社労士 労働者災害補償保険法 問19:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働者災害補償保険法に規定する給付基礎日額のスライドに関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア給付基礎日額のスライドには、「自動変更(賃金水準変動に応じた自動スライド)」と「年齢階層別の最低・最高限度額によるスライド」の2つの方式がある。
- イ年齢階層別の最低・最高限度額によるスライドは、年金給付(障害年金・遺族年金・傷病年金)にのみ適用され、休業補償給付・休業給付には療養開始後1年6か月を経過した日以後であっても一切適用されない。正答
- ウ給付基礎日額の自動変更対象額(最低保障額)は毎年8月1日に改定され、令和7年8月1日施行の現行値は4,250円/日円/日とされている。
- エ年齢階層別スライドにおける「最低限度額」は、年齢が若い(20歳代等)受給権者に対して適用され、賃金水準の高い年齢層に比べて低い受給額となることを防止する機能を持つ。
- オ年齢階層別スライドの最高限度額は、60歳以上の高齢受給権者に適用され、現役世代の賃金水準と乖離して過大な給付にならないよう上限を設ける機能を持つ。
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正答はイ(誤っている記述)です。
年齢階層別の最低・最高限度額は、年金給付に加え「療養開始後1年6か月を経過した日以後の休業補償給付・休業給付」にも適用されます(労災法第8条の3第2項)。「休業給付には一切適用されない」とするイは誤りです。
給付基礎日額のスライドは「賃金水準の変化に応じて給付額を実態に合わせる仕組み」です。①自動変更(賃金スライド・全給付に適用)と②年齢階層別最低・最高限度額(年金給付+療養開始後1年6か月超の休業給付に適用)の2つの仕組みが組み合わされています。
給付基礎日額のスライド方式の比較(労災法第8条の2・第8条の3):
| スライド方式 | 根拠 | 対象給付 | 改定時期 | 機能 |
|---|---|---|---|---|
| 自動変更(賃金スライド) | 第8条の2 | 全ての給付(療養・休業・年金) | 毎年8月1日 | 平均給与水準の変動に連動して給付基礎日額を自動更新 |
| 年齢階層別最低・最高限度額スライド | 第8条の3 | 年金給付(障害・遺族・傷病補償年金)+療養開始後1年6か月経過後の休業補償給付・休業給付 | 毎年8月1日(告示改定) | 年齢に応じた最低保障・最高限度で受給者の実態に対応 |
年齢階層別スライドの機能:
- 最低限度額: 若年層(20歳代等)の受給者に対し、賃金水準の低い被災時の賃金で固定されることを防ぐ。「少なくともこれだけは受け取れる」下限の保証。現行の自動変更対象額(最低保障)は4,250円/日円/日(令和7年8月1日施行値)。
- 最高限度額: 60歳以上の高齢受給者に対し、「現役世代の賃金水準を超えた過大な年金給付」にならないよう上限を設定。
各選択肢の精査:
- ア(正): 自動変更(賃金スライド)と年齢階層別スライドの2方式→正しい。
- イ(誤): 年齢階層別の最低・最高限度額は、年金給付に加え「療養開始後1年6か月経過後の休業補償給付・休業給付」にも適用される(第8条の3第2項)。「一切適用されない」は誤り。なお療養開始後1年6か月以内の休業補償給付には適用されない(自動変更スライドのみ)。
- ウ(正): 自動変更対象額は毎年8月改定・現行値4,250円/日円→正しい。
- エ(正): 最低限度額が若年層の受給額を下支え→正しい。
- オ(正): 最高限度額が60歳以上の過大給付を防止→正しい。
【給付基礎日額スライド制度の立法経緯:長期傷病・年金受給者の賃金乖離問題】
給付基礎日額は「被災した時点の賃金(算定期間3か月の平均日額)」を基礎として計算されます。しかし被災後何年も経つと、社会全体の賃金水準が上昇しているのに、被災時の固定日額で計算された年金・休業補償を受け続けることになり、実質的な購買力が低下します。この問題を解決するために1980年代以降段階的にスライド制度が整備されました。
【自動変更(賃金スライド)の計算メカニズム:「労働者の平均給与額」連動】
自動変更は「全業種・全地域の平均給与額の変動率」に連動して毎年8月1日に発動します。具体的には:
1. 前年8月〜当年7月の「毎月勤労統計」の平均給与水準を算出
2. 基準年(最初の算定時)と比較して変動率を計算
3. 給付基礎日額(算定基礎日額)にこの変動率を乗じて自動更新
変動率が1を下回る(賃金低下)場合でも、「自動変更対象額(最低保障額)」を下回らないよう保護されます。これが4,250円/日円(令和7年8月1日施行値)の役割です。
【年齢階層別スライドの具体的計算:20〜60歳の年齢帯別最低・最高限度額】
年齢階層別スライドは「受給権者の年齢(毎年8月1日時点)」に応じて、算定基礎日額と比較した年齢階層別最低・最高限度額を適用します。
- 20歳未満〜55歳未満: 各年齢帯で「この年齢帯の者が本来稼いでいるはずの平均賃金水準」を下限として保護。若年労働者が被災直後は賃金が低くても、社会人経験を積んで高くなるはずの賃金を「先取り」して給付に反映。
- 55歳以上〜60歳未満: 現役賃金ピークに近い水準を維持。
- 60歳以上: 最高限度額(16,660円/日円(令和7年8月1日施行値))を設けて過大給付を防止。退職後の実収入水準を超えた給付は制度の持続性を損なうためです。
【社労士実務:長期傷病・年金受給者への給付基礎日額見直し支援】
社労士が労災年金受給者の代理人・支援者として関与する場合、「スライド後の現在の給付基礎日額」を正確に把握することが重要です。被災時の日額と現在の適用日額が異なることを理解していない受給者は多く、①実際の受給月額の確認、②再就職・再労働による収入との調整(障害年金は就労できている場合の支給停止等)、③遺族年金の子の年齢変化に伴う支給額変更(子が18歳になると加算終了)のモニタリングが支援の要です。
根拠: 労働者災害補償保険法第8条の2(自動変更)・第8条の3(年齢階層別スライド)、厚生労働省告示208号(令和7年・最低保障額4,250円/日円)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第8条の2(給付基礎日額の自動変更)・第8条の3(年齢階層別最低・最高限度額) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): ★2026-06-08修正:イの選択肢表現を厳密化(「療養開始後1年6か月を経過した日以後であっても一切適用されない」と明示)。労災法第8条の3第2項により、年齢階層別の最低・最高限度額は、年金給付(障害補償年金・遺族補償年金・傷病補償年金)に加え、「療養開始後1年6か月を経過した日以後の休業補償給付・休業給付」にも適用される。したがって「一切適用されない」とするイは誤り。一方、療養開始後1年6か月以内の休業補償給付には年齢階層別スライドは適用されない(自動変更スライドのみ)。ア(2方式)・ウ(毎年8月改定・自動変更対象額の最低保障)・エ(若年層最低限度額・過少給付防止)・オ(60歳以上最高限度額・過大給付防止)はいずれも正しい。正答イで一意性確保。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。