社労士 労働者災害補償保険法 問23:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働者災害補償保険の保険料率(労災保険率)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア労災保険率は、すべての業種に同一の料率が適用され、業種による差異はない。
- イ労災保険率の最高値は88/1000保険料率(金属鉱業・非金属鉱業等)であり、最低値は2.5/1000保険料率(金融業・保険業・不動産業等)であって、現在54業種に分けて設定されている。正答
- ウ労災保険率は毎年4月1日に厚生労働大臣の告示で改定され、メリット制(個別事業場の収支率に基づく率の増減)と組み合わせて運用されている。
- エ業種別の労災保険率は労使折半で負担されるため、事業主の負担は労災保険率の1/2となる。
- オ一つの事業が複数の業種(例:建設業の内装工事と外装工事)にまたがる場合、原則として主たる業種の保険率を適用する。
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正答はイです。
労災保険率は業種によって大きく異なります。現行(2024年4月施行)では54業種に分けて設定されており、最高値は金属鉱業・非金属鉱業等の88/1000保険料率、最低値は金融業・保険業・不動産業等の2.5/1000保険料率です。
エは誤りで、労災保険料は事業主が全額負担します。健康保険・雇用保険と異なり、労働者には負担がありません。ウも誤りで、労災保険率は3年ごとに改定(毎年ではない)されます。
労災保険率の仕組み(徴収法第12条・労災保険率告示):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料率の設定単位 | 54業種別(2024年4月施行) |
| 最高値 | 88/1000保険料率(金属鉱業・非金属鉱業等) |
| 最低値 | 2.5/1000保険料率(金融業・保険業・不動産業等) |
| 改定頻度 | 3年毎(現行は2024年4月施行・次回は2027年4月予定) |
| 負担者 | 事業主のみ(労働者負担なし)← エの誤りの核心 |
| メリット制 | 労災発生率が低い事業場→料率が最大40%引下げ、高い事業場→最大40%引上げ |
各選択肢の精査:
- ア(誤): 全業種同一料率ではなく業種別設定(54業種)。
- イ(正): 最高88/1000保険料率・最低2.5/1000保険料率・54業種は現行告示値と整合。
- ウ(誤): 毎年改定ではなく3年毎改定。
- エ(誤): 労災保険料は事業主全額負担。労使折半ではない。
- オ(正に近いが): 複数業種混在の場合は「主たる業種の保険率」を適用するという原則は概ね正しいが、建設業等は別に「一括有期事業」として取り扱う点で単純化が過ぎる→イが最も明確な正答。
【54業種区分の設計根拠:「業種別の災害発生率」の客観的測定に基づく料率設定】
労災保険率の業種別設定は「保険の基本原則(危険度に応じた保険料)」に忠実な設計です。54業種の料率は、過去3年間の保険給付費と保険料収入の収支率を基礎として計算されます。具体的には:
1. 各業種の「保険給付費総額÷保険料収入総額」の収支率を計算
2. 収支率が高い(給付過多)業種→次期改定で料率引上げ
3. 収支率が低い(黒字)業種→次期改定で料率引下げ
4. 54業種全体の収支均衡を目標として全体の料率水準を調整
この方式により「金属鉱業等の最高危険業種は88/1000保険料率、金融業等の最低危険業種は2.5/1000保険料率」という34.4倍の格差が生じています。
【メリット制の詳細:個別事業場レベルの「成果連動型料率調整」】
業種別料率は「同一業種の平均」に過ぎず、安全衛生管理の優れた事業場と劣る事業場が同じ料率になることは不公平です。メリット制はこの不公平を是正する仕組みです。
メリット制の適用条件(継続事業の場合):
- 保険料収入が一定額以上の事業場(規模要件)
- 継続3年分の収支率を計算
収支率に応じた料率調整:
- 収支率75%以下(安全優秀)→最大40%引下げ
- 収支率85%以下75%超→15%引下げ
- 収支率85%超95%以下→変更なし
- 収支率95%超115%以下→変更なし
- 収支率115%超(事故多発)→最大40%引上げ
つまり、事故を起こさない安全優良事業場は保険料が大幅に安くなり、事故多発事業場は高くなります。これが「安全投資(設備改善・教育)の経済的インセンティブ」として機能しています。
【「事業主全額負担」の制度的意義:労災保険の法的性格との関係】
労災保険料の事業主全額負担は、労基法の「使用者の業務上の損害賠償責任(民法・労基法第75条〜)」を代替する制度として位置づけられています。労働者が業務上負傷した場合の補償責任は本来使用者にあり(労基法第75条)、それを社会的に分散する仕組みとして労災保険が存在するため、「補償義務者=事業主」の原則から保険料も事業主負担とされています。
健康保険・雇用保険の「労使折半・労使按分負担」とは法的根拠が根本的に異なる点が社労士試験の核心論点です。
【2024年4月施行改定の主な変更点:業種再編と料率改定】
2024年4月施行の告示改定では、業種分類の見直し(デジタル化・新産業への対応)と料率の収支均衡調整が行われました。主な変更:
- 一部の情報通信業が独立した業種区分に(料率2.5/1000保険料率レベルと同程度)
- 建設業の一部の細目料率の変更
- 金属鉱業等の最高値88/1000保険料率は維持
社労士は顧問先の保険料計算で「業種コードの確認」を毎年行い、業種転換(例:製造業からサービス業への事業転換)がある場合は翌年度から正しい料率が適用されるよう届出を支援します。
根拠: 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第12条、厚生労働省告示(令和6年度労災保険率・2024年4月施行)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第12条(労災保険率)、労災保険率告示(厚生労働省告示) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): イが正しい。最高値{{ROUSAI_KOGYOBETSU_RITSU_MAX}}(金属鉱業等)・最低値{{ROUSAI_KOGYOBETSU_RITSU_MIN}}(金融業等)・54業種区分は2024年4月施行の告示値と整合。ア「全業種同一料率」→誤り。業種別設定が基本。ウ「毎年4月1日に改定」→誤り。労災保険率は原則3年毎の改定(毎年ではない)。現行は2024年4月施行。エ「労使折半」→誤り。労災保険料は事業主のみが全額負担。労働者負担はない。オ「主たる業種の保険率を適用」→一括適用の原則は正しいが「主たる業種」でなく「主たる業種の保険率」の解釈が問題。実際は「主たる業種(上位業種)の保険率を一括適用」が原則→概ね正しいがイが最も明確な正答。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。