労働者災害補償保険法24労働者災害補償保険法

社労士 労働者災害補償保険法 問24:労働者災害補償保険法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision

労働者災害補償保険法に規定する保険給付と他の制度・補償との調整に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 業務上の事由により厚生年金保険法の障害厚生年金を受けることができる場合、同一の事由に基づく労災保険の障害補償年金との間で調整が行われ、労災の給付額が減額される。
  • 業務上の事故が第三者(他の使用者・交通事故加害者等)の不法行為によるものである場合、政府は労災給付を行った範囲で第三者に対する被災労働者の損害賠償請求権を代位取得する(求償)。
  • 交通事故による通勤災害の場合、自賠責保険(強制自動車責任保険)と労災保険の両方を受けることができるが、同一損害に対しては先に支払われた給付分を差し引いて支給される(填補調整)。
  • 業務上の傷病に対して健康保険の傷病手当金を受けた場合でも、その分の調整は行われず、労災の休業補償給付と重複して受け取ることができる。正答
  • 同一の業務上の傷病について、民事損害賠償(使用者への安全配慮義務違反による損害賠償)が確定した場合、その損害賠償が行われた部分と同一の損害項目については、労災給付の支給が停止または調整される。
正答:業務上の傷病に対して健康保険の傷病手当金を受けた場合でも、その分の調整は行われず、労災の休業補償給付と重複して受け取ることができる。

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正答はエ(誤っている記述)です。

健康保険の傷病手当金は「業務外の傷病による休業」に対して支給されるものです。業務上の傷病には健康保険が原則適用されず、労働者災害補償保険が適用されます。したがって「業務上の傷病に対して健保の傷病手当金を受けた」という前提自体が誤りであり、「調整なしに重複受給できる」とするエも誤りです。

労災と他の制度の調整は重要なルールです。厚生年金の障害厚生年金と労災の障害補償年金は同一事由で両方支給される場合、労災が減額調整されます。第三者行為災害(交通事故等)では求償(代位取得)が行われます。

標準試験対策の基準レベル

労災保険給付と他の制度との調整規則:

| 組み合わせ | 調整の方向 | 根拠 |

|---|---|---|

| 労災×厚生年金(同一事由の障害) | 労災給付が減額(厚年側は満額) | 第64条・厚年法第47条の2 |

| 労災×健康保険(業務上の傷病) | 健保は原則不適用(業務上には健保が適用されない) | 健保法第55条 |

| 労災×自賠責(第三者交通事故) | 先払い分を控除(填補調整) | 第12条の4・自賠責保険法 |

| 労災×民事損害賠償 | 同一損害項目で調整(労災給付分は損益相殺) | 第12条の4第1項・判例 |

| 労災×第三者への求償 | 政府が被災者に代わって第三者へ求償 | 第12条の4第2項 |

健保と労災の「適用分離」原則(エの誤りの核心):

健康保険法第55条は「被保険者の業務上の負傷・疾病に起因する療養・その療養中の傷病手当金は支給しない」と規定しています。業務上の傷病は労災保険が排他的に適用されます。もし誤って健保が支給された場合は返還義務があります(健保の過誤払)。

各選択肢の精査:

  • ア(正): 厚年の障害厚生年金と労災の障害補償年金が同一事由で競合→労災側の調整(第64条)。
  • イ(正): 第三者行為災害の求償→第12条の4第2項。政府が代位取得。
  • ウ(正): 自賠責と労災の填補調整→先払い分を控除。
  • エ(誤): 業務上の傷病への健保傷病手当金の適用自体が誤り(健保法第55条)。重複受給の前提が誤り。
  • オ(正): 民事賠償確定後の労災調整(損益相殺の原則)。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【労災と厚生年金の調整:「同一の支給事由」の意味と調整率】

障害補償年金(労災)と障害厚生年金・障害基礎年金(年金)が同一の業務上の傷病を原因として支給される場合、労災の障害補償年金が調整係数によって減額されます(第64条)。

具体的な調整係数(概要):

  • 障害厚生年金のみ(基礎なし):労災年金額×0.88
  • 障害厚生年金+障害基礎年金:労災年金額×0.73
  • 障害基礎年金のみ:労災年金額×0.88(一部の場合)

「なぜ労災側が減額されるのか」:年金保険は「被保険者期間の保険料納付」を基礎とした社会保障制度であり、一方労災は「使用者責任の代替」です。制度の異なる二重給付を防ぎつつ、どちらかの制度を優先させる際に「社会保険優先」の方針から年金側を満額、労災側を調整する設計になっています。

【第三者行為災害の求償と「先行」問題:実務の複雑さ】

第三者行為災害(交通事故等での労災)では、政府(労働保険機構)が労災給付を行った後、被災者が第三者(加害者・自賠責)に対して持っていた損害賠償請求権を代位取得して求償します。

実務上は「どちらを先に請求するか」が重要:

  • 労災先行: 労災給付を受けた後に民事損害賠償請求→労災給付分は損益相殺で控除される
  • 自賠責先行: 自賠責・任意保険から補償を受けた後に労災申請→受取済みの補償分が控除される

どちらを先に請求するかは「確実性」「支給スピード」「補償範囲の違い(逸失利益・慰謝料は労災対象外)」を考慮して判断します。社労士は通勤途中の交通事故での労災申請支援で、「自賠責・任意保険からの補償と労災給付の調整計算」を被災者に説明する場面が多くあります。

【「特別支給金の損益相殺対象外」(前問で言及)の再確認:調整の複雑さ】

前問(rousai_20)でも言及しましたが、2022年の最高裁判決により「特別支給金(特別給付金)は損益相殺の対象外」が確定しています。これは以下の実務的インパクトを持ちます:

  • 労災の保険給付(本体):民事損害賠償との損益相殺の対象→賠償額から控除される
  • 特別支給金(障害特別年金・遺族特別年金等):損益相殺の対象外→賠償額から控除されない

被災労働者・遺族からすると「特別支給金は民事賠償額を減らさない上乗せ給付」として機能するため、労災申請と民事損害賠償訴訟の両立を積極的に支援する意義があります。

【健保と労災の「灰色地帯」:業務上か業務外か不明な時の実務対応】

業務上か業務外か判断が困難な場合(例:過労による体調不良・ハラスメントによる精神障害等)、労災申請中は「健保での傷病手当金の仮払い」という実務慣行があります(判定確定後に精算)。労基署が「業務上」と認定した場合、健保への返還・労災への切替えが必要になります。このプロセスを適切に処理することが社労士の重要業務の一つです。

根拠: 労働者災害補償保険法第12条の4(第三者行為災害・求償)・第64条(他の給付との調整)、健康保険法第55条(業務上の傷病への不適用)。確認日2026-06-08。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第12条の4(第三者行為災害・求償)・第64条(他の法律による給付との調整) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): エが誤り。業務上の傷病について健康保険の傷病手当金を受け取ることは原則としてできない(業務上の傷病には健保が適用されず労災が適用される)。もし誤って健保の傷病手当金が支給された場合は返還義務がある。そもそも「業務上の傷病に健保の傷病手当金を受けた場合でも調整なし」というエの前提自体が誤り(業務上の傷病には健保は原則不適用)。ア(厚年障害厚生年金との調整で労災減額)・イ(第三者行為災害の求償)・ウ(自賠責との填補調整)・オ(民事賠償との調整)はいずれも正しい。正答エで一意性確保。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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