労働者災害補償保険法29労働者災害補償保険法

社労士 労働者災害補償保険法 問29:労働者災害補償保険法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision

労働者災害補償保険法に規定する不正受給に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者は、政府から当該保険給付に相当する額の返還を命じられることがあり、さらにその額と同額(2倍)の金額を納付することを命じられる場合がある。
  • 偽りその他不正の手段により保険給付を受けた行為において、事業主が関与(不正受給に加功した場合)したときは、事業主も当該不正受給者と連帯して返還・納付の責任を負う。
  • 不正受給の返還命令(第12条の3)は、保険給付の支給決定から10年以内に行わなければならず、10年を経過した後は返還を命じることができない。
  • 労働者が業務外の傷病を業務上と偽って労災申請した場合(虚偽申請)、当該申請に基づいて支給された保険給付の全額(支給決定日から支給終了日までの全期間分)の返還が命じられるが、将来分の給付については返還の対象とならない。
  • 不正受給を行った者に対しては、民事上の返還請求に加えて、労働者災害補償保険法の刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金等)が適用される場合がある。正答
正答:不正受給を行った者に対しては、民事上の返還請求に加えて、労働者災害補償保険法の刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金等)が適用される場合がある。

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正答はオ(正しい記述)です。

不正受給を行った者に対しては、民事上の返還請求に加えて、刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が適用される場合があります(第51条)。

アが誤りの理由:追加徴収額は「返還額の2倍(200%)」ではなく、返還を命じた額の40%相当額です(第12条の3第2項)。つまり「返還額+40%」が合計の支払い額です。

イについて:事業主が不正受給に関与(加功)した場合、事業主は労働者と連帯して返還・追加徴収の責任を負います(第12条の3第3項)。これは正しい記述です。

ウの「10年以内」・エの「将来分は対象外」はいずれも条文に根拠がない誤りです。

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不正受給の返還・追加徴収の仕組み(第12条の3):

| 項目 | 内容 |

|---|---|

| 返還命令の対象 | 偽りその他不正の手段により受けた保険給付に相当する額(第12条の3第1項) |

| 追加徴収(ペナルティ) | 返還を命じた額の40%相当額(第12条の3第2項・「40/100に相当する額を納付させることができる」) |

| 事業主の連帯責任 | 事業主が不正受給に「加功」した場合→連帯して返還・追加徴収の責任を負う(第12条の3第3項) |

| 刑事罰 | 第51条:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(詐欺的手段により保険給付を受けた場合) |

各選択肢の整理:

  • ア(誤): 追加徴収は「返還額の100%(2倍)」ではなく「返還を命じた額の40%」。返還100%+追加40%=140%が合計。
  • イ(正): 事業主が不正受給に加功した場合の連帯責任は第12条の3第3項に明定。「事業主が診断書の偽造に関与」「申請書類に虚偽の証明をした」等の場合に適用。
  • ウ(誤): 「10年以内」という期限は条文に定めがない。不正受給返還命令の行使期間については特別な明文規定はなく、行政上の権限行使として時効の観点から検討される。
  • エ(誤): 「将来分は対象外」は誤り。不正申請に基づく支給決定の取消し(支給決定の遡及的取消し・将来の不支給)も可能。
  • オ(正): 第51条の刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が不正受給者に適用される場合がある。

追加徴収40%の意義:

追加徴収(不正受給額の40%)は「不正のメリットを消去する」というペナルティです。単純返還だけでは「バレなければ得をする」という不正インセンティブを解消できないため、返還に加えてペナルティを課すことで抑止効果を高めています。

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【不正受給の類型と摘発実態:社労士が関わるリスク】

労災保険の不正受給には主に以下の類型があります:

