社労士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

社労士 労働者災害補償保険法 問24|労災保険給付の調整

問題

社労士 | 労働者災害補償保険法 | 令和9年度(2027年度)試験対応・数値確認日 2026-10-01

労働者災害補償保険法に規定する保険給付と他の制度・補償との調整に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。

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正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はエ(誤っている記述)です。

健康保険の傷病手当金は「業務外の傷病による休業」に対して支給されるものです。業務上の傷病には健康保険が原則適用されず、労働者災害補償保険が適用されます。したがって「業務上の傷病に対して健保の傷病手当金を受けた」という前提自体が誤りであり、「調整なしに重複受給できる」とするエも誤りです。

労災と他の制度の調整は重要なルールです。厚生年金の障害厚生年金と労災の障害補償年金は同一事由で両方支給される場合、労災が減額調整されます。第三者行為災害(交通事故等)では求償(代位取得)が行われます。

労災保険給付と他の制度との調整規則:

組み合わせ調整の方向根拠
労災×厚生年金・国民年金(同一事由の障害)労災給付が減額(年金側は満額)労災法第15条第2項・別表第一、施行令第2条・第4条・第6条
労災×健康保険(業務上の傷病)健保は給付しない(健保は業務災害以外が対象)健保法第1条・第55条第1項
労災×自賠責(第三者の交通事故)先に受けた損害賠償の価額の限度で保険給付をしないことができる労災法第12条の4第2項
労災×事業主からの民事損害賠償同一の事由について、一定の範囲で損害賠償の履行猶予・保険給付の支給調整労災法附則第64条
労災×第三者への求償政府が給付の価額の限度で被災者の損害賠償請求権を取得労災法第12条の4第1項

健保と労災の「適用分離」(エの誤りの核心):

健康保険法第1条は、健保の保険給付の対象を「業務災害(労災法第7条第1項第1号に規定する業務災害)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産」と定めています。さらに第55条第1項は、傷病手当金等の支給は、同一の疾病・負傷について労災保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わないとしています。業務上の傷病は労災保険で扱うのが原則で、誤って健保から支給された場合は返還・精算の問題になります。

各選択肢の精査:

  • ア(正): 同一事由で障害厚生年金と障害補償年金が支給される場合→労災側を政令で定める率で減額(法別表第一)。
  • イ(正): 第三者行為災害の求償→第12条の4第1項。政府が給付の価額の限度で損害賠償請求権を取得。
  • ウ(正): 自賠責から先に損害賠償を受けた場合→その価額の限度で労災給付をしないことができる(第12条の4第2項)。
  • エ(誤): 業務上の傷病は健保の給付対象外(健保法第1条・第55条第1項)。「調整されず重複して受け取れる」は誤り。
  • オ(正): 事業主から同一の事由について損害賠償を受けたとき→保険給付をしないことができる(附則第64条第2項)。

【労災と厚生年金の調整:「同一の支給事由」の意味と調整率】

障害補償年金(労災)と障害厚生年金・障害基礎年金(年金)が同一の事由により支給される場合、労災の障害補償年金が政令で定める率によって減額されます(労災法第15条第2項・別表第一)。

障害補償年金に掛ける率(労災保険法施行令):

  • 障害厚生年金+障害基礎年金(別表第一第一号):労災年金額×0.73(施行令第2条)
  • 障害厚生年金のみ(同第二号):労災年金額×0.83(施行令第4条)
  • 障害基礎年金のみ(同第三号):労災年金額×0.88(施行令第6条)

ただし第一号の場合、減額後の額が「労災の年金額から障害厚生年金と障害基礎年金の合計額を差し引いた額」を下回るときは、その額が支給されます(施行令第3条)。年金側は満額支給され、労災側を減額することで、同一の事由による二重の給付を調整する仕組みです。

【第三者行為災害の求償と「先行」問題:実務の複雑さ】

第三者行為災害(交通事故等での労災)では、政府が労災給付を行った後、その給付の価額の限度で、被災者が第三者(加害者)に対して持っていた損害賠償請求権を取得して求償します(第12条の4第1項)。

実務上は「どちらを先に請求するか」が重要:

  • 労災先行: 労災給付を受けた後は、政府がその価額の限度で損害賠償請求権を取得するため、被災者が加害者側に請求できるのは残りの部分になる(第12条の4第1項)
  • 自賠責先行: 自賠責・任意保険から同一の事由について損害賠償を受けた後に労災を請求→政府はその価額の限度で保険給付をしないことができる(同条第2項)

どちらを先に請求するかは「確実性」「支給スピード」「補償範囲の違い(慰謝料や物損は労災保険の給付の対象外)」を考慮して判断します。社労士は通勤途中の交通事故での労災申請支援で、「自賠責・任意保険からの補償と労災給付の調整計算」を被災者に説明する場面が多くあります。

【特別支給金は調整の対象になるか:保険給付との違い】

特別支給金は、保険給付ではなく社会復帰促進等事業(第29条)として支給されるものです。第12条の4や附則第64条が調整の対象としているのは「保険給付」であり、判例(最高裁)も、特別支給金を損害賠償額から控除しない立場をとっています。これは以下の実務的インパクトを持ちます:

  • 労災の保険給付(本体):同一の事由の損害賠償との間で調整の対象になる
  • 特別支給金(障害特別支給金・障害特別年金等):損害賠償額から控除されない

被災労働者・遺族からすると「特別支給金は民事賠償額を減らさない上乗せ給付」として機能するため、労災請求と民事損害賠償請求の両方を視野に入れて支援する意義があります。

【附則第64条:事業主からの損害賠償との調整】

附則第64条は、労働者又は遺族が障害補償年金・遺族補償年金等を受けるべき場合に、同一の事由について当該労働者を使用している(使用していた)事業主から民法その他の法律による損害賠償を受けることができるときの調整を「当分の間」の措置として定めています。事業主から損害賠償を受けたときは、政府は一定の範囲で保険給付をしないことができます(同条第2項)。第三者(加害者)との関係は第12条の4、事業主との関係は附則第64条、と根拠が分かれる点が得点のポイントです。

【健保と労災の「灰色地帯」:業務上か業務外か不明な時の実務対応】

業務上か業務外か判断が難しい傷病(例:過重労働による体調不良・ハラスメントによる精神障害等)で、先に健保から給付を受けていた場合、後に労働基準監督署長が業務上と認定すると、健保の給付は第55条第1項により本来行わないものだったことになり、健保への返還と労災への請求の切替えが必要になります。このプロセスを適切に処理することが社労士の重要業務の一つです。

根拠: 労働者災害補償保険法第12条の4(第三者行為災害・求償と支給調整)・第15条第2項・別表第一(年金との調整)・第29条(社会復帰促進等事業)・附則第64条(事業主からの損害賠償との調整)、労働者災害補償保険法施行令第2条〜第4条・第6条(調整率・調整の下限)、健康保険法第1条・第55条第1項。e-Gov 現行条文で確認 2026-09-30。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第12条の4(第三者行為災害・求償と支給調整)・第15条第2項及び別表第一(厚生年金・国民年金との調整)・附則第64条(事業主からの民事損害賠償との調整)、労働者災害補償保険法施行令第2条・第4条・第6条(調整率)、健康保険法第1条・第55条第1項 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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  • 労災保険給付の調整(厚年・健保・自賠責との調整
  • 頻出度A

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