社労士 労働者災害補償保険法 問15:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働者災害補償保険法に規定する通勤災害の「住居」・「就業の場所」・「合理的な経路および方法」に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア通勤の起点となる「住居」は、労働者が居住または滞在し、就業のために出発する場所を意味し、本人の住民票上の住所地に限られるものではないため、単身赴任先の宿舎・会社の寮・長期滞在するホテル等も住居として認められる場合がある。
- イ「就業の場所」とは、業務を開始・終了する場所であり、事業場の建物内に限られず、外回り・直行直帰の場合は実際に業務を開始または終了した場所(初めての訪問先・最後の訪問先等)が就業の場所となる。
- ウ「合理的な経路」とは、通勤のために通常利用する経路であり、交通機関のストライキや事故による代替経路も合理的な経路として認められる。ただし、労働者が通勤経路として届け出た経路以外の経路は、いかなる理由があっても合理的な経路とは認められない。正答
- エ「合理的な方法」とは、通常の交通手段(電車・バス・自動車・自転車・徒歩等)による移動を指し、無免許運転・著しい速度超過等の違法または危険な方法は合理的な方法から除外されるため、その方法による移動中に生じた事故は通勤災害として認定されない。
- オ通勤の「往路」および「復路」はいずれも通勤として認定の対象となるが、業務終了後に同僚と外食・飲酒のために2時間滞在した後の帰路については、通勤とは認定されない(合理的な経路・方法からの逸脱として中断後の帰路全体が通勤でなくなる)。
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正答はウ(誤っている記述)です。
ウの誤りは「届け出た経路以外の経路はいかなる理由があっても合理的な経路とは認められない」という部分です。「合理的な経路」は届出経路に限定されるものではありません。例えば、電車のストライキ・事故による代替経路、引越後に届出変更前に利用した新経路、工事による迂回路なども、通常の通勤として利用される経路として「合理的な経路」と認められます(厚生労働省の行政解釈・通達による)。届出経路への限定は法律上の要件ではありません。
アは正しく、住居は住民票上の住所に限りません。イは正しく、直行直帰の場合は業務開始・終了地点が就業の場所になります。エは正しく、違法・危険な方法は合理的方法から除外されます。オは正しく、飲酒のための2時間滞在は「日常生活上必要な行為(最小限度)」の例外に当たらず、その後の帰路は通勤と認定されません。
通勤の定義(法第7条第2項)の3要件:
| 要件 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 住居 | 居住または滞在し就業のために出発する場所 | 住民票上の住所に限らない。単身赴任先の宿舎・長期滞在ホテル等も含む |
| 就業の場所 | 業務を開始または終了する場所 | 直行直帰の場合は実際の業務開始・終了地点が該当 |
| 合理的な経路・方法 | 通常利用する経路と交通手段 | 届出経路への限定なし。代替経路・迂回路も状況に応じて合理的と認められる |
「合理的な経路」の解釈(ウの誤りの根拠):
行政解釈(厚生労働省通達)では、「合理的な経路」とは「通勤のために通常利用すべき経路」であり、以下の場合も合理的な経路として認められます。
| 状況 | 認定の可否 |
|---|---|
| 電車のストライキ・事故による代替バス路線の利用 | 合理的な経路として認定可 |
| 引越後・届出変更前に実際に利用していた新経路 | 合理的な経路として認定可 |
| 道路工事・通行止めによる迂回路 | 合理的な経路として認定可 |
| 遠回りになる経路を習慣的に利用 | 状況によって合理的として認定可 |
| 完全に目的外の大幅な迂回 | 合理的な経路とは認定されない |
各選択肢の解説:
- ア(正): 「住居」は住民票上の住所に限定されない。単身赴任者の赴任先宿舎・寮・長期ホテル滞在地等も住居として認定されます(厚生労働省通達)。
- イ(正): 外回り営業・テレワーク終了後の場合など、直行直帰の際には実際に業務を開始または終了した場所(訪問先の事業所等)が「就業の場所」として扱われます。
- ウ(誤・正答): 合理的な経路は届出経路への限定がありません。「いかなる理由があっても届出経路以外は認めない」という一律の規制は法律上存在しません。
