しい遅延)がある場合は3か月を過ぎてからの請求も例外的に認められますが、原則は受診日から3か月以内です。
アは正しく、4項目すべてに異常の所見が必要です(1項目でも正常ならば給付対象外)。ウは正しく、二次健診と特定保健指導の2種類があります。エは正しく、同一年度内1回に限られます。オは正しく、既に疾病の症状がある場合は対象外です。
二次健康診断等給付の支給要件(全て満たす必要あり):
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 一次健診で4項目全て異常所見 | 血圧検査・血液検査(血中脂質等)・腹囲の検査・BMIの測定 |
| ② 既に脳心臓疾患の症状なし | 一次健診の時点で既発症なら対象外(予防目的の制度のため) |
| ③ 業務に起因する過重負荷を認める旨の医師の判断 | ※実務上は4項目該当で通常充足 |
二次健康診断等給付の2種類:
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 二次健康診断 | 脳血管・心臓の状態の精密検査(空腹時血糖検査、頸部超音波検査等) |
| 特定保健指導 | 二次健診の結果に基づく医師・保健師等による保健指導 |
誤肢イの詳細:
労災則第18条の16および厚労省通達(H13.3.30基発233号「二次健康診断等給付事務取扱要領」)により、二次健康診断等給付の請求は「一次健康診断を受けた日から3か月以内」に行うこととされています。問題のイは「6か月以内」と記述しているため数値誤り(正解は3か月以内)です。なお、天災その他やむを得ない事由(医療機関都合で結果通知が著しく遅れた場合等)があるときは3か月経過後の請求も例外的に認められますが、原則は受診日から3か月以内です。
同一年度1回制限(エ):
「年度」は4月1日から翌年3月31日まで。同じ年度内に複数回一次健診を受けても、二次健診等給付は年度内1回のみです。
【二次健康診断等給付の制度創設背景:過重労働による脳心臓疾患死亡の予防】
二次健康診断等給付は2001年(平成13年)の法改正で創設されました。背景には「過労死」(過重労働に起因する脳・心臓疾患による死亡)問題の深刻化があります。当時、業務上の脳心臓疾患(脳梗塞・心筋梗塞等)による死亡・重篤な後遺障害の請求件数が急増しており、発症後に治療・補償を行うよりも「発症前の予防段階で介入する」ための制度として設計されました。
【4項目全部異常が必要な理由:複合リスクの閾値設定】
血圧・血中脂質・腹囲・BMIの4項目は、脳心臓疾患の発症リスクが「複合的に高まる」指標として選定されています。1項目でも正常値であれば、現時点では総合的な発症リスクが一定程度以下とみなされ、給付対象外となります。これは医学的エビデンスと給付の持続可能性のバランスから設定された閾値です。なお、4項目中何項目が異常でも「一次健診」の範囲内で対応する保健指導(事業主側の義務:労安法第66条の7)と、この「二次健診等給付」は制度的に別物です。
【「既に症状を有する場合」の排除理由(オ)と労安法との関係】
既に脳血管・心臓疾患の症状がある場合は、二次健康診断等給付ではなく、通常の療養補償給付(業務上認定されれば)または健康保険の対象として対応されます。二次健康診断等給付はあくまで「発症前の予防的介入」であり、既発症後の治療には別の給付制度が対応するという役割分担が明確です。
【請求期限「3か月」と「時効2年」の関係:二重期間制限の設計】
法第42条の時効(2年)と労災則第18条の16の「3か月以内の請求」は、異なる法的性格を持ちます。時効は請求権の消滅に関する一般規定ですが、「3か月以内」は二次健康診断等給付特有の請求期間(実体要件)であり、一次健診を受けた日から3か月を超えると(やむを得ない事由がない限り)請求権自体が生じないという厳格な設計です。立法趣旨は「発症前の早期介入」のため、一次健診直後の迅速な請求を促す政策的判断です。
【特定保健指導の位置づけと社労士の関与】
特定保健指導は二次健康診断の結果を踏まえ、医師・保健師・管理栄養士等による指導(栄養・運動・休養等)を行う給付です。社労士実務では、「二次健診等給付が使えることを労働者が知らない」ケースが多く、企業の健康診断実施後に「4項目全部異常なら二次健診等給付がある」と労働者に告知するアドバイスが実務貢献の一つです。また、2023年度以降は産業医の活動強化(安衛法改正)とあわせて、産業保健サービスとの連携が一層重要視されています。2028年度には全事業場へのストレスチェック義務化が予定されており、脳心臓疾患予防と精神健康管理の両輪が企業に求められる時代となっています。
根拠: 労働者災害補償保険法第26条〜第27条、同法施行規則第18条の16〜第18条の20。厚生労働省「二次健康診断等給付のご案内」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/kensin.html(確認日2026-04-10)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第26条〜第27条(二次健康診断等給付)、同法施行規則第18条の16〜第18条の20 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 当初設計の「3か月以内」(イ)の誤り設計は破綻していた。一次ソース確認(厚労省・東京労働局・愛知労働局・通達H13.3.30基発233号)に基づき、正しい請求期間は「一次健康診断を**受けた日**から**3か月以内**」(労災則第18条の16)。よってイの数値を「6か月以内」に書き換え、正答イ(誤り)を維持。解説本文も「受けた日から3か月以内」を正解として全面修正済。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。