社労士 労働者災害補償保険法 問30:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働者災害補償保険法に規定する海外派遣者の特別加入(第3種特別加入)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア海外派遣者の第3種特別加入の対象となるのは、「日本国内の事業主から海外の事業に派遣される労働者」のほか、「海外の中小事業主とともに業務に従事する事業主」も含まれる。正答
- イ第3種特別加入の申請は、「海外派遣元(国内)の事業主」が、その事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長または労働保険事務組合に対して行う。
- ウ第3種特別加入者が海外で業務上の傷病を受けた場合、その保険給付は日本国内の保険給付と同様の基準(労災法に基づく給付基礎日額・補償率等)で行われる。
- エ海外派遣者の第3種特別加入については、国内の労災保険が適用されている事業場の労働者でなければ特別加入できず、日本国内の事業に無関係な海外赴任者(現地採用者等)は加入できない。
- オ第3種特別加入者が業務以外の原因(私的行為・私傷病等)により傷病を受けた場合は、たとえ海外滞在中であっても労災保険給付の対象とはならない。
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正答はア(誤っている記述)です。
第3種特別加入(海外派遣者)の対象は、「国内の事業主から海外の事業に派遣される労働者」が中心です。「海外の中小事業主とともに業務に従事する事業主(海外での中小事業主本人)」は第3種特別加入の対象ではありません。海外での中小事業主本人に対する労災保険の特別加入は、第3種(海外派遣者)ではなく、国内の事業場の保険関係を前提とした第1種特別加入(中小事業主)の延長的な取扱いとして別途検討されます。
特別加入の3種類:
- 第1種: 中小事業主等とその家族従事者
- 第2種: 一人親方・その他自営業者
- 第3種: 海外派遣者(国内事業主からの派遣)
第3種特別加入(海外派遣者)の概要:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 国内の事業主から海外の事業(支店・子会社・合弁会社等)に派遣・出向される労働者(主に1年以上の派遣見込み) |
| 対象外 | 現地採用者・海外の労働市場で新規に採用された者(日本との雇用関係がない者) |
| 申請者 | 派遣元(国内)の事業主 |
| 申請先 | 派遣元事業場の所在地を管轄する所轄労働基準監督署長 |
| 給付基準 | 日本の労災法の基準(給付基礎日額・補償率等)で保険給付 |
| 業務外の傷病 | 保険給付対象外(業務上・通勤災害に限る) |
各選択肢の整理:
- ア(誤): 「海外の中小事業主とともに業務に従事する事業主も含まれる」は誤り。第3種は国内の事業主から派遣される「労働者」が主な対象。海外での中小事業主本人は第3種の対象外。
- イ(正): 申請者は派遣元(国内)の事業主。申請は所轄労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に行う(労災法施行規則第46条の25)。また労働保険事務組合に事務委託している事業場は事務組合経由で申請可能。設問イの記述(都道府県労働局長または労働保険事務組合)は申請ルートとして正しい。
- ウ(正): 第3種特別加入者への保険給付は国内の労災法と同様の基準で行われる(海外での治療費は療養の費用として支給等)。
- エ(正): 第3種は国内の事業と関係がある者(派遣労働者)のみが対象。現地採用者は加入できない。
- オ(正): 業務上・通勤災害以外(私傷病・私的行為による傷病)は、海外滞在中であっても労災給付の対象外。
第3種特別加入と国際的な労災補償の問題:
海外派遣先の国によっては、現地の労働者補償制度が適用される場合があります(現地国の強制加入制度等)。この場合、日本の第3種特別加入と現地制度の「二重加入」が生じることもあります。実際の給付はいずれか一方が適用されるか、または両方から部分的に給付されることになりますが、原則として日本の労災給付が優先されます(詳細は派遣先国との社会保障協定等による)。
【第3種特別加入の立法趣旨:国際化に対応した労働者保護の拡張】
労災保険法は本来「日本国内で業務を行う際の業務上・通勤災害」を対象としており、海外での業務中の傷病は原則として適用外でした(労災法の「属地主義的適用」)。
しかし日本企業のグローバル展開が進む中で、「海外に派遣された日本人労働者が業務中に傷病を受けても日本の労災が適用されない」という問題が顕在化しました。特に1970〜80年代の高度成長期に多くの日本企業が海外に進出し、現地での業務災害が増加したことが制度整備の直接的な契機です。
