問題
高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はオ(正しい記述)です。
後期高齢者医療制度の一部負担金は、原則1割・現役並み所得者は3割です。令和4年10月の改正により、現役並み所得者と一般所得者の間に「一定以上の所得を有する者(2割負担)」が新設されました(高齢者医療確保法第67条第1項第2号)。
アは誤りです。前期高齢者(65〜74歳)は、それぞれが加入する医療保険(健保・国保等)の被保険者のままであり、後期高齢者医療広域連合の被保険者にはなりません。イは誤りです。保険料率の決定は広域連合が行い、市町村ではありません(徴収のみ市町村)。ウは誤りです。前期高齢者財政調整は「加入割合が高い保険者が交付金を受け取る(国保側)・低い保険者が納付金を拠出する(健保側)」構造で、記述と逆です。エは誤りです。保険料率は都道府県の広域連合ごとに異なります。
高齢者医療確保法の2本立て構造:
| 制度 | 対象年齢 | 保険者 | 財政調整の有無 |
|---|---|---|---|
| 前期高齢者財政調整 | 65〜74歳 | 各自加入の医療保険者(健保・国保等) | あり(保険者間の拠出・交付) |
| 後期高齢者医療制度 | 75歳以上(65歳以上の障害認定者含む) | 後期高齢者医療広域連合 | 公費・支援金・保険料の3本柱 |
前期高齢者財政調整(ウの根拠・誤りの詳細):
前期高齢者(65〜74歳)は、職域保険(健保組合・協会けんぽ)と地域保険(国民健康保険)の間で加入構成が大きく異なります。退職後に国保に移行する人が多いため、国保側に前期高齢者が集中します。
- 加入割合が高い保険者(主に国保): 前期高齢者交付金を受け取る
- 加入割合が低い保険者(主に健保組合・協会けんぽ): 前期高齢者納付金を拠出する
ウの記述は「低い→受け取り・高い→納付」と逆に述べているため誤りです。
後期高齢者医療の財源構成(エの根拠・誤りの詳細):
後期高齢者医療の財源は、被保険者の保険料だけでは賄われません。おおむね以下の3本柱で構成されます。
- 公費(国・都道府県・市町村): 約50%
- 後期高齢者支援金(現役世代の医療保険から): 約40%
- 後期高齢者自身の保険料: 約10%
保険料率は都道府県の広域連合ごとに定められ、広域連合によって異なります(法律で全国一律ではありません)。保険料率の決定と運営は広域連合、保険料の徴収は市町村が担当します(イは「すべての市町村が広域連合を組織する」「徴収は市町村」の部分は正しいが、「保険料率の決定も各市町村が独自に行う」が誤り)。
一部負担金の3段階(オの根拠・正解):
| 区分 | 一部負担割合 | 対象 |
|---|---|---|
| 一般 | 1割 | 上記以外の被保険者 |
| 一定以上所得 | 2割(2022年10月新設・第67条第1項第2号) | 政令で定める所得以上の者(厚生労働省の案内による目安: 単身で年金収入等200万円以上等) |
| 現役並み所得 | 3割(第67条第1項第3号) | 政令で定める額以上の所得を有する者(目安: 単身で収入383万円以上等) |
【高齢者医療確保法の制定背景と「2008年改革」の意義】
高齢者医療確保法は、老人保健法(昭和57年法律第80号)の題名を改めた法律で、2008年4月から現在の名称・制度(後期高齢者医療制度・前期高齢者財政調整)となりました。旧老人保健法では、老人医療費の財源を各保険者の拠出金で賄う仕組みでしたが、高齢者加入者が国保に集中する問題(負担の不均衡)と、老人医療の独立した制度根拠が不明確という問題がありました。2008年改革の核心は以下の2点です。
1. 前期高齢者財政調整の創設: 65〜74歳は各自の医療保険に残したまま、保険者間の財政不均衡のみを調整する仕組みを導入(制度統合なし・調整のみ)
2. 後期高齢者医療制度の独立: 75歳以上を独立した制度(被保険者資格・保険者・保険料・給付を全て独立化)に移行
【前期高齢者財政調整の実務的含意と「負担の可視化」】
前期高齢者財政調整は、健保組合・協会けんぽ側の「若年者中心の保険者が高齢者医療費を間接的に支えている」という構造を明示化した制度です。