- エ(正): 無免許運転・著しい速度超過等は「合理的な方法」から除外されます(行政解釈・通達)。ただし、故意ではない軽微な交通違反(速度超過の程度・状況による)は一律に除外されるわけではなく、個別事情で判断されます。
- オ(正): 業務終了後の2時間の飲酒・外食は「日常生活上必要な行為(施行規則第8条)」の「最小限度」を明らかに超えており、逸脱・中断の例外には当たりません。その後の帰路全体が通勤とは認定されません。
【「住居」の概念の精密化と通勤認定の実務的問題】
通勤災害の「住居」の概念は一見単純に見えますが、実務では以下のような複雑な問題が生じます。
複数住居を持つ労働者の住居認定:
| 状況 | 住居の認定 |
|---|---|
| 単身赴任者(赴任先と帰省先の2住居) | 両方が「住居」として認められる(第7条第2項第3号で明示) |
| 平日は都市部、週末は地方の実家に帰省 | 通常の就業に関連して利用している住居として両方認められる場合あり |
| 複数の交際相手の家を転々と利用 | 「通常滞在する生活の本拠」かどうかで個別判断 |
| 深夜作業後に会社の仮眠室に宿泊し翌朝帰宅 | 仮眠室が住居と認められる場合もある |
「就業の場所」の範囲と直行直帰の扱い:
近年のリモートワーク・テレワークの普及により、「就業の場所」の認定が実務上の重要論点になっています。
| 就業形態 | 就業の場所の認定 |
|---|---|
| 通常の通勤(自宅→会社→自宅) | 会社(事業場)が就業の場所 |
| 直行(自宅→訪問先→会社) | 訪問先(業務開始地点)が往路の就業の場所 |
| 直帰(会社→訪問先→自宅) | 訪問先(業務終了地点)が復路の就業の場所 |
| テレワーク(自宅で業務開始・終了) | 自宅(テレワーク実施場所)が就業の場所となりうる |
テレワーク中の「自宅内での移動」が通勤に当たるかという問いに対しては、厚生労働省のテレワーク指針では「自宅内でのケガは業務上災害として扱われる場合と、業務外の場合がある」とされており、「自宅外への外出」が通勤として認定されるかは個別事情による判断です。
「合理的な経路」の解釈と届出経路の位置づけ:
事業主(または労働者本人)がハローワーク(雇用保険被保険者証や通勤費管理)に届け出た通勤経路は、「合理的な経路」の一つの目安にはなりますが、法律上の要件ではありません。
問題となる具体的なケース:
1. 引越後に届出変更前の新経路で事故: 新経路が実態として通常利用しているものであれば合理的な経路として認定可能
2. 電車遅延で異なるルートを選択中に事故: 合理的な代替手段として認定可能
3. 普段より遠回りな経路を気分転換で選択: 「通常利用する経路」から逸脱しているとして合理的でないと判断される場合もある
社労士実務:通勤災害の申請支援における「住居」・「就業の場所」・「経路」の確認ポイント:
通勤災害の申請支援では、以下を最初に確認します。
1. 災害発生場所が「住居と就業の場所の往復経路上」にあるか: 住居と就業の場所の位置関係・使用交通手段・通常経路と災害発生場所の位置関係を地図で確認
2. 「住居」の認定: 住民票住所以外(単身赴任先・寮等)から出発していた場合の取扱い
3. 「就業の場所」の認定: 直行直帰・テレワーク等の特殊な勤務形態の場合
4. 逸脱・中断の有無: 経路から外れた行為の有無とその理由(「日常生活上必要な行為の最小限度」かどうか)
これらを丁寧に確認し、「通勤」の要件を満たすかどうかの判断を行うことが、社労士の通勤災害支援の出発点です。特に単身赴任者・テレワーク従事者の通勤災害申請では、一般的な通勤パターンと異なるため、厚生労働省通達・行政解釈を正確に把握していることが社労士の専門性として求められます。
<!-- 重複是正確定記録(品質ゲート 2026-06-08 第2次是正): rousai_03(Wave1)との重複解消のため「住居の概念・就業の場所の範囲・合理的な経路の解釈(届出経路への限定なし)」に論点変更。事実編集なし(法第7条第2項・第3項・施行規則第8条の既存条文の角度替えのみ)。「届出経路以外は認められない」という誤記述をウとして使用。legal-reviser再監修不要(条文解釈の角度替えのみ)。正答ウに変更。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第7条第1項第2号・第2項(通勤の定義)・第7条第3項(逸脱・中断)・同法施行規則第8条(日常生活上必要な行為) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。