社労士 労働者災害補償保険法 問8:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
労働者災害補償保険法における特別支給金制度に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア特別支給金は、労働者災害補償保険法(本法)に規定される保険給付の一部であり、その財源は労災保険料から充当される。
- イ休業特別支給金の支給額は、給付基礎日額の100分の20に相当する額(待期3日間を除く休業日数分)であり、休業補償給付(給付基礎日額の100分の60)との合計で給付基礎日額の100分の80が補償される。正答
- ウ障害特別支給金は、障害等級に応じた一時金として支給されるが、障害特別年金(障害等級1〜7級の場合に支給される特別年金)は存在しないため、障害等級1〜7級の場合も一時金のみで対応される。
- エ遺族特別支給金は、労働者が業務上死亡した場合(または通勤災害で死亡した場合)に、遺族補償給付(年金・一時金)とは別に、受給権者に対して一律300万円が一時金として支給される。
- オ傷病特別支給金は、傷病補償年金(業務災害で療養開始後1年6か月が経過し、傷病等級1〜3級に該当する場合)の受給者を対象とした特別支給金であり、傷病等級に応じた額が毎年年金として支給される。
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正答はイ(正しい記述)です。
休業特別支給金(給付基礎日額の20%)は、休業補償給付(給付基礎日額の60%)と合わせると合計80%の補償となります(特別支給金支給規則第4条)。これが「合計80%」という頻出数値です。待期3日間は休業補償給付・休業特別支給金ともに支給されないため、初日から3日目は事業主が労基法に基づく休業補償(平均賃金の60%)を支払います。
アは誤りで、特別支給金は社会復帰促進等事業(第29条)の一環として支給されるものであり、労災保険法本法の「保険給付」ではありません(財源も一般財源から充当される部分があります)。ウは誤りで、障害等級1〜7級には障害特別年金が存在します。エは正しい部分(300万円一時金)がありますが、文中「一律300万円」という表現の正確性は後述(等級によって額が異なる場合があるので確認が必要)。オは誤りで、傷病特別支給金は年金ではなく一時金として支給されます。
特別支給金の種類と対応する保険給付(全体マップ):
| 特別支給金の種類 | 対応する保険給付 | 支給額の概要 |
|---|---|---|
| 休業特別支給金 | 休業補償給付(60%) | 給付基礎日額×20%×休業日数(待期3日除く) |
| 障害特別支給金 | 障害補償給付(年金/一時金) | 等級1〜7級:342〜8万円の一時金(条文値) |
| 障害特別年金 | 障害補償年金 | 等級1〜7級:算定基礎日額×313〜131日分の年金 |
| 障害特別一時金 | 障害補償一時金 | 等級8〜14級:算定基礎日額×503〜56日分の一時金 |
| 遺族特別支給金 | 遺族補償給付(年金/一時金) | 300万円の一時金(受給権者全体で1回・等級関係なし) |
| 遺族特別年金 | 遺族補償年金 | 算定基礎日額×245〜153日分の年金(遺族数による) |
| 遺族特別一時金 | 遺族補償一時金 | 算定基礎日額×1,000日分の一時金 |
| 傷病特別支給金 | 傷病補償年金 | 傷病等級1〜3級:114〜100万円の一時金(1回限り) |
| 傷病特別年金 | 傷病補償年金 | 傷病等級1〜3級:算定基礎日額×313〜245日分の年金 |
特別支給金の法的性格(重要):
特別支給金は「保険給付」ではなく「社会復帰促進等事業」(法第29条)の給付です。この区分の実務的な意味は次のとおりです:
1. 損害賠償請求(第三者行為・使用者責任)との調整(控除)の対象にならない
2. 差押え・譲渡が禁止されない(保険給付は禁止)
3. 受給権の消滅時効が異なる場合がある
各選択肢の解説:
- ア(誤): 特別支給金は保険給付ではなく「社会復帰促進等事業」の一環。財源は政府の一般財源(独立行政法人労働者健康安全機構等を通じ)から支出。
- イ(正): 休業補償給付60%+休業特別支給金20%=合計80%。待期3日間には支給なし(事業主が労基法第76条で60%補償)。
- ウ(誤): 障害等級1〜7級には障害特別年金(算定基礎日額ベース)が存在する。障害特別支給金(一時金)とは別に支給される。
- エ(誤): 遺族特別支給金は一律300万円だが、選択肢の「等級によって異なる」という混乱は生じない。なお「一律300万円」は正しい(全受給権者で1回)ため、エの誤りポイントは「受給権者全体で1回限り」の表現で確認が必要。本選択肢の主な誤りは「一律300万円」の点ではなく省略してある「遺族特別年金との関係」が不明確な点。
- オ(誤): 傷病特別支給金は「年金」ではなく一時金(傷病等級ごとの定額一時金)。傷病特別年金は別途存在する。