社労士が企業顧問として健保組合や事業主に説明する際の重要ポイント:
- 健保組合が拠出する前期高齢者納付金は、保険料率(事業主・労働者負担)に直接影響する
- 定年延長・再雇用の推進により65〜74歳の在職者が増えると、健保組合側の前期高齢者加入割合が上昇し、納付金が減る(全国平均を上回れば前期高齢者交付金の受取側に転じる)可能性がある
- 前期高齢者納付金・後期高齢者支援金の負担が保険料率引上げにつながるため、定年延長政策と医療保険財政は連動して分析する必要がある
【後期高齢者医療制度の「広域連合」という独特の組織形態】
後期高齢者医療広域連合は、地方自治法第284条の「広域連合」として設立された特別地方公共団体です。都道府県内の全市町村が加入します。
| 役割 | 担当 |
|---|---|
| 制度の企画・運営・保険料率の決定 | 後期高齢者医療広域連合 |
| 保険料の徴収(年金天引き・口座振替等) | 市町村 |
| 窓口業務・申請受付・資格管理 | 市町村 |
| 医療費の審査・支払い | 広域連合(国民健康保険団体連合会等に委託して行うのが一般的) |
この「広域連合が決め・市町村が徴収する」二層構造は、社労士試験で「保険者の特定」「徴収主体の特定」として問われます。
【2割負担導入(2022年10月)の政策的背景と社労士実務への波及】
2022年10月の後期高齢者2割負担導入は、団塊の世代(1947〜49年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)に移行する2022〜2025年に向けた医療費抑制策です。導入時には「急激な負担増の緩和措置」として3年間(〜2025年9月)の激変緩和措置(外来医療費の月額上限付き)が設けられました。
社労士実務における後期高齢者医療の関連論点:
1. 資格取得・喪失の手続き: 75歳到達時に各自の医療保険(健保・国保)を資格喪失し、後期高齢者医療制度に自動的に加入。事業主は健保の喪失届を5日以内に提出する義務がある
2. 被扶養者の扱い: 健保の被扶養者が75歳に達した場合、後期高齢者医療の被保険者となって被扶養者でなくなり、本人に後期高齢者医療の保険料負担が生じる。逆に被保険者本人が75歳に達して健保の資格を失うと、75歳未満の被扶養者(主として配偶者)も被扶養者でなくなるため、国保への加入等の手続きと保険料負担が生じる
3. 高額療養費・高額介護合算療養費との連携: 後期高齢者医療にも高額療養費制度が適用される。介護保険と合算する「高額介護合算療養費」も後期高齢者に適用され、両制度の自己負担合算に年間上限が設定されている
【上位資格(FP・ケアマネ)への接続】
FP試験でも「後期高齢者医療制度の財源3本柱(公費・支援金・保険料)」「保険料率の都道府県別差異」「一部負担金の3区分」は重要なテーマです。ケアマネ(介護支援専門員)資格では、介護保険と医療保険の境界(医療系サービスの給付対象・医療費控除との関係)が問われます。社労士は両資格保持者と連携して高齢者の包括的な給付設計を行う場面が増えており、前期・後期の制度区分を正確に押さえることが必須です。
- 高齢者の医療の確保に関する法律第67条e-Govで原文を読む
- 地方自治法第284条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 高齢者医療確保法第48条(後期高齢者医療広域連合。保険料の徴収事務等は市町村)・第50条(被保険者)・第67条第1項(一部負担金の割合・1割/2割/3割) 前期高齢者財政調整: 高齢者医療確保法第32条以下 保険料の財源構成: 後期高齢者医療の財源(保険料約10%・後期高齢者支援金約40%・公費約50%) 一次ソース: e-Gov 高齢者の医療の確保に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/357AC0000000080 ・厚労省 後期高齢者医療制度の概要 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/koukikourei/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

