社労士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

社労士 社会保険一般常識 問11|船員保険の独自給付と健保統合後の制度構造

問題

社労士 | 社会保険一般常識 | 令和9年度(2027年度)試験対応・数値確認日 2026-10-01

船員保険に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。

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答え合わせ

正解は ウ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はウ(正しい記述)です。

2010年(平成22年)1月の改正により、船員保険の職務上疾病・年金部門は労災保険に統合されましたが、船員保険自体は廃止されておらず、独自給付が残っています。代表的な独自給付が「行方不明手当金」です。職務上の事由により1か月以上行方不明となった被保険者の被扶養者に対し、行方不明となった日の翌日から3か月を限度に支給されます(船員保険法第93条〜第95条)。

アは誤り(船員保険は廃止されていない)、イは誤り(外国籍船舶に乗り組む者も対象になりうる)、エは誤り(保険者は全国健康保険協会)、オは誤り(改正前は船員保険が独自給付を行っており、改正で労災に統合された)。

2010年改正による船員保険の再編(重要整理):

部門改正前改正後(2010年1月〜)
職務上疾病・年金部門船員保険の独自給付労働者災害補償保険に統合(労災保険の給付に上乗せする船員保険独自の給付は存続)
職務外疾病部門船員保険船員保険(保険者は全国健康保険協会)として存続
独自給付(残存)—行方不明手当金・休業手当金・障害年金等の上乗せ給付(船員保険法第4章第3節)

保険者(エの根拠):

改正後の船員保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)です(船員保険法第4条)。厚生労働大臣ではありません。

被保険者の範囲(イの根拠):

「船員法第1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者」が被保険者(船員保険法第2条)。国籍要件は問わないため、外国籍船舶に乗り組む場合でも日本の船舶所有者に使用される船員であれば対象となりえます。

行方不明手当金(ウの根拠・正解):

  • 支給対象: 被保険者が職務上の事由により行方不明となったとき(行方不明の期間が1月未満は除く・第93条)
  • 受給者: 被保険者の被扶養者
  • 支給期間: 行方不明となった日の翌日から起算して3月を限度(第95条)
  • 給付水準: 1日につき行方不明となった当時の標準報酬日額相当額(第94条)
  • 健康保険にはない船員特有の海上リスクに対応した独自給付

選択肢オの誤りの核心:

改正前は職務上疾病・負傷も船員保険が独自に給付していました。改正で労災保険に統合されたため、「改正前から労災保険の適用を受けていた」は誤りです。

【船員保険の歴史的位置づけと「海上労働の特殊性」】

船員保険は1940年(昭和15年)に創設された日本最初期の社会保険の一つです。当時、船員は陸上労働者と異なる特殊な職場環境(船内居住・長期航海・行方不明リスク・海難事故)に置かれていたため、労災・健康・年金・雇用の機能を一体化した総合保険として設計されました。

2010年改正の背景には「社会保険制度の一元化・効率化」という政策目標がありました。しかし、船員特有のリスク(行方不明・遭難・艀の特殊労働)は一般の労災・健保の枠組みでは十分にカバーできないため、以下の独自給付が現在も船員保険法の下で存続しています。

【現行船員保険の独自給付一覧】

給付名支給要件内容根拠条文
行方不明手当金職務上の事由により被保険者が1月以上行方不明となったとき被扶養者に標準報酬日額相当額・最長3か月第93条〜第96条
休業手当金職務上の事由等による療養で労務不能労災保険の休業補償給付への上乗せ第85条・第86条
障害年金・障害手当金、遺族年金 等職務上の事由等による障害・死亡労災保険の給付への上乗せ第87条〜第102条

【実務的視点:社労士が扱う船員保険の境界問題】

社労士実務における船員保険の論点は主に以下の3点です。

1. 労災保険との適用区分:

2010年以降、船員の「職務上」事故は労災保険が適用されます。ただし「職務上」と「職務外」の境界(船内での私的行為中の事故等)は実務上の判断が必要です。労災認定の「業務遂行性・業務起因性」の判断と、船員保険法の「職務上」の解釈は概念的に対応しますが、完全に同一ではない点に注意が必要です。

2. 行方不明手当金の実務フロー:

被扶養者が協会けんぽ(船員保険部)に支給申請します。支給期間は行方不明となった日の翌日から3か月が限度で、その後は死亡の推定等に応じて遺族に関する給付の手続きに移行します。社労士はこれらの手続きを代理できます。

3. 二重適用の排除:

改正後も「船員保険の被保険者」として登録される仕組みは継続しており、健康保険の被保険者ではなく「船員保険の被保険者」として管理されます(年金は厚生年金保険の被保険者)。したがって、船員が陸上事業所に転籍する際には船員保険の資格喪失と健保の資格取得が処理されます。

【社労士試験での頻出ポイントと上位資格への接続】

社労士試験では「2010年改正で何が統合されて何が残ったか」の整理が問われます。特に「行方不明手当金」「遭難の場合の特別規定」「保険者が協会けんぽ」の3点は選択式・択一式の双方で出題実績があります。

FP・医療関係者向けには「海上勤務の会社員の健康保険加入形態(健保ではなく船員保険の協会けんぽ管掌)」「労災事故発生時の手続きが一般の陸上労働者と異なる」点を理解しておく必要があります。また、船員保険の「職域保険」としての性格は、社会保険全体の体系理解(職域保険と地域保険の対比)にも接続します。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 船員保険法第2条(被保険者)・第93条(行方不明手当金の支給要件・職務上の事由・1月未満は除く)・第94条(額=行方不明当時の標準報酬日額相当額)・第95条(支給期間=行方不明となった日の翌日から3月を限度) 改正根拠: 平成22年1月1日施行「船員保険法等の一部を改正する法律(平成19年法律第30号)」 保険者: 船員保険法第4条(全国健康保険協会が保険者) 一次ソース: e-Gov 船員保険法 https://laws.e-gov.go.jp/law/314AC0000000073 ・協会けんぽ 行方不明手当金 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/senpo/ 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。