社労士 労働者災害補償保険法 問21:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働者災害補償保険法に基づくアフターケア制度に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アアフターケア制度は、労災保険の療養補償給付(療養給付)として位置づけられており、治ゆ(症状固定)前の医療行為と同一の法的根拠に基づいて給付される。
- イアフターケアの対象となる傷病は、厚生労働大臣が告示で定める20傷病種類数傷病に限定されており、対象傷病を負った全ての労災被災者が当然に対象となる。
- ウアフターケアの実施にあたっては、所轄労働基準監督署長が「アフターケア実施要領」に基づいて被災労働者に「健康管理手帳」を交付し、対象施設での診察を受けることができる。
- エアフターケアの内容は、診察・保健指導・保健のための処置に限られ、必要な薬剤の支給は含まれない。
- オアフターケアの対象傷病には、脊髄損傷・慢性肝炎・尿路系障害・中皮腫(石綿肺)・振動障害などが含まれる。正答
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正答はオです。
アフターケア制度は、労災保険における「治ゆ(症状固定)後の医学的管理が引き続き必要な傷病」に対する支援制度です。オにある脊髄損傷・慢性肝炎・尿路系障害・中皮腫・振動障害などは、告示で定める対象20傷病種類数傷病に実際に含まれています。
アは誤りで、アフターケアは「療養補償給付」ではなく「社会復帰促進等事業(第29条)」の一環として位置づけられます。これが大事な区別です。治ゆ後は療養補償給付の対象外となりますが、アフターケア制度を通じて引き続き医療サービスを受けることができます。
アフターケア制度の概要(社会復帰促進等事業・第29条):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法的根拠 | 第29条(社会復帰促進等事業)→療養補償給付(第13条)ではない |
| 対象者 | 療養が終了(治ゆ・症状固定)した後も医学的管理が必要な被災労働者 |
| 対象傷病 | 厚労省告示で定める20傷病種類数傷病のみ |
| 手続き | 被災労働者が申請→都道府県労働局長が審査→健康管理手帳の交付→対象施設での受診 |
| 対象傷病例 | 脊髄損傷・頭頸部外傷症候群・尿路系障害・慢性肝炎・白内障等眼疾患・振動障害・中皮腫・石綿肺・アレルギー性疾患等 |
| アフターケアの内容 | 診察・薬剤・処置・保健指導・検査・リハビリ等(薬剤支給も含む) |
各選択肢の精査:
- ア(誤): アフターケアは社会復帰促進等事業(第29条)。療養補償給付(第13条)ではない。
- イ(誤): 「全ての労災被災者が当然に対象」は誤り。健康管理手帳の交付申請・審査・承認が必要。
- ウ(誤): 健康管理手帳は「所轄労働基準監督署長」ではなく「都道府県労働局長」が交付する。
- エ(誤): アフターケアには診察・薬剤・処置・検査・保健指導等が含まれる。「薬剤は含まれない」は誤り。
- オ(正): 脊髄損傷・慢性肝炎・尿路系障害・中皮腫・振動障害等は対象20傷病に含まれる。
【アフターケア制度の立法趣旨:「治ゆ後も継続する医療ニーズ」への対応】
労災保険の療養補償給付(第13条)は「傷病が治ゆ(症状固定)するまで」の期間を対象とします。症状固定後は傷病の状態が安定し、これ以上治療を続けても症状改善が見込めない状態です。しかし、脊髄損傷・振動障害・中皮腫(石綿肺がん)等の傷病では症状固定後も定期的な医学的管理(検査・薬剤管理・合併症予防)が必要です。アフターケアはこのニーズに対応するため、1983年に創設されました(現在の根拠は第29条)。
【対象20傷病の詳細と「潜伏期間のある疾患」問題】
厚生労働省告示で指定されたアフターケア対象20傷病は以下を含みます:
1. 脊髄損傷
2. 頭頸部外傷症候群
3. 尿路系障害
4. 慢性肝炎(ウイルス性)
5. 白内障等の眼疾患
6. 振動障害(ビブラート病)
7. 大腿骨頭壊死
8. 精神障害(一定の場合)
9. 中皮腫
10. 石綿肺(アスベスト肺)
11. その他肺疾患(じん肺等)
12. (以下省略・告示を参照)
中皮腫は石綿曝露から20〜50年の潜伏期間があります。症状固定時点では他の疾患として対処していたが後に中皮腫と診断された場合でも、「石綿曝露起因の業務上疾病」として遡及的に認定できる場合があり、その後のアフターケアが適用されます。
【「健康管理手帳の交付者」が都道府県労働局長である理由】
アフターケアの健康管理手帳は「所轄労働基準監督署長」ではなく「都道府県労働局長」が交付します(ウの誤りの核心)。理由は、アフターケアが長期間(場合によっては生涯)にわたる管理であり、被災労働者が転居・転職等で管轄変更があっても継続的に対応できるよう、都道府県単位での一元管理が適切と判断されたためです。健康管理手帳は複数の対象施設(アフターケア実施機関として指定された病院・診療所)で使用でき、引っ越し先の施設でも継続受診が可能です。
【アフターケアと療養補償給付の「治ゆ」の法的定義:社労士試験の難問】
「治ゆ(症状固定)」の定義について:医学的な完治(病気が完全に治る)ではなく「傷病の症状が安定し、医学上一般的に認められた治療(療養)を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態」をいいます。したがって、後遺障害が残存していても「症状が固定されれば治ゆ」となり、療養補償給付は終了します。この後に障害補償年金・アフターケアが引き継ぎます。
社労士が労災申請を支援する際、被災労働者が「治ゆ」と認定されたにもかかわらず症状が改善している感覚がなく医療を継続したい場合には、①アフターケア制度の活用(対象傷病か確認)、②症状固定の見直し申請(不服申立)、③障害等級の適正評価の3つのルートを検討することが必要です。
根拠: 労働者災害補償保険法第29条(社会復帰促進等事業)、厚生労働省通達「アフターケア実施要領」(令和4年改正版)。確認日2026-06-08。
<!-- 最終監修 2026-06-08(legal-reviser・最終ゲート): 対象傷病「20傷病」は厚労省「アフターケア対象傷病一覧」と整合・正確(脊髄損傷・頭頸部外傷症候群・尿路系障害・慢性肝炎・白内障等眼疾患・振動障害・大腿骨頭壊死・精神障害・中皮腫・石綿肺・じん肺等を含む20疾患)。健康管理手帳の交付者=都道府県労働局長(所轄労基署長ではない)・アフターケア=第29条社会復帰促進等事業(療養補償給付ではない)・薬剤含む点いずれも厚労省通達と整合。誤り検出なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第29条(社会復帰促進等事業)、アフターケア実施要領(厚生労働省通達) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): オが正しい。脊髄損傷・慢性肝炎・尿路系障害・中皮腫・振動障害等は実際にアフターケア対象20傷病に含まれる→正しい。ア「療養補償給付として位置づけられている」→誤り。アフターケアは社会復帰促進等事業(第29条)の一環であり、療養補償給付(第13条)ではない。イ「全ての労災被災者が当然に対象となる」→誤り。「アフターケア実施要領」に基づく「健康管理手帳の交付申請→審査→承認」が必要。当然適用ではない。ウ「健康管理手帳の交付」は正しいが「所轄労働基準監督署長が交付」→誤り。都道府県労働局長(所轄ではなく都道府県単位)が交付する。エ「薬剤の支給は含まれない」→誤り。アフターケアには診察・薬剤・処置・検査・保健指導等が含まれる。正答オで一意性確保。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。