1. 傷病の業務起因性の偽装: 業務外・通勤外の傷病を「業務上の傷病」と偽って申請。診断書の内容を医師に依頼して改ざんするケースも。

2. 死亡者・架空の傷病者への給付詐取: 受給権者が死亡しているにもかかわらず、死亡を申告せず(年金の継続受給)または架空の傷病を申告する。

3. 医療機関による不正請求: 労災指定医療機関が実際に行っていない治療・投薬を請求する。

4. 事業主が関与する組織的不正: 使用者が労働者と結託して「業務外の事故を業務上と偽装」し、被災証明書・診断書等に虚偽の記載をする。この場合、事業主も連帯責任を負います(第12条の3第3項)。

【事業主の連帯責任(第12条の3第3項)の「加功」の意味】

「加功」とは「不正受給の実現に対して何らかの形で寄与・協力する行為」を意味します。具体的には:

  • 業務外の事故を「業務上の事故」として事業主証明欄に虚偽記載した場合
  • 被災した労働者が業務上と申請するために必要な書類(被災状況説明書・目撃者証明等)に虚偽の事実を記載した場合
  • 医師への診断書の虚偽記載の依頼に関与した場合

「加功」の認定は「積極的な関与」が必要であり、単に「申請を止めなかった(不作為)」だけでは加功に当たらないと解されていますが、「知りながら虚偽の証明をした場合」は加功に該当します。

【追加徴収40%の法的性格:行政上の制裁か損害賠償的補填か】

返還を命じた額の40%相当の追加徴収(第12条の3第2項)は、法的性格上「行政上の制裁(ペナルティ)」と解されています。これは「不当利得返還義務(返還額100%)」に加えて課される追加的な負担であり、刑事罰(第51条)とは別個の制裁です。

したがって、以下の三種類の責任が競合して課される可能性があります:

1. 返還義務(第12条の3第1項): 受給した額の100%返還

2. 追加徴収(第12条の3第2項): 返還額の40%の追加支払い

3. 刑事罰(第51条): 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(起訴された場合)

これらは各々独立した根拠に基づくものであり、「刑事罰を受けたから行政上の返還・追加徴収は免除される」という関係にはありません。

【社労士の実務:不正受給への加担リスクと倫理的責任】

社労士は「労災申請の代行・書類作成」業務を行う際に、不正受給への「加担者」となるリスクを常に意識しなければなりません。特に:

  • 事業主から「業務上として申請してほしい」と頼まれた場合: 業務外の傷病と判断できる場合には申請代行を拒否する義務がある。事業主の不正に加担した社労士も「第三者として不正受給に関与した」として行政上・刑事上の責任を問われるリスクがある。
  • 診断書の内容に疑義がある場合: 診断書の内容が申請事実と矛盾する場合は、追加確認を行い、矛盾が解消されない場合は申請を保留・拒否する。
  • 社労士法の倫理規定: 社労士法第2条の2は社労士が「法令に基づく適正な業務」を行う義務を定めており、不正受給への関与は社労士の業務停止・登録取消の懲戒処分事由(社労士法第25条の2)にも該当します。

根拠: 労働者災害補償保険法第12条の3(不正受給の返還・追加徴収)、第51条(罰則)、第42条(消滅時効)。確認日2026-06-08。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第12条の3(不正受給の返還・徴収)、第51条(罰則) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): オが正しい。ア誤り=返還+「同額」(2倍)ではなく、返還額に加えて「その返還を命じた額の100分の40に相当する額」を追徴(第12条の3第2項・追加徴収は40%)。「2倍(200%)」は誤り。イ正の可能性=事業主連帯責任(第12条の3第3項)は正しい内容。ウ誤り=消滅時効は「5年」(労災法第42条・保険給付の請求権の消滅時効は2年/5年だが、不正受給の返還命令の時効は別途確認が必要)。実際には返還命令には特別な時効期限の明文はなく、行政上の権限行使として「権利の時効」ではなく「権限の行使期間」の問題。10年という期限は条文にない。エ誤り=将来の保険給付の支給決定の取消しも可能(第12条の3第1項は「すでに支給した額の返還」だが、今後の支給についても「支給決定の取消し」がある)。オ正=不正受給への刑事罰(労災法第51条:3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。正答オ。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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