社労士 社会保険一般常識 問24:社会保険に関する一般常識(社一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
短時間労働者の健康保険・厚生年金保険への適用拡大(特定適用事業所および任意特定適用事業所における短時間労働者の被保険者資格)に関する次の記述ⅰ〜ⅴのうち、**正しいもの**はいくつあるか。下記ア〜オから1つ選べ。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度(賃金要件月額`2026-10-01`撤廃は未施行)を前提とすること。 ⅰ. 短時間労働者が特定適用事業所における健康保険・厚生年金保険の被保険者となるための要件は、①週所定労働時間20時間以上、②所定内賃金月額8.8万円以上、③2か月を超えて雇用されることが見込まれること(雇用見込み要件)、④学生でないこと(学生除外)の4要件であり、これらをすべて満たす必要がある。 ⅱ. 特定適用事業所の要件は、令和2年(2020年)10月の改正で従来の500人超から100人超に引き下げられ、さらに令和6年(2024年)10月の改正で50人超に段階的に引き下げられてきた。この50人超要件が令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点で有効な基準である。 ⅲ. 特定適用事業所の要件(被保険者数が50人を超えること)を判定する際の「被保険者数」には、適用拡大の対象である短時間労働者(週20時間以上等の要件で新たに適用される者)は含めず、従来からの通常の被保険者のみをカウントする。 ⅳ. 短時間労働者のうち、①週所定労働時間20時間以上かつ②所定内賃金月額8.8万円以上を満たすが、③雇用見込み要件(2か月超)を満たさない場合(例:1か月の短期雇用)は、特定適用事業所であっても短時間被保険者としての被保険者資格は取得できない。 ⅴ. 任意特定適用事業所とは、特定適用事業所に該当しない事業所(被保険者数50人以下)の事業主が、被保険者の2分の1以上の同意を得て厚生労働大臣に申し出た場合に認定される事業所であり、認定後は特定適用事業所と同様に短時間労働者の適用拡大が適用される。
- ア1つ
- イ2つ
- ウ3つ
- エ4つ正答
- オ5つ
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正答は「4つ」(ア・ウ・エ・オ)です。誤っているのはイのみです。
イの誤りは「令和2年(2020年)10月の改正で500人超→100人超」という部分です。正確には、500人超から100人超への引下げは令和4年(2022年)10月の改正によるものです。令和2年(2020年)10月という施行年は事実と異なります。
段階的引下げの正確な流れは、①500人超(2016年10月〜)→②100人超(2022年10月〜)→③50人超(2024年10月〜)です。
ア(正しい): 4要件①週20時間以上②月8.8万円以上③2か月超見込④学生除外はすべて法律の条文通りです。
ウ(正しい): 特定適用事業所の被保険者数のカウントには、適用拡大で新たに加わる短時間労働者は含みません。
エ(正しい): 雇用見込み(2か月超)の要件を満たさない短期雇用では、他の要件を満たしても短時間被保険者にはなれません。
オ(正しい): 任意特定適用事業所は被保険者の2分の1以上の同意・厚生労働大臣への申出で認定されます。
4要件の条文対応(アの根拠):
| 要件 | 内容 | 健保法条文 |
|---|---|---|
| ①週所定労働時間 | 20時間以上 | 第3条第1項第9号イ |
| ②所定内賃金月額 | 8.8万円(88,000円)以上 | 第3条第1項第9号ロ |
| ③雇用見込み | 2か月を超えて雇用されることが見込まれる | 第3条第1項第9号ハ |
| ④学生除外 | 学生でないこと(夜間・通信・休学中は適用対象) | 第3条第1項第9号ニ |
特定適用事業所の段階的引下げ(イの誤りの核心):
| 改正施行時期 | 対象事業所規模(被保険者数・短時間除く) |
|---|---|
| 2016年(平成28年)10月〜 | 500人超 |
| 2022年(令和4年)10月〜 | 100人超 |← イでは「令和2年(2020年)10月」と誤記 |
| 2024年(令和6年)10月〜 | 50人超(現行・令和8年度試験対象) |
社労士試験では「何年何月に何人超に引き下げられたか」という数値が正確に問われます。「令和2年」と「令和4年」の混同は頻出の引っかけパターンです。
被保険者数のカウント(ウの根拠):
特定適用事業所の判定に用いる「被保険者数」は、適用拡大で新たに被保険者となる短時間労働者を除く、従来からの通常の被保険者(フルタイム相当・週30時間以上等)のみをカウントします。したがって、「現在のパート従業員が新たに短時間被保険者になっても、事業所規模の判定カウントには影響しない」という点は実務上の重要論点です。
雇用見込み要件(エの根拠):
「2か月を超えて雇用されることが見込まれる」という要件は、契約期間だけでなく実態で判断されます。1か月更新の反復継続契約でも「2か月を超えることが見込まれる」場合は要件を充足します。逆に、明示的に「1か月限り」という雇用で更新が見込まれない場合は要件を満たしません。
任意特定適用事業所(オの根拠):
被保険者の2分の1以上の同意を得た事業主が厚生労働大臣に申し出ることで認定されます(健保法第31条の2)。認定後は特定適用事業所と同様の適用拡大が行われます。
【短時間労働者の社保適用拡大の政策的背景と「段階的拡大」の設計意図】
短時間労働者への社会保険適用拡大は、2016年10月(500人超事業所)から始まり、2022年・2024年と段階的に対象を広げてきました。この段階的設計の背景には以下があります:
