労働者災害補償保険法9労働者災害補償保険法

社労士 労働者災害補償保険法 問9:労働者災害補償保険法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08

労働者災害補償保険法における遺族補償年金に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 遺族補償年金の受給資格者の順位は、①配偶者(妻または夫)②子③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹の順であり、同順位の者が複数いる場合は全員が受給権者となる(ただし年金は筆頭受給権者に代表して支給される)。正答
  • 夫・父母・祖父母・兄弟姉妹の男性が遺族補償年金の受給資格者となるためには、労働者の死亡時に一定の年齢要件(55歳以上)または一定の障害状態にある者に限られ、これらの者は60歳になるまで年金の支給が停止(若年停止)される。
  • 転給とは、遺族補償年金の受給権者が死亡・失権等によりその受給権を失った場合に、次順位以降の受給資格者がいるときは、次順位者が新たに受給権者となる制度をいう。
  • 妻(配偶者・女性)については若年停止の規定は適用されず、労働者の死亡時に年齢・障害状態に関係なく受給資格者となる。ただし、妻が再婚した場合は失権事由に該当する。
  • 遺族補償年金を受ける権利は、受給権者が死亡・再婚(事実婚を含む)・離縁・生計維持関係の消滅等の失権事由に該当したときに消滅し、失権事由に該当した時点から次順位の受給権者への転給(転給要件を満たす場合)が発生する。
正答:遺族補償年金の受給資格者の順位は、①配偶者(妻または夫)②子③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹の順であり、同順位の者が複数いる場合は全員が受給権者となる(ただし年金は筆頭受給権者に代表して支給される)。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

正答はア(誤っている記述)です。

アは「同順位の者が複数いる場合は全員が受給権者となる(ただし年金は筆頭受給権者に代表して支給される)」としていますが、正確には同順位の者が複数いる場合は全員が受給権者となり、年金は「均等に按分(人数で割る)」して支給されます(法第16条の3第1項)。「筆頭受給権者に代表して支給」は誤り(条文上「筆頭受給権者」という概念はなく、代表者選任は労災則第13条の請求手続上の便宜措置にとどまり、年金の額の決定は均等按分が原則)。

イは正しく、夫・父母・祖父母・兄弟姉妹(男性等)は55歳以上または障害状態が必要であり、60歳まで若年停止があります。ウは正しく、転給とは次順位者への承継です。エは正しく、妻(女性の配偶者)には若年停止は適用されません(年齢・障害不問)。オは正しく、失権事由の列挙内容(再婚・事実婚含む・生計維持関係消滅等)は条文どおりです。

標準試験対策の基準レベル

遺族補償年金の受給資格者の順位と要件(法第16条の2):

| 順位 | 受給資格者 | 年齢・障害要件 | 若年停止 |

|---|---|---|---|

| 1 | | 要件なし(年齢・障害問わず) | なし |

| 1 | | 死亡時55歳以上または障害状態 | あり(60歳まで停止) |

| 2 | | 18歳未満または障害状態 | なし |

| 3 | 父母 | 55歳以上または障害状態 | あり(60歳まで停止) |

| 4 | | 18歳未満または障害状態 | なし |

| 5 | 祖父母 | 55歳以上または障害状態 | あり(60歳まで停止) |

| 6 | 兄弟姉妹 | 18歳未満・55歳以上・障害状態のいずれか | 55歳以上の男性等:あり(60歳まで) |

「若年停止」のポイント:

  • 対象: 夫・父母・祖父母・兄弟姉妹のうち死亡時55歳以上の者(就労可能と判断される60歳未満)
  • 停止期間: 60歳に達するまでの間
  • 停止後: 60歳到達月の翌月から支給再開

同順位者が複数いる場合(法第16条の3):

同順位の受給資格者が複数いる場合、全員が受給権者となり、年金額は人数で均等割り(按分)されます。「代表者に全額支給」ではありません(アの誤りポイント)。

失権事由(法第16条の5):

  • 死亡
  • 婚姻(事実婚・内縁関係含む)
  • 養子縁組による被扶養関係の消滅(離縁で独立した場合等)
  • 子・孫・兄弟姉妹が18歳到達後の最初の3月31日を経過(障害がある場合を除く)
  • 障害状態に該当しなくなった場合(障害状態が消滅)
  • 生計維持関係の消滅(独立して生計を立てた等)

各選択肢の解説:

  • ア(誤・正答): 同順位受給権者が複数の場合、年金は均等割りで按分支給される。「代表者に全額」は誤り。
  • イ(正): 夫・父母・祖父母(55歳以上)の若年停止規定は条文値として正確。
  • ウ(正): 転給の定義は法第16条の4に規定。次順位者への受給権承継。
  • エ(正): 妻(女性配偶者)は年齢・障害要件なし。若年停止もなし。
  • オ(正): 失権事由の列挙は条文に基づく正確な記述。事実婚も再婚として失権。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【遺族補償年金の受給資格者設計の背景:「扶養概念」の現代的変容】