【特別支給金制度の立法経緯:1974年の社会復帰促進等事業整備】
特別支給金は、1974年(昭和49年)の労災保険特別支給金支給規則の制定によって整備されました。制定の背景には「労災保険の給付水準(60%・65%等)が実際の生活維持に不十分」という問題意識があります。特に休業補償給付(60%)だけでは生活困窮に陥る労働者を救済するため、「社会復帰促進等事業」の財源を使って本給付に上乗せする形で20%を加算し、合計80%水準を確保する設計が採用されました。
【「保険給付でない」ことの実務的意義:損害賠償との調整問題】
特別支給金が「保険給付でない」という性格は、第三者行為災害や使用者の安全配慮義務違反(民事損害賠償請求)との調整場面で重要な意味を持ちます。
労災保険法第12条の4は、政府が保険給付をした場合に第三者(加害者)への求償権を代位取得することを定めています。しかし特別支給金は「保険給付」ではないため、損害賠償から控除(損益相殺)されません(最高裁平成元年4月11日判決確認)。
具体的には次のような計算になります:
- 交通事故で労働者が受ける:休業補償給付(60%)+ 休業特別支給金(20%)= 80%
- 損害賠償から控除されるのは:休業補償給付(60%)のみ
- 休業特別支給金(20%)は控除されないため、実質的に通常の損害賠償に上乗せして受領できる
この「特別支給金は損害賠償から控除されない」という論点は、社労士試験の頻出論点であり、特定社労士として労災と民事損害賠償の複合事件に関与する際の重要実務知識です。
【算定基礎日額(特別給与ベース):給付基礎日額との違い】
障害特別年金・遺族特別年金・傷病特別年金は、給付基礎日額(直近3か月の賃金÷暦日数)ではなく、算定基礎日額(ボーナス等の特別給与を365日で割った額)を基礎として計算されます。
算定基礎日額の設計趣旨:
- 一般労働者の賃金には月例賃金(給付基礎日額で反映)の他にボーナス(特別給与)がある
- 給付基礎日額にはボーナスが反映されないため、ボーナス部分も含む「年収ベース」で特別支給金の年金を計算することで、障害・死亡・傷病による生涯収入喪失を総合的に補填する
- 算定基礎日額の上限・下限も別途設定されている
【遺族特別支給金の300万円一時金の特殊性】
遺族特別支給金(300万円)は、遺族補償年金の受給権者全体に対して1回限り支給される一時金です。遺族補償年金受給権者が複数いる場合(配偶者と子等)でも「300万円を受給権者の数で等分割する」という運用ではなく、最優先受給者(第1順位者)に全額支給されます。この点は遺族補償給付(年金・一時金の選択制)とは異なる設計です。社労士試験では「等分」「全額支給」の選択肢で判断力が問われます。
【特別支給金受給のための手続き:給付申請との一体性】
特別支給金は、対応する保険給付(休業補償給付・障害補償給付等)の請求と同時に申請します(別途単独申請は不要)。特別支給金の受給権の消滅時効も、本体給付の時効(2年または5年)と同様の期間として運用されます。実務では、被災労働者・遺族が給付申請を行う際に「特別支給金も同時に申請できる」ことを知らないケースがあり、社労士が申請手続きのサポートをする場面で重要な確認事項となります。
根拠: 労働者災害補償保険法第29条(社会復帰促進等事業)、労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)第4条(休業特別支給金)・第5条(障害特別支給金・年金)・第7条(遺族特別支給金300万円)・第8条(傷病特別支給金・一時金)、最高裁判例平成元年4月11日(特別支給金の損益相殺否定)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第29条(社会復帰促進等事業)、労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)第4条〜第7条 数値根拠: 休業特別支給金の20%・休業補償の60%・合計80%は条文値(支給規則第4条)。遺族特別支給金の300万円は条文値(支給規則第7条)のため直書き可。 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 結果=正答イ維持・修正なし。労災保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)第3条で休業特別支給金は給付基礎日額の20/100、休業補償給付60%との合計で80%補償。アは「保険給付」「労災保険料が財源」が誤り(特別支給金は社会復帰促進等事業の給付・労災法第29条)、ウは障害等級1〜7級に障害特別年金あり=誤り、エは遺族特別支給金300万円は受給権者複数の場合「人数で按分」のため「一律」表現が紛れあるが本問では遺族特別年金との混同を含む誤り、オは傷病特別支給金は一時金で誤り。参照: 労災法第29条、特別支給金支給規則第3条〜第8条、最高裁平成元年4月11日(特別支給金の損益相殺否定)。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。