問題
労働者災害補償保険法における特別支給金制度に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はイ(正しい記述)です。
休業特別支給金(休業給付基礎日額の20%・第4日目から)は、休業補償給付(給付基礎日額の60%)と合わせると合計80%の補償となります(特別支給金支給規則第3条第1項)。これが「合計80%」という頻出数値です。待期3日間は休業補償給付・休業特別支給金ともに支給されないため、業務災害では初日から3日目は事業主が労基法に基づく休業補償(平均賃金の60%)を支払います。
アは誤りで、特別支給金は社会復帰促進等事業(第29条)の一環として支給されるものであり、「保険給付」ではありません。ウは誤りで、障害等級1〜7級には障害特別年金が存在します。エは誤りで、遺族特別支給金は300万円ですが、支給を受ける遺族が2人以上いるときは300万円をその人数で除した額です(支給規則第5条第3項)。オは誤りで、傷病特別支給金は年金ではなく一時金として支給されます。
特別支給金の種類と対応する保険給付(全体マップ):
| 特別支給金の種類 | 対応する保険給付 | 支給額の概要 |
|---|---|---|
| 休業特別支給金 | 休業補償給付(60%) | 給付基礎日額×20%×休業日数(待期3日除く) |
| 障害特別支給金 | 障害補償給付(年金/一時金) | 等級1〜14級:342万円〜8万円の一時金 |
| 障害特別年金 | 障害補償年金 | 等級1〜7級:算定基礎日額×313〜131日分の年金 |
| 障害特別一時金 | 障害補償一時金 | 等級8〜14級:算定基礎日額×503〜56日分の一時金 |
| 遺族特別支給金 | 遺族補償給付(年金/一時金) | 300万円の一時金(支給を受ける遺族が2人以上なら人数で等分) |
| 遺族特別年金 | 遺族補償年金 | 算定基礎日額×245〜153日分の年金(遺族数による) |
| 遺族特別一時金 | 遺族補償一時金 | 算定基礎日額×1,000日分の一時金 |
| 傷病特別支給金 | 傷病補償年金 | 傷病等級1〜3級:114〜100万円の一時金(1回限り) |
| 傷病特別年金 | 傷病補償年金 | 傷病等級1〜3級:算定基礎日額×313〜245日分の年金 |
特別支給金の法的性格(重要):
特別支給金は「保険給付」ではなく「社会復帰促進等事業」(法第29条)の給付です。この区分の実務的な意味は次のとおりです:
1. 損害賠償請求(第三者行為・使用者責任)との調整(控除)の対象にならない
2. 保険給付の請求ではなく「申請」により支給され、申請期限が支給規則で定められている(例:遺族特別支給金は死亡の日の翌日から5年以内)
各選択肢の解説:
- ア(誤): 特別支給金は保険給付ではなく「社会復帰促進等事業」(第29条)の一環として支給される。
- イ(正): 休業補償給付60%+休業特別支給金20%=合計80%。待期3日間には支給なし(業務災害では事業主が労基法第76条で60%補償)。
- ウ(誤): 障害等級1〜7級には障害特別年金(算定基礎日額ベース)が存在する。障害特別支給金(一時金)とは別に支給される。
- エ(誤): 遺族特別支給金は300万円だが、支給を受ける遺族が2人以上ある場合は300万円をその人数で除した額(支給規則第5条第3項)。「1人につき300万円」は誤り。
- オ(誤): 傷病特別支給金は「年金」ではなく一時金(傷病等級ごとの定額一時金)。傷病特別年金は別途存在する。
【特別支給金制度の根拠:法律ではなく省令】
特別支給金の種類・額・申請期限は、労災保険法の本則ではなく、労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)という省令で定められています。法律上の位置付けは第29条の社会復帰促進等事業の一つで、保険給付に上乗せする形で支給されます。休業補償給付(休業給付基礎日額の60%)に休業特別支給金(同20%・支給規則第3条第1項)を加えて合計80%となるのはこのためです。
【「保険給付でない」ことの実務的意義:損害賠償との調整問題】
特別支給金が「保険給付でない」という性格は、第三者行為災害や使用者の安全配慮義務違反(民事損害賠償請求)との調整場面で重要な意味を持ちます。
労災保険法第12条の4は、政府が保険給付をした場合に第三者(加害者)への求償権を代位取得することを定めています。しかし特別支給金は「保険給付」ではないため、損害賠償から控除(損益相殺)されないとされています(判例)。
具体的には次のような計算になります:
- 交通事故で労働者が受ける:休業補償給付(60%)+ 休業特別支給金(20%)= 80%
- 損害賠償から控除されるのは:休業補償給付(60%)のみ
- 休業特別支給金(20%)は控除されないため、実質的に通常の損害賠償に上乗せして受領できる
この「特別支給金は損害賠償から控除されない」という論点は、社労士試験の頻出論点であり、特定社労士として労災と民事損害賠償の複合事件に関与する際の重要実務知識です。
【算定基礎日額(特別給与ベース):給付基礎日額との違い】
障害特別年金・遺族特別年金・傷病特別年金(と障害特別一時金・遺族特別一時金)は、給付基礎日額(平均賃金相当額)ではなく、算定基礎日額を基礎として計算されます(支給規則第6条)。
算定基礎日額の仕組み:
- 算定基礎年額=負傷又は発病の日以前1年間に支払われた特別給与(ボーナス等)の総額(第6条第1項)
- 上限は2つ:給付基礎日額×365の100分の20相当額を超えるときはその額(同条第3項)、150万円を超えるときは150万円(同条第5項)
- 算定基礎日額=算定基礎年額÷365(同条第6項。1円未満は切上げ=同条第7項)
- 給付基礎日額にはボーナスが反映されないため、ボーナス部分を別の物差しで上乗せする設計になっている
【遺族特別支給金の300万円一時金の特殊性】
遺族特別支給金(300万円)は、遺族(補償)給付の受給権者の順位に準じた遺族に支給される一時金です。支給を受ける遺族が2人以上ある場合は、300万円をその人数で除して得た額がそれぞれに支給されます(支給規則第5条第3項)。社労士試験では「等分」か「1人につき300万円」かの選択肢で判断力が問われます。
【特別支給金受給のための手続き:給付申請との一体性】
特別支給金は、実務上、対応する保険給付(休業補償給付・障害補償給付等)の請求と同時に申請します。特別支給金の申請期限は支給規則で種類ごとに定められています(例:遺族特別支給金は死亡の日の翌日から5年以内)。実務では、被災労働者・遺族が給付申請を行う際に「特別支給金も同時に申請できる」ことを知らないケースがあり、社労士が申請手続きのサポートをする場面で重要な確認事項となります。
根拠: 労働者災害補償保険法第29条(社会復帰促進等事業)、労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)第3条(休業特別支給金)・第4条(障害特別支給金)・第5条(遺族特別支給金300万円・2人以上は等分)・第5条の2(傷病特別支給金)。
- 労働者災害補償保険法第12条の4・第29条e-Govで原文を読む
- 労働基準法第76条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第29条(社会復帰促進等事業)、労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)第3条(休業特別支給金)・第4条(障害特別支給金)・第5条(遺族特別支給金)・第5条の2(傷病特別支給金) 数値根拠: 休業特別支給金の20%は支給規則第3条第1項、遺族特別支給金の300万円(2人以上の場合は人数で除した額)は同規則第5条第3項の条文値。 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