遺族補償年金の受給資格者設計は、「労働者の稼得能力に依存して生活していた家族を保護する」という扶養概念を基礎としています。妻(女性配偶者)は年齢・障害要件なしで受給資格を持つのは、従来の「専業主婦モデル(夫の収入に依存する妻)」を前提とした設計の名残です。一方、夫(男性配偶者)については「就労可能年齢(55歳未満)なら就労して収入を得られるはず」という考え方から55歳以上の要件が設けられ、60歳まで若年停止が課されています。

この設計は現代の男女共同参画・共働き標準社会とのズレが指摘されており、社労士試験受験生からも「なぜ妻は要件なしで夫は55歳以上なのか」という疑問が多く寄せられます。制度改正の議論は続いていますが、令和8年度試験では現行制度が出題対象であり、「妻=要件なし、夫=55歳以上または障害」という非対称性を正確に覚えることが合格水準の知識です。

【若年停止の実務的機能と60歳到達後の扱い】

若年停止(施行規則第15条)は、55歳以上60歳未満の夫・父母・祖父母・兄弟姉妹を対象に、60歳に達するまで年金の支給を停止する制度です。

若年停止の実務上の注意点:

1. 若年停止中は「支給停止」であり受給権自体は消滅しない(失権ではない)

2. 60歳到達月の翌月から自動的に支給再開(改めて申請不要)

3. 若年停止期間中に受給権者が失権した場合(再婚等)は、停止が解除されることなく失権

【転給の発動条件と実務的な複雑性】

転給(法第16条の4)は、受給権者が失権した後に次順位の受給資格者がいる場合に発動します。ただし転給には重要な制限があります:

1. 一度失権した受給資格者は転給による受給権者にはなれない(同順位・上位者が失権してから下位者に転給するが、一度失権した者は復活しない)

2. 転給後の年金額の再計算: 転給後の受給権者数に合わせて年金額が計算される

3. 最終転給先が全員失権した場合: 遺族補償年金から遺族補償一時金(1,000日分)に切り替わる制度がある

実務上、遺族が複数いる場合の転給の連鎖・年金額の変動は非常に複雑であり、社労士が遺族補償申請のサポートを行う際に正確な計算と制度説明が求められます。

【遺族補償給付と損害賠償の調整(第三者行為災害)】

交通事故等で業務上死亡した場合、遺族は「労災保険の遺族補償給付(年金/一時金)」と「第三者(加害者・使用者)への民事損害賠償請求(逸失利益・慰謝料等)」の両方を受けられる場合があります。

調整のルール(法第12条の4・最高裁判例):

  • 遺族補償年金(本体給付): 損害賠償から控除(損益相殺)の対象となる
  • 遺族特別支給金(特別支給金300万円): 控除の対象にならない(最高裁平成元年4月11日)
  • 慰謝料: 労災保険は慰謝料を給付しないため、損害賠償で全額請求可能

社労士の実務では、業務上死亡事案で遺族から「労災申請と会社への損害賠償、どちらを先にすべきか」という相談を受けることがあります。実務上は「まず労災申請→給付状況を踏まえて損害賠償請求額を調整」というフローが一般的ですが、弁護士との役割分担(行政不服申立は社労士、民事訴訟は弁護士)も重要な実務知識です。

根拠: 労働者災害補償保険法第16条の2(受給資格者・順位)・第16条の3(複数受給権者の按分)・第16条の4(転給)・第16条の5(失権)・第16条の6(一時金への切替)、同法施行規則第15条(若年停止)・第15条の2。確認日2026-04-10。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第16条の2〜第16条の6(遺族補償年金・失権・転給)、同法施行規則第15条・第15条の2(若年停止・受給権者の順位) 数値根拠: 若年停止55歳・60歳は条文値(施行規則第15条)のため直書き可。 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 結果=正答ア維持。労災法第16条の3第1項により同順位の受給権者が複数の場合は人数で「均等按分」して支給(条文上「筆頭受給権者に代表して全額」という概念はない)。労災則第13条の「代表者選任」は請求手続上の便宜であり額の決定原理ではない。アの記述は誤り=正答ア。イの55歳以上要件・若年停止60歳まで(法第16条の2第2項・施行規則第15条)、ウの転給(法第16条の4)、エの妻の年齢障害不問・再婚失権、オの失権事由列挙(法第16条の5)はいずれも条文どおり正しい。標準解説のアの説明文も本監修で「均等按分」を強調するよう補強済。参照: 労災法第16条の2〜第16条の6、労災則第13条/第15条。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

関連論点

遺族補償年金(受給資格者の順位・若年停止・転給頻出度A

労働者災害補償保険法の他の問題

1
労働者災害補償保険法
2
労働者災害補償保険法
3
労働者災害補償保険法
4
労働者災害補償保険法
5
労働者災害補償保険法
6
労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険法の一覧

科目別に解いて、社労士に合格

10科目のオリジナル問題。各問に根拠条文とAI解説(3レベル)付き・閲覧無料。