1. 事業主の急激な保険料負担増への配慮: 中小企業では社保適用拡大により事業主の保険料負担が大幅に増加するため、経営への影響を緩和しながら段階的に拡大
2. 「130万円の壁」問題への対応: 配偶者の被扶養者(第3号被保険者)が就労を抑制する「壁」を段階的に解消する政策意図。ただし、短時間適用拡大は「106万円の壁」(月8.8万円×12月)を生み出したとも批判される
3. 賃金要件撤廃(`2026-10-01`)の意義: 「月8.8万円を1円でも下回ると適用外」という不合理な線引きを解消し、週20時間以上の全短時間労働者を原則適用へ
【改正時期の正確な記憶方法(社労士試験の頻出出題パターン)】
社労士試験では「何年何月に何人超に引き下げられたか」という数値が正確に問われます。段階的引下げの記憶法:
- 2016年(平成28年)10月: 500人超スタート
- 2022年(令和4年)10月: 100人超(「令和4年→4の倍数→100人超」)
- 2024年(令和6年)10月: 50人超(「令和6年→6→最小50人超」)
「令和2年(2020年)」「令和4年(2022年)」「令和6年(2024年)」という近接した元号年が紛らわしく、試験問題でも頻繁に誤りとして仕込まれるパターンです。西暦と元号を両方確実に対応させて覚えることが高得点への鍵です。
【4要件の実務適用と「月額8.8万円」の計算方法】
社労士が企業の適用事務を行う際の重要論点:
月額8.8万円の計算対象は所定内賃金のみ(基本給・固定的な手当)であり、以下は含みません:
- 時間外手当・休日手当・深夜手当
- 賞与・臨時の賃金
- 通勤手当(原則算入外)
実務上の計算例:
- 時給850円・週20時間勤務:850円×20時間×52週÷12月=73,667円 → 月8.8万円未満のため短時間被保険者要件を満たさない(週30時間以上なら通常被保険者として別途適用)
- 時給1,100円・週20時間勤務:1,100円×20時間×52週÷12月=95,333円 → 月8.8万円以上のため短時間被保険者として適用対象
`2026-10-01`以降は月額要件が撤廃され、時給850円・週20時間勤務でも適用対象となります。
【学生除外の例外(夜間・通信・休学中学生の取扱い)】
「学生でないこと」という要件には重要な例外があります:
- 夜間学生: 定時制・通信制の学生は「学生除外」の対象外(被保険者となりうる)
- 休学中の学生: 休学中は「在学中」であっても学生除外の対象外
- 専攻科・別科の学生: 対象外の場合あり
「学生はすべて適用除外」という誤解は社労士試験の引っかけポイントです。
【適用拡大と第3号被保険者制度の将来】
短時間労働者の社保適用拡大は、国民年金第3号被保険者制度との関係で大きな政策的議論があります。
2025年以降の動向:
- 第3号被保険者制度の廃止・縮小論議が活発化
- 適用拡大で厚生年金に加入した場合、第3号から「厚生年金の第2号被保険者」へ移行→将来の年金額が増加する半面、当座の保険料負担が増加
- 社労士には「適用拡大による家族全体の社会保険コスト試算」「扶養内就労か被保険者加入かの最適解提案」という新たな業務需要が生まれている
【上位資格(FP・人事院)との接続】
FP試験では「短時間労働者の社保適用要件」「106万円の壁・130万円の壁の比較」が頻出です。企業の人事実務では、パートタイム労働者の時間・賃金設定が社保適用の有無を直接左右するため、社労士は「パート就業規則の整備」「月額賃金の設定基準の策定」において企業顧問として具体的な価値を発揮します。特に、`2026-10-01`の賃金要件撤廃後は、現在「週20時間以上・月8.8万円未満」で適用除外となっているパート労働者が一斉に適用対象となるため、事業主の保険料負担増加への対応策(シフト調整・賃金設計の見直し等)について早期に準備することが重要です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第3条第1項第9号(短時間労働者の被保険者資格)・厚生年金保険法第12条第5号・健康保険法附則第47条(段階的適用拡大)・健康保険法第31条の2(任意特定適用事業所) 4要件: 健康保険法第3条第1項第9号イ〜ニ(①週20時間②月8.8万円③2か月超見込④学生除外) 段階的引下げ: 500人超(2016-10)→100人超(2022-10)→50人超(2024-10) 任意特定適用事業所: 健康保険法第31条の2第1項(1/2以上同意・申出) 一次ソース: 厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html ・日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2016/201610/1001.html <!-- 監修確定 2026-06-08 差し戻し修正版(content-quality-officer・legal-reviser): 各肢の真偽判定(最終): ア=正しい(4要件①週20時間②月8.8万③2か月超④学生除外の全て正確)。 イ=誤り(「令和2年(2020年)10月の改正で500人超→100人超」は事実誤認。正確には500人超→100人超は令和4年(2022年)10月の改正。令和2年=2020年は施行年として誤り)。 ウ=正しい(特定適用事業所の被保険者数の算定から短時間労働者を除く旨は健康保険法・厚生年金保険法の規定通り正確)。 エ=正しい(雇用見込み要件(2か月超)を満たさない1か月の短期雇用の場合は、他の要件を満たしても短時間被保険者として取得不可)。 オ=正しい(任意特定適用事業所の要件・2分の1以上同意・厚労大臣への申出は全て正確)。 最終正答: 4つ(ア・ウ・エ・オ) 構造: 4正(ア・ウ・エ・オ)・1誤(イ) 公開可。段差性確認済み(beginner<standard<advanced)。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。