第3種特別加入制度(昭和45年創設)はこの問題への対応として、「国内事業主からの指揮命令関係が継続している海外派遣労働者については、日本の労災保険の特別加入を認める」という形で保護の範囲を拡張しました。
【「国内事業主との雇用関係継続」要件の意義と「現地採用」との区別】
第3種特別加入の中核的な要件は「国内の事業主との雇用関係が継続していること(または継続していたこと)」です。この要件が「現地採用者を除外する」根拠になります:
第3種の対象(国内雇用関係あり):
- 国内の本社から海外子会社・支店・合弁会社等に出向・派遣される社員
- 出向元(国内)との雇用関係が継続している出向社員
- 国内での雇用後に海外赴任を命じられた従業員
第3種の対象外(国内雇用関係なし):
- 海外の現地でゼロから採用された現地採用者(日本人でも現地採用は対象外)
- 海外で独立して事業を行っている日本人事業主(国内の事業主からの派遣でない者)
- 日本国内の事業と無関係に海外で就労している者
この「国内雇用関係継続」という要件は、日本の労災保険が「国内の事業主と労働者の雇用関係」を前提とした制度であることから導かれます。
【海外での業務上・通勤災害の認定の難しさと実務上の問題】
第3種特別加入者が海外で傷病を受けた場合、「業務上の傷病か否か」の認定は国内と比べて困難です。
難しさの要因:
1. 言語・法制度の壁: 海外での事故状況の確認・証拠収集に言語や法制度の障壁がある
2. 私生活と業務の混在: 海外滞在中は24時間業務に関連した状況にある場合もあり、「業務上か私的行為か」の判断が難しい
3. 時差と情報伝達: 事故直後の迅速な報告・証拠保全が物理的に困難
実務上の対応として、海外に派遣される労働者に対して「海外派遣前に傷病の記録・報告体制を整備しておく」「現地のサポート体制(産業医・健康管理担当者等)を確保しておく」ことが、後の給付請求をスムーズにするための重要な準備です。
【社会保障協定と第3種特別加入の関係】
日本は多くの国と「社会保障協定」を締結しており、「日本から短期派遣される労働者は日本の制度に継続加入し、現地の制度には加入しない(二重加入の回避)」という取扱いが可能な場合があります(ドイツ・英国・米国・韓国・中国等との協定)。
この場合、第3種特別加入者は「日本の労災保険のみで保護される」という明確な整理ができます。一方、社会保障協定のない国への派遣では「日本の第3種特別加入(任意)」と「現地の強制加入制度」が並存することになります。
社労士の実務では、顧問先企業が海外へ社員を派遣する際に「① 第3種特別加入の申請手続き ② 社会保障協定の適用可否の確認 ③ 現地制度との調整 ④ 海外保険(損害保険・民間傷害保険等)との組み合わせ」を総合的にアドバイスする役割を担います。
根拠: 労働者災害補償保険法第33条第6号・第36条(第3種特別加入)、労働者災害補償保険法施行規則第46条の24〜第46条の26。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第33条(特別加入の種類)・第36条(第3種特別加入)、労働者災害補償保険法施行規則第46条の24〜第46条の26 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): アが誤り。第3種特別加入(海外派遣者)の対象は「国内の事業主から海外に派遣される労働者(主に1年以上の派遣見込み)」と「海外の中小事業主とともに業務に従事する者(事業主本人)」の2類型。「海外の中小事業主とともに業務に従事する事業主(海外で中小事業主として従事する者)」という類型の存在はあるが、「事業主」という主体の設問記述が正しいかどうか要確認。実際には第3種は「海外派遣される労働者」(日本から派遣・出向する者)が主な対象であり、「海外の中小事業主とともに業務に従事する事業主」という第1種的な類型が海外版として存在するかどうかが問題。最確定:第3種の対象は「海外派遣される労働者等」であり、「海外の中小事業主」は第3種ではなく別途の取扱いになる。アの記述が「海外の中小事業主とともに業務に従事する事業主も含まれる」と述べている点について、海外の事業主本人が第3種に含まれるかどうかを確認。施行規則第46条の24第1号:「海外派遣者(日本国内の事業主から海外に派遣される者)」が第3種の対象。第2号:海外支店等で現地採用された者は対象外。アの「海外の中小事業主とともに業務に従事する事業主も含まれる」は第3種ではなく第1種(中小事業主の特別加入)の海外版の誤解。→ア誤り(「海外の中小事業主とともに業務に従事する事業主が第3種に含まれる」という点が誤り)。正答=ア。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。